ガバナンス

体制・システム

伊藤忠商事では、全社サステナビリティ推進のための施策は、サステナビリティ推進部が企画・立案し、担当役員であるCAOの決定の下、各組織のESG責任者及び推進担当者が実行していきます。また方針の策定や重要な案件については主要な社内委員会の一つである「サステナビリティ委員会」で審議・レビューしています。CAOは、サステナビリティ委員長としての役割に加え、取締役会、HMC及び投融資協議委員会に参加します。サステナビリティ推進の主たる活動状況を定期報告として取締役会へ報告しており、環境や社会に与える影響を踏まえた意思決定を行います。
定期的にアドバイザリーボード等、社内外のステークホルダーとの対話を図ることによって当社に対する社会の期待や要請を把握し、それらを持続可能な経営や本業を通じた社会課題の解決につながる取組み推進に活かしています。

サステナビリティ関連のガバナンス体制図(2025年6月18日現在)

  • CAO: Chief Administrative Officer
    HMC: Headquarters Management Committee

取締役会

伊藤忠グループは、サステナビリティ課題への対応を経営の重要課題の一つと認識し、取締役会にてサステナビリティに関するグループ方針・戦略・関連ビジネス推進の承認をするとともに、サステナビリティ開示情報の適切性を監督しています。
マテリアリティに関しては、リスクと機会への対応方針やサステナビリティアクションプランで示している具体的アプローチ、成果指標、進捗度合い等の重要事項のレビューを通し、取締役会がマテリアリティの妥当性を監督しています。
環境・社会リスクを含むサステナビリティ関連のリスクと機会に対応する事業戦略・投資戦略の執行(戦略の見直し・事業撤退判断を含む)に関して、当社ではすべての新規投資案件に対し、事前のESGリスク評価として「投資等に関わるESGチェックリスト」を使用し、サステナビリティ関連のリスクに関する方針、体制及び取組状況を把握、分析したうえで、重要事項を協議するHMCにてサステナビリティ関連のリスクを検証しております。
また、投資実行後は、サステナビリティ関連のリスクの予防を目的とする事業会社のサステナビリティ・モニターレビューや、人権デューデリジェンス、環境汚染等の未然防止を目的とする現地訪問調査等を多面的に実施しております。
バリューチェーン上の管理については、サプライヤーのESG取組み状況を確認するサステナビリティ調査を毎年実施しています。また、気候変動や自然資本へのリスクと機会に関する取組みはTCFDやTNFDフレームワークに基づく分析・開示を行っています。これらの審議内容や取組みについては、定期的にCAOから取締役会に報告され、取締役会が監督しています。

取締役会のスキル・コンピテンシー

当社CAOはSDGs・ESG分野の専門的経験・知見を有しており、サステナビリティに関する各種施策の立案・実施を担当するサステナビリティ推進部より月2回程度の頻度で定期報告を受けています。また、外部有識者を招聘して毎年開催するサステナビリティアドバイザリーボードでの講義、意見交換を通じて、サステナビリティに関する世の中の動向、当社への期待、対応すべき課題に対する知見を深めています。
当社の代表取締役であるCAOは、会社の全般的経営方針及び経営に関する重要事項を協議するHMCのメンバーであると同時に、サステナビリティ委員会の委員長を兼務しており、サステナビリティに関する統括責任者としてサステナビリティ委員会で審議した事項を決定しています。なお、重要事項については、CAO決定後に、HMCで承認しています。当該決定事項は、CAOからサステナビリティ推進の主たる活動状況と共に年3回程度取締役会に報告することで、取締役会の監督にあたってのコンピテンシーを確保していると考えています。

サステナビリティ委員会

サステナビリティ関連事項に対応するための各種施策の立案・実施に関する審議を行うサステナビリティ委員会は、サステナビリティ関連目標設定・進捗状況、現状のサステナビリティ関連のリスク及び機会等を識別・評価・管理しています。取締役会はサステナビリティ関連のリスク及び機会に対応する事業戦略・投資戦略の執行(戦略の見直し・事業撤退判断を含む)を監督しています。また、各カンパニー及び職能部署の経営管理者をESG責任者に任命し、ESG責任者がサステナビリティ関連事項について各種施策・取組の進捗を管理し、サステナビリティ委員会に報告しております。

2024年度サステナビリティ関連審議・報告実績

サステナビリティ
関連会議体
メンバー 開催数 主な承認・審議・報告内容
取締役会 取締役・監査役 3回
  • サステナビリティ委員会での審議内容及びCAO決定事項の報告
  • ESG評価関連の報告
  • 社会貢献活動報告
サステナビリティ
委員会
委員長:CAO
委員:
業務部
広報部
人事・総務部
法務部
財務部
経理部
統合RM部
IR部
各部長 営業カンパニー 経営企画部長 常勤監査役
2回

承認事項

  • 有価証券報告書サステナビリティ関連開示
  • 環境方針改訂
  • 「サプライチェーン・サステナビリティ行動指針」の改訂及び配布先拡大

報告事項

  • マテリアリティの確認
  • サステナビリティアクションプランレビュー
  • 伊藤忠グループ サステナビリティ・モニターレビューの
    結果
  • 開示関連(CSRD、ISSB/SSBJ等)対応状況報告
  • GHG関連報告(GHG排出量、GHG削減貢献量)
  • ISO14001環境マネジメントレビュー
  • 人権デューデリジェンス、サステナビリティ調査報告

サステナビリティアドバイザリーボード

サステナビリティアドバイザリーボードは、伊藤忠商事のビジネスが多様化・広域化する中で、経営幹部と外部ステークホルダーとの対話を通じ、目指すサステナビリティの方向性と社会のニーズとの合致を確認し、サステナビリティ推進に活かすことを目的として設置したものです。当社では毎年開催しています。

サステナビリティアドバイザリーボード2024実施概要

サステナビリティアドバイザリーボード2024会議の様子
サステナビリティ研究所
冨田氏
WWFジャパン
山岸氏
経済産業省
西田氏

2024年度のアドバイザリーボードは、「GHG排出量削減のためのサプライヤーエンゲージメント」をテーマに、有識者3名をお迎えし、2025年1月に開催しました。まず当社のScope3の特徴や収集における工夫や課題を紹介し、続いて有識者の方々からはそれぞれ異なった立場から、国のGX推進策、GHGプロトコル改定、サプライヤーからのGHGデータ取得等に関する最新動向の講義をいただきました。

またカンパニーから、Scope3の削減に結び付いた具体的事例を紹介しました。伊藤忠グループでは、削減貢献量に資する事業を推進すると共に、引き続きバリューチェーン上の取引先の皆様と協力して、商品・サービスの環境配慮設計の推進や使用エネルギーのグリーン化等を進め、GHG排出量の削減に尽力していきます。

過去の実施概要

(役職は当時)

2024年度

GHG排出量削減のためのサプライヤーエンゲージメント

  • アドバイザリーボードメンバー
    • 西田 光宏 経済産業省 GXグループGX投資促進課長
    • 山岸 尚之 公益財団法人世界自然保護基金ジャパン 自然保護室長
    • 冨田 秀実 一般社団法人サステナビリティ経営研究所 代表理事
  • 伊藤忠商事メンバー
    • 小林 文彦 代表取締役 副社長執行役員 CAO
    • 奥寺 俊夫 機械経営企画部長
    • 鈴木 航太郎 金属経営企画部長
    • 坂梨 元 エネルギー・化学品経営企画部長
    • 上垣内 義博 食料経営企画部長
    • 高橋 康弘 住生活経営企画部長
    • 浅野 哲也 情報・金融経営企画部長
    • 岡 徹 第8経営企画室長
    • 吉越 景 繊維経営企画部
    • 田部 義仁 サステナビリティ推進部長(司会)
2023年度

自然資本・生物多様性・TNFD

  • アドバイザリーボードメンバー
    • 浜島 直子氏 環境省 自然環境局 自然環境計画課 生物多様性主流化室長
    • 藤田 香氏 東北大学 グリーンミライ創造機構/大学院生命科学研究科 教授 兼 日経ESGシニアエディター
    • 冨田 秀実氏 LRQAサステナビリティ株式会社代表取締役
2022年度

サプライチェーンと人権

  • 外部講師
    • 豊田 原氏 経済産業省 大臣官房 ビジネス・人権政策調整室長
  • アドバイザリーボードメンバー
    • 松井 智予氏 東京大学大学院 法学政治学研究科 教授
    • 若林 秀樹氏 国際協力NGOセンター理事・THINK Lobby所長、GCNJ理事
2021年度

カーボンクレジット

  • アドバイザリーボードメンバー
    • 梶川 文博氏 経済産業省 環境経済室長
    • 高村 ゆかり氏 東京大学 未来ビジョン研究センター教授
    • 冨田 秀実氏 LRQAサステナビリティ株式会社 代表取締役
2020年度

気候変動への対応

  • アドバイザリーボードメンバー
    • 高村 ゆかり氏 東京大学 未来ビジョン研究センター教授
    • 内藤 冬美氏 環境省CSO(Chief Sustainability Officer)、地球環境局地球温暖化対策課脱炭素ビジネス推進室長
    • 冨田 秀実氏 ロイドレジスタージャパン株式会社 取締役

サステナビリティの社内浸透

伊藤忠商事は、サステナビリティ活動の推進にあたり、グループを含む役員及び社員に一層の理解を促し、最新の世界動向に則した社会課題の解決に事業を通じて取組んでいくため、様々な社内啓発活動を行っています。

サステナビリティ推進に関する啓発活動の実施

サステナビリティの社内浸透と意識調査を目的として、伊藤忠商事の役員・全社員を対象に「サステナビリティ一般教育」を毎年実施しています。この研修は、環境、ビジネスと人権等に関する世の中の動向やその状況を受けた伊藤忠の取組み、方針、施策について理解を促す内容としています。また、受講修了時に実施する「社員アンケート」に寄せられた意見や理解度の状況を翌年度の研修に活かしています。

テーマ 受講率
2024年度

CAOメッセージ、経営方針とサステナビリティ、GHG排出量削減目標と削減貢献量、環境・社会リスク対応、(トピック)自然資本

100%

2023年度

CAOメッセージ、三方よし資本主義、企業価値向上に資する非財務の役割、開示要請の広がり、環境GHGから自然資本へ拡大、社会・人権

100%

2022年度

SDGsとサステナビリティ(最新動向、サステナビリティアクションプラン、GHG排出量削減・気候変動対策、ビジネスと人権、サプライチェーンマネジメント等)

100%

2021年度

SDGsとサステナビリティ(最新動向、伊藤忠グループのリスクと機会、GHG排出量削減・気候変動対策、ビジネスと人権、サプライチェーンマネジメント等)

100%

2020年度

サステナビリティの潮流(伊藤忠グループの重要課題とリスクと機会について)

100%

サステナビリティセミナー

様々なサステナビリティ課題に関して社外の方の見識や意見を取り入れることで、社員の実践的な知見が向上することを目指し、社内向けのサステナビリティセミナーを2007年から継続的に開催しています。

直近のセミナー

環境省 永田氏

2022年度は、伊藤忠グループのScope3排出量の算定方法について実践的なセミナーを開催し、更に関連する全ての社員が自らScope3の算出に対応できるようカンパニー別に算定マニュアルも整備しました。また2023年度は、TCFD及びTNFDの対象となる部門を中心に、定期的なシナリオ分析実行に向けて理解を深める動画研修を開催しました。2024年度は、環境省自然環境局生物多様性主流化室の永田綾室長をお招きし、国際的な生物多様性枠組み、日本のネイチャーポジティブ経済移行戦略から企業の具体的な取組例について、講演いただきました。当日は100名以上の社員が集まり、体系的なお話を聞きながら、自らの担当業務の自然資本への関わり方についても考える良い機会となりました。

2024年度

ビジネスにおける自然資本への配慮・共存の重要性について

2023年度

生物多様性に関する研修(基礎編、実践編)

気候変動情報開示及びシナリオ分析に向けた説明会

2022年度

伊藤忠グループにおけるScope3排出量の算定方法について

2021年度

CO2っていつ、どこで生じるの?~Life Cycle Assessment(LCA)勉強会

2018年度

ビジネスと人権(サプライチェーン上)

サステナビリティ推進に関する研修の実施

サステナビリティの社内浸透を目的とし、社内向けの各種研修において、サステナビリティ推進に関する研修を実施し、それぞれの業務領域、職責に応じて理解しておくべき環境、人権等に関する知識理解、サステナビリティ意識の向上に努めています。

研修名 対象者 研修内容 2024年度参加人数
ESG推進担当説明会

ESG推進担当

伊藤忠グループのESG推進担当者としての基礎知識
及び遂行業務の説明

70

新入社員研修

新入社員

伊藤忠グループのサステナビリティ推進について

157

新任課長研修

新任課長

伊藤忠グループのサステナビリティ推進及び社会課題と事業性を両立させるビジネス事例

58

海外赴任前研修

海外赴任が決定した社員

伊藤忠グループのサステナビリティ推進と海外に
おけるサステナビリティに関わる留意事項

180

グループ会社
新任役員研修

グループ会社の
新任役員

伊藤忠グループのサステナビリティ推進とグループ間の連携の重要性

87

サステナビリティ調査説明会

サステナビリティ
調査実施担当者

「サプライチェーン・サステナビリティ行動指針」
及びサステナビリティ調査における重要項目

67