体制・システム
サプライチェーン
事業領域の拡大を背景に、伊藤忠商事のサプライチェーンは広域化・複雑化し、自社が直接管理できる工程だけでなく、原料の調達や生産地、中間流通及び消費地での人権・労働及び環境等へのリスクマネジメントがより必要となっています。特に自社の購買シェアが比較的高いサプライヤーの現場管理については、その配慮や責任度合も大きく、優先して取組むべき事項として捉えています。
伊藤忠商事は、「伊藤忠商事サプライチェーン・サステナビリティ行動指針」を定め、以下のような調査・レビューの取組みを行うことで、問題発生の未然予防に努め、問題が見つかった場合にはサプライヤーとの対話を通じて改善を目指します。
![[図]](/ja/csr/img/cs_sc_mgt_18_img01.gif)
サステナビリティ調査
サプライヤーの実態を把握するため、ISO26000の7つの中核主題を必須調査項目としたうえで、高リスク国・取扱商品・取扱金額等一定のガイドラインのもとに各カンパニー及び該当するグループ会社が重要サプライヤーを選定し、各カンパニーの営業担当者や海外現地法人及び事業会社の担当者がサプライヤーを訪問しヒアリングを実施しています。またアンケート形式(サステナビリティチェックリスト)のサステナビリティ調査を2008年度より進めています。
サステナビリティチェックリスト
![[図]](/ja/img/cs63_im02.jpg)
サステナビリティチェックリストはISO26000の7つの中核主題(組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティへの参画及び発展)に基づき、中核主題以外も、生活資材部門(紙・チップ/木材)では森林保全のチェック項目、食料カンパニーでは食品安全の項目、繊維カンパニーでは知的所有権保護の項目等を追加するなど分野に応じた調査を実施しています。また、外部有識者の意見を参考に、設問の中でも、対応や対策が不十分の場合、持続可能リスクが高くなる人権・労働慣行・環境を中心とした19設問を重要設問として設定し、重点的に、サプライヤーへの改善対応の働きかけを実施しています。
また、サプライヤーとのコミュニケーションに関するハンドブックも作成し、担当者がより具体的に重要サプライヤーの環境・人権・労働慣行・腐敗防止等の管理状況の実態を把握し、改善アドバイスも行うことができるチェックの仕組みを展開すると共に、社員周知に活用していきます。今後も調査やコミュニケーションを継続することで、社員の意識向上とサプライヤーへの理解と実践を求めていきます。
ハンドブック記載例

強制労働とは、本人の意思に反して強制的に行われるあらゆる労働のことです。例えば、借金の返済のために離職の自由が制限されていたり、または契約で職場を離れる自由が制限されている場合などは強制労働に該当します。勤務シフトはどのようか、休憩時間はあるか、食事をとることができているか、従業員へのヒアリングや顔色を観察することからわかる場合もあります。劣悪なケースでは、社員寮が工場敷地内にあり、敷地外へ出ることが制限されるなど、生活そのものが拘束されていることもあります。地方や他国から働きに来ている従業員はいるか、確認することも有効です。パスポートや身分証明書、労働許可書などの原本を雇用者が預かることは、強制労働を招く行為として禁止されなければいけません。
参考
新興国のみでなく日本の工場でも強制労働がないか、確認が必要です。近年、日本の「外国人技能実習制度」が一部海外から批判が集まっているため、国内でも外国からの従業員がいるか、労働時間、賃金面で問題ないか等、確認してください。
2018年度サステナビリティ調査
2018年度は、海外店・グループ会社のサプライヤー101社を含む計343社の調査を行い、その結果からは直ちに対応を要する深刻な問題は見つかりませんでした。調査時には懸念事項としてあがった問題点も、取引先による迅速な改善措置や対策等を確認しており、今後も取引先に対して、当社の考え方に対する理解を求め、コミュニケーションを継続していきます。
2018年度実績 | 対象基準 | 調査対象 会社数 |
調査項目 |
---|---|---|---|
繊維 |
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49社 |
・全カンパニー共通の主な設問
・分野別設問
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機械 | 13社 |
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金属 | 19社 |
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エネルギー・化学品 | 39社 |
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食料 | 110社 |
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住生活 | 108社 |
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情報・金融 | 5社 |
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合計 | 343社 |
重要サプライヤーに対しては、必要に応じてサステナビリティ推進室が外部専門家と共に訪問調査も実施しています。
タイ家禽産業への人権監査を実施
~CPFサラブリー工場を視察~
食料カンパニーの主要仕入れ先のひとつであるCharoen Pokphand Foods Public Company Limited(CPF)のサラブリー工場(鶏肉加工品工場)において、外国人労働者を対象とした人権監査を、外部監査員同行のもと実施しました。
近年、タイの畜産業や漁業における外国人労働者の人権侵害に関して、タイ企業をサプライチェーンに持つ日本企業がNGO団体などから指摘を受けるケースが増えています。今回の監査を通じて、当社のサプライチェーン上の人権リスクの有無を現場にて確認しました。
同工場(堵殺場、食品加工場)では労働者の約50%にあたる3,400人のカンボジア人が働いており、重要な労働力となっています。監査では、工場内施設におけるカンボジア語表記の徹底、避難経路の確認、勤怠管理状況、パスポート及び労働許可証の個人保管状況などを確認し、また実際に働いているカンボジア人労働者を無作為に選んで労働実態のヒアリングも行いました。
今回の監査では、外国人労働者に対する人権侵害とみなされるような問題は確認されず、CPFの人権に対する十分な配慮とサステナビリティへの積極的な取組み姿勢を改めて認識しました。
CPFでは、外国人労働者にとっても安全な労働環境が整備されていました
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事業別マネジメントルール
EHSガイドラインの運用
金属カンパニーでは、資源の安定供給につながる持続可能な鉱山開発に取組む為、金属・石炭・ウラン等の鉱山事業を対象とし、EHS(環境・衛生・労働安全)ガイドラインを定め、運用しています。
探査・開発・生産といった事業活動に起因する環境汚染、事業に携わる者の健康障害、また事故等による環境・衛生・労働安全面のリスクを回避・低減する為に、関連する課題及び望ましい管理方法を要訳したガイドラインと、具体的なチェックリストを日本語・英語で作成しています。
新規投資の検討を行う場合のみならず、既に参画しているプロジェクトについても、パートナーとともに都度状況の確認を行い、より環境や安全に配慮した資源開発について協議・改善する機会を作っています。2018年度は新規1プロジェクト、既存事業については非OECD諸国の5プロジェクトに対して確認作業を実施し、フォローすべき項目を設定しました。
国際金融公社(IFC)等のグローバルな基準に照らし合わせてガイドラインを作成し、チェックリストで標準化したプロセスを確立すると共に、プロジェクト毎のリスクに合わせた弾力的な運用を行えるよう、都度、見直しを行っています。
また、まずは組織員がEHS遵守の意識を持つことが重要であることから、毎年、具体的な事例を用いた啓蒙活動を実施し、周知徹底を図っています。2018年度は主管者や事業投資に従事する組織員に対して社内講習を実施。対象者の受講率は100%でした。
食品加工工場の定期訪問調査
食料カンパニーでは、食品安全・コンプライアンス管理室主導で、輸入食品については2011年度より海外サプライヤーの食品加工工場の定期的な訪問調査を実施しています。2018年度は、海外サプライヤー196社を訪問し、食料取引における安全確保の為の未然防止策を展開しています。2015年1月からは、北京に中国食品安全管理チームを開設し、中国サプライヤーの監査を行うことが出来る体制を整えました。2018年度は、57社の定期監査・フォローアップ監査を実施しております。詳細は顧客責任をご参照ください。
違反サプライヤーへの対応
本方針の趣旨に違反する事例が確認された場合には、対象となるサプライヤーに是正措置を求めるとともに、必要に応じて現地調査を行い指導・改善支援を実施していきます。2018年度の調査では、人権に関する対応が不十分なサプライヤーに対して是正依頼を18件行いました。非遵守サプライヤーに対しては、このように是正依頼を継続して行っていきます。是正依頼等を継続的に行ったにも関わらず、是正が困難と判断された場合には、取引を見直す姿勢で取組んでまいります。
事業投資マネジメント
投資先の事業活動が、環境や社会に与え得る影響を認識し対処するため、ESGリスクの把握と未然防止活動に努めています。チェックリストの活用や訪問調査を通じてESG全般についてリスク評価を行い、必要な措置を策定しています。また、これらは環境マネジメントシステムの枠組みの中で継続的に見直し、改善されています。
新規事業投資案件のESGリスク評価
新規事業投資案件について、申請部署は「投資等に関わるESGチェックリスト」を用いて、投資案件が、ESGの観点で方針及び体制が整備されているか、環境への著しい悪影響や法令違反、利害関係者から訴えられるリスクが無いか等を、事前に評価(デューデリジェンス)することが義務付けられています。このチェックリストは、CSRの国際ガイドラインであるISO26000の7つの中核主題※の要素を含む33のチェック項目から成り立っています。
申請部署は、関係職能部(管理部門)によるリスク分析を踏まえた審査意見も参照し、万が一懸念点がある場合は、専門的な見地を必要とする案件については外部専門機関に追加のデューデリジェンスを依頼し、その結果に問題がないことを確認した上で、着手することにしています。
- 組織統治・人権・労働慣行・環境・公正な事業慣行・消費者課題・コミュニティへの参画及びコミュニティの発展
グループ会社実態調査
グループ会社における環境汚染等の未然防止を目的として、現地訪問調査を2001年より継続的に行っています。2017年度は各社の環境・社会リスクを勘案の上、外部専門家も起用し計4社に対して実施しました。2018年3月末までに合計283事業所に対して調査を完了しました。
本調査は、経営層との質疑応答や、工場・倉庫等の施設並びに河川への排水状況調査、環境法規制の遵守状況、労働安全・人権や地域社会とのコミュニケーション等を点検し、問題点を指摘または予防策を示し、是正状況を確認しています。
訪問調査レポート DOLE THAILAND実態調査
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2016年12月7~8日、タイでパイナップルを始めとしたフルーツ缶・パウチを製造するDOLE THAILANDのHua Hin工場を訪問調査しました。現地の法規制に詳しい外部専門家の知見を基に土壌汚染・廃棄物・化学物質管理・安全対策等、環境・労働安全関連のリスク管理・法令遵守状況について詳細なチェックを行い、適切な管理を行っていることを確認するとともに、社内労働衛生委員会の設置、環境目標の設定と着実な実行、契約農家への買い取り保証、地元政府との定期的な対話などのESG上重要な施策が行われていることも認識できました。化学物質の保管方法、食品加工機械操作に伴う事故予防対策等に関する助言については適切に対応し、更なる管理レベルの向上に取組んでいます。