2020年 新入社員への社長メッセージ

2020年4月1日

本日ここに、総合職106名、事務職14名、合計120名の新しい仲間を迎えることができた事を、大変嬉しく思います。入社式は、皆さんと、全員一つの所で実施したいと思っていたのですが、新型肺炎の感染拡大に伴い、やむなく実施しないこととしました。その代わり、本日朝、正面玄関に外国の要人を迎える時のように、レッドカーペットを敷き、満開の桜を飾って、社会人としての第一歩を刻む皆さんを岡藤会長と共にお迎えしました。

伊藤忠商事は、ここ10年に亘り、素晴らしい業績を継続しています。2018年度には初めて連結純利益5,000億円超を達成し、2019年度においても、第3四半期までの累計で、史上最高となる4,267億円を達成しています。

しかしながら、今年2月から拡大した新型コロナウイルスが、わずか2ヵ月で経営環境を激変させています。収束時期を見通すことは難しいですが、仮に早期に収束したとしても、冷え込んだ消費マインドは簡単に戻らず、経済の停滞はしばらく続くと覚悟する必要があります。大切なことは、その間に何をするかです。会社としては、まずは、社員とその家族の健康と安全を守ること、そして、300社からなる伊藤忠グループ全体の企業活動を維持し、確りと足場固めをすると共に、先を見据えて成長への布石を打ち続けることが必要です。

伊藤忠では、社員の安全を確保するべく、早朝出勤、在宅勤務といった柔軟な勤務体制を敷いていますが、一番大切なことは、社員一人一人の自覚ある行動です。一人の感染が多くの人をリスクにさらすと共に、事業活動に多大な影響を及ぼすこととなります。例年であれば、これから多くの歓迎会が開催されるところですが、それはコロナウイルス終息後の楽しみとして控え、その時間を業務の修得と自己啓発に活用し、例年以上に成長の速い新入社員を目指して頂きたいと思います。

そして、皆さんには、伊藤忠商事に入社したと同時に、伊藤忠グループという大きな船を動かす一員になったということを自覚して頂きたいと思います。伊藤忠商事の単体従業員数は4,300名ですが、グループ全体の連結従業員数は12万人にもなります。伊藤忠は、消費関連分野を強みとする商社であり、商売の前線では、グループ各社が各業界の現場を守り、日々戦っています。多くの会社が在宅勤務もままならない中、リスクと対峙しながら業務を遂行しています。



グループの中枢である伊藤忠商事本体に求められるのは、過去に誰も経験したことのないこの危機を生き抜くリーダーシップと、危機をチャンスに変える知恵と創意工夫、そして、発想の転換です。極めて高い倍率の競争を切り抜けて入社された皆さんには、自身への誇りと共に、決して謙虚さを忘れることなく事業会社の皆さんやお客様の気持ち寄り添い、そして、day oneから知恵を出し、会社がこの難局を越えて成長する一助になって頂きたいと思います。

これから伊藤忠で活躍頂く皆さんに、私からみなさんへ、心すべき指針を2つ申し上げたいと思います。1点目は伊藤忠の商いの基本「か・け・ふ」です。

伊藤忠の経営方針は「コミットメント経営」、その鍵となるのが、伊藤忠の商いの三原則「稼ぐ」、「削る」、「防ぐ」、頭文字をとって「か・け・ふ」です。「稼ぐ」は商人の本能。「削る」は商人の基本。「防ぐ」は商人の肝としています。向こう暫くは「稼ぐ」には難しい環境が見込まれる中、まずは「削る」「防ぐ」を徹底して計画の達成を目指さねばなりません。この様な厳しい経済環境こそ、伊藤忠のコミットメント経営の見せどころです。新入社員の皆さんには、伊藤忠がどのように「か・け・ふ」を実践するのかを、是非学び取って頂きたいと思います。

2点目は伊藤忠の経営理念です。本日2020年4月1日、当社グループの企業理念を「三方よし」に改訂しました。近年、企業経営においてESG、SDGsの重要性が急速に高まりを見せていますが、
その中で、たびたび「三方よし」という近江商人の言葉が引用されます。「三方よし」は、創業者である伊藤忠兵衛の経営哲学にそのルーツがある言葉で、いわば、伊藤忠がその正統なる継承者です。そして、この「三方よし」を実現するための行動指針が「ひとりの商人、無数の使命」です。「三方よし」の理念のもとに、社員一人ひとりが自らの使命を自発的に考え、行動を起こすこと。これを、皆さんのこれからの行動指針にして頂きたいと思います。

それでは、皆さんの伊藤忠での活躍を祈念すると共に、伊藤忠グループという大きな船がこの荒波を乗り越え更に成長していける様に、皆で頑張って行きましょう。

改めて、皆さんの入社を心から祝福し、私の歓迎の挨拶とします。ありがとう。