商品ごとの取組み方針と内容
森林保護に関連する商品
伊藤忠商事ではそれぞれの、森林の保護に関連する以下のようなコモディティを取扱っており、サプライヤーへのサプライチェーン・サステナビリティ行動指針に加えて守るべき自然林の保護と森林資源の持続的な利用を継続するため、以下の調達方針を定めています。本方針は少なくとも年1回見直し、必要に応じて改定します。
森林の保護に関連するコモディティ
- 木材、木材製品、製紙用原料及び紙製品
- 天然ゴム
- パーム油
自然林保護と森林資源の持続的利用継続の方針・体制
自然林と森林資源保護に関する調達方針
対象組織
伊藤忠商事及びその子会社
自然林保護と森林資源の持続的利用継続の方針
- 原料の産出地の森林破壊ゼロを確認できるよう情報収集に努め、サプライチェーンの透明化と調達物のトレーサビリティ向上を目指すこと。
- High Conservation Value(HCV:高保護価値)地域、High Carbon Stock(HCS:高炭素蓄積)地域、及び泥炭地域の保護・保存と地域住民・社会配慮(FPIC)に賛同し、継続的に環境への負荷削減に取組むこと。
- 保護価値の高い森林破壊など、深刻な環境・社会的問題に関わるサプライヤーからの調達でないこと。
- 木材、木材製品、製紙用原料及び紙製品においては、信頼できる森林認証制度の拡大を支援し、認証取得した調達物の取扱いを促進すること。
- 天然ゴム、製紙用原料及び紙製品においては、事業を行う国の排水に関する法令等を遵守し、排水の適切な処理を行うとともに、水資源の循環使用などを通じて水使用量の削減に取組むこと。
- パーム油に関連する事業の実施にあたっては、化学物質の使用の最小化と、パラコート、世界保健機関(WHO)が定める1A/1Bクラスの殺虫剤、ストックホルム条約・ロッテルダム条約に掲載されている化学物質を使用しないように取組んでいるサプライヤーからの調達に努める。
森林保護に関連する品目と対応する「自然林保護と森林資源の持続的利用継続の方針」の項目は次のとおりです。
方針の項目 | 森林保護に関連する品目 | |||
---|---|---|---|---|
木材、木材製品 | 製紙用原料及び 紙製品 |
天然ゴム | パーム油 | |
1. 森林破壊ゼロとトレーサビリティ |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
2. 産出地域の保護・保存、地域住民への配慮 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
3. 深刻な環境・社会問題に関わるサプライヤー排除 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
4. 森林認証制度の拡大 |
〇 |
〇 |
||
5. 排水・水資源への配慮 |
〇 |
〇 |
||
6. 化学物質使用最小化または不使用 |
〇 |
当社は、森林の保護に関連するコモディティに関して、グループ各社及びサプライヤーと連携しながら、調達物のトレーサビリティの確保のため、「サプライチェーン・サステナビリティ行動指針」、及び当方針に基づいた調達に努めます。
本方針を推進するため、各カンパニー及び該当するグループ会社が重要サプライヤーに対してサステナビリティ調査を実施します。本方針への不遵守が把握された場合は、問題解決に向け協議し、改善策を要請していきます。改善されない場合は、取引の見直しを検討します。
サステナビリティ調査について定期的に情報開示をおこないます。また、サプライヤー及び顧客を含むステークホルダーとの適切なコミュニケーションにより、持続的な森林資源の活用を社会に広めていきます。
体制
毎年、カンパニーの経営陣に対して、目標設定と目標に対する進捗状況を報告し、了承を取得しています。NGO等ステークホルダーからの指摘等も共有し、課題があれば、取組み方針の見直し等を図ることとしています。
パーム油に関しては、方針に基づいた調達は主管部署である食料カンパニー食糧部門油脂・カカオ部が行っています。
木材、木材製品、製紙用原料及び紙製品では、当該商品を取扱うメンバーに対して、サステナリビティ推進担当者が少なくとも年1回の研修を行い、森林資源開発に関する国内外の動向や諸問題、持続可能な森林資源の活用について啓発を行っています。
木材、木材製品、製紙用原料及び紙製品
![[写真]](/ja/img/cs72_im01.jpg)
伊藤忠商事では、パルプ・紙製品、木材・木材製品、ウッドチップの材料調達・製造・流通に関わっており、守るべき自然林の保護と森林資源の持続的な利用を継続するため、認証材、または高度な管理が確認できる材の取扱い比率100%を目指して事業活動を推進しています。
METSA FIBRE社におけるFSC®とPEFCの森林認証
![[写真]](/ja/csr/img/cs_act_gnl_18_img03.jpg)
伊藤忠商事は、年間約320万トンのパルプ生産能力量を誇るフィンランドの世界最大級の針葉樹パルプメーカーであるMETSA FIBRE社の株式を保有し、主にアジア市場向け針葉樹パルプについては、独占販売代理店として活動しています。同社では、約90%はFSC(Forest Stewardship Council)とPEFC(Program for the Endorsement of Forest Certification Schemes)の2つの森林認証を有する森林資源から、100%トレース可能なパルプを製造しています。
フィンランドでは原木成長量が消費量を上回っており、長期的な原木の安定供給が可能な国です。このような優良パートナーとの取組みを通じ持続可能な森林資源利用を推進すると共に、今後も更なる事業強化を推進していきます。
中国材のトレーサビリティを証明する仕組み作り
伊藤忠建材では、2013年から、中国で製造された合板のトレーサビリティを証明する仕組み作りに取組んでいます。2020年、この仕組みの有効性について認証機関である日本ガス機器検査協会(JIA)に評価を依頼、主要なサプライチェーンについて適正にトレーサビリティが確保され、「グリーン購入法」、「クリーンウッド法」に適合しているとの評価を頂きました。この取組みは伐採許可書等の証跡書類の入手や各工場の監査、伐採地の視察等により、伐採地から単板工場、合板製造工場に至るすべてのサプライチェーン上の過程を管理し、トレーサビリティを確保するものです。これにより、中国で製造された森林認証を取得していない合板のうち、約4割について、違法伐採の材を使用していないという信頼性を確保することができました。
サステナビリティ調査とサプライヤーとのエンゲージメント
当該商品につき、単体及び主要グループ会社のサプライヤーに毎年調査を実施しています。ガイドライン上はリスクが低いと判断されるサプライヤーも調査対象に含め、より広範囲のサプライヤーと継続して対話を行うよう努めています。
NGOから指摘を受けているサプライヤーに対しては、サステナビリティ調査に加え、現地訪問・デューデリジェンスを実施して実態の把握に努め、森林認証の取得や第三者機関による認定を積極的に働きかけています。
マレーシア/サラワク州の違法伐採・人権問題の指摘対応
![[写真]](/ja/csr/img/cs_soc_vc_19_img10.jpg)
コミュニティ―との面談
NGOによる違法伐採、人権問題の指摘を受けているサラワク州においては、定期的にサプライヤーに加え、州政府、木材協会、人権委員会、人権派弁護士、現地住民、現地NGOや森林コンサルタント等幅広くヒアリング調査を実施し、実態把握に努めています。
調査を通じNGOが指摘する問題は見つかっておりませんが、懸念を払拭するための具体的な取組みを行うよう、繰り返し働きかけた結果、近年、サプライヤーが積極的に森林認証取得に動き出し、森林認証林区が増加しています。またサラワク州政府も、違法伐採排除に向けた規制強化や森林認証取得促進策を打ち出す等変化が起きています。
森林認証と合法性のパフォーマンスデータ
木材・木材製品のパフォーマンスデータ
伊藤忠は取扱っている木材・木材製品を、森林認証と合法性の根拠により以下4カテゴリーに分類して、パフォーマンスを評価しています。カテゴリー(A)は「(A)森林認証を受けたサプライヤーから取扱う材or認証機関より管理材として認められた材」としてFSC®認証 or PEFC認証を取得しています。
合法性根拠の分類 | 品目 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | |
---|---|---|---|---|---|
認証材or高度な 管理が確認可 |
森林認証制度 | (A)森林認証を受けたサプライヤーから取扱う材or 認証機関より管理材として認められた材(FSC or PEFC認証を取得) |
36% |
64% |
63% |
(B)森林認証制度に基づく「低リスク」評価国・地域で伐採を行った材 |
44% |
25% |
22% |
||
クリーンウッド法における合法性の確認 | (C)原産地の法令に適合して伐採されたことを |
17% |
10% |
15% |
|
– | (D)「追加的措置」により合法性を確認した材※2 |
3% |
0% |
0% |
- 具体的には輸出許可証・原産地証明等により確認した材
- 具体的にはサプライヤーに対して、流通経路の提示を求める等によって、法律に適合して伐採されたことを確認した材
製紙用原料のパフォーマンスデータ
伊藤忠で取扱っているチップ・パルプ等の製紙用原料はすべて「森林認証を受けたサプライヤーから取扱う材or認証機関より管理材として認められた材」としてFSC or PEFC認証を取得しています。
合法性根拠の分類 | 品目 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
認証材or高度な 管理が確認可 |
森林認証制度 | 森林認証を受けたサプライヤーから |
チップ |
100% |
100% |
100% |
パルプ |
100% |
100% |
100% |
- ライセンスNo. FSC® C009841
天然ゴム
伊藤忠商事は天然ゴムビジネスにおいて、加工事業及びトレーディング事業を行っています。天然ゴムは、主にタイやインドネシア等の東南アジアで生産され、その約7割がタイヤに使用され、今後もその需要は伸びていくと言われている一方で、森林減少や地域住民の権利侵害といった課題も報告されています。天然ゴムの流通においては、生産者からタイヤメーカーへの納品までは複数の事業者(集荷業者、輸送業者)が関わっており、より高い透明性が求められています。
そのような状況に対応して、伊藤忠商事は、2018年10月に設立されたGlobal Platform for Sustainable Natural Rubber(GPSNR持続可能な天然ゴムのための新たなグローバルプラットフォーム)に設立メンバーとして参画し、GPSNRが規定する12原則に合意し、プラットフォームの基準の策定と、その運用に協力します。
GPSNRへの参加
2018年10月、伊藤忠商事は持続可能な天然ゴムのための新たなグローバルプラットフォーム「Global Platform for Sustainable Natural Rubber」に日本の商社で唯一設立メンバーとして参画しました。本組織は天然ゴム産業に関わるカーメーカー、タイヤメーカー、天然ゴム加工企業によって設立され、サプライチェーンを通じて協業し、トレーサビリティの確立や、より高い持続可能性が実現されることを目指していきます。
ブロックチェーンを活用したトレーサビリティ実証の取組み
当社が開発したトレーサビリティ・システムにより、天然ゴムの調達過程を追跡できるようになり、社会・環境に優しい天然ゴムの差別化が可能になりました。当社子会社の天然ゴム加工会社PT. Aneka Bumi Pratama 社では、このシステムを用いたトレーサブル・天然ゴムの製造を開始し、SDGsに対応した高付加価値商品としての販売を予定しています。この販売により得られる収益の一部を生産者に還元し、違法伐採により生産された原料を排除することで、当社は持続可能な天然ゴムの生産・普及に貢献していきます。
伊藤忠商事は、企業理念「三方よし」による持続的成長を目指し、国連で採択された2030年の「持続可能な開発目標(SDGs)」達成にも貢献していきます。
![[図]](/ja/csr/img/cs_soc_vc_19_img13.gif)
パーム油
パーム油については、農園の開発や生産に係わる環境破壊及び人権侵害との関連性が指摘されています。伊藤忠商事は、パーム油のトレーディングを行っており、パーム農園事業には関与しておりませんが、流通の一翼を担うものとして本課題を特に配慮を要するものと認識しています。生産者と消費者をつなぐ立場としての責任を持ち、企業の社会的責任を果たすため、パームオイルのための円卓会議(RSPO)に加盟して取組みを推進していると同時に、各業界団体と協力の上、MSPO※1やISPO※2といったRSPO以外の認証油の普及にも力を入れています。
また、『持続可能なパーム油の調達方針』を策定し、サプライチェーンの透明化を進め、持続可能なパーム油の調達体制強化を推進することで、『自然林保護と森林資源の持続的利用継続』の実現を目指していきます。
- Malaysian Sustainable Palm Oil
- Indonesian Sustainable Palm Oil
トレーサビリティの確立
伊藤忠商事はパーム油の安定調達及び供給を実現し、企業の社会的責任を果たすために、サプライチェーンの検証を行い、問題点を発見・改善することによって、2021年までにミルレベルまでのトレーサビリティ100%を達成し、2030年までに当社が調達するすべてのパーム油を、持続可能なパーム油※1に切り替えていくことを目標に掲げております。特にNDPE原則(No Deforestation, No Peat, No Exploitation)※2に基づく調達の実現を目指します。
- 持続可能なパーム油:RSPO、MSPO、ISPO等これに準ずる基準に応じ、NDPEポリシーを順守するサプライチェーンから供給されるパーム油
- No Deforestation, No Peat, No Exploitation(NDPE):森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ
持続可能なパームオイルのための円卓会議(RSPO)加盟
2006年から「持続可能なパームオイルのための円卓会議(RSPO)」に加盟し、RSPOが規定する原則と基準(Principle and Criteria for the Production of Palm Oil)を尊重し、サプライチェーンの透明化を進め、トレーサビリティを高めている原料購入先との取引を拡大することで持続可能なパーム油の調達体制強化に取組んでいます。
現地調査を含むサステナビリティ・サプライヤー調査や、サプライヤーとの直接のコミュニケーションを通じて、重点項目の確認を行い、調達に活かしています。
運用にあたっては、取引先や専門家等のステークホルダーとも協力し、定期的に調達方針の見直しを行います。本件に関する情報開示は、ESGレポート・サステナビリティアクションプラン・The Annual Communication of Progress (ACOP)等を通じ公開して参ります。
- RSPO Supply Chain Certificate(PDF 1.2MB)
- サステナビリティアクションプラン
- The Annual Communication of Progress (ACOP)
伊藤忠の取組みについては、以下の開示情報もご参照ください。
- パーム油のサステナブルな調達に対する取組み(2020年末時点)(PDF 409KB)
- リファイナリーリスト(2020年末時点)(PDF 149KB)
- ミルリスト(2020年末時点)(PDF 205KB)
持続可能なパーム油 調達パフォーマンスデータ
2021年までにミルレベルまでのトレーサビリティ100%、2030年までに当社が調達全パーム油を、持続可能なパーム油に切り替えることを目標に掲げております。現時点の取組進捗情報と、実績と目標情報は以下の表に示す通りです。
区分 | 実績 | 目標 | |||
---|---|---|---|---|---|
2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2030年 | |
パーム油取扱数量 | 277,000mt |
308,000mt |
340,000mt |
||
<主要サプライヤー> | Malaysia |
Malaysia |
Malaysia |
Malaysia |
Malaysia |
Indonesia |
Indonesia |
Indonesia |
Indonesia |
Indonesia |
|
RSPO Members | 9/9(100%) |
10/10(100%) |
10/10(100%) |
100% |
100% |
Suppliers under NDPE policy | 9/9(100%) |
10/10(100%) |
10/10(100%) |
100% |
100% |
<Certified Sustainable Palm Oil> | |||||
RSPO認証油 | 1.10% |
9.87% |
12.68% |
||
<Traceability> | |||||
Traceable to the mills | 99.80% |
99.90% |
99.90% |
100% |
100% |
食品
カカオ豆・コーヒー豆
伊藤忠商事ではチョコレート・コーヒー製品の原料として、カカオ豆・コーヒー豆の取扱があり、コーヒー豆についてはUNEX社(グアテマラ)を子会社として集荷事業を運営しております。カカオ豆・コーヒー豆は栽培適地が赤道付近に集中し、農園開発・生産において人権や自然環境への影響が指摘されており、企業の社会的責任を果たすため「調達方針」を設定し、環境や人権に配慮した持続可能な調達を推進して参ります。
カカオ豆・コーヒー豆の取引経路
カカオ豆
![[図]](/ja/csr/img/cs_soc_vc_act_21_img01.png)
コーヒー豆
![[図]](/ja/csr/img/cs_soc_vc_act_21_img02.png)
カカオ豆・コーヒー豆の取引概要
内容 | カカオ豆 | コーヒー豆 |
---|---|---|
取引概要 | トレード |
トレード、集荷選別 |
対象 | 単体・子会社 |
単体・子会社(UNEX社を含む) |
主な買付先 | ガーナ、中南米 |
ブラジル、ベトナム、グアテマラ他 |
主な販売先 | 日本・米国 |
日本・欧州・北米・アジア |
取組み事例 | サステナブル・カカオ豆の取組み |
サステナブル・コーヒー豆の取組み UNEX社(グアテマラ)の取組み Farmer Connect社との取組み |
サステナブル・カカオ豆の取組み
伊藤忠商事は2007年よりサステナブル・カカオ豆の取扱を開始。カカオ豆のトレーサビリティを一層強化し、人権・環境への配慮、農民の貧困撲滅、生活水準の向上に資するカカオ豆の取扱強化を推進して参ります。
サステナブル・コーヒー豆の取組み
伊藤忠商事は約15年以上に渡りサステナブル・コーヒー豆の取扱実績があります。特に、UTZ・RFA・4C等の団体による認証・顧客の定義するサステナブル認証のコーヒー豆の取扱強化を推進して参ります。
UNEX社(グアテマラ)のコーヒー産地取組み
伊藤忠商事はグアテマラにてコーヒー集荷を行う子会社・UNEX社を通じ下記の取組みを推進しています。
項目 | 内容 |
---|---|
小規模農家の技術支援 | 小規模農家の生産性向上のため、農業技術(蔭木の活用法、土壌管理等)の供与 |
移動病院の支援 | 近隣に病院の無い山岳地域に住むコーヒー生産者及びその家族への医療提供 |
保育施設運営の支援 | 児童労働防止のため、収穫に従事する労働者の子女に対し、教育・飲食等を提供 |
Farmer Connect社との取組み
伊藤忠商事はコーヒー・トレーサビリティ情報を閲覧できるITプラットフォームの構築を目指すFarmer Connect社に対し、2019年9月から取組みを開始し、2021年3月に出資を実施いたしました。コーヒーの生産、流通、販売等を担う多くの企業や消費者と共にコーヒー業界の成長に貢献して参ります。
項目 | 内容 |
---|---|
サプライチェーンのトレーサビリティ強化 | コーヒー豆の栽培・ブレンド、生産地、集荷拠点から顧客までのトレーサビリティ情報をブロックチェーン技術にて記録・保管。 |
消費者・企業が直接、生産者を 支援する仕組み作り |
Webアプリ「Thank My Farmer」を通じ、消費者・企業が直接、コーヒー生産者にチップを支払うことで持続可能なコーヒー生産プロジェクト支援を可能とする。 |
乳製品
伊藤忠商事では生産・品質管理体制が整備された海外の乳製品サプライヤーから乳原料やチーズ等の乳製品を安定的に調達し、輸入しております。我が国の乳製品供給体制は農業政策の一環として北海道を中心に国内での生産・供給体制が構築されていますが、昨今の国内消費量増加を受けて、TPPやEPA等の貿易自由化協定の下で緩やかに輸入機会が拡大しています。
乳製品における主要な生産国(ニュージーランド・オーストラリア・欧州・北米・南米)の生産者団体や各企業は徐々に持続的成長が可能な生産体制の構築に向けた取組みを開始しています。今後もより安心で安全な乳製品をお届けできるよう、各営業担当による定期訪問調査等を通じて主要産地・サプライヤーの取組み状況を把握し、一層の関係構築に努めて参ります。
生乳の安全性確保
乳製品のサプライチェーンにおいて生乳の安全性確保は最も重要です。酪農家で搾乳、集乳され、乳製品工場へ搬入された生乳は受入段階で抗生物質のコンタミテストが実施され、安全性が確認された生乳のみが使用される体制になっています。
また、製造されたチーズ、バターは10kgや20kgの段ボール箱に、脱脂粉乳(粉ミルクは含まず)は25kg紙バッグを中心に製造工場内で個別包装され、製造日が印字されますので、製造工場内では生産日までトレース可能な状況となっています。
肉牛や乳用牛の飼育に用いられるホルモン剤や抗生物質の基準は各国関係機関によって定められており、各乳製品メーカーは基準に基づいて自主管理規程を設けています。
牧場の持続可能性への取組み
一例として、伊藤忠商事にとって重要な供給拠点であるニュージーランドでは放牧中心の乳牛飼育が基本であり、牧場が荒れないように定期的に放牧地を変えながら飼育する等、生産性向上に資する取組みが進んでいます。
また、ニュージーランド等では牧草のみを食べて育つ肉牛・乳用牛から生産されるグラスフェッドバターの製品開発・流通が始まっています。一般的なバターは穀物を中心に育てた牛のミルクを使うのに対して、グラスフェッドバターは牧草だけ、もしくはある割合以上で牧草のみを食べて育った牛のミルクを使用しており、酪農家の経済的負担が少ないというメリットがあります。
食肉
![[写真]](/ja/csr/img/cs_soc_vc_20_img01.jpg)
伊藤忠商事食料カンパニーの畜産部は、世界各国より畜肉原料(牛肉・豚肉・鶏肉)を輸入、調達しております。取扱量が最も多い豚肉は主に北米・欧州から、牛肉は豪州・米国から輸入を行っており、豪州牛肉サプライヤーTeys社及びプリマハムと豪州の牛肥育事業Teys Australia Condamine Pty Ltdに共同出資しております。また、カナダ・マニトバ州で豚肉生産事業を行っているHyLife Group Holdings.(HyLife)の株式を、伊藤忠商事は49.9%保有しています。
海外から食肉原料を調達する取引先においては、生産における環境対応の充実、労働者への人権・労働条件の配慮、そして何より安心安全を担保できるトレーサビリティを実現する生産体制確立を、重点的に確認・要請する項目としております。
伊藤忠商事は責任ある食肉調達を行うというコミットメントの下、サプライソースとなる工場への実地訪問を定期的に行っており、海外サプライヤーと密なコミュニケーションを通じて、良好な関係を構築しております。
HyLife Group Holdingsでのトレーサビリティ確立
![[写真]](/ja/csr/img/cs_soc_vc_19_img05.jpg)
HyLife Group Holdings.(HyLife)では、養豚農場、配合飼料工場、豚肉加工までの一貫生産を行っているため、自社でサプライチェーンの管理・コーディネーションが可能です。この生産体制を活用し、トレーサビリティが確立された、安心・安全で高品質な製品の安定供給を実現することが出来ました。
この一貫生産によりお客様の個々のニーズを養豚現場までフィードバックすることが可能となり、日本向けにカスタマイズをしたスペシャルティ・プログラムを確立、市場でも高評価を受けて、現在は対日向け冷蔵ポーク輸出量でカナダNo.1となりました。
Teys Australia Condamine社の温暖化対策
![[写真]](/ja/csr/img/cs_soc_vc_19_img06.jpg)
Teys Australia Condamine社では2015年に1,034機の太陽光発電パネルを導入、年間約506,000kWhの電力を発電する事が可能となり、同施設において使用される電力の約50%を再生可能エネルギーにて対応しております。太陽光発電の導入により、CO2排出量を約395トン削減し、太陽光発電の導入前と比べ、約49%のCO2排出量の削減を実現しました。
また、豪州の共同出資パートナーであるTeys社より屠畜、加工する牛肉を調達しておりますが、同社は屠畜の過程で発生するメタンガスを抽出し、工場の熱として再利用する、サステナブルなオペレーションを組んでおります。
イニシアティブへの参加について
持続可能かつサステナブルな牛肉生産を目指し、生産者から小売業まで業態が多岐にわたる企業がGlobal Round Table for Sustainable Beef、通称GRSBというイニシアティブへ参加しております。
伊藤忠商事はGRSBに参加している複数の参加企業との取引関係を構築しており、最新の動向等に関する情報交換を行っております。
トレーサビリティのパフォーマンスデータ
伊藤忠商事は食の安心安全を第一に考える中、何よりお客様へお届けする商品が生産者までしっかりとトレースが図れる事を大前提にしております。
伊藤忠商事が取扱うすべての食肉(牛肉・豚肉・鶏肉)のサプライヤー(主に海外)では100%、生産段階までトレースバックができる仕組みを構築しております。
内容 | 実績 | ||
---|---|---|---|
2018年 | 2019年 | 2020年 | |
食肉取扱量 | 約15万トン |
約13万トン |
約15万トン |
グループ会社・サプライヤーにおけるアニマルウェルフェアの促進
伊藤忠グループは、取扱っている食肉に関して、家畜が快適な環境下で飼養され、家畜のストレスや疾病を減らすことが重要であると考えています。このようなアニマルウェルフェアの取組みが、生産性の向上や安全な畜産物の生産にも繋がるという考えに基づき、食肉関連のグループ会社・サプライヤーと共同して、現地の法律に則って、家畜を人道的に取扱う取組みを推進しています。
食肉サプライヤーの取組み
Teys社は取扱う牛を人道的に扱う事をコミットし、同社屠畜処理場は全て豪州家畜処理業アニマルウェルフェアシステム(AAWCS)が定めるルールを遵守しております。AAWCSは独立したアニマルウェルフェアの認証プログラムであり、本認証の取得は牛の処理に至るまでのプロセスにおいて、定められた基準に則り、牛が人道的に扱われている事を証明するものです。
また、フィードロットは独立した認証プログラムであるナショナルフィードロット認証スキームが定める厳正なルールに則っております。
Teys社のアニマルウェルフェア方針はこちら。
HyLife社は取扱う豚を人道的に扱う事を最優先に考え、全従業員が全うすべき義務、責任としております。
具体的には豚の肥育段階において最も負荷がかからない環境を整え、栄養管理、飼育環境、健康管理に細心の注意を払っております。
HyLife社の農場はカナダ品質保証プログラムの認証を受けており、また全従業員は動物の適切なハンドリングを行うべく、包括的なトレーニングを受けております。
グループ会社の取組み
グループ会社のプリマハムでは、2023年をめどに最新鋭の農場を新設し、同農場でフリーストール(パイプ等による1頭ずつの仕切をなくす仕組み)の採用等アニマルウェルフェアに対応する他、地域との共生をテーマとすることを公表しています。
詳しくは「プリマハム統合報告書2021」をご覧ください。
水産物
伊藤忠商事では水産物としては鰹鮪(かつおまぐろ)類を中心に取扱っており、インドネシアでは合弁のツナ缶工場PT.Aneka Tuna Indonesia社(以降ATI)をパートナーと運営しております。鰹鮪においては自主管理規定を設け、各漁業団体によって適切に管理されているもののみを調達する方針を徹底しております。
目標
高度回遊魚である鰹鮪類において漁業者におけるMSC※1取得は限定的である現状下、缶詰原料用の鰹鮪のトレードにおいては現在のMSC原料取扱い4,500トン/年を漁業者にも働きかけ、5年以内に10,000トン/年を目指してまいります。
またツナ缶詰取扱いにおける一本釣り※2製品比率は2013年度には7%でしたが、2020年度は33%と増加しており、目標(20%)以上の結果が出せるように取組みを継続していきたいと考えております。
ATI社における一本釣り原料の使用比率・数量は、2013年の2割である8,000トンから2018年の4割となる20,000トン強と2倍以上に伸長し、世界でも数少ない一本釣り原料使用の多いツナ缶工場となっております。2020年度は市場環境の変化を受け、原料の取扱数量は一時的に落ち込みましたが、引続き一本釣り原料の確保・維持拡大に努めて参ります。
- MSC(Marine Stewardship Council、海洋管理協議会)1997年設立の持続可能な漁業の普及に取組む国際NPO。本部はイギリスのロンドン。
- 一本釣り漁法は魚を一本一本釣り上げる漁法で一度に大量に漁獲することがなく、持続可能な漁法であり、対象漁獲物以外の混獲も回避することができ環境に優しい漁法と言われております。
責任ある水産資源調達のためのサプライヤー調査
全ての取扱い水産物において責任ある水産資源調達のため、各漁業団体と協力を推進し、サプライヤーの定期訪問調査を実施しております。定期訪問調査については、当社食品安全・コンプライアンス管理室と連動し当社社内選定基準に該当するサプライヤー45社に対し、毎年各営業担当が訪問調査を実施し、ESGの観点からも適切なサプライヤーであることを確認しております。
特に取扱いの多い鰹鮪類については2017年9月に「鮪取扱管理規定」という自主管理規定を設け、IUU漁業(違法操業、Illegal, Unreported and Unregulated)からの調達を行わず、「中西部太平洋まぐろ類委員会(略称:WCPFC)」等により適切に資源管理されている漁業者のみから、原産地の明らかな水産物の調達・仕入を行っております。
認証取得とイニシアティブへの参加
![[写真]](/ja/csr/img/cs_soc_vc_19_img02.jpg)
伊藤忠商事では2018年3月にMSC(Marine Stewardship Council)における流通業者の認証、CoC(Chain of Custody Certificate)※1認証を取得しております。
鰹鮪事業においては2012年に鮪資源の持続的利用を目的として設立された「責任あるまぐろ漁業推進機構」(略称:OPRT)に加盟し、先の自主管理規定に則った取組みを推進しております。
ATI社においては、鰹鮪漁法の中でも最も環境に優しいとされる一本釣り原料の取扱いを強化しています。ATI社においてはインドネシアの一本釣り協会(Indonesian Association of Pole & Line and Hand Line)に2014年に加盟し、FIP(Fishery Improvement Program)※2に使用されるデータの提供、インドネシアでのMSC審査への協力等を行っております。また国際機関では2016年にISSF(International Seafood Sustainability Foundation)※3にも加盟し、同様に情報提供等の協力を行っております。
- CoC(Chain of Custody Certificate)とはMSCにおける「加工・流通過程の管理」において、MSC認証を受けた水産物・製品のトレーサビリティを確保するための加工・流通業者に対する認証です。
- FIP(Fishery Improvement Program)とは漁業改善プロジェクトのことで、MSC認証取得が難しい小規模漁業者や市場関係者が協力し、MSCに準拠する漁法で将来的なMSC取得をめざし持続可能な漁業を目指し活動するプロジェクトです。
- ISSF(International Seafood Sustainability Foundation)2009年大手ツナ缶業者の呼びかけにより発足した持続可能な鰹鮪漁業を目指し活動する団体です。
認証取得等のパフォーマンスデータ
項目 | 2013年度 実績 |
2019年度 実績 |
2020年度 実績 |
目標 (今後5年間) |
||
---|---|---|---|---|---|---|
当社取扱い 水産原料 |
MSC/COC認証取得原料の 取扱い |
MSC/COC数量 | n/a |
7,300トン |
2,600トン |
10,000トン |
当社取扱い水産原料に占めるMSC/COC認証取得の割合 | 0% |
4% |
1.4% |
5% |
||
ツナ缶詰 原料用鰹鮪 |
ATI社一本釣りの取組み | ATI社一本釣り原料数量 | 8,000トン |
25,000トン |
18,802トン |
25,000トン |
一本釣りツナ製品比率 | 7% |
17% |
33% |
20% |
繊維原料
近年、世界的なファッションブランドが、サプライチェーンにおける労働環境の整備及び衣料品廃棄問題等への対応として、素材調達におけるオーガニックコットンや再生ポリエステル等の環境配慮型素材への移行を宣言する等、ファッション市場にサステナブルの潮流が浸透しつつあります。こうした中、ファッションアパレル部門では、伊藤忠商事の祖業である繊維原料のトレードにおいて、当社が主体となって取扱う繊維原料を、段階的に環境負荷の低い原料へとシフトし、かつ、原材料の調達から販売までのトレーサビリティを確立していくことを基本方針としており、2025年までに、繊維原料課が主体となって取扱う繊維原料の50%をトレース可能かつ環境負荷の低い原料に移行するとともに、ポリエステルに関しては80%を再生ポリエステルに移行することを目指しています。
インドのオーガニックコットン調達
インドのオーガニックコットン調達におけるトレーサビリティ
![[図]](/ja/csr/img/cs_soc_vc_19_img04.gif?190318)
インドのオーガニックコットン調達のGOTS認証※に関しては、認証取得したインドのジニング(綿花の収穫後に種と繊維を切り離す作業)工場から証明書付きのオーガニックコットン原綿を仕入れ、認証を取得した紡績工場に納品、同工場において紡績された糸を仕入れ、国内外の織・編工場等に販売しています。
また、オーガニックコットンのトレーサビリティに関しては、インドの綿農家のオーガニック農法への移行・ジニング工場や紡績工場のGOTS認証取得サポート等の豊富な経験とネットワークにより、現在取扱っているインドのオーガニックコットン及び移行期間(3年間)コットンの調達に関して、綿農家まで100%トレーサブルとなっています。
- GOTS認証:オーガニック繊維で作られた製品の認証のための要件を明確に示した総合的な基準であり、「認証された原料とそのトレーサビリティ」「ケミカルの使用について禁止と制限の規定」「分離と識別」「環境管理」「残留物の限界」「社会的規範」等から構成されている。
環境配慮型素材の拡充
ファッションアパレル部門では、数年前から天然素材をブランディングし、製品化して提案する取組みを進めてきましたが、昨今のグローバルアパレル市場におけるサステナブル素材への転換機運を受け、環境配慮型素材の拡充にも取組んでいます。
2019年には、循環型経済の実現を目指す「レニュー(RENU)」プロジェクトを始動させ、第一弾商品として再生ポリエステルの展開を開始しました。
2021年3月には、針葉樹林由来のセルロース素材「クウラ(Kuura)」の試験展開を開始しました。フィンランド森林業界大手のMetsa Groupと共同開発した新素材で、製造工場における再生可能エネルギーの使用や、製造工程における特殊溶剤の使用等による環境負荷の低減に加え、木材までのトレーサビリティを確立する等、革新的なサステナブル素材として注目を集めています。
今後も、環境配慮型素材の拡充に向けてグローバル企業との協業を加速していとともに、中長期的な目標である製品化までのブランディング及びトレーサビリティの確立に向けて、紡績、織編、縫製等の各工程における認証の取得及び社内横断型ビジネスの拡大に取組んでいきます。
オーガニックコットン調達パフォーマンスデータ
オーガニックコットンについては、全て、GOTS認証を取得し、トレーサブルとなっています。
項目 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 |
---|---|---|---|---|
オーガニックコットン取扱量(千キロ) | 556 |
900 |
460 |
1,252 |
綿取引に占める割合 | 9% |
32.2% |
18.2% |
63% |
オーガニックコットンのTraceability | 100% |
100% |
100% |
100% |
オーガニックコットンのGOTS認証 | 100% |
100% |
100% |
100% |