変革6:バリューチェーン強靭化による持続的成長
(天然ゴム・タイヤ事業)

当社は、バリューチェーンの川上に位置する天然ゴム加工会社であるインドネシアANEKA BUMI PRATAMA社(ABP社)と、川下産業の英国最大手タイヤ小売チェーンKwik-Fit等を展開するEuropean Tyre Enterprise社(ETEL社)を中核事業として、天然ゴム・タイヤバリューチェーンを構築しています。バリューチェーンの川上と川下の双方で事業変革を推進することで、持続的な企業価値向上と天然ゴム・タイヤ産業全体でのSDGs実現に貢献します。

天然ゴムは、世界消費量の約70%がタイヤに使用され、今後も堅調な需要拡大が見込まれる天然資源です。一方、その生産量の約85%は東南アジア等の小規模農家に依存しており、森林減少や農家の権利侵害・貧困問題といった社会課題への対応が急務となっています。当社は、この解決策の一つとして天然ゴムのトレーサビリティ、サステナビリティの実現を目指す「PROJECT TREE」を立ち上げ、その普及に注力しています。

ABP社が調達する天然ゴムにおいて、情報改ざんが難しいブロックチェーン技術を活用し、生産から加工までのトレーサビリティを確立しました。これに「PROJECT TREE」としての特色である社会貢献活動を掛け合わせることで、供給された天然ゴムが違法採取や人権侵害等のリスクの小さいものであることを担保するプラットフォームの構築が可能となります。社会貢献活動の具体例としては、トレーサビリティを付加価値としたプレミアムタイヤの売上の一部を原資とし、天然ゴムの供給者である小規模農家等に還元することで、天然ゴム産業全体のサステナビリティ向上に繋げています。サプライチェーンの上流に深く入り込んだ本取組みに、社会課題への対応を急ぐ大手タイヤメーカー各社が賛同し、同プラットフォームから調達した天然ゴムを原料としたタイヤの販売を開始しています。この取組みを推進する上で、重要な役割を果たしているのが、タイヤメーカーにとっての販売先であり、消費者接点を有するETEL社の存在です。

ETEL社は、傘下のタイヤ小売事業であるKwik-Fit社を通じて、環境意識で先行する英国で既に約700店舗を展開し、消費者や社会のニーズを捉えた事業に取組んでいます。2021年12月には英国最大の使用済みタイヤ回収事業を手掛けるMurfitts Group社を買収し、使用済みタイヤのリサイクル事業まで事業領域を拡大しました。英国全土にタイヤの物流網を抱えるETEL社の既存事業との協業を図り、より効率的な物流網構築を進めています。また、使用済みタイヤのアスファルト代替品等への加工・販売の他、タイヤ原料の一つであるカーボンブラックへの独自の分解技術の開発・商業化に取組んでおり、循環型社会の実現を目指しています。

新たな天然ゴム販売プラットフォームの展開、更に卸・小売・回収を手掛けるタイヤ事業のバリューチェーンの強靭化を図ることで、循環型社会への貢献と持続的な企業価値向上の双方を推進していきます。