変革4:建機ビジネスの躍進に向けた新たな布石

当社は、過去より建機ビジネスを展開していますが、外部環境変化に合わせたビジネスモデルの変革により、現在は川下分野へバリューチェーンを拡大し、顧客が現場で抱える課題の解決に貢献していくことを成長戦略の基本方針として掲げています。底堅い建機需要が見込まれる北米を中心に、既存顧客基盤やファイナンスのノウハウ等、当社の「総合力」を発揮することで、顧客が持つ多様なニーズを深掘りし、建機ビジネスの収益基盤拡大に取組んでいきます。

建機ライフサイクル戦略

建機は、一般的に10~15年の長期に亘り使用されており、単純な建機の販売以外でも、部品販売、修理等のサービス提供、ファイナンス、レンタル、中古建機販売等でビジネスチャンスがあります。当社の建機ビジネスは、日系の建機メーカー製品を国外へ輸出するトレードから始まりましたが、その後、求められる機能の変化に合わせて、メーカーの海外進出を支援するための海外販売代理店等への事業投資にも取組むようになり、トレードと事業投資の両輪でビジネスを展開してきました。しかし、近年はメーカーが当社を介さない、現地販売代理店との直接取引を志向するようになり、トレードの縮小や販売代理店の商権の返上等、ビジネスは縮小傾向にありました。一方、建機業界にもデジタル化の流れが急速に押し寄せ、予防保全による稼働率の向上、オンラインでの建機・部品の購入や中古建機販売、レンタルへの対応等、多様化する顧客ニーズに合わせた事業変革が、メーカーにとっても急務となっていました。

そのような状況を踏まえ、当社は、2019年度に販売以外の川下分野にも建機ビジネスのバリューチェーンの拡大を図るべく、「建機ライフサイクル戦略」を立案し、ビジネスモデルの変革を進めてきました。同戦略に基づき、当社は、国内の伊藤忠TC建機(株)を通じた建機レンタル企業や米国のオンライン建機レンタルサービス事業等への投資を実行し、着実に川下分野の事業を拡大しています。また、北米で小型建機・発電機の製造・販売事業を展開するMULTIQUIP社では、発電機にIoT機器を搭載し、稼働データを収集することで、最大の顧客ニーズである建機稼働率を向上させると共に、適切なタイミングでの部品販売・サービス提供を可能にし、より安定的な収益基盤の拡大に取組んでいます。

日立建機(株)への投資

2022年度第2四半期に投資を実行予定の日立建機(株)は、過去には米国Deere & Company社と共同で建機事業に取組んでいましたが、同社との提携解消後、販売やファイナンス、修理等の販売・サービス網の垂直立ち上げに共同で取組む新たな事業パートナーの選定が急務でした。当社は、長年に亘り、日立建機製品の世界各地での販売をサポートしてきた実績があり、特にインドネシアで建機販売事業やファイナンス事業に事業パートナーとして取組んできました。また、当社は既に北米で建機ビジネスに取組んでおり、当社グループの持つ日米間の陸海送物流ネットワークや東京センチュリー(株)に代表されるファイナンス事業のノウハウ、MULTIQUIP社が保有する建機レンタル企業の顧客網等を活用したシナジー創出への期待等もあり、日立建機(株)との資本提携が実現しました。日立建機(株)との協業第一弾として、日立建機(株)、東京センチュリー(株)、当社の3社による北米建機ファイナンス会社の設立を検討しています。同ファイナンス会社は、北米における日立建機(株)の販売代理店やエンドユーザー向けの金融機能提供によるマーケットシェア拡大に取組むと共に、IoTデータを活用し、建機の稼働情報や修理履歴等を考慮した上で、返却された建機の整備・再リース事業や中古建機保有によるレンタル事業、稼働・修理履歴が見える化されたプレミアム中古建機の販売事業等、川下分野の事業を推進していく方針です。

今後は、MULTIQUIP 社の発電機と日立建機(株)の油圧ショベルに使用される基幹部品の共同調達・管理、北米における共同輸送・倉庫オペレーションの活用等による建機ビジネスの拡大のみならず、「マーケットイン」の発想に基づき、発電機やミニショベルを現場で使用する北米建材関連事業の顧客に対するクロスセルを推進する等、シナジーも追求しながら、まずは北米事業の収益基盤の拡大を図る方針です。また、将来的には、北米における日立建機(株)との協業の成功事例を世界各地域に展開し、事業拡大を加速していきます。