会長CEO


社会のニーズに応え、企業価値向上の基盤を固める
2024年度は伊藤忠の行き先を示す羅針盤となる経営方針『The Brand-new Deal』の下、企業価値を持続的に向上するため、「業績の向上」、「企業ブランド価値の向上」、「株主還元」を3つの柱として掲げましたが、それぞれ着実に成果をお示しできた1年となりました。特に連結純利益は8,803億円を達成し過去最高益となりました。
業績の向上には経営基盤である「か・け・ふ」の「稼ぐ」だけでなく、様々なリスクを事前に予知し「防ぐ」ことも大切です。昨今、多様化する社会課題は、企業に様々なリスクをもたらすため、それらへの対応が求められています。社会課題の例として、気候変動や自然資本、サプライチェーンマネジメント等が挙げられます。これらによるリスクを「防ぐ」取組みが、バリューチェーンの強化や、新たなビジネスに繋がることにもなります。例えば、当社では、違法伐採と人権問題を防ぐために、天然ゴムの生産地情報を取得する取組みを進めていたところ、欧州で森林破壊を防止し持続可能な環境促進を目指した規制が採択され、当社の新たなビジネスモデルを創出しました。
また、経営陣を含む人材の多様化も重要、かつ喫緊の課題です。当社は女性社員を対象とした執行役員登用制度を2023年度に導入の上、昨年度は5名、今年度も5名の女性執行役員を内部登用し、役員に占める女性の割合は28%と総合商社で最も高くなっています。単に女性管理職の数を増やすための施策ではなく、中長期的な視点に立ち、性別や年齢に関係なく、個々の社員がそれぞれに活躍できる環境の整備、また女性役員を育成する文化の醸成を目的とし、更には企業ブランド価値の向上にも繋がるものと考えております。
さて、当社が(株)WECARSを発足させてから1年が経過しました。4兆円を超えるとされている国内中古車市場において、業界No.1であった同社の再建は、社会基盤である中古車流通を支える大きな社会的意義があると考えています。また、消費者への安心・安全の提供や従業員の雇用確保、更には中古車ビジネスの透明化による業界全体の信頼回復は、当社の企業理念である「三方よし」の精神に資するものです。
これからも伊藤忠商事は、企業理念である「三方よし」の精神に基づき、すべてのステークホルダーにとって価値ある企業であり続け、目まぐるしく変化する世界情勢の中でも、着実に持続可能な成長を目指して参ります。
2025年6月


代表取締役会長CEO 岡藤 正広