2019年度 入社式 社長メッセージ

2019年4月1日

本日ここに、総合職116名、事務職11名、合計127名の新しい仲間を迎えることができましたことを、大変嬉しく思います。

伊藤忠はここ数年、最高益の更新が続き、近く発表する2018年度決算も、史上最高益を3年連続で更新する見込みです。皆さんは、伊藤忠が絶好調の時代に入社する、しかも、もうすぐ発表になる新元号元年入社という記念すべき新入社員でもあります。

そんな中、伊藤忠は、実は今、大転換期を迎えつつあります。第四次産業革命やデジタル化によって産業構造が大きく変わりつつある中、伊藤忠も、発想や構造の大胆な転換を求められています。皆さんがこれから配属される総本社や7つのカンパニーでは、カンパニープレジデントや部門長はもとより、担当の皆さん一人一人に至るまで、今までとは違う新しいものを求めて日々頭を悩ませています。現在の7つのカンパニーが、5年後もそのままと思う人は、今やだれもいないでしょう。皆さんは絶好調の時代に入社するのではなく、大転換期、大きな峠越えの時代に入社する、これをまずはしっかりと自覚して頂きたいと思います。

そんな時代、皆さんに、「新人としてまずは目の前の仕事に全力を尽くせ」などということは言いません。そんなことは、伊藤忠では当たり前です。激戦を乗り越えて入社してきた皆さんには、Day Oneから、5年後、10年後を考えて仕事をして頂きたい。皆さんはそれだけの能力がある選ばれた人材のはずです。古い定型の受け渡し業務など、基本を学んだらさっさとRPA化、自動化して、自分の頭で考え、知恵をめぐらすことにより多くの時間を使う、それが伊藤忠の求める新入社員の姿です。

1979年、私が入社したとき、日々の伝票や集計作業に追われながらも、「商社もこれからは宇宙ビジネス」というのが夢でした。その10年後、私も調査チームの一員として参加した日本初の通信衛星が、伊藤忠の手で打ち上げられることになります。1990年代、「これからの商社は卸ではなくリテールだ」と主張した若手社員は、夢がかなわず転職しました。しかし、その数年後、伊藤忠はファミリ―マートを買収することになります。そしてそれから二十年、その若手はファミリーマートの社長として戻ってきました。ファミリーマートの澤田社長その人です。また、1980年代、繊維に配属された若手が、「もはや原料や織物商売ではない、これからはブランドや」といって繊維のビジネスを大転換させました。そう、皆さんの前にいる若き日の岡藤会長です。

新人や若手の夢がそのまま実現するわけではありませんが、若い人の発想や感性は新しいことを生み出す原動力、そのきっかけになるということです。皆さんの持っているその力を、是非、存分に発揮頂きたい。配属後、皆さんの周りには、ちょっと世の中に遅れ気味、疲れ気味の中年幹部、偉そうなことばかり言う指導社員、数字ばかり言う課長もいるかもしれません。そんな人たちもハッとするような、5年後、10年後の夢をDay Oneから追い求め、発信してくれることを皆さんには是非期待したいと思います。

総合商社で最も古い歴史を誇る伊藤忠は、昨年、創業160周年を迎えました。歴史を振り返えれば、山あり、谷ありですが、いつの時代も伊藤忠は挑戦し、険しい峠を乗り越えてきました。商社にとって、『変化は宿命』です。そして、伊藤忠のDNAは、「失敗しないことより、失敗しても起き上がることを良しとする」ことです。ここにいる若い皆さんにはまず、このDNAをしっかり受け継いで頂きたい。恐れず、恥ずかしがらず、自分の思いをぶつけて大丈夫、失敗を積み重ねてこそ成功が待っています。

去年の祝辞では、新入社員の皆さんへのメッセージとして、謙虚であること、勉強せよ、挑戦せよということを申し上げました。今年は、あえて申し上げません。もはや、勉強するのは当たり前、挑戦するのも当たり前です。

本日は、代わりに一つだけ、申し上げておきます。伊藤忠の商いの原点は『三方よし』ですが、これを実現するのは、商人としての正しい『こころ』です。二代目忠兵衛はよく「商売人は、いかなることがあっても嘘を言わぬこと」*と口にしていたそうです。そして、「つねに、心豊かであるように」と語っていました。伊藤忠に入社できるまでに育ててくれた両親への感謝を忘れず、立派な社会人としてルールを守り、伊藤忠商事の社員としての誇りを持って、『三方よし』の未来の伊藤忠を創る、それが皆さんの使命です。

今朝の新聞広告にもあるとおり、今年の伊藤忠の合言葉は『未来よし』。
本日から始まる皆さんとの未来づくり、『峠越え』への挑戦を楽しみに、また、改めて皆さんの入社を心から祝福し、私の歓迎の挨拶と致します。 

* <参考>
広告「ある商人」シリーズ
https://www.itochu.co.jp/ja/about/media_center/paperad/back_number6.html