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「FRaU SDGs」。それは、講談社「FRaU」が2018年に女性誌で初めて、一冊まるごとSDGsに特化した雑誌。以来、号を重ねながら確実に裾野をひろげています。そんなFRaU独自の視点で、伊藤忠商事のSDGsへの取り組みをご紹介します。

フルーツを食べて地球に貢献

フルーツを食べて地球に貢献!「みんなで幸せになる」
地域と企業の支え合い

「Dole」が目指す理想のフルーツ産業


青果物をはじめ、果汁100%のジュースに缶詰など、「Dole(ドール)」は、
私たち生活者にとって非常になじみ深いメーカーのひとつといえる。
そんな中、「Dole」の製品を買うことが、社会貢献につながっているという実感を持っている人はどれくらいいるだろうか。


そこで「Dole」を代表するパイナップルの生産拠点であるフィリピン・ミンダナオ島と「Dole」、地域と企業が互いになくてはならない存在として支え合い、みんなで幸せを目指す循環型ストーリーを紹介しよう。

\お話を伺ったのはこちらの方々!/

・ Dole アジア ホールディングス CAO渡辺慎也さん(シンガポール駐在)

・ Dole アジア ホールディングス 大場恵介さん(フィリピン駐在)

・ 伊藤忠商事 食料カンパニー 食品安全 コンプライアンス管理室長代行
 梶川陽平さん(2017〜2019年にフィリピン駐在)

利益は地域への還元から生まれるもの

2013年、世界最大の青果物メーカーである「Dole」は、保有するアジアにおける青果物事業とグローバルに展開する加工食品事業を伊藤忠商事に売却。バナナ、パイナップル、アボカド、パパイヤなど「Dole」のフルーツの生産は、主に開発途上国で行っている。そのため、地域社会との繋がりも強く、共存共栄の関係をどのように維持していくのかが大きな課題だという。 

世界最大の青果物メーカーである「Dole」

「私たちは、生産者を含む地域そのものが豊かになれる好循環を生み出すために、生活インフラを整えたり、学校や病院など地域のコミュニティをサポートしたり、環境保全活動にも力を入れています。さらに、フルーツロスを生まない工夫を取り入れたり、なるべく農薬を使わない生産を検討、生産者の雇用を生み出したりと、サステナビリティ全般におけるさまざまな取り組みを行うなど、伊藤忠商事の理念でもある「三方よし(売手よし、買手よし、世間よし)」を『Dole』なりに実現しています」(Dole アジア ホールディングス CAO渡辺慎也さん)

「近頃は、冷蔵・冷凍物流のようなコールドチェーン技術が発達していますが、電力供給のない国や地域にいかにして届けるのか。また、脱炭素やプラスティックフリーほか、天然由来の糖類を使った栄養価の高い製品の単価をいかにおさえ、お客さまに提供するのか、というところも課題ですね。『Dole』独自のルートだけでなく、親会社である伊藤忠商事のノウハウを活用した新規技術の導入や競争力の高い原材料の調達など、付加価値の改善につとめているところです」(Dole アジア ホールディングス 大場恵介さん)

「Dole」のフルーツの生産拠点であるフィリピン・ミンダナオ島。フィリピン諸島の南端に位置する小さな島で、首都マニラや観光地のセブ島に比べると、生活面における選択肢が少ない。ゆえに生活コストが比較的安いという一面はあるが、人々はみな精神的に豊かな生活を営んでいるという。

「Dole」はこのミンダナオ島で、産業や雇用の創出、環境保護・森林再生から医療福祉や教育まで、さまざまなシーンで地域と事業が支え合う循環を生み出している。

そこで今回は、数ある取り組みの中から「学童用椅子プロジェクト」における循環について話を伺った。

学童用椅子プロジェクト

「学童用椅子プロジェクト」の仕組み

◆パイナップル輸送時に使われる不要になった木製パレット(材木を運ぶ「すのこ」のようなもの)を原料に、これまで累計70,000脚以上をつくり学校へ寄付。

◆椅子の製作は地元の企業に継続して委託するため、持続的な雇用を創出

◆椅子を受け取る学校の児童は、「Dole Philippines(以下Dolefil)」とNGO団体「Mahintana Foundation」が推進するミンダナオ島南部の河岸・海洋保護プロジェクト「Ridge to Reefプロジェクト」に参加し、自治体のファームから買い取った苗木で植林を行う。苗木の売上というかたちで、自治体にも継続して利益を還元

◆苗木を購入する資金は、上記NGO団体「Mahintana Foundation」に集まった寄付金を中心にまかなっている。寄付者は「Dole」の国内外の取引先企業のほか、地元企業や地方政府など多岐にわたる。



「NGO団体に集まった寄付金は、『学童用椅子プロジェクト』や『Ridge to Reef』を代表とする環境保護プロジェクトをはじめ、医療福祉、学校建設、教育、インフラ整備など、さまざまなプロジェクトに分散して使わせていただいています。 

また、寄付者である参画企業は、支援したい活動を選ぶことができます。つまり寄付金を分散でき、自社が単独で行うよりも、幅広い活動への参画をアピールすることで寄付金にレバレッジを効かせられるということですね。寄付をする側にも、受益者となる側にも、非常に多くのメリットがあるWin-Winな仕組みの好例だと感じています」(伊藤忠商事 食料カンパニー 食品安全・コンプライアンス管理室 梶川陽平さん)

木製パレットを原料にした学童用椅子

生産拠点である地域への貢献が、フルーツ産業の理想的なサイクルを形成する。それを持続可能にするには、「Dole」が「地域」にとってなくてはならない存在であることが何よりも重要だと語る。

「フィリピンにおける『Dole』の従業員数は数万人にのぼります。事業を持続可能なものとしていくためには、地域にとってなくてはならない存在であるということが、非常に重要だと感じています。

『Dolefil』を設立したのが1960年代前半。従業員の中には、二代目、三代目にあたる人も少なくありません。そんな風に、年月の経過と事業の拡大とともに着実に地域の雇用を育み、生活者の暮らしを支えてきました。一方で地域の労働者に支えられてきた『Dole』は、得た利益を再び地域に還元。まさに理想の好循環ができあがっているといえます」(伊藤忠商事 食料カンパニー 食品安全・コンプライアンス管理室 梶川陽平さん)

さらに地域の経済を盛り上げるうえで、最近「Dole」がとくに力を入れている取り組みのひとつに、技術者の育成がある。

「畑はもちろん、多くの生産工場を持つ『Dolefil』には、メンテナンス技術を備えた人が多く必要であり、彼らを育成する教材は『Dole』の現場にそろっています。その教材を有効活用しようと、最近、技術者を育成する学校を設立しました。そこに通う地元の若者たちは、重機の操縦やメンテナンス技術を学び、手に職をつけることができます。卒業後は『Dole』に就職する人もいれば、ほかの建設業に就く人も。晴れやかな表情で卒業していく生徒の顔は、今でもすごく印象に残っていますね」(伊藤忠商事 食料カンパニー 食品安全・コンプライアンス管理室 梶川陽平さん)

フルーツ残渣を燃料としたバイオガス発電で、再エネを供給

2018年、「Dolefil」は、バイオガス発電の設備を担う「Surallah Biogas Ventures Corp.(以下SBVC)」と、16年にわたる長期エネルギーの売買契約を締結。

2ヵ所のパイナップル缶詰工場にて、缶詰やジュースをつくる際に出るパイナップルの搾りかすや外皮などの残渣から燃料となるバイオガスを取り出し、ガスエンジンによる発電およびボイラー燃料代替をはかるプロジェクトを始動させた。

「バイオガスとは、その名の通りバイオから発生するメタンガスのこと。食べものが腐敗したときだけでなく、私たちの体内にもメタンガスが発生しますよね。残渣をバクテリアが食べる、つまり生分解するときに発生するガスを燃焼させ、そのガスをタービンにまわすことで発電できます。

さらにガスそのものを燃焼源とし、加工食品の製造に必要な機器の原動力となる高温スチームを得ることもできます。それには、高いエネルギー量を要するので、太陽光ではなかなか難しい。その点、バイオガスは熱源としても非常に有効な力を持っています」(Dole アジア ホールディングス 大場恵介さん)

バイオガス設備
バイオガス発生後、最終的にこのバイオガス設備から排出された有機残渣を堆肥の材料として再々利用することで、継続的な土壌改善が可能となり、減肥にともなう経費削減も期待できるという 

〜バイオガス発電における循環型グリーンエネルギーによる4つのメリット〜

1)廃棄物(残渣)の有効活用により食品ロス問題を改善

2)バイオガス発電による再生可能エネルギーの供給により、化石燃料などによる温室効果ガスの削減

3)バイオガスに転換後、設備内に残った残渣は、堆肥生産用途として再利用

4)再生可能エネルギーの供給におけるコストの安定化により、商品をより手頃な価格で提供できる



生活インフラが十分に整備されていないフィリピン。とくに人口の5割、国内総生産の7割を占める政治と経済の中心地であるルソン島、観光産業の発達したセブ島と比べ、農林水産業を主体とするミンダナオ島では生活スタイルそのものが異なる。計画停電が常態化しながらも、既存の脆弱な化石系エネルギーインフラに依存せざるを得ない厳しい状況が続いているようだ。そんなミンダナオ島で、残渣を活用した再生可能エネルギーの導入は、多くの苦労があったのではないだろうか。

「ミンダナオ島では、これまでパイナップル残渣は畑に撒く有機性土壌回復剤として扱われてきたため、現地の人たちにとって残渣は大事な肥料でした。そこへ『残渣を使ったバイオガス発電』を導入することは、これまでの伝統的な農業手法を崩してしまうのではないかという抵抗感はありましたが、事業の有効性と採算性、リスクと将来の期待などをしっかりと説明したうえで現地の方々には理解いただきました。

次に直面したのがパートナー選びです。ミンダナオ島という土地柄、バイオガス技術や機械に精通した人材が見つからない。さらに、私たちはバイオガスのことを何も分からないところからのスタートでしたので、伊藤忠商事のサポートも大きかったです」(Dole アジア ホールディングス 大場恵介さん)

バイオガス発電事業を起こすには悪条件の土地柄、さまざまな障害を乗り越え、構想から契約締結に至るまで、およそ3年かかったという。現在、缶詰やジュースなどの加工場から排出される残渣は堆肥や家畜の肥料に再利用し、加工場は、地元業者からの電気と化石系燃料そして一部もみ殻を原料とするバイオマスボイラーを動力源として運営している。

今後そこへバイオガス発電が導入されると、さらなる好循環が生まれると語る。

「残渣を余すことなく使い発生させたバイオガスを再生可能エネルギーに転換することで、これまで地元業者から購入していた化石系電気や燃料を減らせます。同時に、フードロスと温室効果ガスの大幅削減を達成できるだけでなく、同社のエネルギーコストを安定化するメリットがあります。電気代や燃料代の高騰が続くミンダナオ島で、廉価かつ安定した再生可能エネルギーへ転換をはかることは、今後の製品の値上げリスクを抑える大きな利点につながる。まさに“三方よし”を実現する理想的な事業になると期待しています」(Dole アジア ホールディングス 大場恵介さん)

生産拠点である地域に貢献しながら利益を生む。そしてその利益をまた地域へ還元するーー。地域の生産者や生活者、さらに商品を購入する私たちも、みんなが笑顔になれる「Dole」の取り組み。まさにサプライチェーンにおける理想の好循環といえるのではないだろうか。

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