“日本のプロの声”を守り、未来と世界へ──日俳連公式の音声データベースが始動
日俳連と伊藤忠グループが、“声”の不正利用対策と音声AIビジネスを推進する覚書を締結
2025年11月14日
協同組合 日本俳優連合(以下、日俳連)、伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)の3者は、声優・俳優など、声を生業とする実演家の音声を安心・安全に保管・活用し、世界に届ける新たな取り組みとして、公式音声データベース「J-VOX-PRO(仮称)」を立ち上げます。声の不正利用対策・音声AIビジネス・海外展開までを一体的に支援するもので、3者はこの推進に関する覚書を締結しました。 さらに、行政とも連携し、制度整備やルール形成に基づく、不正利用への対策を進めながら、健全な音声ビジネスの発展を目指します。
1.「声」の現状と課題
近年、生成AI技術の急速な進展により、実演家の声を模倣した音声コンテンツが無許可で生成・公開される事例が増加しており、人格的・経済的権利が十分に守られていない状況があります。
こうした無断利用による損失は、金銭面だけでなく、実演家の信頼や創作活動の継続や品質にも影響を及ぼし、業界全体の健全な発展を妨げる要因となっています。日俳連は、2023年からこの課題への取り組みを開始し、2024年には「NOMORE無断生成AI※1」活動の筆頭団体として参画しながら、実演家の「声」を知的財産として保護し、正当な対価と利用管理の仕組みづくりを進めています。
日俳連の取り組み:
| 項目 | 主な取り組み内容 |
|---|---|
| 1. 不正利用対策 | ・音声の無断合成、流通に対する通報体制の構築 ・差し止め/損害賠償に向けた対応フローの整備 |
| 2. 権利保護のためのガイドライン策定 | ・実演家の意思表示と利用範囲の明確化 ・契約書ひな形の整備(利用範囲/期間等の明示) |
| 3. 政策提言と法整備の推進 | ・業界横断協議によるルール形成と合意形成の促進 ・行政/海外団体との連携 |
| 4. 教育・啓発活動 | ・実演家に向けた契約/権利/AIリテラシーの教育機会提供 ・開発者/ユーザーへの倫理啓発と責任共有の推進 |
| 5. 音声の保管と利活用の基盤整備 | ・実演家の意思表示と連動した安全な音声保管/管理環境の構築 ・電子透かし/声紋認識等の追跡技術研究 |
2.音声の保管と利活用の基盤整備について
音声の保管と利活用に関しては、日俳連が運営主体として参画し、CTCが運用環境や適用技術、運営体制の支援を行い、公式音声データベース「J-VOX-PRO(仮称)」を立ち上げます。「J-VOX-PRO(仮称)」は、実演家の「声」を安全に保管し、利用管理できる新しい仕組みです。日本の文化資産である実演家の声を高品質な音源としてデータベース化することで、将来にわたり安心して活用できる環境を整えます。
また、「J-VOX-PRO(仮称)」は、法人利用を前提としており、利用希望企業や団体は所定の料金を支払い、合意された用途の範囲で音声データを入手・利用できます。料金や利用条件は、実演家本人やプロダクションとの協議を経て、透明性の高い形で決定されます。また、実演家本人の意志表示のデジタル化を進め、利用企業とのマッチングと併せて、音声データには、電子透かしや声紋などのセキュリティ技術を適用し、利用時の不正を防止します。
3.「声」の利活用事例と可能性
実演家の音声は、教育・医療・観光など多様なサービス分野での活用が期待されます。例えば、行政情報、高齢者向けの診療説明や多言語音声ガイドなど、利用者のニーズに応じた音声配信や多言語展開によるサービス品質の向上につなげます。音声および音声認識市場は、2032年までに約13兆円規模※2に達すると予測されており、当初は国内利用を想定していますが、今後海外展開を踏まえた世界での活用を推進するために、日俳連は実演家の権利保護と収益機会の拡大を、伊藤忠商事は権利者と協力した正規の利用による新規事業創出及び海外展開を、CTCは「J-VOX-PRO(仮称)」を活用したサービス開発を継続して取り組んでいきます。
<AI音声活用における権利保護とビジネス展開のイメージ(現在)>
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<AI音声活用における権利保護とビジネス展開のイメージ(将来)>
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◎「J-VOX-PRO(仮称)」の特徴:
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| ① プロの“声”に特化した公式音声データベース | 実演家の正式な意思表示に基づき、信頼性の高い日本語音声データを保管。権利者・利用者の双方が安心して使える公的基盤。数千人規模での収集を想定。 |
| ② 官民・業界連携による持続可能な運営体制 | 日俳連・伊藤忠グループ・行政が連携。業界団体×民間×行政による信頼性と継続性を兼ね備えた音声データインフラ。 |
| ③ 不正利用発見時の対応 | 不正利用事案発見時に、日俳連が実演家をサポート。 国内外の不正利用事案に対応。 ガイドラインの周知等を行い、予防的措置も推進。 |
| ④ 安心・透明な許諾と利用の仕組み | 意思表示DBと契約管理を連動させた、トレーサビリティのある構造。AI時代に求められる“許諾の透明性”と“悪用防止”をシステムと実務の両面で支援。 |
| ⑤ 商用利用を促進するライセンス&マッチング機能 | 声を使いたい企業・公共団体・AI開発者と、実演家との マッチングを支援し、国内外の音声ライセンス市場の拡大と新規需要に対応。 |
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※1 NOMORE無断生成AI
https://nomore-mudan.com/ -
※2 出典元:Fortune Business Insights Pvt. Ltd.
https://www.fortunebusinessinsights.com/industry-reports/speech-and-voice-recognition-market-101382 - ※記載されている商品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
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