担当役員

写真:小林CAO
タイトル:受け継がれる「三方よし」の精神とサステナビリティ

受け継がれる「三方よし」の精神とサステナビリティ

伊藤忠グループは、企業理念「三方よし」の精神のもと、自社の利益だけではなく取引先、株主、顧客、従業員を始め、様々なステークホルダーの期待と信頼に応えて社会課題の解決に貢献することにより、世の中に善き循環を生み出し、持続可能な社会を実現することを目指しています。
「三方よし」の理念は創業者である伊藤忠兵衛が麻布を全国各地へ行商する「持ち下り」の際に、顧客ニーズに合わせた商品を合理的な価格で提供することに加え、訪問先の地域社会に対しても災害復興支援や教育機関の設立等を通じて発展に貢献し、事業基盤と信頼関係を広げていく中で育まれました。「三方よし」は当社ビジネスの持続可能な発展の基礎となり、長期的な企業価値向上に繋がりました。昨年、伊藤忠と企業理念「三方よし」は、ビジネススクール最高峰の一つであるハーバード・ビジネス・スクール(HBS)で「企業の信頼構築」を専門とするサンドラ・サッチャー教授の事例研究(ケース)に選定されました。事例研究では「三方よし」が企業の信頼構築とビジネスの成長の基盤になっていることを学術的に証明しています。

同業他社に比べ従業員数が少ない当社は、従業員一人ひとりが健康でモチベーション高く働くことができるよう、人的資本の強化に資する取組みとして働き方改革を推進しています。創業者は人材育成を重視して有能な人材を積極的に登用し、会議制度を採用して店員とのコミュニケーションを重視し、店主と従業員の相互信頼の基盤をつくりあげました。「厳しくも働きがいのある会社」を標榜する現代の伊藤忠にもこの精神は受け継がれており、朝型勤務制度の導入やがん治療と仕事の両立支援といった一連の施策を通じて全ての従業員がやりがいをもって働き続けられる職場環境の構築を進めて来ました。こうした働き方改革は当社の企業ブランド価値向上を後押しし、2026年卒大学生向けの就職人気企業ランキングでは主要7媒体のうち、過去最多となる6媒体で全業種中1位を獲得することが出来ました。これまでの成果に満足することなく、現場での実践と豊富な研修の提供によって主体的なキャリア形成を支援し、社会環境の変化や顧客ニーズを捉えた「無数の使命」を果たす「商人」を育成し、「三方よし」を実現できる人材を輩出してまいります。

当社のサステナビリティ推進の施策では、人的資本の強化を推進するともに、本業を通じて環境面でもSDGsの達成に貢献する取組を進めています。ステークホルダーに当社の事業リスク・機会への対策についてより理解していただくためにも気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)や自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言に沿った情報開示を積極的に進めています。今年度、TNFDでは自然への依存と影響度が高い天然ゴム事業を対象に分析し、その結果を開示しました。当社のビジネスと取引先や地域社会、自然環境の調和を目指すためにも自然資本に関する取組は、三方よしの新たな実践になると考えております。
これらの施策を基盤として顧客や地域社会等と長期的な関係を築くことで創業者から受け継いだ「三方よし」の精神が更にグローバルに認知されますように、「経営方針 The Brand-new Deal」で掲げた定性面の磨きを通じた企業ブランド価値の向上に努めてまいります。

2025年6月
代表取締役
副社長執行役員 CAO
小林 文彦