企業価値向上に繋がる人材戦略

当社は、人材戦略を重要な経営戦略の一つとして明確に打ち出し、全社員が働きがいを感じ、能力を最大限に発揮するため「厳しくとも働きがいのある会社」の実現を目指しています。この実現により、社員のモチベーションや労働生産性の向上だけでなく、社会からの評価、ひいては企業ブランド価値の向上に繋げ、企業価値の更なる向上を目指していきます。また、企業ブランド価値の向上により、当社の強みの源泉である優秀な人材の確保を可能とする好循環を生み出しています。2010年から始まった当社独自の「働き方改革」に関する一連の施策は、社会からも高い関心を集め、そのご期待に応えるべく、その内容を詳細に開示しており、当社の企業理念「三方よし」で掲げる「世間よし」の精神にも繋げています。

労働生産性

労働生産性は年々向上:2010年度以降、労働生産性が5.2倍に

重要指標

重要指標:①優秀な人材の確保、②働き方の進化、③健康力の向上、④主体的なキャリア形成支援、⑤成果に応じた評価・報酬、⑥経営参画意識の向上

働き方改革・健康経営の進化

2022年5月より、朝型勤務を進化させ、「朝型フレックスタイム制度」、「在宅勤務制度」を導入する等、社員が業務の繁閑・家庭の状況等に応じて柔軟な働き方を選択できる環境を整備し、もう一段効率的な働き方を加速させ、更なる労働生産性の向上を追求しています。また、朝型勤務と親和性があり、睡眠の質・量が労働生産の向上に寄与するとの考えから、2022年度に睡眠マネジメントに関する産学連携コンソーシアムに参画すると共に、2023年度に実施した当社社員736名への睡眠実態調査をベースとして、大手寝具メーカーの西川(株)との連携により、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする様々な睡眠課題の発見と解決支援を実施しています。

人材戦略推進に向けたPDCAサイクル

①エンゲージメント施策の実行サーベイの実施、②課題把握、③課題への対応方針決定、④施策の実行

当社は、3~4年に一度、エンゲージメントサーベイを実施(実施しない年度には、主要項目を対象としたスモールサーベイ(簡易版エンゲージメントサーベイ)を実施)することで、タイムリーに課題を把握し、改善を行う「人材戦略推進に向けたPDCAサイクル」を構築しています。2023年度スモールサーベイは、「社員を大切にし、配慮している」、「高い成果を求める文化」の項目について、引続き肯定的回答率が高い水準にある一方、「若手・中堅社員の更なる働きがい向上と多様な価値観への対応」について、引続き社員の関心が高い結果となりました。2023年度は、この結果を詳細に分析し、課題と対応策を経営会議に報告した上で、次の打ち手として、「成果に応じた評価・報酬」の促進やライフイベント等を考慮した「主体的なキャリア形成支援」を軸として、約10年ぶりに大規模な人事制度改訂を実施しました。主な課題と対応する施策は以下の通りです。

エンゲージメントサーベイに基づいて把握した主な課題:若手・中堅社員の更なる働きがい創出、組織の壁を越えた人材・アイデアの共有、多様な価値観への対応
具体的な施策 若手・中堅社員の活躍支援具体的な施策 若手・中堅社員の活躍支援

人事制度改訂

1999年度に現行人事制度を導入して以降、一貫して職務に基づくBAND制度(固定給)と業績連動型の賞与(変動給)をベースに採用競争力の維持と働きがいの向上に資する改訂を実施してきました。今般の改訂の背景として、個人の頑張りに応じた処遇のメリハリ強化の必要性や年功的な昇格管理による若手・中堅社員の貢献意欲の低下、また、共働き社員が増え、育児等に直面する社員の活躍支援策が求められていることが挙げられます。これらの課題に対して、2024年度より、若手・中堅社員を中心に給与水準を引上げると共に、従来同程度であった個人業績と会社業績の変動給の割合を個人業績重視に改訂し、処遇のメリハリを強化しました。貢献度が極めて高い場合、課長クラスで年収3,000万円、部長クラスで年収3,500万円と商社トップクラスの報酬を可能とし、「成果に応じたメリハリのある評価・報酬」を実現しています。貢献度が高い社員に対しては、今後も更に競争力のある処遇を実現していきます。また、年功的な要素を廃し、30歳前後で事業会社の経営者としてマネジメント経験を積むことを可能とする等、優秀な若手・中堅社員を早期に抜擢する仕組みも導入しました。加えて、育児等で制約を抱える社員に対し、一定期間の転勤義務の免除や権限・裁量の軽減等を行うことで、仕事との両立を支援する取組みを始めています。


主体的キャリア形成支援

当社は、社員一人ひとりの主体的な学びやチャレンジングな経験の機会を創出し、多様な能力・適性に応じた人材育成、キャリア形成支援をグループ全体で推進しています。2001年度に人材アセスメント制度を導入し、毎年全社員を対象としたキャリアビジョン面談を実施、2002年度よりキャリアカウンセリング室による専門的な支援を行っています。更に2024年度より、総合職新入社員に対し、本人の適性等を踏まえた「個人別キャリアプランイメージ」を共有し、定期的に面談を行う等、キャリアに関する不安軽減のための取組みを行っています。また、社内の人材流動化策として、バーチャルオフィス、チャレンジキャリア制度(社内公募制度)等、所属組織の壁を越えて「やりたい仕事に挑戦できる」、主体的なキャリア形成を支援する仕組みを設けています。更に、社内外の環境変化、技術革新、ビジネスモデル変革に対応するため、経営戦略に基づき必要な知識・スキルを獲得すべく、全社員の個人業績目標に「学び続ける(リスキル)」項目を入れ、社内の「学び続ける文化」を醸成し、社員のキャリア形成や働きがい、組織の活性化に繋げています。

バーチャルオフィス(社内兼業制度)

2023年4月、当社は、組織横断案件の推進や新規事業創出の更なる加速に向け、所属組織の壁を越えて、熱意ある社員が関心のあるプロジェクトに参加できるオンラインでの組織横断協業プラットフォーム「バーチャルオフィス」を正式導入しました。所属組織における業務とのバランスを考慮し、案件の活動期間は3~6ヶ月で案件毎に設定します。2023年度は、16の案件に、海外駐在員を含めた総勢82名の社員が参加しました。こうした取組みを通じ、総合商社の課題である業界縦割りを打破した知見の交わりを生むと共に、チャレンジ精神や成長意欲を刺激し、若手・中堅社員の活性化や成長に繋げています。

具体的な施策 女性社員の活躍推進具体的な施策 女性社員の活躍推進

女性社員の育成・登用加速

当社は、「持続的に個の力と組織力を強化し、収益力を高めるためには、組織としての多様性が重要」という一貫した考えの下、女性活躍を推進してきました。2010年以降の働き方改革により、女性がキャリアを諦めず働き続けることができる環境を整え、同時に、ライフイベント等を考慮した上で、キャリア形成上の障壁を取り除くきめ細かな個別支援を行っています。具体的には、朝型フレックスタイム制度や早期復職支援(育児休業からの早期復職に伴う保育費用の補填制度)に加え、重要なキャリアである海外駐在への挑戦を支援すべく、子どものみを帯同する場合の個別支援や卵子凍結・不妊治療への補助等を実施しています。その結果、2021年4月に35名であった女性役職者は、2024年4月には61名と着実に増加し、海外拠点長や国内外の事業会社の社長等、重要役職への登用も進んでいます。

更なる役職登用を推進すべく、2023年12月の取締役会において、2024年度より女性社員を対象とした「執行役員選考ルール」を新設し、4月1日付で5名の新任執行役員を任用しました。重要な役職、幅広い異動等の経験が十分でない女性社員には、時限的にアファーマティブ・アクションを取り、全社的経営に関わる機会を特別に付与しながら更なる成長を促すことで、女性の働きがいと可能性を引出していく方針です。当社は、2030年までに、日本政府が求める「取締役会における女性比率30%以上」を達成するだけでなく、「執行役員を含めた全役員における女性比率30%以上」の達成を目指します。(→社外取締役&CAO座談会)

また、女性社員がキャリア構築を諦めない職場環境実現のため、フェムテックを通じて、多様化する女性特有の健康課題に対応し、労働生産性向上や周囲の理解促進を図る他、2024年度より、男性社員の育児休業取得(出産後1年以内に暦日5日以上)を必須化し、男性社員の意識改革にも繋げています。