次世代育成
伊藤忠商事は、「児童の権利に関する条約」及び「子どもの権利とビジネス原則」を支持し、児童労働の根絶のみならず、「児童の権利に関する条約」の4つの柱である子どもの「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」を尊重します。また、伊藤忠グループ社会貢献活動基本方針の一つに「次世代育成」を掲げ、次世代を担う青少年の健全な育成を支援する活動を行っています。
伊藤忠記念財団への支援
1974年に財団を設立して以来、子どもの読書活動を支援しています。
KnKのフィリピンでの
「若者の家」支援
国境なき子どもたち(KnK)を通じ、2007年度より青少年自立支援施設を支援しています。
途上国と先進国の食の
アンバランスを解消する
「TABLE FOR TWO」
開発途上国の子どもたちの学校給食を支援しています。
「チャイルド・ケモ・ハウス」の支援
小児がんや難病の子どもとご家族のための滞在施設の運営を支援しています。
ケア・インターナショナル
ジャパンへの支援
ジェンダー平等と女性と女子のエンパワメントを支援しています。
環境教室の実施
子どもたちが環境保全について学ぶ場を提供しています。
中国大学生のホームステイ
受入れ
中国日本商会主催「走近日企・感受日本」プログラムに、第1回目から協力しています。
タブレット端末を子どもたちへ寄贈
コロナ禍においても子どもが学習を継続するために、電子図書をインストールした端末を寄贈しました。
伊藤忠記念財団への支援
伊藤忠商事は、1974年に伊藤忠記念財団(2012年に公益財団法人へ移行)を設立して以来、青少年の健全育成を目的とした社会貢献活動を継続して進めてきました。現在は、「子ども文庫助成事業」、「電子図書普及事業」を活動の柱に、子どもたちの健全な成長に寄与する活動を行っています。
子ども文庫助成事業
子どもたちに読書啓発活動を行っている民間団体及び個人を対象に1975年から助成を行っています。時代の変化に対応しながら、図書セットの助成、特別支援学校に通う子どもたちへの読書支援のプログラムを加え、充実を図りつつ、これまでに延べ2,808件(海外を含む)の子ども文庫に対し、約12億円の助成を行っています。2023年度は下表の通り110件でした。
2024年3月には「2023年度子ども文庫助成事業 贈呈式」と、2018年度(2019年3月)以来5年ぶりとなる懇親会も開催しました。当日は約150名の参加者が集まり、華やかな式となりました。
- 東日本大震災や台風・豪雨の被害を受けた学校に児童書を寄贈する事業も行っています。
2023年度は13校に図書を100冊ずつ寄贈しました。
電子図書普及事業
マルチメディアDAISY図書の編集・配布
マルチメディアDAISYは、電子図書の国際標準規格の一つで、文字の拡大や音声による読み上げ等、読むことに困難がある人たちが利用しやすいように配慮されたデジタル図書です。パソコンやタブレット端末を使い、目と耳で読書が楽しめます。
電子図書普及事業部は、絵本や児童書をマルチメディアDAISYに編集し、「わいわい文庫」と名付け、全国の特別支援学校や公共図書館等に寄贈しています。これまでに861作品を電子化し、2023年度は1,419箇所に送付しました。
2023年度は出版社19社をはじめ、公益財団法人日本パラスポーツ協会(JPSA)や個人の方々から素材をご提供いただきました。音訳は従来の全国音訳ボランティアネットワーク、劇団員の皆様等にお願いしました。作品の校正は、62人のボランティアにご協力をいただきました。
日本昔話の旅 88作品に
主に各地の図書館と協働で郷土の昔話を電子化する「日本昔話の旅」は、あらたに9作品が完成しました。
- 東京都墨田区 「狸ばやし」
- 埼玉県熊谷市 「奴稲荷」
- 長野県小諸市 「化身した観音さま」
- 茨城県茨城町 「カッパレもち(標準語版/方言版)」
- 東京都日野市 「いいゆだな」
- 東京都稲城市 「坂浜の一番鶏(標準語版/方言版)」
- 鳥取県倉吉市 「打吹山の天女」
- 兵庫県神戸市 「コノハナサクヤヒメと雨ごい」
- 東京都新宿区 「お豆腐地蔵」
国立国会図書館へ「わいわい文庫」を提供
国立国会図書館の「視覚障害者等用データ送信サービス」から「わいわい文庫」※の613作品が利用できるようになりました。このサービスは、視覚障害その他の理由で通常の活字の印刷物を読むことが困難な方(プリントディスアビリティ)が対象です。
- 「わいわい文庫」は、伊藤忠記念財団が製作した「マルチメディアDAISY図書」の愛称です。障害のある子どもたちが読書を通じ、小さな成功体験を積み重ねることで、自信を得、より豊かな人生を送ることを願っています。
わいわい文庫の視聴
伊藤忠記念財団のホームページ上に、「わいわい文庫」マルチメディアDAISY図書のお試し再生ができる作品を掲載しています。
動画による情報発信を開始
伊藤忠記念財団のホームページ上に、Webセミナーとして動画を掲載しています。現在、読書バリアフリー研究会等の事後配信と「読むことのバリアとバリアフリー資料(講師:専修大学文学部教授 野口武悟先生)」を掲載しています。是非ご覧ください。
認定NPO法人国境なき子どもたち(KnK)のフィリピンでの青少年支援施設「若者の家」支援活動
開発途上にある国々のストリートチルドレンや大規模災害の被災児等を支援する認定NPO法人国境なき子どもたち(KnK)を通じ、2007年度よりフィリピンのマニラ郊外にある青少年自立支援施設「若者の家」に係る支援を続けています。
背景
16世紀半ばから約400年にわたり植民地下にあったフィリピンは、その時代に大土地所有制が形成されたことが、現在も残る貧富の格差の要因と言われています。虐待、育児放棄等の問題も根深く、ストリートチルドレンや、家計を支えるために働く子ども、生き延びるために盗みをしたり、犯罪に巻き込まれてしまう子どもが未だ少なくないのが現状です。そういった子どもたちのシェルターの役割を果たしているのがKnKの「若者の家」です。危険にさらされた子どもたちや法に抵触した青少年が、健全な環境や教育、食事、心のケア、職業訓練を含む包括的な支援を受けることで尊厳を取り戻せるよう「若者の家」で保護、生活・教育支援が行われています。また、虐待・育児放棄、犯罪の予防と地域への意識付けを目的として、子どもたちの出身コミュニティにおいて子ども・青少年・保護者を対象に教育活動も行われています。
伊藤忠商事の支援
伊藤忠商事は、KnKの活動に賛同し、老朽化していた「若者の家」の再建のために2007年に支援を開始、2009年12月に「若者の家」がリニューアルオープンされました。この支援を皮切りに、2013年、同施設の地下を改修・増築。2015年には、運営に係る費用の支援(150万円×3カ年、200万円×3カ年)を始め、「若者の家」の子どもたちへの教育や食事の提供、心のケア等に使われています。2020年は、新型コロナウイルス感染拡大を受け、都市封鎖や地域隔離の間に、問題行動をとる子どもへの適切な関わりに関する理解等を深めるためのスタッフのオンライン研修を行い、外部心理専門家による子どもへのケアもより充実させました。
2024年からは、「若者の家」を卒業した後も勉強を続けられ、「若者の家」のスタッフとの関わりも継続できるよう、アフターケアプログラムの一環としての奨学金支援も開始しました。また、当社の支援はKnKフィリピンの活動の安定化に繋がり、活動継続を可能にする大きな基盤となっているとの評価を受けています。
伊藤忠商事マニラ支店社員によるボランティア
「若者の家」には伊藤忠商事マニラ支店の社員がボランティア等で定期的に訪れて交流しています。
2016年5月にはKnKフィリピンの活動15周年を記念した式典に参加、2016年から「若者の家」の子どもたちのためのクリスマスパーティを開催しており、スラム地域のストリートチルドレンを含む子どもたちにクリスマスプレゼントを配ったり、バスケットボールのミニ大会を開催したり、交流を深めていました。
新型コロナウイルスの影響により、2020年度と2021年度のクリスマスパーティは開催できませんでしたが、2021年12月に東京本社から「若者の家」とチルドレンセンター※に通う子どもたちへクリスマスプレゼントとして、ノート、クーピー、ハンドベル、ボードゲームを寄贈しました。
- チルドレンセンター:学校へ行くことのできない子どもたちにノンフォーマル教育や啓発活動などを行っている施設。
子どもたちからのコメント
- たくさんのゲームをしたり、ダンスやバスケットボールも一緒にしました。プレゼントもいただき、本当にうれしかったです。
- 皆さんが「若者の家」を訪問してくださるとき、僕はうれしいです。皆さんが来てくださる12月を毎年楽しみにしています。
ケースストーリー
ゲオくん(仮名)
ゲオくんの父親は政府による麻薬対策キャンペーンで殺害され、ゲオくん自身も2年間行政が運営する施設に収容されました。彼は、目の前で父親が殺された事実を今も受け止められません。さらに父親が亡くなった後、愛する祖母も亡くなり、彼の悲しみはさらに大きくなりました。
「若者の家」に入ってから、ゲオくんは深い悲しみや不安に襲われ、眠れない夜を過ごし、父親の死への復讐や、自分自身の人生を終わらせることまで口にするようになりました。彼は、父親が警察に殺されたことを目撃したことに加え、祖母の死去や2年以上におよぶ収容所での生活によりPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されました。
「若者の家」では、心理ケア専門家によるカウンセリング及び精神科医に処方された投薬療法を実施し、彼は今では人生に対してポジティブな見通しを語るようになり、暴力を使わずに問題解決をできるようになりました。忍耐力もつき、リーダーシップスキルを見せる等、大きな変化を見せています。
ボブくん(仮名)
ボブくんは、お酒を飲んだ父親からいつも殴られていたそうです。その父親は2015年に他界し、父親の死後、長男は反抗的になり、ボブくんに盗みを教え、その兄から身体的虐待も受けました。ボブくんは、家族から愛されておらず、兄弟から拒絶されていると感じ、家庭の内外で盗みをするようになりました。路上でたくさんの仲間を作り、ゴミを拾ったり盗みをしたりしてお金を稼ぎました。
KnKの「若者の家」の生活の中で、彼は自傷行為や不眠、自殺念慮、かんしゃく等を見せ、集中できない、教員の指導に従えない等、学校生活への適応にも困難がみられ、学校からは彼が学校生活に適応できるようになるまで学校には来ず「若者の家」で補習授業を受けるように言われました。
「若者の家」での生活を通し、彼は自尊心の向上が見られ、自傷行為や自殺念慮もなくなり、今は学校に通っています。また、家族、特に母親との関係も改善され、「若者の家」で一緒に住む他の年下の子どもたちとも徐々に関係を構築できるようになりました。
タニくん(仮名)
タニくんは窃盗で逮捕され、政府施設に1ヶ月収容されました。彼は当時14歳で、フィリピンの法律上15歳未満の子どもの軽犯罪においては、本来施設への収容が認められておらず、KnKの協力団体である他のNGOの協力により、彼は釈放されました。彼の父親は虐待的で彼を養育できないとの判断により、彼はKnKの「若者の家」に紹介されました。
タニくんは4人兄弟の3番目で、タニくんが慕っていた母親は肺炎のため40歳で亡くなり、タニくんのお父さんは露店商人として働いていましたが、子どもたち、特にタニくんに対して身体的虐待や育児放棄を行う等、父親としての責任を果たせませんでした。タニくんは父親に対する恐怖から家を離れ、コンピューターショップで働き、時々窃盗して生活していました。
KnKの「若者の家」の入居後も、彼は人を信用できず、「若者の家」や学校での窃盗事件に何度か関わり、また他の子どもたちに対しても暴力的な行動が見られました。彼の抱える課題を解決するため、ソーシャルワーカーや心理ケア専門家のカウンセリングを実施、また彼は様々な活動にも参加、学校にも通いました。「若者の家」での生活を経て、責任感が生まれ、父親との関係も改善、自己コントロールもできるようになりました。
- プライバシー保護のため、写真と各ストーリーの人物は一致していません。
アフターケアプログラムで学校に通う「若者の家」卒業生の声
チャンチャンくん(仮名)
バックグラウンド
10年生。政府施設のソーシャルワーカーからの紹介でKnKの「若者の家」に居住、卒業後の現在はKnKの奨学生として学業を継続しています。
チャンチャンくんからの声
『「若者の家」での思い出は、クリスマスパーティー、伊藤忠商事の方のご訪問など、イベントがあり、子どもたちがとても楽しめるアクティビティがあったことです。僕もとても楽しみました。学校生活では、クイズ大会、ボーイスカウトの活動などを楽しんでいますし、優等生になれるよう、学業にも励んでいます。「若者の家」のCook(料理人)の方が、料理の仕方を教えてくださったこともありますし、僕自身料理が好きなので、将来はシェフになりたいと思っています。』
ニエルくん(仮名)
バックグラウンド
11年生。「若者の家」入居前は、あまり社交的ではなく物静かでしたが、「若者の家」入居後は徐々に自己表現をするようになりました。
ニエルくんからの声
『「若者の家」では、料理を学びましたし、楽器演奏、公園でのバスケットボール、ゲームなど、自分が参加でき、他の子どもたちと関われる活動が思い出として残っています。学校では、特に体育を頑張っています。いろんなスポーツや体を動かす活動について学んでいます。』
途上国と先進国の食のアンバランスを解消する「TABLE FOR TWO」(TFT)
「TABLE FOR TWO」(「二人の食卓」、以下TFT)は、開発途上国が抱える飢餓と、先進国が抱える肥満や生活習慣病の同時解決に向けて、時間と空間を越えて食事を分かち合うというコンセプトの社会貢献プログラムです。先進国で1食とるごとに 開発途上国に1食が贈られるTFTプログラムでは、肥満や生活習慣病予防のためにカロリーを抑えた定食や食品を購入すると、1食につき20円の寄付金が、TFTを通じて開発途上国の子どもの学校給食になります。20円というのはTFTが支援する地域において、給食1食分に相当します。給食は子どもたちの基礎体力向上と病気予防の強化と同時に、就学率や学業成績の向上、 学校と親とのコミュニティ形成などの重要な役割を担っています。
TFTは2007年10月に日本で創設され、伊藤忠商事は他社に先駆けて翌年4月より東京・大阪・名古屋の社員食堂で、本格導入しました。
健康に配慮したTFT対象メニューを社員が購入すると、1食につき20円が寄付されます。これに会社も同額を寄付するマッチング・ギフト方式によって、20円が加算されます。つまり、1食につき40円がTABLE FOR TWOのプログラムを通じて開発途上国の子どもの学校給食になっています。
現在、東京本社ではTFTメニューを毎日提供しています。2023年度は、40,879食の利用があり、伊藤忠商事のマッチング寄付を合わせて1,635,160円(給食換算81,758食)を寄付することができました。
「チャイルド・ケモ・ハウス」の支援
チャイルド・ケモ・ハウスは、神戸医療産業都市(ポートアイランド)にある、小児がんや難病の子どもとご家族のための滞在施設です。数か月から一年にも及ぶことがある入院治療の間や治療後に、子どもと家族を長期的に支えています。チャイルド・ケモ・ハウスの運営をサポートするため、東京本社内にケモ・ハウス仕様の飲料自動販売機を設置し、両ビル内に設置されるすべての飲料自動販売機の売上の4%相当の金額を寄付しています。2023年度までに計4,675,866円の寄付を実施しました。
ケア・インターナショナル ジャパンへの支援
ケア・インターナショナル ジャパンは世界100か国以上で活動する国際協力NGO「CARE」に加盟する組織で、特にジェンダー平等と女性と女子のエンパワメントにフォーカスした開発支援と緊急・復興支援活動を行っています。伊藤忠商事は、同会の活動を法人会員として支援しています。
環境教室の実施
伊藤忠商事では環境問題への関心を高める取組みの一環として、1992年より毎年夏に「夏休み環境教室」を地域の子どもたちや社員家族を対象に開催しています。今までに累計約1,300人以上の次世代を担う小学生に環境保全、生物多様性保全の学び場を提供してきました。
SDGs・環境教室の実施
2021年度は10月29日に「SDGs・環境教室」と題して、(株)モノファクトリーを講師に迎え「ごみって?リサイクルって?」をテーマにオンライン形式にて開催し、小学校低学年の子どもたちが自宅からタブレットを使い参加しました。それぞれの自宅にある身近な素材を使って楽しく学びながら、SDGs17の目標のうち、「12.つくる責任 つかう責任」の理解を深め、ごみの二次利用や循環を前提にしたモノの使い方について発想を巡らせる良い機会になりました。
マングローブ・海洋プラスチックリサイクルの特別授業を実施
詳細はこちらをご覧ください。
滋賀県びわ湖 環境学習ツアー
詳細はこちらをご覧ください。
中国大学生のホームステイ受入れ
伊藤忠商事は、中国日本商会主催「走近日企・感受日本」プログラムに、第1回目から協力しています。
同プログラムは、次代を担う中国の大学生に、日本企業・大学訪問、文化視察等を通して、日本の実像に触れてもらうことで、日中両国の相互理解を深める目的で開催されており、伊藤忠商事は、単体社員を始め、グループやOB・OGからホームステイのホストファミリーを募集、学生たちに日本の家族との生活体験を提供してきました。
コロナ禍により一時中断していましたが、2023年度4年ぶりに再開され、本年2024年度は第27回目の開催となりました。