ガバナンス

体制・システム

伊藤忠商事では、全社サステナビリティ推進のための施策は、サステナビリティ推進部が企画・立案し、担当役員であるCAOの決定の下、各組織のESG責任者及び推進担当者が実行していきます。また方針の策定や重要な案件については主要な社内委員会の一つである「サステナビリティ委員会」で審議・レビューしています。CAOは、サステナビリティ委員長としての役割に加え、取締役会、HMC及び投融資協議委員会に参加します。サステナビリティ推進の主たる活動状況を定期報告として取締役会へ報告する等環境や社会に与える影響も踏まえた意思決定を行います。
定期的にアドバイザリーボード等、社内外のステークホルダーとの対話を図ることによって当社に対する社会の期待や要請を把握し、それらをサステナビリティ推進に活かしています。

サステナビリティ関連のガバナンス体制図(2024年6月21日現在)

  • CAO: Chief Administrative Officer
    HMC: Headquarters Management Committee

取締役会

伊藤忠グループは、サステナビリティ課題への対応を経営の重要課題の一つと認識し、取締役会にてサステナビリティに関するグループ方針・戦略・関連ビジネス推進の承認をするとともに、サステナビリティ開示情報の適切性を監督しています。
マテリアリティに関して、リスクと機会への対応方針やサステナビリティアクションプランで示している具体的アプローチ、成果指標、進捗度合い等の重要事項のレビューを通し、マテリアリティの妥当性につき取締役会が監督しています。
環境・社会リスクを含むサステナビリティ関連のリスクと機会に対応する事業戦略や投資戦略の執行(戦略の見直し・事業撤退判断を含む)に関して、当社では全ての新規投資案件に対し「投資等に関わるESGチェックリスト」を使用し、事前のESGリスク評価を実施しています。社長及び取締役会による適切かつ機動的な業務執行に関する意思決定機関であるHMCにて、サステナビリティ関連のリスクと機会に関する方針、体制、取組状況等を把握・分析し、重要事項を協議したりリスクを検証しています。また、投資実行後は、サステナビリティ関連のリスクの予防を目的とする事業会社のモニター・レビューや、人権デューデリジェンス、環境汚染等の未然防止を目的とする現地訪問調査等を多面的に実施しています。
バリューチェーン上の管理については、サプライヤーのESG取組み状況を確認するサステナビリティ調査を毎年実施しています。また、気候変動や自然資本へのリスクと機会に関する取組みはTCFDやTNFDフレームワークに基づく分析・開示を行っています。これらの審議内容や取組みについては、定期的にCAOから取締役会に報告され、取締役会が監督しています。

取締役会のスキル・コンピテンシー

当社CAOはSDGs・ESG分野の専門的経験・知見を有しており、サステナビリティに関する各種施策の立案・実施を担当するサステナビリティ推進部より月2回程度の頻度で定期報告を受けています。また、外部有識者を招聘して毎年開催するサステナビリティアドバイザリーボードでの講義、意見交換を通じて、サステナビリティに関する世の中の動向、当社への期待、対応すべき課題に対する知見を深めています。
当社の代表取締役であるCAOは、会社の全般的経営方針及び経営に関する重要事項を協議するHMCのメンバーであると同時に、サステナビリティ委員会の委員長を兼務しており、サステナビリティに関する統括責任者としてサステナビリティ委員会で審議した事項を決定しています。なお、重要事項については、CAO決定後に、HMCで承認しています。当該決定事項は、CAOからサステナビリティ推進の主たる活動状況と共に年3回程度取締役会に報告することで、取締役会の監督にあたってのコンピテンシーを確保していると考えています。

サステナビリティ委員会

サステナビリティ関連事項に対応するための各種施策の立案・実施に関する審議を行うサステナビリティ委員会は、サステナビリティ関連目標設定・進捗状況、現状のサステナビリティ関連のリスク及び機会等を識別・評価・管理しています。取締役会はサステナビリティ関連のリスク及び機会に対応する事業戦略・投資戦略の執行(戦略の見直し・事業撤退判断を含む)を監督しています。また、各カンパニー及び職能部署のマネジメントを執行側のESG責任者と定めています。ESG責任者はサステナビリティ関連事項について各種施策・取組みの進捗管理及びモニタリングし、サステナビリティ委員会に報告しています。

2023年度サステナビリティ関連審議・報告実績

サステナビリティ
関連会議体
メンバー 開催数 主な承認・審議・報告内容
取締役会 取締役・監査役 4回
  • サステナビリティ委員会での審議、CAO決定事項
  • 社会貢献活動報告
サステナビリティ
委員会
委員長:CAO
委員:業務部、広報部、人事・総務部、法務部、財務部、経理部、統合RM部、IR部各部長、各ディビジョンカンパニー経営企画部長、常勤監査役
3回
  • 有価証券報告書サステナビリティ関連開示
  • マテリアリティの確認
  • サステナビリティアクションプランレビュー
  • 外部からのESG評価
  • 「環境・社会リスク」モニター・レビュー結果
  • CSRD推進体制
  • 気候変動対応
  • 自然資本(生物多様性)/ TNFD開示
  • ISO14001環境マネジメントレビュー
  • 人権デューデリジェンス、サステナビリティ調査レビュー
  • 人的資本の開示

サステナビリティアドバイザリーボード

サステナビリティアドバイザリーボードは、伊藤忠商事のビジネスが多様化・広域化する中で、経営幹部と外部ステークホルダーとの対話を通じ、目指すサステナビリティの方向性と社会のニーズとの合致を確認し、サステナビリティ推進に活かすことを目的として設置したものです。

サステナビリティアドバイザリーボード2023実施概要

サステナビリティアドバイザリーボード2023会議の様子

2023年度は、「自然資本・生物多様性・TNFD」をテーマに、産学官の有識者3名をお迎えし、2024年2月に開催しました。有識者には、それぞれ異なった立場から、最新動向等の講義をいただき、その後伊藤忠商事のサステナビリティ推進部から「自然資本関連情報開示に向けた取組状況について」を紹介し、質疑応答では忌憚のない意見交換が行われました。本アドバイザリーボードで交わされた意見をもとに、当社の自然資本に関するリスクと機会の取組みや、TNFDフレームワークに基づく分析評価結果を開示していきます。「リスク管理については既に持続可能な調達の観点で取り組んでいることがわかる」「サステナブルな原材料を作っている生産者から購入することでサプライチェーン全体を変えていくことが重要だと思う」「商社は自然関連でビジネスチャンスになる側面がある。いかに先取りしてビジネスチャンスを発掘するかが腕の見せどころ」と伊藤忠への期待と助言をいただきました。

過去の実施概要

(役職は当時)

2023年度

自然資本・生物多様性・TNFD

  • アドバイザリーボードメンバー
    • 浜島 直子氏 環境省 自然環境局 自然環境計画課 生物多様性主流化室長
    • 藤田 香氏 東北大学 グリーンミライ創造機構/大学院生命科学研究科 教授 兼 日経ESGシニアエディター
    • 冨田 秀実氏 LRQAサステナビリティ株式会社代表取締役
  • 伊藤忠商事メンバー
    • 小林 文彦 代表取締役 副社長執行役員 CAO
    • 大室 良磨 繊維経営企画部長
    • 奥寺 俊夫 機械経営企画部長
    • 田野 治 金属経営企画部長
    • 坂梨 元 エネルギー・化学品経営企画部長
    • 上垣内 義博 食料経営企画部長
    • 高橋 康弘 住生活経営企画部長
    • 橋本 敦 情報・金融経営企画部長
    • 向畑 哲也 第8経営企画室長
    • 田部 義仁 サステナビリティ推進部長(司会)
2022年度

サプライチェーンと人権

  • 外部講師
    • 豊田 原氏 経済産業省 大臣官房 ビジネス・人権政策調整室長
  • アドバイザリーボードメンバー
    • 松井 智予氏 東京大学大学院 法学政治学研究科 教授
    • 若林 秀樹氏 国際協力NGOセンター理事・THINK Lobby所長、GCNJ理事
2021年度

カーボンクレジット

  • アドバイザリーボードメンバー
    • 梶川 文博氏 経済産業省 環境経済室長
    • 高村 ゆかり氏 東京大学 未来ビジョン研究センター教授
    • 冨田 秀実氏 LRQAサステナビリティ株式会社 代表取締役
2020年度

気候変動への対応

  • アドバイザリーボードメンバー
    • 高村 ゆかり氏 東京大学 未来ビジョン研究センター教授
    • 内藤 冬美氏 環境省CSO(Chief Sustainability Officer)、地球環境局地球温暖化対策課脱炭素ビジネス推進室長
    • 冨田 秀実氏 ロイドレジスタージャパン株式会社 取締役
2019年度

循環型経済におけるサステナブルビジネスの方向性

  • アドバイザリーボードメンバー
    • 細田 衛士氏 中部大学経営情報学部教授、慶應義塾大学名誉教授
    • 福地 真美氏 東京大学大学院情報学環准教授
    • 冨田 秀実氏 ロイドレジスタージャパン株式会社 取締役

サステナビリティの社内浸透

伊藤忠商事は、サステナビリティ活動の推進にあたり、グループ社員に一層の理解を促し、最新の世界動向に則した社会課題の解決に事業を通じて取組んでいくため、様々な社内啓発活動を行っています。

サステナビリティ推進に関する啓発活動の実施

サステナビリティの社内浸透と意識調査を目的として、伊藤忠商事の役員・全社員を対象に「サステナビリティ一般教育」を毎年実施しています。この研修は、環境、ビジネスと人権等に関する世の中の動向やその状況を受けた伊藤忠の取組み、方針、施策について理解を促す内容としています。また、受講修了時に実施する「社員アンケート」に寄せられた意見や理解度の状況を翌年度の研修に活かしています。

テーマ 受講率
2023年度

CAOメッセージ、三方よし資本主義、企業価値向上に資する非財務の役割、開示要請の広がり、環境GHGから自然資本へ拡大、社会・人権

100.0%

2022年度

SDGsとサステナビリティ(最新動向、サステナビリティアクションプラン、GHG排出量削減・気候変動対策、ビジネスと人権、サプライチェーンマネジメント等)

100.0%

2021年度

SDGsとサステナビリティ(最新動向、伊藤忠グループのリスクと機会、GHG排出量削減・気候変動対策、ビジネスと人権、サプライチェーンマネジメント等)

100.0%

2020年度

サステナビリティの潮流(伊藤忠グループの重要課題とリスクと機会について)

100.0%

2019年度

サステナビリティを取り巻く世の中の流れ(ESG、SDGs、気候変動、サプライチェーン)

100.0%

サステナビリティセミナー

様々なサステナビリティ課題に関して社外の方の見識や意見を取り入れるため、社内向けのサステナビリティセミナーを2007年から継続的に開催しています。

直近のセミナー

セミナーの様子

2022年2月、伊藤忠グループのScope 3排出量の算定方法について実践的なセミナーを開催し、関連する全ての社員が自らScope 3の算出に対応できるよう、能力向上に努めています。また2023年4月には、自然資本への依存度や影響度が高い事業を担う部署を中心に、ビジネスと自然資本や生物多様性との関係性、対応すべきこと等について動画研修を開催しました。10月には、TCFDシナリオ分析に取り組む背景や意義について改めて、シナリオ分析を行う部署を中心に理解を深めるためのセミナーを開催しました。いずれも、外部コンサルティング会社から専門的な内容も含めてお話頂きました。

2023年度

生物多様性に関する研修(基礎編、実践編)

気候変動情報開示及びシナリオ分析に向けた説明会

2022年度

伊藤忠グループにおけるScope 3排出量の算定方法について

2021年度

CO2っていつ、どこで生じるの?~Life Cycle Assessment(LCA)勉強会

2020年度

SDGsって儲かるの?

2018年度

ビジネスと人権(サプライチェーン上)

サステナビリティ推進に関する研修の実施

サステナビリティの社内浸透を目的とし、社内向けの各種研修において、サステナビリティ推進に関する研修を実施し、それぞれの業務領域、職責に応じて理解しておくべき環境、人権等に関する知識理解、サステナビリティ意識の向上に努めています。

研修名 対象者 研修内容 2023年度参加人数
ESG推進担当説明会

ESG推進担当

伊藤忠グループのESG推進担当者としての基礎知識
及び遂行業務の説明

101

新入社員研修

新入社員

伊藤忠グループのサステナビリティ推進について

114

海外赴任前研修

海外赴任が決定した社員

伊藤忠グループのサステナビリティ推進と海外に
おけるサステナビリティに関わる留意事項

62

グループ会社
新任役員研修

グループ会社の
新任役員

伊藤忠グループのサステナビリティ推進とグループ間の連携の重要性

130

新任課長研修

新任課長

伊藤忠グループのサステナビリティ推進及び社会課題と事業性を両立させるビジネス事例

50

サステナビリティ調査説明会

サステナビリティ
調査実施担当者

「サプライチェーン・サステナビリティ行動指針」
及びサステナビリティ調査における重要項目

109