特集2:「既存事業の磨き」と「新たな布石」

CTCとデジタル事業群の連携によるバリューチェーンの進化

新型コロナウイルスの流行等で加速した社会環境の変化に対応するため、デジタルテクノロジーを活用して、企業のビジネスモデルを変革するニーズが高まっています。ビジネスモデルの変革に主眼を置いたDXを推進するためには、従来の顧客の要望に従ったシステム開発に加え、顧客に寄り添って現場の課題を整理するためのコンサルティングやデータ分析等、「マーケットイン」の発想に基づく、バリューチェーン全体を通した高付加価値の提案力が不可欠となります。

当社は、DX関連の幅広い機能を持つ、複数の企業(デジタル事業群)と資本業務提携等を行っていますが、CTCと当該デジタル事業群との連携強化を加速することにより、デジタル分野のバリューチェーンの拡大を図ると同時に、社会のDXニーズを捉えて、収益基盤の更なる拡充を図っていきます。

CTCの磨きとデジタルバリューチェーンの構築

情報・金融カンパニーは、当社の特徴的かつ大きな強みとなっているセグメントですが、中でも国内大手システムインテグレーター(SI)であるCTCは、その中核を担う当社のグループ企業です。これまでCTCは、当社がシリコンバレー等のベンチャーキャピタルファンドへの投資を通じて発掘した最先端技術・ソリューションを自身のシステム構築に活用することで、高い技術知見を蓄積し、事業を磨いてきました。その結果、通信キャリア等、大手企業を中心とした10,000社を超える強固な顧客基盤を武器に、顧客に対する高度なITインフラやシステム設計・構築、更にIT製品の販売・保守といった幅広いサービスを提供しており、競合他社と一線を画した安定的な収益基盤を構築しています。

近年、従来の社内システムの枠を超えたビジネス戦略領域でのDX需要の高まり、あるいはクラウドを活用したシステム導入等の構造変化に伴い、顧客から求められる機能は単なるシステム設計・構築にとどまらず、多様化・複雑化しています。ビジネスモデルの変革に主眼を置いたDXの推進に際しては、まず顧客が抱えている課題の掘り起こしやDX化による費用対効果の検証等のコンサルティング、顧客のデータ分析に基づいた解決策の提案等を行い、その内容を踏まえてシステム開発に着手します。当社は、CTCのこれまでの強みを活かしつつ、今後、顧客のニーズに一気通貫で対応していくために、デジタル事業群との資本業務提携等を通じて、川上から川下までの幅広い機能を提供できる体制の強化を進めています。

CTCの強み(2023年4月時点)

CTCとデジタル事業群の連携による付加価値の創造

CTCとデジタル事業群は、当社及び当社グループ会社が抱える課題の解決からシステム導入等に至るまでのDXプロジェクトに取組むことで、連携を深めています。その具体的な事例の一つが、(株)日本アクセスにおけるAI自動発注の取組みです。このAI自動発注システムは、ファミリーマート向け商材1,500品目を対象に、ファミリーマートや(株)日本アクセスの業務データ等をもとにした発注推奨値をAIで自動算出するシステムですが、データ分析に強みを持つ(株)ブレインパッドとCTCとの連携により、構築されました。このAI自動発注システムの運用により、(株)日本アクセスの物流センターにおける受発注等の業務効率化や在庫水準の適正化の効果に加え、フードロス削減等も期待されています。

また、今年5月、(株)ブレインパッド、(株)シグマクシス、CTCの3社が共同で、ChatGPT等の生成AIを用いた企業の業務変革や新規ビジネス開発支援を行うプロジェクト「生成AI研究ラボ」を立ち上げました。7月には、情報の機密性を確保した上で、ChatGPTを活用できる環境を当社の社員向けに提供し、既に1,000名を超えるユーザーが利用しています。今後は、当社業務システムとの連携や当社グループへの展開に加え、生活消費分野における顧客属性にマッチした最適な商品・サービスの提案等、生成AIを活用した新たな施策にも取組んでいきます。このように、当社の強みである生活消費分野の事業会社の現場におけるDX推進や当社グループへの導入を目的としたDXツールの開発は、デジタル事業群にとっても豊富な実証の現場になっており、知見・ノウハウの蓄積やCTCとの連携強化に繋がっています。更に、当社、CTC及びデジタル事業群は、総勢50名程度の双方向の出向といった人材面での連携も進めており、DX推進体制を強化しています。

デジタルバリューチェーンの深化と進化

当社が強みを持つ生活消費分野では、顧客の潜在的なニーズを掘り起こし、高付加価値の商品やサービスを提供するために、消費者接点から得られる膨大なデータの分析を行った上で、提案力の強化を図ることが急務となっています。当社グループとして、このような顧客のニーズ等に迅速かつ的確に対応すべく、今年8月にCTCのTOB(株式公開買付)を公表しました。今後、CTCとデジタル事業群は、当社グループ内で得た生活消費分野のDXに関する知見やノウハウを活用し、すべての顧客に対する応用・展開を加速することで、更なる収益拡大を図る方針です。更に、生活消費分野に限らず、当社の国内外の幅広いネットワークを活用し、多様な顧客が抱える潜在的なDXニーズに応えることで、CTCとデジタル事業群の強固な事業基盤の確立を目指していきます。