内部統制システム

当社は、2006年4月19日の取締役会において「内部統制システムに関する基本方針」を制定しています(直近では2024年5月8日付で一部改訂)。この内部統制システムについては、不断の見直しによって継続的に改善を図り、より適正かつ効率的な体制の構築に努めることとしています。
ここでは、2点特筆すべき取組みを抜粋してご紹介します。

財務報告の信頼性を高めるための取組み

連結ベースの財務報告の信頼性をより高めるために、社内体制を構築し、財務報告に係る整備・運用状況を定期的に評価することにより、適宜改善を図っています。具体的には、各組織に内部統制統括責任者を任命して整備・運用を進め、監査部が評価し、各組織へフィードバックすることにより、継続的な改善活動を実行しています。この取組み全体を監査部が企画・管理し、重要項目はCFOを委員長とする開示委員会で審議のうえ意思決定をすることにより、全社的な内部統制の強化に努めています。

当社子会社を含めたグループベースでのリスク管理の強化

当社グループの市場リスク、信用リスク、カントリーリスク、投資リスクその他さまざまなリスクに対処するため、各種の社内委員会や責任部署を設置すると共に、各種管理規則、投資基準、リスク限度額・取引限度額の設定や報告・監視体制の整備等、必要なリスク管理体制及び管理手法をグループベースで整備し、リスクを総括的かつ個別的に管理しています。また、管理体制の有効性につき定期的にレビューしています。「ALM委員会」が当社グループのバランスシート管理やリスクマネジメントに関する分析・管理に関する審議を行い、当社グループの資産の保全を図っています。

投資プロセス

リスク管理体制及び管理手法。投資プロセス:1. 投資判断、2. モニタリング、3. EXIT。集中リスク管理:先進国以外の国に対するカントリーエクスポージャー管理。Business Continuity Plan(事業継続計画):不測の事態の発生に備えたBusiness Continuity Planを策定。

集中リスク管理

先進国以外の国に対するカントリーリスクエクスポージャーを総枠で管理すると共に、社内の国格付けに基づく個別の国枠管理も行っています(国枠管理制度)。なお、国枠等については、ALM委員会で審議を行い、HMCで承認しています。


ALM: Asset Liability Management

Business Continuity Plan(事業継続計画)

方針・基本的な考え方

伊藤忠グループでは、大地震等の自然災害、感染症の蔓延、国際武力紛争や地政学による紛争に起因するようなテロ等の事件、大事故、サイバーアタックを含むセキュリティインシデント等、不測の事態が発生しても重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるため、Business Continuity Plan(事業継続計画、BCP)を策定しています。

体制・システム

当社グループでは、BCP対策本部長(CAO)の下、BCP対策本部事務局が中心となり、事業継続計画の更新やBCP対策の管理状況のモニタリング等を行っています。刻々と変化する不測の事態に備え、必要に応じて新たな方針や事業継続計画をCAO決裁にて策定し、その内容について、重要性に応じて内部統制委員会及び取締役会に適宜報告することで、BCP対策の強度を高めています。

また、各事業セグメント・職能部にBCP担当を配置し、組織別に重要業務、重要業務責任者、初動復旧要員などをまとめた個別のBCPを策定しています。大規模災害等による即座の対応が必要な場合は、事業継続計画及び個別のBCPに基づき、従業員の安全確保や事業継続の安定に努めます。

BCP対策本部体制図(大規模災害時)

BCP対策本部体制図(大規模災害時)

取組み

大規模災害時における対応
大規模災害発生時には、①初動復旧、②BCP発動、③業務回復、④全面復旧の4つの段階に分け、それぞれの指揮命令者・対応事項を定めた計画を策定しております。

大規模災害時における対応

① 初動復旧
役員・社員の安否確認を行います。衛星電話や災害時優先回線、パソコンや携帯電話等(メール、アプリ等)のデバイスを使用します。
また、オフィスの被災状況を確認し、施設・設備の復旧工事を行います。東京本社が被災した場合、大阪本社をバックアップオフィスとして設営し、その他にも代替オフィスの確保を行います。
帰宅困難者への対応も行います。帰宅困難者対策条例に基づき、各拠点においては、オフィスに3日間程度籠城するための水・食料・災害用物資を備蓄しています。

② BCP発動、③ 業務回復、④ 全面復旧
BCP対策本部長がBCP発動を決定した場合、直ちにBCP対策本部を設置し、業務復旧作業を実施します。
まずは最も緊急度の高い業務の再開に重点を置き、その後、業務範囲を拡大する段階を経て、平常時運用へと切り替えていきます。

大規模感染症の発生時における対応
また、新型コロナウイルスを含む大規模な感染症の発生時には、感染拡大の段階に応じた危機管理体制を定め、従業員の安全確保と感染拡大防止を最優先に、当社の各事業分野におけるサプライチェーン維持を通じて社会生活の安定に貢献するべく、感染拡大期においてもリスクを避けつつ重要業務を継続する体制を構築しています。

BCPの有効性を担保するための施策

  • 緊急業務対応のためのバックアップオフィスの確保・整備
    東京本社、大阪本社に加え、当社社員寮である日吉寮を、非常時に重要業務継続のためのバックアップオフィスとして優先的に使用できるよう整備しています。
  • BCP対策本部設営体制の整備・点検
    BCP対策本部は、緊急時にリモートでも設営できるよう体制を整備しています。リモート設営をする上で必要なシステムは、定期的に点検を実施し、常に利用可能な状態を確保しています。
  • BCP訓練の実施
    BCP対策本部メンバーによるBCP訓練を定期的に実施しています。毎年異なる様々な状況を想定した訓練を実施することで、危機対応意識と総合的な危機対応力を高めています。

海外駐在員・出張者の安全対策

伊藤忠グループの労働安全衛生マネジメントは、代表取締役CAOを健康経営最高責任者とし、労働安全衛生の管理の主体である各営業カンパニー・総本社・海外ブロックを人事・総務部が統括する体制で推進しています。
グローバルにビジネスを展開する伊藤忠商事では、海外駐在員は約800人、年間海外出張者は延べ1万人(新型コロナウイルス感染拡大前の実績)に及ぶため、国際武力紛争や地政学紛争等により、現地での事業操業や駐在・出張に影響を及ぼす事態が発生した場合を含め不慣れな環境下でも安心して能力を発揮できる環境整備に向けて、健康管理にも取組んでいます。海外安全対策については、現地と日本側の密な連携が重要であるため、本社に海外安全専任者を置き、世界6ブロックに配置された人事総務担当と、政治や経済、治安等に関する情報を常時交換し、社内やグループ会社へ対策を発信しています。また、セキュリティー専門会社との契約を通じて、情報を集めにくい地域についてもカバーできる体制を構築しています。
加えて2019年度より、治安の悪い国・地域への駐在赴任予定者や、そういった国・地域へ頻繁に出張が想定される従業員を主な対象とする海外危機対応実地訓練を社内にて実施しています。

事業活動における取組み

自然災害や人的災害、地政学リスク等に備えて、長期的なリスクへの対応措置として、日ごろから事業活動においては調達ソースや営業活動範囲の多角化を心掛けること等により、事業活動の安定を目指しています。