CXOインタビュー

DX活用の進化と事業の横連携・掛け合わせにより「業態変革」を加速し、当社独自の新たな成長を目指していきます。

代表取締役 執行役員 CXO
(兼)グループCEOオフィス長

中 宏之

新設されたCXOの役割について教えてください。

「最高変革責任者」として、既存の枠組みにとらわれず、伊藤忠グループ全体の変革を強力に推進していきます。

CXOは、Chief Transformation Officer/最高変革責任者を指し、当社グループ全体における業容・業態変革推進を統括するオフィサーです。旧CDO・CIO*1の役割も包含されており、また2023年にグループ経営強化を目的に設立されたグループCEOオフィスの組織長も兼務しています。DX(Digital Transformation)やGX(Green Transformation)という言葉もよく耳にしますが、CXOが担う変革の対象は特定分野にとどまりません。仕事のやり方は勿論のこと、あらゆるビジネスの仕組みや作り方そのものを変革する役割を担っています。仕事のやり方を変革するのにデジタルの力が絶大であることは疑いようがありません。当社でも、2018年にデータ分析と活用支援を専門に行う組織「BICC*2」を立ち上げ、2023年にはChatGPT等の生成AIを用いて企業の業務変革や新規ビジネス開発支援を行う「生成AI研究ラボ」を設立し、これらを中心に業務効率化や高度なデータ活用に継続して取組んできました。バックオフィスを中心とした汎用業務時間の削減効果は年間約20万時間相当で、劇的な生産性向上を実現しています。しかしながら、これまで「稼ぐ、削る、防ぐ」の「削る」への貢献が大きかったデジタルの力は、これからは「稼ぐ」、つまりビジネス創出の現場により近い営業活動や事業投資にこそ活用の可能性が広がっていると考えています。私自身、これまで業務部長やCSO等、経営企画部門を歴任してきたことで、伊藤忠商事という会社がどのようにビジネスを創出しているか、その仕組みに関する知見にはアドバンテージを持っているつもりです。その知見と進化したデジタルの力を掛け合わせる、つまり、デジタルの力を「稼ぐ」に繋げることで、これまでの延長線上にはない「変革」を起こしていきたいと考えています。


*1 CDO・CIO:Chief Digital & Information Officer
*2 BICC:Business Intelligence Competency Center

新たに投融資協議委員会の委員長に就任されました。「成長投資」の加速にあたってのポイントを教えてください。

パートナーと機能を補完し合い、営業部門と職能部門が互いに知恵を出し合うことで、良い投資案件に仕立て上げていきます。

投資規律そのものを緩めるつもりはありません。過去の投資の失敗事例から得られた「投資の4つの教訓」(①高値掴み、②取込利益狙い、③パートナーへの依存・過信、④知見のない分野の4点を防止)は徹底していきます。一方、経営方針で「投資なくして成長なし」と示した通り、引続き高い成長率で業績を向上させていくには成長投資が欠かせません。これまで当社は、既存事業の買増し等、知見のある分野を深掘りする投資に多く取組んできました。しかしながら最近では、日本産業パートナーズ(株)と行った日立建機(株)への投資や(株)ジェイ・ウィル・パートナーズと共に取組む(株)WECARSの事業再建等、最適なパートナーと手を組み機能を補完し合う案件が増えています。大きな利益貢献が見込まれるものの当社単独で取組むにはハードルが高かった案件についても、取引先やファンド等、より幅広いパートナーと取組み、更に中長期的な目線での収益化も狙うことで、投資対象を拡大していきたいと考えています。また、投資先の業績向上のみならず、他の事業会社を含めたグループ全体のシナジー拡大が見込まれる案件にもより積極的に取組んでいきます。そのためには、営業部門と職能部門が更に一体となり案件を推進することが必要です。特に職能部門は、牽制機能を発揮するためのネガティブチェックのみならず、更に良い案件に仕立て上げるためにポジティブチェックの感度を高めて案件を精査することが必要です。例えば、スキーム変更で資金の流れを変え、利益獲得機会を増やすことはできないか等、共に知恵を出し合いながら良い案件に仕立て上げていく体制に進化させていきます。経営方針「The Brand-new Deal ~利は川下にあり~」は、2011年度に始動した5つの中期経営計画のベースを継承しています。そのスタートラインとなった「Brand-new Deal 2012」の基本方針には「規模の拡大」を掲げていました。長年の成長軌道を継続・加速させていくための成長投資を着実に実行していきます。

経営方針に示されている「カンパニー間の横連携によるシナジー極大化」、「事業の掛け合わせによるビジネス変革・創出」の意図するところを教えてください。

横連携/事業の掛け合わせは、商社の真の成長戦略。無限の可能性を形にしていきます。

総合商社は多岐にわたる領域でビジネスを行っていますが、「縦割りの打破」は長年の課題です。従来の縦割りの業界の中だけでビジネスを行っていては、入手できる情報も限定的となり、また、当社が目指す本当の意味での「マーケットイン」になりません。例えば、鉄道会社であっても、鉄道運行だけが生業ではなく、不動産や物流、また百貨店やスーパーといった小売にも進出しています。そのようなお客様と向かい合う時に、一つのカンパニーからの提案では、その業界の限定されたビジネスにとどまってしまうのが常です。ここに縦割りの弱さがあります。逆に言えば、縦割りが強い商社にとって、ここに商売の未知なる可能性が隠れています。CXOが、「マーケットイン」の発想による新規ビジネス創出を目指す第8カンパニーも巻き込みながら、複数のカンパニーを繋げる役割を担います。各カンパニーでは、日々現場で目の前の仕事に忙しく向き合っており、急に仕事のやり方や発想を変えるのは容易ではありません。現場で培ったノウハウを持つ「商人」たちを、より幅広い目線を持ち変革を目指す方向に進むよう私がサポートすることで、従来の発想にない新たな取組みを推進したいと考えています。その際、デジタルは大きな鍵となります。それまで知見のない分野であっても、デジタルの力を使ってフックを掛けることでその分野が一気に自分の領域に近付くこともあるでしょう。特に、当社が得意とする生活消費分野はデータの宝庫であり、変革の余地は無限大です。約260社の事業会社と共にグループ全体で変革を進め、より一段上の成長を目指していきます。