ケニアで調理燃料転換によりカーボンクレジットを創出する環境テクノロジー企業KOKO Networks Limited社との長期オフテイク契約の締結について

2023年7月28日

伊藤忠商事株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長COO:石井敬太、以下「伊藤忠商事」)はケニア国内の家庭での調理燃料転換によるカーボンクレジット創出事業を手掛けるKOKO Networks Limited (本社:ケニア、CEO:Gregory Murray 以下、「KOKO」)と、同社が創出するカーボンクレジットの長期オフテイク及び共同販売に関する契約を締結しました。

2023年4月から本格始動したGXリーグ(※1)において、参画企業が自主設定・開示する削減目標を基に試行的な取組として排出量取引市場 (GX-ETS) が実施され、その取組の中で直接排出の目標達成に至らなかった場合の手立ての1つとして、適格なカーボンクレジットを活用しオフセットすることが重要な手段となっています。近年、オフセットに活用するカーボンクレジットの「質」への関心が高まっており、排出削減案件の運営及びモニタリングが適切に行われていることはもちろんのこと、生物多様性や近隣住民の生活環境改善など、定性的な側面も質を評価する上での重要な要素となっています。また、カーボンクレジットをパリ協定の「国が決定する貢献(NDC)」の達成に活用する場合、相当調整(※2)がなされていることが二重計上防止の観点で必要となります。相当調整がなされたカーボンクレジットについては、GX-ETSで活用が認められる可能性が高いとされています。

KOKO社はアフリカ地域の家庭での燃料転換により、木炭使用による森林破壊の解決を目的に創業した環境テクノロジー企業です。首都ナイロビなどケニア国内の8つの都市で約100万世帯に対し、木炭に代わり低価格で再生可能なバイオエタノール燃料の供給事業を展開しています。ユーザーは専用の燃料ケースを用い、国内の約2,500か所に設置された燃料ATMからバイオエタノール燃料を購入します。燃料の供給及び購入状況はオンライン上で一元管理され、安全性、品質管理、顧客満足度の向上に繋げています。同社の事業では、2,000人の雇用を創出し、サプライチェーンの中でケニアの15,000家庭の収入を支えています。また、本事業で創出されるカーボンクレジットの販売収益は調理器具のディスカウントによりケニア家庭に還元されます。本事業はケニア政府から相当調整の認証取得に向けた支援が得られる見通しで、実現すればカーボンクレジットの市場価値が更に高まります。

伊藤忠商事はKOKO社の手掛けるカーボンクレジット創出事業に対し一部ファイナンスを行い、KOKO社のアフリカ地域における脱炭素事業拡大の支援を行います。また、当社ファイナンスにより創出されたカーボンクレジットを長期に亘り調達し、KOKO社と共同でマーケティング、及び、販売活動を実施します。伊藤忠商事の幅広い業界におけるグローバルな販売ネットワークを活かし、特に日本及びアジア諸国における排出量取引を支援することで、社会及び、取引先企業の脱炭素取り組みに貢献していきます。

なお、株式会社みずほ銀行(本社:東京都千代田区、取締役頭取:加藤勝彦、以下「みずほ銀行」)は、KOKO社との連携を通じたカーボンクレジットの取得機会とKOKO社との協業による環境貢献型の新規ビジネス機会等をみずほ銀行のお客さまに対して提供することを目的に、KOKO社とカーボンクレジット分野に関する戦略的パートナーシップの構築を目的とする覚書を締結しました。今後、KOKO社、みずほ銀行、伊藤忠商事の3社は、カーボンクレジット市場の発展に向けた三社間での連携も視野に入れた検討を進めていきます。

伊藤忠商事はこれらの取り組みを通じて、中期経営計画の基本方針である『「マーケットイン」による事業変革』と『「SDGs」への貢献と取組強化』 を着実に推進してまいります。

  • ※1経産省が設立したGXに積極的に取り組む「企業群」が、官・学・金でGXに向けた挑戦を行うプレイヤーと共に、一体として経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場の創造のための実践を行う場。
  • ※2相当調整とは、カーボンクレジットを創出し移転した国と、カーボンクレジットを獲得した国の間で削減効果を調整すること。具体的には、移転した国の排出量に移転したカーボンクレジット分を加算、カーボンクレジットを獲得した国が減算することで、二重計上を防止する。

KOKO社の現地オペレーションの様子