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あたらしい商人の教科書 「生活を、そして生活する人を、いちばん大切に想う総合商社」でありたい伊藤忠商事。商いは世の中を良くするためにある。世界の様相が変わり時代が動く今、「商いに何ができるのか?」「これからの商人はどうあるべきか?」がより強く問われています。三方よしの考えを胸に、あらゆる人と共有したい「新時代の商いをつくるヒント」を、発信していきます。
「生活を、そして生活する人を、いちばん大切に想う総合商社」でありたい伊藤忠商事。商いは世の中を良くするためにある。世界の様相が変わり時代が動く今、「商いに何ができるのか?」「これからの商人はどうあるべきか?」がより強く問われています。三方よしの考えを胸に、あらゆる人と共有したい「新時代の商いをつくるヒント」を、発信していきます。

第6講|今、商いにできること

あらゆるビジネスパーソンへ
新時代の商いを作るヒントを発信する
「あたらしい商人の教科書」。
最終講では、「商人」である私たち
ビジネスパーソンは今、
どうあるべきか考えます。

現代の「商人の教科書」にピックアップしたいキーワード

「あたらしい商人の教科書」を作ろう

VUCAの時代に「商い=ビジネス」には何ができるのか。「商人」である私たちビジネスパーソンはどうあるべきか。「あたらしい商人の教科書」プロジェクトでは、伊藤忠商事の最新の取り組みから、新時代の商いの在り方を探ってきた。連載記事から、「あたらしい商人の教科書」に記したいエッセンスを抽出する。

あたらしい時代の「商い」のキーワードとは

2020年は、誰もが予想しえない一年になった。私たちの暮らしや働き方も一変し、多くの国の経済がダメージを受けた。VUCAの時代と言われて久しいが、改めてその言葉の意味を噛み締めた人も多いだろう。

では、このような時代に「商業活動に携わる人=商人」である私たちビジネスパーソンはどうあるべきか。「商い=ビジネス」には何ができるのか。

「ひとりの商人、無数の使命」という企業行動指針を掲げる伊藤忠商事では、初代伊藤忠兵衛の言葉がその語源とされる近江商人の精神「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」を大前提に、あたらしい時代の商いの在り方を模索しはじめている。

そのキーワードのひとつがSDGsだ。

SDGsの専門家である慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授・蟹江憲史氏も、「『脱炭素』は一時のトレンドではなく、抗えない流れです。企業は対応を迫られています」と強調する。

2015年のパリ協定が引き金となり、これまで以上の気候変動対策が世界全体の目標となった。2019年には気候行動サミットとSDGsサミットが前後して開催されたことにより、そのリンクが明確になった。

そして昨年10月、国会で「日本は2050年、カーボンニュートラルの実現を目指す」と菅義偉首相が宣言した。

「環境問題に消極的だったトランプ氏が降板したことにより、脱炭素以外の道は事実上なくなり、あとはそのなかで各国がどれだけ協力し、競争するか、です」(蟹江氏)

慶應義塾大学環境情報学部教授・蟹江憲史氏

SDGsは間違いなく、これからのビジネスにおける重要な指針なのだ。

脱炭素社会への取り組みとして、全日本空輸(ANA)も昨年から新たなチャレンジに乗り出した。SAF(Sustainable Aviation Fuel=持続可能な航空燃料)と呼ばれる、原油由来ではない燃料を使用したフライトを開始したのだ。

このSAFを生産しているのは、フィンランド企業のネステだ。天ぷら油などの食用廃油や家畜の脂など、従来は捨てられていたものを利用して生み出される再生燃料=リニューアブル燃料の世界最大手メーカーであり、2018年より欧米を中心にSAFの導入を図ってきた。

日本初となるSAFでの商用飛行を成し遂げるべく、ANAとネステをつなげたのが伊藤忠だ。このことからわかるのは、伊藤忠は「商いとして」SDGsに対する取り組みをはじめているということだ。

ビジネスか、環境か。商人の答えは

「商いとして」という大前提は、商人にとって非常に重要なポイントだ。

経済成長か、地球環境維持か。長年、世界はこの相反する重要事項の選択を迫られてきた。持続可能な社会のために、環境維持の取り組みが欠かせないのはわかっている。しかし、従来のやり方で環境維持を優先すると、経済活動が鈍化してしまう。

伊藤忠はこの問いに明確な答えを出している。2021年度からの中期経営計画における基本方針の中で「『SDGs』への貢献・取組強化」を表明しているのだ。

環境に重きを置いて、ビジネスの優先度を下げるのではなく、あくまでビジネスを通じて、環境の維持・改善に取り組む。その具体的な行動のひとつが、ユーグレナ社と進める共同事業だ。

2社は、伊藤忠が商社として築いてきた世界中のネットワークを活用し、2019年からインドネシア共和国でバイオ燃料用・飼料用に微細藻類ユーグレナの大規模培養実証試験をスタートさせている。

脱炭素社会を目指し、バイオ燃料などのエネルギー・環境事業を展開するユーグレナ社の取締役副社長・永田暁彦氏は語る。

「大量のCO2を排出するからと言って、たとえば現在稼働している石炭火力発電をすぐにストップするのは現実的じゃない。それでは、電力が足りなくなって経済成長どころか生活も激変してしまいます。

この場合、石炭火力発電由来のCO2を削減するのが、求められる『新たなビジネス』です。

株式会社ユーグレナ 取締役副社長COO 永田暁彦氏

ユーグレナは、高濃度のCO2環境下でも培養することができます。石炭火力発電所から出る高濃度のCO2を含んだ排ガスによって大量のユーグレナを培養すれば、CO2排出量の削減が可能な『新たなビジネス』がはじめられるのです」

環境維持のために情熱を傾けるプレイヤーは多数存在する。しかし、それ自体が「儲からない」場合、誰かの犠牲の上に成り立つプロジェクトになってしまう。そうなれば、「情熱」といういつ燃え尽きるかわからないものを頼りにすることになる。

「だからこそ、商人の出番です」と言うのは、ユーグレナと共にプロジェクトを進める伊藤忠商事金属カンパニーの栗原健氏だ。

伊藤忠商おじ金属カンパニー 栗原健

「結局のところ、私たちが考えるのは『儲かるかどうか』だけではなく、『環境にいいか』だけでもなく、『三方よし』が成立するかどうかなんですよね。ユーグレナ社との取り組みには、『三方よし』を強く感じています」(栗原氏)

今や、経済成長のために環境を疎かにする時代ではない。現代の経済成長は、持続可能な地球環境維持への取り組みの先にあるのだ。

どうすれば持続可能な商いができるのか

アメリカで創業された環境ベンチャー・テラサイクルとの資本・業務提携も、環境の維持・改善に向けた「商いとして」の行動のひとつ。テラサイクルには、従来リサイクルできないものをリサイクルしてきた実績がある。

伊藤忠商事の化学品部門で化学品環境ビジネス統轄を務める小林拓矢氏は、次のように説明する。

「身近なところでいえば、食品の消費期限を伸ばせるようになったのもプラスチックのおかげです。フードロスなどさまざまな問題に貢献しています。

ただ、こうした有用な素材でありながら、プラスチックがいろいろな問題を引き起こしているのも事実。大量に取り扱っている我々にとって、こうした問題はビジネスの危機でもあり、また同時に必ず対処しなければならない責務だと考えています」

伊藤忠商事 化学品部門 化学品環境ビジネス 小林拓矢

せっかくの取り組みも、「やってみたけど儲からないので続けられません」では意味がない。サステナブルな事業として環境問題に取り組むためには、やはり商いとして成立させる必要がある。

社会に大きな変化が起こるとき、そこにはビジネスチャンスも生まれる。テラサイクルとの提携も、動機が環境への配慮であることはもちろん、化学品のビジネスモデルを変革し、ピンチをチャンスに転換させる狙いもあるのだ。

デジタル時代の「三方よし」とは

環境意識の変容と同じくらい大きな社会の変化として、「デジタル化」があげられる。

伊藤忠は、自社が展開するリアルビジネスをデジタルと結び付ける動きをスタートさせている。「リアルとデジタルの融合」をはかることで、デジタルの世界でも「三方よし」を目指している。

昨年9月に設立した、伊藤忠、ファミリーマート、NTTドコモ、サイバーエージェントの4社の共同出資によるデジタル広告配信事業に向けた新会社「株式会社データ・ワン」は、その好例だ。

データ・ワンでは、ファミリーマートや他小売事業者が持つリアルな売り場での購買データと、4676万人が登録するNTTドコモの「dポイントカード」の会員データや属性情報、位置情報の掛け合わせにより、精度の高いマーケティングを実現していく。

「ユーザーにとっては『不要な広告が出てくる煩わしさ』がなくなり、小売・流通業者やメーカーにとっては『見込みのないユーザーに対して広告を打つ無駄』がなくなる。そんな未来を目指しています」とは、データ・ワン代表取締役社長の太田英利氏だ。

太田 英利 データ・ワン 代表取締役社長

すでに、デジタルの世界では1to1のマーケティングが当たり前になっているが、リアルの世界では普及していなかった。それを、「データ・ワン」という社名の通り、データを一つにしながらシームレスにつなげていくのだ。

直近ではコロナの影響もあり、Web上のトランザクションはますます増えている。そして、今後もこのトレンドは続いていくだろう。データ活用は、現代の商いに欠かせないピースなのだ。

商人よ、新たな商圏を開拓せよ

このように見ていくと、商人のアイデンティティは、「三方よし」を前提として、新たな商いや商圏を開拓し続けることにあるとわかる。時代の変化に合わせることも重要だが、リスクを取ってでも時代を先取りする、もっと言えば、時代を作っていく気概が求められる。

「紀伊国屋文左衛門だって、材木の代金を先に払って、海運のリスクも負って財を成した。お金のリスクを取って、新しい商いを作ってきたのが商人です。伊藤忠もリスクを取って海外ブランドを日本に持ってきて、その後独占して販売できた成功の歴史がある。

他社がやっていることを真似れば成功率は高いでしょうが、利幅は小さい。それでは、今はよくても先細りの商いでしかない」

こう話すのは、新市場でのビジネスを複数手掛けるドワンゴ社長・夏野剛氏だ。

では、今リスクを取ってでもはじめるべき新たな商いとは何なのか。夏野氏も注目するのが、「空」の商圏。自動操縦で垂直離着陸する『空飛ぶクルマ』だ。

夏野剛氏プロフィール

2020年8月、伊藤忠が出資する日本発のベンチャー「SkyDrive」は、報道陣が見守るなかで日本初の有人飛行テストを成功させた。

伊藤忠商事航空宇宙部の高端優氏は、出資及び事業開発サポートの背景を説明する。

「このタイミングであれば『空飛ぶクルマ』の開発段階から携わることができ、そこで新たに形成されるエコシステム、特に消費者に近い目線でのサービスの事業を推進できる。

同時に、そこで浮かび上がる渋滞、救急搬送、離島・過疎地での移動手段確保等の社会問題解決にも貢献できるということで、挑戦する意義がある、と判断しました」

伊藤忠商事 航空宇宙部 部長代行 高端優
※肩書は取材当時のもの

日本の商社は、鉄鋼が売れるかわからないときにアメリカに鉄を売りに行き、自動車が売れるかわからないときに自動車を売りに行った。そのフロンティアスピリットは現代にも脈々と受け継がれている。

では、フロンティアスピリットと同様に、時がたっても変わらない「商いの本質」とは何だろうか。伊藤忠商事で社内ベンチャーを率いるBelong井上大輔氏は次のように答えてくれた。

「そのビジネスを取り巻くすべてのステークホルダーにとって価値のある事業でないと、100年、300年と続けていくことは難しい。伊藤忠商事の経営理念でもある『三方よし』ですね。

答えはシンプルで、サステナブルな事業の仕組みを作れるか。これに尽きると思います」

制作:NewsPicks Brand Design

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