特集 強みを活かした商いの創出
~商いの発想と手段~
当社は、「強み」を発揮できる領域を中心に面的・連鎖的にビジネスを創出・拡大することで、持続的な価値創造を実現してきました。本特集では、当社の商いの基本として、商いの発想「マーケットイン」と商いの手段「稼ぐ、削る、防ぐ」を徹底し、事業基盤を強化しながら利益成長を目指している具体的な事例について説明します。特に、商いの発想「マーケットイン」については、「川下起点」、「イニシアチブ」、「目利き力」という3つの切り口に分け、各事例のポイントを整理しています。
01:ファミリーマートを起点とし、
強みを結集したグループ収益基盤の拡大
生活消費分野に強みを持つ当社は、当社グループ各社との連携強化を図りながら、コンビニエンスストア事業に取組むファミリーマートを起点として、川下から川上に至る強固なバリューチェーンを構築しています。ファミリーマートの持つ、1日当たり1,500万人もの消費者接点を活かし、商品の調達や販売だけでなくバリューチェーン全体を通じて幅広く商品力を強化し、更にはデジタルサイネージ等を用いた広告・メディア事業や「ファミペイ」等の金融事業といった新たなビジネスも創出することで、当社グループ全体の収益基盤を拡大させていきます。
ファミリーマートの事業利益推移
2020年度の非公開化以降ハンズオン経営を強化しており、川下起点の「マーケットイン」の発想で、顧客ニーズを捉えた商品戦略と販促施策を徹底したことにより、日商は35ヶ月連続(2024年7月末時点)で前年同月を上回って推移しました。また、事業利益*についても、日商の増加に加え、プライベートブランド(PB)商品比率の向上、デジタルを活用した店舗オペレーションの効率化、他社に先駆けた広告・メディア事業の展開もあり、2023年度に過去最高益を達成しました。
* 「収益」から「売上原価」及び「販売費及び一般管理費」を控除した利益指標であり、日本会計基準における営業利益に相当
コンビニエンスストアの常識を打ち破る新たなチャレンジ ~コンビニエンスウェア~
2021年3月より、「いい素材、いい技術、いいデザイン。」をコンセプトに、衣料品や雑貨を中心としたPB商品の全国展開を開始しました。世界的なファッションデザイナーである落合宏理氏監修の下、高いデザイン性を実現しながら、再生ポリエステル等のサステナブルな素材を使用することにより「着心地と環境への配慮」を両立させた商品を展開しています。看板商品である「ラインソックス」はSNSでも話題を集め、2021年3月の発売開始以来、ソックスシリーズの累計販売足数は2,000万足を突破しました。2023年11月には業界初のファッションショー「ファミフェス」を開催、更には商品ラインアップを拡大し、コクヨ(株)と共同開発した文具を販売する等、幅広く商品力を強化させています。
衣料品の展開に際しては、繊維分野に強みを持つ当社のビジネス基盤を活用し、原料調達や生産体制構築等をサポートしています。今後も、第8カンパニーを中心として、従来のコンビニエンスストアの常識にとらわれないファミリーマートの様々なチャレンジを後押しし、更なる成長を目指していきます。
ファミリーマートの更なる飛躍に向けた海外展開
ファミリーマートは、アジア6ヵ国・地域(台湾、中国、マレーシア、インドネシア、ベトナム、フィリピン)に進出しており、海外では約8,000店舗を展開しています。2024年3月には、中国での事業パートナーである頂新グループと中国でのファミリーマート事業の拡大に向けた事業再編について基本合意し、関連手続き完了後は、頂新グループと当社の間でエリア毎に事業主体者を分けることとなります。経営責任を明確化し意思決定のスピードを上げ、当社グループの長年に亘る中国ビジネスの知見やネットワークをフル活用し、世界最大の消費市場である中国での事業展開を加速させていきます。
02:デジタルバリューチェーン戦略による
CTCの成長加速と事業拡大
コロナ禍の収束後も、DXの推進によるビジネスモデル変革には高いニーズがあり、その勢いは日々増しています。特に、生成AIを活用した多様なソリューションが登場し、ビジネスや企業の在り方に一段と大きな影響を与え、DXにも更なる進化が求められています。そうした流れの中で、IT業界は高い成長率を維持していますが、異業種の参入やIT人材不足の深刻化等、競争環境が激化しています。このような環境下、当社は、2023年にCTCのTOB(株式公開買付)を実行し、非公開化しました。CTCと共に、より機動的に成長戦略を推進し、当社が構築してきたデジタル事業群との連携によるデジタルバリューチェーン戦略を加速させ、収益基盤の更なる拡充を図っていきます。
CTCの真価を発揮した業績拡大
情報・金融カンパニーは、当社の強みとなっているセグメントであり、更なる成長が期待されています。その中核を担うのが、国内大手システムインテグレーターであるCTCです。CTCは、当社がシリコンバレー等のベンチャーキャピタルファンドへの投資を通じて発掘した最先端の技術やソリューションを日本で先駆的に導入する役割を担うことで、高い技術知見を蓄積し成長してきました。通信キャリアを含む大手企業を中心に、10,000社を超える強固な顧客基盤を有し、先端IT製品の幅広い製品ポートフォリオを活用した高度なITインフラ構築に強みを有しています。この強みは、国内外の先端IT企業とのパートナーシップやその取扱高にも表れています。CTCが日本やアジア・大洋州地域で最大の取扱規模を誇る製品は数多くあり、例えば、生成AI関連企業の代表格である米国NVIDIA社の製品について、2023年度*1の国内取扱高で1位を獲得し、「Best NPN of the Year*2」に選ばれました。社会全体でのITサービスが拡大し、データセンターの需要が高まる中、生成AI開発向けの運用基盤構築等の受注実績も着実に積み上がっています。これまで培った強みを発揮して市場ニーズを捉え、業績拡大に繋げています。2023年度末の受注残高も過去最高となっており、今後の更なる成長への期待も高まっています。
*1 米国NVIDIA社の決算期間である2023年2月~2024年1月期
*2 「Best NPN(NVIDIA Partner Network) of the Year」:幅広い業界においてAI活用の拡大や啓蒙に貢献し、NVIDIA製品を含むプラットフォームの提案等において最も功績を残したパートナー企業に贈られるアワード
デジタル事業群との連携による付加価値の創造
近年、ビジネスにおけるデジタル活用は、社内システム利用の枠を超え、企業のビジネスモデル自体に大きな影響を及ぼしています。多くの企業がDXを推進する中で、システム開発単独ではなく、顧客企業の課題の「解きほぐし」を行うコンサルティング、アプリ開発におけるユーザーの顧客体験デザイン等、ビジネスモデルの変革を求める顧客側のニーズに応じ、上流から下流まで一気通貫でサービスを提供できる複合的なIT提供の重要性が高まっています。また、これまで異業種であったコンサルティング企業等、上流工程での顧客ニーズ把握に優位性を持つ企業が、下流工程のITシステム構築まで参入し、高い利益率や成長率に繋げている事例が急増しており、強力なライバルとなっています。
当社は、CTCや(株)ベルシステム24ホールディングスといった長年当社グループに所属している事業会社に加え、データ分析に強みを持つ(株)ブレインパッドや顧客体験デザインに知見のあるAKQA UKA(株)等、2020年頃から、特定分野で高い専門性・技術力を有する会社への戦略的投資を行っています。各社が連携することで、幅広い顧客のニーズに対応可能なデジタル事業群を構築しています。更に、バリューチェーンの拡充やリソース確保を一層加速させるべく、CTCの非公開化後も、上流機能の拡充に向けたコンサルティングファームとの提携、エンジニアリソース確保のためのM&A等を立て続けに実行し、成長性・収益性の更なる向上を目指しています。(→大手経営コンサルティングファームのボストン・コンサルティング・グループ(同)との合弁会社設立)
「専門性」×「現場力」によるバリューチェーンの進化
デジタルバリューチェーン戦略の成果を最大限に引出すためには、デジタル事業群との出資関係にとどまらず、顧客に対して「マーケットイン」で最適なソリューションを提供するための実効性の高い連携が必要です。当社の情報・通信部門では、デジタルバリューチェーン戦略の拡大に伴い、「DX横断タスクフォース」を組成し、顧客への複合的なサービス提供等、DX推進のパートナーとして選ばれるためのビジネス展開を進めています。「DX横断タスクフォース」は、当社の情報・通信部門やIT・デジタル戦略部の所属社員とデジタル事業群各社からの受入出向者で組成する組織横断的なチームです。発足当初の2019年には数名規模で始まりましたが、現在では50名規模に拡大しています。隔週で案件情報や事例共有の場を設け、生成AI等のテーマに特化した分科会も開催する等、デジタル事業群の連携を強化することで、顧客に対する共同提案を行う体制を整え、新規事業の創出やDX案件の獲得を推進しています。また、当社の他カンパニーの顧客や事業会社に対する横断的な提案も行っており、発足後の総提案件数は既に1,000件を超え、受注実績も高水準で推移しています。デジタル事業群の高い専門性と、多様なビジネスの現場で培われた知見を掛け合わせ、「地に足の着いたDX」を展開することで、新たな付加価値を創出していきます。
03:「イニシアチブ」を発揮した川下ビジネス拡大と
横連携による日立建機との協業の進化
2022年8月に、当社が日本産業パートナーズ(株)と共に設立した特別目的会社(SPC)において、日立建機(株)の26%の株式を取得しました。当社は、日立建機(株)の新たなビジネスパートナーとして、従来の代理店機能のみならず、ファイナンス、物流・販路拡大、電動化等、あらゆる機能を提供することで、川下ビジネスの強化を支援しています。
主な協業案件と成長戦略
当社と日立建機(株)は、1990年代よりトレードや合弁会社での事業を通じて協業を拡大してきました。日立建機(株)は、主力の北米市場における米国Deere & Company社との提携解消後、独自展開を開始していましたが、当社からも、北米建機ビジネスの知見やファイナンス事業のノウハウを提供し、日立建機(株)との協業を加速することで、更なる成長を目指しています。
北米市場では、代理店から建機を購入する顧客の約9割がファイナンスを利用しており、迅速な審査と競争力のあるファイナンスメニューを提供するキャプティブファイナンス会社の存在が極めて重要です。日立建機(株)への出資後、協業第一弾として日立建機(株)、東京センチュリー(株)及び当社の3社によるファイナンス会社を設立し、ファイナンス分野での協業を加速しています。建機の稼働データを活用し、例えば、工事の少ない冬場の支払を少なくしたファイナンスメニューを提供する等、日立建機(株)の強みを活かしてファイナンス事業を拡大していきます。また、リース終了後に返却された建機をファイナンス会社で保有し、再リースやレンタル、中古販売を行う等、新たな収益源の確保も目指しています。
北米以外でも、物流・販路拡大として当社の国内外のネットワークを活用し、代理店候補の紹介や資源分野の客先へのアプローチ等、様々な案件が動き始めています。既に、金属カンパニーが出資する鉱山において日立建機(株)の製品納入に向けた商談が行われる等、具体的な取組みも推進しています。
また、建設現場の脱炭素化に貢献する建機の電動化に向けた取組みは、補助金等の政府支援が充実している欧州で実用化が先行しています。日立建機(株)は、欧州のパートナーと協力し製品ラインアップを揃えることで、既に一定のシェアを獲得しています。当社は、オランダの可搬式充電設備メーカーAlfen社とも連携し、欧州での電動建機及び充電設備のファイナンスや物流、販売体制構築等を支援しています。更に、エネルギー・化学品カンパニーの蓄電池事業とも連携しながら、グリーン電力の確保、リサイクル・リユース等の周辺事業にも事業領域を拡大していきます。
今後は、これらの協業を着実に推進し、将来的には、米国内の輸送効率化・コスト削減等の物流支援、ファイナンスを含めた北米での協業モデルや欧州での電動建機関連ビジネスの他地域への横展開、遠隔操作や自動運転等の次世代技術の積極的な活用を通じたビジネスモデルの進化により、日立建機(株)を含めた当社グループ全体の持続的な成長に貢献していきます。
04:「技術力」と「経営力」を掛け合わせた大建工業の
成長戦略と事業領域の拡大
当社は、2023年にTOB(株式公開買付)を実行し、日本有数の木質系内装建材メーカーである大建工業(株)を非公開化しました。経営層から各現場に至るまで当社の人材を派遣し、「ハンズオン経営」を実践することで、当社グループのリソースをフル活用しながら、一体となって成長戦略を推進しています。
市場特性を踏まえた成長戦略の展開
大建工業(株)の市場は主に、「国内戸建」、「国内非戸建」、「海外」の3つに区分されます。主力であり成熟市場である国内戸建市場では、人口減少に伴う住宅着工数の減少により更なる経営改善が必要になることから、「稼ぐ、削る、防ぐ」の中でも、特に「削る、防ぐ」の徹底を進めています。製造・流通プロセスでは、需給データをもとにしたサプライチェーン改革・データ経営の推進、物流業務の効率化等を進め、経営基盤を強化していきます。また、当社グループの総合力を活かし、大建工業(株)と共に各種機能の磨き上げに努めていきます。
国内非戸建市場では、発注元であるゼネコンより、単なる建材の納入のみならず、施工とのセット(材工一体)での提案に対するニーズが高まっています。そこで、当社が提携している西松建設(株)をはじめとしたゼネコンや大手デベロッパー等とのネットワークを活かし、顧客のニーズに基づいた製品ラインアップの拡充を行うと共に、施工機能を強化・補完するロールアップを進めていく考えです。例えば、大建工業(株)は、2024年3月に空調設備工事会社の(株)清田工業を子会社化し、機能の拡大を図っています。今後も、材工一体型の体制整備に向けた取組みを推進していきます。
海外市場では、底堅い成長が見込まれる北米において、同社の高い技術力を活かした木質ボード事業と、複数の戦略的な買収を重ねてきた当社の北米建材関連事業の強みを活かし、共同で事業を推進しています。特に、熱帯雨林保護意識の高まりに伴う内装材の代替品ニーズを捉えるべく、当社の北米建材関連事業が持つ販売ルートを活かしたマーケティング活動を行っています。2024年7月に新たに取得したカナダの工場は、既存の商品ラインアップのみならず、新たな木質ボードの生産拠点とすべく準備を進めています。
このように、縮小が見込まれる国内戸建市場で着実に利益を確保しながら、成長市場である国内非戸建・海外市場における新たな収益源を確保することで、中長期的な利益成長を目指します。各市場の特性を的確に捉え、当社グループのリソースや経営力を活かした戦略を着実に実行することにより、大建工業(株)のみならず、北米建材関連事業を含めた当社グループ全体の持続的な企業価値向上に繋げていきます。
05:総合力の発揮によるWECARSの事業再建
当社は2024年5月に、旧(株)ビッグモーターの中古車買取販売事業を承継し、(株)WECARSを発足しました。旧(株)ビッグモーターは、自動車保険の不正請求や修理車両の損傷偽装等、複数のコンプライアンス違反が発覚し、社会的にも大きな話題となり、業績が劇的に悪化していました。元々業界No.1であった同社の事業再建を通じて、中古車ビジネスの透明化による業界全体の信頼回復という社会課題の解決に加え、消費者への安全・安心の提供、従業員の雇用確保等を行うことで、当社の企業理念である「三方よし」の実現が可能であると考えています。
事業再建に向けた取組み
事業再建のコンセプトは、「過去との決別」と「お客様第一主義」です。「過去との決別」の観点から、過去の不正事案に関する債務補償等については旧(株)ビッグモーターで対応を行い、新設した(株)WECARSにおいては旧経営陣を含まない新しい組織体制を構築し、事業の立て直しに注力していきます。「お客様第一主義」の観点では、お客様と社会に誠実に向き合い、お客様から信頼され、魅力的だと思っていただける会社を目指します。そのために、まずは組織風土改革、従業員教育の徹底、内部管理体制の構築を最優先に取組んでおり、経営陣と現場との直接対話を開始している他、法令対応の徹底、内部通報制度の強化等、具体的に動き出しています。
事業再建にあたっては、国内外での各種事業再生案件を通じて当社に蓄積されたノウハウを最大限活用すると共に、経営層から現場に至るまで経験豊富な人材を派遣し、「ハンズオン経営」を推進していきます。(株)WECARSは、全国約250店舗という国内最大級の中古車プラットフォームを有することが強みですが、自動車ディーラー事業やレンタカー事業で培った伊藤忠エネクス(株)の現場力に加え、ほけんの窓口グループ(株)を活用した透明性・利便性の高い保険提供サービスをはじめとして、川下分野に強みを持つ当社グループの総合力を発揮し、「マーケットイン」の発想で事業の進化を図ります。
本事業の再建には、一定の時間がかかることが想定されますが、当社グループの総力を結集し、本事業の再建に丁寧かつ着実に取組み、将来的には中古車業界No.1の地位復活を目指していきます。
WECARSの事業再建に向けて
(株)WECARSの事業再建にあたっては、組織風土改革とコンプライアンスの徹底が最も重要です。私は英国のタイヤ小売大手Kwik-Fit 社をはじめ、数多くのターンアラウンドの案件に携わってきました。業種は異なりますが、課題を抱える会社との向き合い方に変わりはありません。私は、経営の良いところも悪いところもすべて現場に表れると考えています。現場に入り込み、改善に向けた仕組みを地道に作ることが重要です。伊藤忠グループからの出向者には主に現場でのコンプライアンス遵守に向けた業務フロー見直しを担ってもらいます。Kwik-Fit社では「お客様目線」を重視する文化を築きました。(株)WECARSでも同じように、「お客様に価値を提供する」ことを繰り返し伝えていきます。人事制度に関しても、売上等の数値目標ではなく、顧客満足度等をKPIに組み込んだ新制度の導入を検討しています。組織風土改革とコンプライアンスの徹底により、お客様から「会社が変わった」と感じていただき、お客様に支持されることができれば、売上は自然と戻ってくると考えています。(株)WECARSは信頼を失ったところからのスタートです。現場での顧客対応や従業員の声を積極的に取り入れ、伊藤忠グループのノウハウを活用し、組織全体が一丸となって改革を進めていきます。
(株)WECARS
代表取締役 社長CEO
田中 慎二郎
1985年当社入社。2010年頃から米国最大のフェンス製造・卸のMASTERHALCO社のターンアラウンドを主導。2019年より英国タイヤ小売最大手のKwik-Fit 社を展開するEuropean Tyre Enterprise社のCEOを務める。2024年5月より現職。
06:「スピード」と「実行力」を伴う
クリーンテックビジネス
当社は、気候変動を含む環境リスクを機会と捉え、「稼ぐ」を通じた事業拡大と、社会的要請への対応や産業界の課題解決に繋がる、すなわち経済価値と環境・社会価値を同時に追求するクリーンテックビジネスに取組んでいます。個別目標を設定し、「スピード」と「実行力」を伴って気候変動への対応を進めることで、GHG排出の削減貢献量についても着実に積み上げていきます。
削減貢献量とは、既存の製品やサービス(ベースライン)を新たな製品やサービスに置き換えた場合に削減・抑制可能なバリューチェーン上のGHG削減量を定量化したものです。2023年度は、発電事業を中心とした再生可能エネルギー事業等の拡大により12.3百万トンの積み上げを達成しており、2040年までにGHG排出量を上回る削減貢献量の創出を目指していきます。
事業領域を拡大する北米での再生可能エネルギー事業
当社子会社の米国Tyr Energy社は、2022年に再生可能エネルギー開発会社Tyr Energy Development Renewables社(TED社)を設立しました。TED社及びTyr Energy社は、売却済み案件含め、2024年7月時点で約5,000MW(原子力発電所5基分に相当)、30件以上の太陽光発電所を開発しており、土地確保、各種許認可取得、電力系統接続、売電契約の交渉・締結、主要機器・建設工事事業者の選定・交渉、ファイナンス組成等、一連の業務を自社完結する開発プラットフォームを構築しています。2024年2月には、発電量合計333MW(米国標準家庭約72,000世帯相当)、年間約60万トンのCO2排出量の削減が期待される3案件の開発を完了しました。また、当社子会社の米国NAES社は、世界最大の独立系発電所運転・保守サービス会社であり、再生可能エネルギー分野において約1,400ヵ所、2,000MWの太陽光発電所及び1,100MWの風力発電所向けに資産管理・運転保守サービスを提供しています。更に、2023年には北米の再生可能エネルギー開発資産を投資対象とするファンドを設立し、今後、本ファンドを通じて20億米ドル規模の事業に取組む予定です。
様々な発電事業で培ったノウハウを活かし、周辺機能・サービスの強化により事業領域を拡大することで、北米の再生可能エネルギー市場の高い成長率を取込みながら、脱炭素社会・持続可能な地域社会の実現に貢献していきます。