世界初、「象牙に近い音色を奏でるCNF箏爪」を事業化

2022年11月14日

伊藤忠商事株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長COO:石井 敬太、以下「伊藤忠商事」)、利昌工業株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:利倉 幹央、以下「利昌工業」)、株式会社三島屋楽器店(本社:新潟県長岡市、代表取締役社長:山田 京一、以下「三島屋楽器店」)は、世界で初めて、象牙に近い音色を奏でるセルロースナノファイバー箏爪(以下「CNF箏爪」)を事業化いたしました。

セルロースナノファイバー(CNF)は、植物の主成分であるセルロースを処理してナノメートル(ナノは10億分の1)サイズまで細かく解きほぐした素材です。原料は持続的に供給可能な木材由来でありながら、鉄の5分の1の重さで5倍の強度を持つ軽量性・強度特性に優れた素材で、経済産業省の試算では2030年に関連材料として1兆円の市場規模創出が想定されています。
CNF成形板は、利昌工業が持つ特殊技術でCNFを板状に成形した軽量・高強度な素材で、アルミニウムの約半分の重量でほぼ同等の強度を持ち、建材や構造材用途での実用化が期待されています。伊藤忠商事並びに利昌工業は、CNF成形板が象牙に近い質感を持つことに注目し、共同で象牙代替素材の開発を進めていました。
象牙は、ピアノの鍵盤など様々な用途で使用されていましたが、1990年にワシントン条約で国際取引が原則禁止されたことなどから、多くがプラスチック製品などに代替されました。日本では、和楽器の部品など「音響特性」が必要とされる用途で十分な代替素材がないことなどから、引き続き法規制に基づく管理下に限り国内取引が認められていますが、今後は入手困難となる懸念があります。

この度事業化に至ったCNF箏爪は、利昌工業が開発した特殊なCNF成形板(樹脂含浸型)※1を、三島屋楽器店が従来の象牙加工技術を用いて加工し販売するものです。象牙に近い音色を奏でると評価されており※2、入手困難な象牙製箏爪に代わる製品として、全国の和楽器店、並びに三島屋楽器店のECサイトで順次購入が可能となります。素材となったCNF成形板が従来の象牙加工技術で加工できることから、今後は、三味線の撥(ばち)など、引き続き象牙が好まれている和楽器部品での事業化も検討してまいります。

伊藤忠商事は中期経営計画の基本方針として、「『SDGs』への貢献・取組強化」を掲げており、CNF箏爪の開発のみならず、出資先である大建工業株式会社を通じてCNF建材開発※3などの産業用途展開を推進しています。持続的に供給可能である木質由来素材の技術革新の社会実装に寄与し、環境負荷軽減の実現を通じて豊かな社会の発展に貢献してまいります。

CNF箏爪と象牙製筝爪

写真:CNF箏爪

CNF箏爪

写真:象牙製筝爪

象牙製筝爪

  • ※1主原料であるCNF成形板に、樹脂を含浸しております。樹脂に対して敏感な方はご使用をお控え下さい。
  • ※2三島屋楽器店の評価による。
    三島屋楽器店は、江戸時代に旧新潟県三島郡に「山田屋三味線店」として創業された歴史のある和楽器店です。現在は、新潟県長岡市の本社に加え、日本一の筝の生産量を誇る福山市にも工場を持ち、太鼓、三味線、筝といった和楽器の製造・販売を行っています。また、古くから、象牙に代わってプラスチックを和楽器部品の材料として使うなど、和楽器素材の音響性能に関する知見が豊富です。
    ・三島屋楽器店ホームページ:http://3408.co.jp/product.html
    ・三島屋楽器店ECサイト:https://www.rakuten.co.jp/mishimaya3408/
  • ※3「セルロースナノファイバー技術を利用した内装建材の開発」がNEDOの助成事業に採択:https://www.daiken.jp/news/detail/20200901161840.html

セルロース繊維(a)とCNF(b)

写真:a.セルロース繊維5マイクロメートル

セルロース繊維

写真:b.CNF200ナノメートル

CNF

(京都大学 矢野浩之教授 提供)

CNF(スラリー状)とCNF成形板

写真:スラリー状のCNF

CNF(スラリー状)

写真:CNF成形板

CNF成形板