雇用・福利厚生

方針・基本的な考え方

伊藤忠商事の幅広い事業領域でのグローバルなビジネス展開は、連結対象となるグループ会社も一体となり、伊藤忠グループとして取組んでいます。2023年度末時点で、当社グループの連結従業員数は11万人を超えています。当社では、働き方改革を中心とした朝型勤務の進化、仕事と育児・介護の両立を支援するための諸制度の導入、福利厚生施設の充実を通じた従業員交流の機会の増加等により、多様な人材が最大限能力を発揮できる職場環境の実現に向けての取組みを推進しています。

伊藤忠商事では「企業行動倫理規範」で人権の尊重・配慮、厳しくとも働きがいのある職場環境の整備を規定しています。また、当社の労働基準は、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言(とそのフォローアップ)」で推進が表明されている「労働における基本的原則及び権利」の「雇用及び職業における差別の排除」に則って作成されています。そのため、当社では、法定最低賃金を遵守し、同一資格・同一職務レベルにおいて、統一された報酬体系(同一労働同一賃金)が適用されています。

  • 伊藤忠グループ「人権方針」2. 国際規範の支持・尊重の項で支持表明しています。
当社の人材戦略の構成する「人材の確保」「働き方の進化」「健康力向上」「キャリア形成支援」「成果に応じた評価・報酬」「経営参画意識向上」の6項目が好循環し、社員の士気と生産性向上に寄与

目標・アクションプラン

リスク 機会
  • 適切な対応を実施しない場合の、労働生産性の低下、優秀な人材の流出、ビジネスチャンスの逸失、健康関連費用の増加 等
  • 働きがいのある職場環境の整備による、労働生産性の向上、健康力・モチベーションの向上、優秀な人材の確保、変化やビジネスチャンスへの対応力強化 等
カンパニー SDGs
目標
インパクト分類 取組むべき
課題
事業
分野
コミットメント 具体的対応アプローチ 成果指標(単体) 進捗度合(レビュー)
総本社
労働慣行 働き方改革を通じた業務効率化と長時間労働の防止 人事 メリハリのある働き方を推進し、労働生産性及び従業員エンゲージメントの向上を目指します。
  • 勤務状況の定期的なモニタリング実施。
  • エンゲージメントサーベイの実施。
  • 夏季・冬季の休暇取得促進。
  • 労働時間法制の遵守。
  • エンゲージメントサーベイによる「従業員エンゲージメント」項目の肯定的回答率70%以上。
  • 有給休暇取得率70%以上。
  • 毎年勤務簿調査を実施し、賃金不払残業を防止。
  • エンゲージメントサーベイによる「従業員エンゲージメント」項目の肯定的回答率:2021年度71%、2018年度76%、2014年度78%。
  • 有給休暇取得率:2023年度64.7%。

※ 有給休暇取得率:2022年度 62.2%、2021年度 58.8%、2020年度 52.6%

体制・システム

国内外にあるグループ会社がそれぞれの領域、地域において事業を展開する際には、事業領域に応じ、親会社である伊藤忠商事のディビジョンカンパニーが主体となり、経営戦略に基づいた人材戦略のもと、各カンパニープレジデントが人材確保や適材適所等を法令に準拠の上、進めています。また、グループ会社の従業員にとって最適な労働環境が提供できるよう管理体制の構築を支援しています。

事業投融資案件の労働慣行に関するリスク評価

伊藤忠商事は投融資案件の審査に際し、経済的側面だけでなく、ESG(環境、社会、ガバナンス)の観点を重要視し、新規投資案件においては、「投資等に関わるESGチェックリスト」を用いて、労働慣行(労働条件、労働安全衛生、ステークホルダーとの対話)等を総合的に審議・検討しています。また、新規案件のみならず、既存事業投資先の事業経営をモニタリングし、改善に資するように努めています。
詳細は、新規事業投資案件のESGリスク評価をご覧ください。

労働基準の浸透の徹底

伊藤忠商事では報酬・労働時間と休日、労働安全衛生・福利厚生、服務規律等の労働条件に関して、入社時教育の必須事項としており、イントラネットにおいても日本語・英語による閲覧を常に可能とし、労働基準の浸透に努めています。また、国内外のグループ会社に対しても、最適な労働環境の構築支援に合わせて、伊藤忠商事と同等の労働基準の浸透を進めています。

また、当社は、厚生労働省の外郭団体である独立行政法人労働政策研究・研修機構が開催する「東京労働大学講座」に人事・労務担当者を毎年継続して派遣しています。企業における能力開発、労働時間、報酬等、人事労務管理全般についての現状を踏まえた上で、労働経済学の視点から、賃金の構造、雇用形態の多様化が進展する現代の労働市場の現状と課題、労使関係の在り方等を体系的に習得しています。

従業員エンゲージメント

伊藤忠商事は、「従業員エンゲージメント(従業員が会社に対して高い貢献意欲を持ち、自発的に能力発揮している度合い)」を継続して高めていくことが、企業価値の更なる向上に繋がると考えています。

3-4年に一度、大規模なエンゲージメントサーベイを実施・開示しており、2021年12月に実施した調査では、「働きがい(エンゲージメント)」、「活躍できる環境」の肯定的回答率は前回調査(2018年度実施)に引続き、日本トップクラスを維持しました。従業員が伊藤忠商事で働くことに対して誇りを感じ、高い貢献意欲を持って、自発的に期待以上の成果をあげるべく業務に取組んでいることを示しています。また、それ以外の年度については、主要な質問のみに厳選した簡易版のサーベイを実施し、施策に対する進捗を迅速かつ正確に把握すると共に、把握した課題等を執行役員会やHMCに報告し、新しい施策や改善策を決定しています。同調査で浮き彫りとなった課題に対しては、フェムテック等を活用した「女性活躍推進施策」や「主体的なキャリア形成支援」を通じて新たな施策を導入し、毎年効果検証を行い、速やかに対策を講ずる体制を構築しています。

エンゲージメントサーベイスコア

  2014年度 2018年度 2021年度
働きがい(エンゲージメント) 78 76 71
活躍できる環境 67 64 67
  • 回答は肯定的回答率(%)

「働き方改革」の推進

少数体制下にある伊藤忠商事にとって「人」は最大の財産であり、従業員一人ひとりが能力を最大限発揮することが企業価値向上に繋がるという考えに基づき、2010年度より「働き方改革」を積極的に推し進め、全ての従業員がそれぞれの特性を活かし、安心して仕事に集中できる環境の実現に向け、様々な施策を推進しています。

朝型勤務の進化/労働時間管理

2013年10月に導入した「朝型勤務制度」は、「夜は早く帰り、朝早く出社して効率的に働く」という従業員の意識改革が進み、当社らしい働き方が着実に定着しています。また、国の長時間労働削減の好事例とされる等、社会に大きな影響を及ぼしました。

2021年12月に実施した従業員エンゲージメント調査結果において、多様な働き方への更なる支援の必要性を把握したことから、2022年5月より「朝型フレックスタイム制度」、「在宅勤務制度」を導入しました。これにより、早く出社(始業)し早く退社(終業)することが可能となり、空いた時間を自己啓発や育児・介護等に活用することで従業員のモチベーションが高まり、労働生産性・企業価値の向上に繋がることを期待しています。

また、労働組合との36協定等法令遵守はもちろんのこと、今後も「働き方改革」を通じ総労働時間の削減にも注力していきます。当社は働き方改革の先駆者として、今後も従業員一人ひとりの働き方に対する意識改革と併せて業務改革をバランスよく推進し、更なる業務効率化や従業員の健康保持・増進、育児・介護等の理由で時間的制約のある従業員の活躍支援等、多様な人材が最大限能力を発揮できる職場環境の実現を目指していきます。

2010年度を1とした場合の労働生産性推移

労働生産性の推移を「連結純利益÷単体従業員数」で定点観測しており、2010年度を1とすると、2023年度は5.2倍まで向上している。

取組み概要

実施概要体系図

20:00~22:00の勤務は原則禁止、22:00~5:00の深夜勤務は禁止。翌営業日朝にて残業。5:00~8:00が朝型勤務推奨時間帯であり、7:50以前に勤務開始した場合は9:00まで割増賃金25%支給。8:00以前に出勤した従業員には、軽食を3品配布。
朝型軽食配布会場の様子
朝型軽食の特別コーナー
  • 20:00~22:00の勤務は「原則禁止」。業務が残っている場合は翌営業日朝へシフト。5:00~8:00が朝型勤務推奨時間帯。
  • 7:50以前に勤務を開始した場合は、インセンティブとして、9:00まで深夜勤務と同様の割増賃金(25%)を支給。
  • 22:00~5:00の深夜勤務「禁止」。
  • 8:00以前に出勤した従業員には、軽食を3品配布。

仕事と育児・介護の両立

伊藤忠商事は、従業員が会社生活を送る上で、育児や介護といったライフステージを迎えた際にも安心して会社で働き続け、最大限に能力を発揮できるよう、性別に関係なく仕事と育児・介護の両立を支援するための諸制度を、法定を上回る水準で整備しています。2016年度には育児・介護等による時間的制約を持つ従業員や、妊娠・傷病等を理由として通勤が困難な従業員を対象に、一定の要件のもと、在宅勤務制度の適用を導入し、2022年5月より全従業員を対象に制度を拡充しました。

男性従業員の育児休業については、2022年度導入した育児両立手当の支援策導入により、育休取得ニーズは益々高まっています。そのため、男性従業員の育休取得を更に後押しすることを目的に、女性活躍推進委員会での議論を踏まえ、2024年度より配偶者が出産した男性従業員について、「出産後1年以内に、暦日5日(有給扱い)の育休取得を必須化」しています。男性従業員の当社での「働きがい」向上に加え、男性の育児参加を促すことで多様性を尊重する社内風土を醸成し、女性従業員の更なる活躍支援に繋がるものと考えています。

  • 子ども誕生後、4週間以上の育児休業を取得し、対象の子の年齢が満1歳未満で復職する場合、両立に伴う追加費用(保育費用等)の補填等を目的として、一定の手当を支給する社内制度。

また、社会的にも介護に対する備えが重要となっていることを踏まえ、介護セミナーは毎年継続開催していると共に、オンラインでの介護情報提供サービスを2017年度に導入、2019年4月には、相談者のニーズに応じたワンストップ介護相談窓口を導入しました。

仕事と育児・介護の両立支援制度一覧

育児支援制度一覧

仕事と育児の両立支援制度一覧。休業・休暇制度は出産・育児を支援する各種休暇がある。復職後も柔軟な働き方ができるように、フレックスタイム制度、育児時短勤務等の両立支援の各種休暇がある。育児支援として、社内託児所やベビーシッター補助、相談窓口として、育児ハンドブックの配布や、コンシェルジュの設置をしている。
  1. 休業・休暇制度のうち、「育児休業」のみ無給。その他の休暇は全て有給。
  2. 一時保育は小学校就学前まで。

介護支援制度一覧

仕事と介護の両立支援制度一覧。休業・休暇制度は介護休業通算2年間、介護休暇年10日、ファミリーサポート休暇を付与しており、また柔軟な働き方もできるように、介護時短勤務、勤務日選択制度を設けている。介護支援では駐在員向けのふるさとケアサービス、相談窓口としてコンシェルジュを設置し、情報提供施策として介護の理解促進セミナーを実施。
  • 休業・休暇制度のうち、「介護休業」のみ無給。その他の休暇は全て有給。

育児・介護関連制度取得状況★

詳細は、ESGデータをご覧ください。

再雇用制度

配偶者の転勤に帯同するために退職を選択する従業員が希望する場合、性別にかかわらず3年(延長が認められる場合5年)間の再雇用制度への登録が可能です。登録期間中は、会社より自己研鑽の機会提供、機関誌の送付、制度の状況や更新等の連絡を行い、会社との接点が継続する工夫をしています。

「伊藤忠Kids day ~パパ・ママ参観日~」・職域学童の開催

2014年より、従業員の小学生の子どもを対象とした「伊藤忠Kids day ~パパ・ママ参観日~」を定期的に開催しています。子どもたちは、父母と一緒に早朝に出社し、会社が提供する朝型軽食を食べた後、イベントに参加することで朝型勤務を体験できるようにしています。また、このイベント用に特別に作成した自分の名刺を使った父母の職場の従業員との名刺交換、役員会議室での模擬会議や社員食堂でのランチ等を通じて会社への理解を深めます。従業員からは「親の仕事に興味を持ってもらえた」「将来伊藤忠で働きたいと言ってくれた」等非常に好評です。このイベントは、家族の絆や伊藤忠への理解を深めてもらう上で非常に有意義と考えており、今後も継続開催予定です。

こども「どまんなか」WEEKでのドローン撮影

また、学校の夏休み期間にあたる2023年8月には、「ITOCHUこども『どまんなか』WEEK」として、「職域学童保育」を実施しました。質の高い学童保育に対する需要増を踏まえ、子どもの長期休暇時に社内に学童保育所を設置し、朝型勤務体験、職業体験、SDGs・社会貢献をテーマに、当社の歴史・グローバルでの事業について学ぶ等、当社らしいプログラムを用意しました。従業員の子どものみならず、地域貢献として近隣小学校から延べ約240名の児童を受け入れました。春休み期間にあたる2024年3月~4月にも、同様に「職域学童保育」を実施しました。今後も子どもが健やかに成長できる社会に向け、取組んでいきます。

福利厚生

伊藤忠商事は、様々な福利厚生施設や仕組みを通じて従業員間のコミュニケーションの活性化や交流の機会の提供を行っています。コミュニケーションの活性化は、従業員一人ひとりの帰属意識や働きがいの醸成に役立ち、組織全体の活性化にも役立っています。

社員食堂

伊藤忠商事東京本社では、最大870席の社員食堂があり、平均1,000名以上の従業員が利用しています。

従業員の健康増進を目的として、野菜の摂取量増加を促す「グラムデリ」、「パワーサラダ」や「野菜ドレッシング」の提供、月ごとの健康テーマに沿った定食・小鉢の提供、継続的な健康意識向上施策としての「健康イベント」の実施等、従業員の声を反映させたメニューの見直しています。食堂に来るのが楽しくなるような季節に合わせたイベントメニューを毎月実施し、有名店の味を食堂でも気軽に楽しめるようタイアップメニューの提供等、従業員にとって魅力的な食堂作りを進め、多くの従業員が利用しています。

  • 正規・非正規従業員共に利用可

クールダウンルーム

2012年6月から、伊藤忠商事では来訪者に館内で快適に過ごしていただき、また従業員へ働きやすい環境を提供するため、夏の暑さをやわらげることができるよう「クールダウンルーム」を東京本社の1階と地下1階に設置しています。地球温暖化防止・電力需要が高まる夏場の節電対策の一環として館内の冷房設定温度につき、28℃を上回らないようにしていますが、クールダウンルームだけは天井を低くし冷房効率を上げ、15℃の冷気を送風して室内を20℃以下に保ち、夏の暑い中来訪された方や社外での営業活動から戻った従業員が館内に入館する際に、体を冷やせる空間としています。また、「クールダウンルーム」には、多くの方々に当社の創業の理念に触れていただくため、歴史展示コーナー「ITOCHU History」を常設しています。

  • 正規・非正規従業員共に利用可

シャワーラウンジ・シャワー室

本社シャワーラウンジの様子

働きがいのある職場環境づくりの一環で2016年夏より東京本社3階にシャワーラウンジ、地下2階にシャワー室を開設しました。早朝便での帰国者から空港のシャワー室が混雑しているといった声を受け、出張から帰った従業員が気持ちよく仕事を開始出来る様に本社内に設置しました。寒い時期でもすぐ温まれるようオーバーヘッドシャワーを取り付け、アメニティ(タオル、ドライヤー、シャンプー、リンス)も完備し、快適に仕事を進められると好評を得ています。加えて、開放時間を拡大し、健康増進のために運動した従業員への開放も開始しました。また、グループ会社従業員へも開放しています。

  • 正規・非正規従業員共に利用可

日吉寮

2018年3月に首都圏4か所に分散していた男子独身寮を統合、約360戸の「日吉寮」を神奈川県横浜市港北区に新設しました。日吉寮は、単に福利厚生施設という位置付けでなく、「ひとつ屋根の下」というコンセプトのもと、入居者が集い、年代や部署を超えたコミュニケーションの深化を図るべく、シェアキッチン付食堂や、多目的ルーム、サウナ付大浴場、各階コミュニケーションスペース(スタディコーナー、オープンテラス)等、多彩な共用設備を設けています。これにより、社内人脈形成や、企業文化の継承等の人材育成にも寄与しています。
「健康経営」といった政策の視点からは、食堂では栄養バランスに留意した朝食及び夕食の提供、近隣のフィットネスクラブとの提携による運動機会の提供、また喫煙所以外は居室を含め全館禁煙とする等、従業員の働き方改革への主体的な取組みや健康力増進を促す環境作りを目指しています。
また、災害時のBCP(事業継続計画)として東京本社のサブオフィス機能を果たせるよう、社内と同様のネット環境や、非常用発電機設備を整備済みであり、食料・水・防災用品等も常時備蓄しています。

  • 正規従業員・一部グループ会社正規従業員が利用可

相互会

相互会は同じスポーツや文化活動を行う従業員同士が集まって活動する組織です。東京を中心に全国で20程度の部があり、1,000人を超える従業員が所属しています。相互会には、伊藤忠商事の現役従業員に限らず、OB・OGやグループ会社の従業員等多くの人たちが参加しており、スポーツや文化活動を通じて、世代を超え、組織を超えた交流・コミュニケーションを図っています。

  • 正規・非正規従業員共に加入可

パフォーマンスデータ

従業員の状況(各年3月31日現在)

オペレーティングセグメント別従業員数(2024年3月31日現在)

地域別海外ブロック従業員数(2024年3月31日現在)

自己都合退職率(単体)