2021年 社長COO年頭挨拶

2021年1月4日

当社社長COO鈴木善久による社員向け「2021年年頭挨拶」を下記の通りお知らせ致します。
尚、本年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、動画による配信と致しました。

明けましておめでとうございます。
全世界の伊藤忠グループの社員、並びに、ご家族の皆さまに、新年のお慶びを申し上げます。 

今年は少し短い正月休みでしたが、皆さん、新たな気持ちで新年を迎えていることと思います。

新年の始まりにあたり、ここ10年の伊藤忠をまずは振り返ってみたいと思います。10年で、伊藤忠は大きく成長しました。2010年度1,611億円だった連結純利益は年々着実な成長を遂げ、2018年度と2019年度には2年連続で5,000億円に到達しました。昨年は、新型コロナウイルスの流行による不透明な経済環境でしたが、そんな中でも、利益計画は4,000億円と前年比2割減に踏み止まり、上期終了時点の進捗率も63%と大変順調に推移しています。

このように数字を見ても伊藤忠は10年で大きく変貌したわけですが、この変貌を可能にした要因は何だったのでしょうか?まずもって大きな要因は2013年に、当時の岡藤社長が、いち早く非資源中心の事業成長に舵を切るという大きな決断をしたことに始まります。それは、他商社が資源ビジネスに傾斜する中での決断でしたが、その2年後2015年に資源のスーパーサイクルは終了し他商社は大きな損失を出すことになります。

引き続いて、2016年には情報・金融カンパニーを設立してDXを先取りし、2018年にファミリーマートを子会社化。続く、2019年には第8カンパニーを設立して「マーケットイン」への業態変革を始動させました。そして、昨年2020年にはファミリーマートを非公開化するなど、次々手を打ってきました。資源から非資源へ、そして、生活消費へ、更にはマーケットインへと、現場に軸足をおきつつ、市場や経営環境の変化を先取りしたことがこの10年の大きな成長を可能にしたと言えます。

もう一つの要因は、この10年で「伊藤忠らしさ」が明確になってきたということです。過去においては、財閥系商社を追いかけて無理な規模拡大に走るなど、伊藤忠は何を目指しているのか、どんな会社なのかというアイデンティティがぼやけた時代が続いていました。しかし、近江商人を源流に持つ当社の歴史に立ち返り、2014年には、現在のグループ企業行動指針となる「ひとりの商人、無数の使命」をコーポレートメッセージとして制定しました。これにより、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」で、世の中やお客様に向き合うという本来の「商人」としての「伊藤忠らしさ」が社内外に浸透しました。信用を大切に、約束を守る、コミットメント経営を実践するという「伊藤忠らしさ」は、生活消費分野を中心とした強固な事業基盤の重要な精神的バックボーンになっているといえます。

さて、今年2021年、新たな10年が始まりますが、何にもまして、まずは2020年度の連結純利益4,000億円を必達し、コミットメント経営を実践し続けなければなりません。昨年は、誰も予想だにしなかったパンデミックにより環境が激変し、一寸先は闇ということを実感させられる年になりました。経済は徐々に回復へ向かうと期待されますが、決して油断してはいけません。中国の故事に「居安思危」という言葉があります。「安きに居りて危うきを思う」という意味ですが、更に、「思えばすなわち備えあり(思則有備)」、そして「備えあれば憂いなし(有備無患)」と続きます。この故事のごとく、当社では、コロナ以前から、右肩上がりの経済成長はいつまでも続くものではないと自らを戒め、有事に備えて経営してきたことで、幸いにもこれまで確りと対応できています。

本年も、引き続き、常に過去の失敗を思い出し、危うきに備える気持ちを忘れずに、各々の持ち場で伊藤忠のビジネスの基本である「か・け・ふ」を実践して頂きたいと思います。連結純利益、株価、時価総額で商社No.1となる「三冠」を達成すれば、創業から160年余り、長きに亘って他社の後塵を拝してきた伊藤忠の歴史が変わる大きな一歩となります。そして、今後、当社が盤石の地位を確立できるかどうかは、まさにこの先数年にかかっています。仮に「三冠」を達成できた時にも、過信・慢心は厳に戒め、常に気を引き締めることを忘れないようにお願い致します。

今や、コロナを契機としてデジタル化の波は益々加速し、過去の仕事のやり方が通じなくなる大きな転機に差し掛かっています。現在、伊藤忠は生活消費関連の分野を強みとしていますが、今後も成長し続けるためには、データも活用して消費者が何を求めているかを正しく理解し、消費者目線でビジネスを組み立てていく「マーケットインの発想」をもって、強い生活消費分野を更に強くせねばなりません。また、これまでのような商品別の縦割り思考の商売は、その存続が問われています。変わらねば生き残れないという危機感を強く持って、ビジネスを変革して頂きたいと思います。

また、SDGsの潮流が大きく拡がる中、菅総理が「2050年カーボンニュートラル」を宣言するなど、ESGへの対応強化が求められる時代となってきました。SDGsはとりもなおさず現代版の「三方よし」です。伊藤忠の場合、これまで通り自然体で「三方よし」を実践し、商いを通じて、環境問題をはじめとする社会課題に立ち向かうことで、この流れをつかんでいくことが可能です。そして、このSDGsの流れを、事業の拡大はもとより、「三方よし」を理念とする伊藤忠の、社会での存在感をより高める機会にしていきたいと思います。

昨年は「新型コロナウイルスの年」として歴史に残る年になりましたが、その混乱の中でも、伊藤忠はファミリーマートへの大型TOBを実行しました。このように、不透明な環境下でも、リスクを充分に精査しながら将来に向けて手を打つことが大切です。他商社に先んじて非資源ビジネス強化を進めたように、これからも一歩先を行く伊藤忠として、世の中の構造や経済環境の変化をチャンスと捉え、先手をとって果敢に前進する、その積み重ねがやがて伊藤忠を次のステージに導いてくれるはずです。

今年は、これまでに築いた事業基盤と「伊藤忠らしさ」を更に磨きながら、新しい伊藤忠をつくるべく、お取引先やパートナー、事業会社と共に、ビジネスの進化を積み重ねる年となります。そして、また10年後に振り返った時、2021年は真の業界トップとしての伊藤忠が始動した年と胸を張って言えるよう、全社一丸となって進んで参りましょう。

最後に、全世界の伊藤忠グループの皆さん、そして、それを支えてくださっているご家族の皆さんの、ご健勝とご多幸をお祈りして、私からの新年の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。