蓄電池を核とする分散型電源プラットフォームの構築

脱炭素社会の実現のために

日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」の目標達成には、「電源の脱炭素化」と「電力消費制御」が必要です。太陽光発電等の再生可能エネルギーの発電による分散型電源が普及していく中、一方通行であった電力網は、多面的双方向の電力網への移行が始まっています。この潮流により、いずれグリッド(中小型の多面的双方向の電力網)が形成され、グリッド内の電力消費を無駄なく効率的に制御することが求められますが、電力供給側のみの対応には限界があり、電力消費者側の対応も求められます。電力供給側への過度な負荷を和らげるため、「電力消費制御」がこれまで以上に求められ、当社の蓄電池ビジネスはその役割を果たしていけると考えます。

電力消費制御の鍵「Smart Star」

当社と㈱エヌエフ回路設計ブロックとの合弁会社である㈱NFブロッサムテクノロジーズで開発製造した蓄電池「Smart Star」シリーズは、2020年度末時点で4.3万台超の累計販売台数となっています。「Smart Star」は、AI機能「GridShare」を搭載しており、消費者は気象予報や家庭の電力需要等の分析・学習に基づく蓄電池の最適充放電制御により、効率的な電力消費が可能です。2021年5月には、家庭用蓄電池では世界初となる家庭単位での環境価値を計測・ポイント化し、お客様に還元するプラットフォームを開発すると共に、急速な普及が見込まれるEVの充電機能を装備した新製品「Smart Star 3」の販売を開始しています。

パートナーとの協業による「布石」

蓄電池の電源となる太陽光発電の屋根借り(TPO)モデルに関して、スーパーや物流倉庫を中心とした商業施設分野については㈱VPP Japanを通じて、家庭用分野についてはTRENDE㈱との協業を中心に、それぞれ取組んでいます。TRENDE㈱は、電力個人間(P2P)取引の実装にも取組んでおり、実証実験の対象とした全家庭において経済合理性を生むといった将来展開が期待できる成果も確認しています。本技術は「Smart Star」シリーズへの実装を視野に入れ、開発を進めていきます。

また、今後重要性が増すLife Cycle Assesment (LCA)の取組みに関しても強化しています。2021年6月より、中国Shenzhen Pandpower社のリユース電池を活用した商業施設用コンテナ型蓄電池「BlueStorage」の稼働を開始し、今後は海外展開も含めて積極的に取組んでいきます。更に、その使命を終えた電池からニッケルやリチウム等の希少金属をはじめとする部材を可能な限り回収し、当社が構築している原料・部材のバリューチェーンで再利用するという真の循環システムの構築を進めます。

また、当社は半固体電池の研究開発を行う米国24MTechnologies社の関連会社化を2021年5月に公表しました。間もなく量産体制に入る半固体電池について、グローバルで複数の企業と技術ライセンス契約を締結しており、更なるネットワーク拡大が期待されます。当社もライセンス先の開拓と共に、部材納入、電池調達等の次世代電池の取組拡大に努めます。

目指す脱炭素社会の未来図

現在、㈱VPP Japan(産業用)とTRENDE㈱(家庭用)がそれぞれ業界トップクラスの面展開を推進する分散型電源と家庭用蓄電池は、「GridShare」での統合管理(群制御)が可能です。また、㈱IBeeTは、これらの分散型電源と関連機器のサブスクリプション・サービスを提供します。近い将来、24M Technologies 社のパートナー企業が量産する半固体電池を搭載したEVも「GridShare」で繋げ、TRENDE ㈱のP2P 取引技術とShenzhen Pandpower社との循環システムを組み込むことで、多様な脱炭素化のソリューションを提供することが可能になります。「Smart Star 3」の環境価値プラットフォームが、各家庭とコンビニエンスストアやスーパー、様々な企業とを結び、EVも含めたコミュニティが形成されることによる環境と経済の好循環の実現に取組んでいきます。