2023年 新入社員への社長メッセージ

2023年4月3日

この度は入社おめでとうございます。本日ここに、総合職112名、事務職23名、合計135名の新しい仲間を迎えることができました。

伊藤忠入社式の恒例となりましたが、今朝も、正面玄関において、本日皆さんの為に満開の桜を咲かせ、真っ赤なカーペットを敷き、生演奏の演出のもと、皆さんの人生にとって大切な日である、社会人としての第一歩をお迎えしました。そして今年度は4年ぶりにコロナによる制限のない入社式を開催することが出来ました。本日は、岡藤会長CEOやカンパニープレジデント、職能オフィサー、皆さんの受入部署の先輩社員にも出席頂いています。また、昨年に引き続き、皆さんの大切なご家族の皆様にもオンラインでご視聴頂いており、今回はその様子をスクリーンに映しております。改めて、本日この様に皆さんと一堂に会することができたことを大変嬉しく思います。

さて、まず最初に、本日伊藤忠商事の社員となった皆さんに二つの重要な心得についてお伝えします。

一つ目は、当社の行動指針である「ひとりの商人、無数の使命」です。これは、私にとっても、自分をリセットする時にいつも振り返る重要なフレーズの一つです。創業者である初代 伊藤忠兵衛翁(おう)の商人の心構えに学び、「商人の使命」は、商いを通して社会の課題を解決し、人々の暮らしを豊かにしてゆくことだと言う姿勢を表しています。すなわち、私たち伊藤忠社員一人ひとりは、仕事を通じて、無数にある社会の課題に挑戦し、解決してゆくと言う使命を負っており、高い意識を持って仕事に向き合えという事だと思います。

皆さんのこれからの商人人生の中で、行き詰まったり、失敗したりすることがあるかも知れません。そんな時、自分に原点を振り返らせ、克服するエネルギーを与えてくれるのが「ひとりの商人、無数の使命」です。この言葉を常に心にとどめておいて頂きたいと思います。

二つ目は、「三方よし」の精神です。近年、企業経営におけるSDGsの重要性が一段と高まりを見せていますが、その中で、たびたび「三方よし」という言葉が引用されています。この「三方よし」は、売り手、買い手、世間の三方が共に満足すると言う共存共栄の考えにあり、伊藤忠兵衛翁(おう)に代表される近江商人の経営哲学をルーツとする現在の当社の企業理念です。創業の精神として引き継がれ、160年間以上続く商いの精神であり、調和の心です。

この誠意ある三方よしのステークホルダー主義経営が、当社への長年にわたる信用を築き上げ、今の伊藤忠商事があります。ビジネスの基本は信用です。信用の無い仕事は長続きしません。自分の利益中心では無く、お客様や仕入れ先のことを考え、また、そのビジネスが社会に貢献するものであるかどうかを大事にしていれば、必ず周囲からの信用を得ることができます。そしてその信用がまた次のビジネスに繋がり、信用の連鎖が生まれてゆきます。皆さんもこれからビジネスに携わって行く中で、色々な判断や決断を迫られる場面が出てくると思います。当社の「三方よし」は、この時の判断基準の一つになると思いますので、これも本日からしっかりと心にとどめてください。

現在当社は、岡藤CEOの指揮の下で「マーケットイン 利は川下にあり」の経営戦略に加え独自の働き方改革でトップ商社の一角を担うまでに成長し、世間から注目を浴びる会社となりました。皆さんの知る伊藤忠商事も常にトップを争う御三家商社という認識だと思います。しかしながら、当社は非財閥の生まれであり、大阪繊維問屋から現在の総合商社へと成長する過程では、戦乱は当然のこと、その後も成功と挫折を経験しながら、数々の困難を乗り越えてきたという事を知ってほしいと思います。今、私が手にしているこの本ですが、こちらは今年の3月に発行された初代 伊藤忠兵衛 翁61年の伝記漫画 そしてもう一冊、こちらの本は昨年12月にダイヤモンド社から発行された伊藤忠が近江商人から現在の財閥トップ商社に肩を並べるようになるまでの歴史ドキュメンタリー本です。当社の歴史や企業理念について深く学べる内容になっていますので、皆さん是非参考にしてください。  

さて、これまでの幾多の困難を乗り越えられた原動力は、ひとり一人の社員の頑張りに他ありません。困難を乗り越えるのも社員たち、これからの未来を切り開くのも社員たちの力です。ご覧の通り、当社は社員を大切にしており、健康経営を重視しています。今日から皆さんも当社の社員です。皆さん一人ひとりに強い社員となってもらい、次の伊藤忠の未来を担う原動力になって欲しいと思います。

皆さんはこれから伊藤忠の商人になる為の見習いを始めることになりますが、知識の習得以外に磨いて欲しい事があります。それは、デジタル時代だからこそ価値のある人間力と感性の磨きです。自分の個性・スタイルを生かした、顔の見える人間力を鍛えることです。人間力が磨かれれば、自ずと人を惹きつけ、人脈も広がってゆくはずです。次は、感性ですが、五感を研ぎ澄まし、視座を高く持ち、周囲をよく観察することが、一歩先を読む力やお客様が求めているものの本質を見抜く力に繋がってゆくと思います。この二つは、皆さんそれぞれのスタイルで独自に磨き上げるスキルであり、自身の強みになるはずです。 

では、どうすれば良いか?それは、地道なことかもしれませんが、現場を大事にして、足を動かすことだと思っています。好奇心を持って現場に出てゆき、目で見て、手で触って、人と会話して、あらゆる物事をよく観察することから始まる経験の積み重ねが、皆さんを磨き、プロの商人へと導いてくれると思います。是非これから現場で、リアルの難しさ、人との交流の楽しさを感じてください。

最後になりますが、皆さんの中には、コロナ禍で思うような学生生活を送れなかったという方もいると思います。そんな皆さんが内に秘めているエネルギーと情熱は、是非、当社での商いにぶつけてください。伊藤忠商事は皆さんのパワーを全力で受け止めてくれる会社です。これから皆さんと一緒に、無数の使命を果たしていけることを楽しみにしています。

改めて、皆さんの入社を心から祝福し、私の歓迎の挨拶とします。