人材育成

方針

伊藤忠グループ企業理念「三方よし」実現に向け、当社の「経営方針」において、「企業ブランド価値の向上」を掲げています。その重要施策の一つを「人的資本の強化」とし、取組みを進めています。「人的資本の強化」により、労働生産性を引き上げ、持続的な企業ブランド価値の向上に努め、「マーケットインの発想」のもと、市場・社会・生活者の声に耳を傾け、以下の施策を重点的に実行していきます。

1. 就職人気の優位性を活かした優秀な人材の確保

伊藤忠商事は従業員数が同業他社と比べて少ない中、より高い成果を出すために、企業理念「三方よし」に共感する優秀な人材を確保していきます。

2. 役員登用制度による多様な経営人材の継続的輩出

多様化する生活消費関連の顧客ニーズに基づき、ビジネスを開拓・進化することを目的に、意思決定層を多様化させ、女性活躍を推進しています。また、川下起点の投資を加速し、ハンズオンで事業領域拡大や事業基盤の更なる強化・拡充をすべく、社内に「学び続ける文化」を醸成し、経営人材・グローバル人材等の育成に注力していきます。

3. 従業員の貢献意欲向上・更なる労働生産性の追求

朝型勤務等の働き方改革の先進的な取組みの積み重ねや、成果に応じたメリハリのある評価・報酬、早期抜擢やチャレンジングな経験の機会を創出しています。全従業員が能力を最大限に発揮できる「厳しくとも働きがいのある会社」の実現を目指していきます。

【最高人事責任者】
代表取締役 副社長執行役員 CAO 小林 文彦

なお、当社は1999年度より育成費用を持続的な企業価値向上のための「人的資本投資」と位置付け、それらを全社でレビューし、人材育成に繋げています。2024年度育成投資総額(E&D費)は24.5億円、一人あたり人材育成投資額は60.6万円です。

  • E&D: Education & Development
伊藤忠商事の人材育成方針の中で、人材育成投資先ポートフォリオを、カテゴリーと投資額で表わした図です。

今後も、社会環境の変化や顧客ニーズを捉えた「無数の使命」を果たす「商人」を育成し、当社グループの企業理念である「三方よし」を実現していきます。

目標・アクションプラン

伊藤忠商事では、「人材育成方針」を踏まえ、以下目標を掲げ、取組んでいます。

カンパニー SDGs
目標
インパクト分類 取組むべき
課題
事業
分野
コミットメント 具体的対応アプローチ 成果指標(単体) 進捗度合(レビュー)
総本社
労働慣行 従業員の持続的な能力開発 人事 企業理念を継承しながら、マーケットインの発想をもって、常にニーズに合わせて商いを変革できる人材の育成に向け、時代の変化及びビジネスニーズに応じたグローバルベースでの研修プログラムの開発や、主体的な学びの機会を創出し、優秀な人材を継続的に輩出します。
  • 全ての階層での研修プログラムの継続的な開発と実施。
  • 海外実習生派遣・語学研修生派遣の継続・強化。
  • 定期的なローテーションによる多様なキャリアパス・職務経験の付与。
  • 人材アセスメント、キャリアビジョン支援研修、キャリアカウンセリング制度・体制等の充実による、従業員個人のキャリア意識の醸成。
  • 年間研修関連経費10億円超。
  • 研修受講実績人数(延べ)50,000名以上。
  • 入社8年目までの総合職、海外派遣率80%以上。
  • 人材育成投資総額:24.5億円(2024年度)
  • 研修受講実績人数(延べ):56,831名(2024年度)
  • 入社8年目までの総合職、海外派遣比率:87.3%
    (2017年度入社までの派遣必須対象者:671名、うち海外派遣実績がある従業員:586名)

体制・システム

伊藤忠商事は、グローバルベースでの人材戦略を推進しています。具体的には、当社のリーダーが備えるべき行動要件を整備し、全世界で海外収益拡大を担う優秀な人材の採用・育成・活用・登用を行う「タレントマネジメントプロセス」の仕組みを構築しています。多様な価値観に応じたキャリア形成支援としては、場所を選ばず、マネジメントスキルから、DX、ファイナンス・マーケティング・語学等、約13,000講座を受講できる選択型のオンライン研修プログラムを提供しており、毎年約1,000名の従業員が活用しています。キャリア形成という観点では、企業理念の理解を深め、本社業務を通じた知識・経験の修得、及び人的ネットワーク構築を目的に、これまで延べ130名程度の海外ブロック従業員が本社へ駐在しています。現在、海外ブロック従業員のマネジメント人員(管理職相当)は、約740名です。今後も、各カンパニーや海外ブロックとの連携を通じ、国籍を問わず優秀な人材を適材適所で積極的に育成・登用し、海外での更なる事業拡大に繋げていきます。

  • 全世界・全階層の職務を対象に、職務・職責に基づくグローバル等級制度(ITOCHU Global Classification:IGC)を整備。国籍に捉われない人材の配置、登用、育成をグローバルベースで推進するために活用。
  • グローバルベースでリーダーが備えるべき行動要件を設定し、採用基準や評価基準に活用。
  • 関連データ:地域別海外ブロック従業員数

研修体系

伊藤忠商事の研修体系は、組織長就任時や海外赴任時等の必須研修に加え、将来の経営人材に向けた選抜研修、上司との面談等を踏まえたキャリア形成のための選択研修から主に構成されています。本社従業員のみならず、一部海外ブロック従業員やグループ従業員も含め、あらゆる階層の従業員に幅広く育成の機会を提供しています。
海外ブロックでは、ビジネスや市場の特性に基づく必要なスキル・専門性を身に付けるためのブロック独自研修体系を整備し、本社の研修体系と併せてグローバルに活躍するマネジメント人材の育成を進めています。

研修実績

関連データ:従業員の能力開発研修にあてられた時間/費用

関連データ:主な研修参加人数

育成上の強化ポイント

2023年秋に開催したグローバルディベロップメントプログラムに参加した世界20ヶ国のスタッフ

「グループ経営」の観点からは、2013年度にグループ会社の経営管理を担う人材の育成スキームを構築しました。具体的には、若手従業員への事業管理に関する基礎知識やリスクマネジメント手法の習得強化のため、演習を通じて経理業務を短期間で効率的に学ぶ「事業管理研修」を2014年度から開始しています。また、国内グループ会社の従業員がスキルアップとグループ内のネットワーク拡大を図っていくよう、グループ会社従業員向けの合同新入社員研修、指導社員研修等を実施しています。次に、「海外」の観点からは、グローバルマネジメント人材の育成に向け、「グローバルディベロップメントプログラム」「短期ビジネススクール派遣」といった研修を実施しています。

また、直近では経営方針に基づく商いの進化を推進する「収益性重視のDX」を実践する人材育成のために、最先端のビジネスモデルの事例学習や生成AI等IT専門知識習得に向けた研修・講演会等の機会を全従業員に提供しています。

関連データ:海外ブロック従業員のマネジメント人材数(2025年3月31日現在)

CPG・CITICとの人材シナジー

伊藤忠商事は、2015年1月にアジア・中国有数のコングロマリットである、Charoen Pokphand Group Company Limited(CPG)及びCITIC Limited(CITIC)との間で戦略的業務・資本提携を行いました。

三社での戦略的業務・資本提携に伴い、2015年度より全総合職の1/3にあたる「1,000人の中国語人材」を育成するプロジェクトを立ち上げ、語学面での基盤づくりを徹底して進め、2017年度末には目標である1,000人に到達しました。その後も育成を継続し、2024年度末時点での通算育成数は1,330人となっています。今後も中国・アジアにおけるビジネスの拡大を更に推進する基盤づくりを継続していきます。

伊藤忠朝活セミナー

2016年9月より、朝型勤務推進の一策として、早朝時間を活用し、従業員の知見を深め、能力開発や活力増強に繋げる取組み「伊藤忠朝活セミナー」を開催しています。テーマはビジネスの進化、及び健康を中心とし、2024年度は計3回開催、延べ1,162名が参加しました。受講者からは「始業前に刺激的な話を聞くことができ、とてもポジティブな気持ちになった。」という声が上がっており、今後も定期的に開催していく予定です。

安部氏 講演の様子
古賀氏 セミナー会場
富永氏 セミナー会場

朝活セミナー2024年度開催例

実施日 テーマ名 講演者
2025年3月 「生成AI時代における個人とデジタルの向き合い方」 B&DX株式会社 代表取締役社長 安部 慶喜 氏
2024年11月 「パフォーマンスを最大化するリーダーシップと
セルフコンディショニング」
元バレーボール選手 古賀 紗理那 氏
2024年6月 「アシックスのDX経営と企業価値創造」 株式会社アシックス 代表取締役 社長COO 富永 満之 氏

人事評価制度

人事評価制度は、従業員がやる気とやりがいを持ち最大限の能力を発揮できるよう、従業員を支える人事制度の根幹を担う制度と位置付けており、「厳しくとも働きがいのある会社」を目指し、成果に応じたメリハリのある評価・報酬制度を導入しています。人事評価制度は伊藤忠商事全従業員を対象としており、評価制度の一つである目標管理制度(MBO)には、経営計画に合わせて従業員一人ひとりに目標を分担し、実行を確認していく経営戦略の担い手という役割があります。給与制度は、「成果に応じた評価・報酬」を基本理念としており、職務・職責、能力・経験、成果に応じて、年収を決定します。変動給(賞与)は、MBOに基づく個人業績評価のみならず、会社業績を反映して決定されていることに加え、会社業績に応じて当社株式を付与する株式報奨制度を導入しており、評価・報酬制度を通じて従業員の経営参画意識の向上に繋げています。

また、従業員一人ひとりの能力・専門性・過去のキャリア・志向・適性を総合的に捉え、配置・異動計画に活用する人材アセスメント制度、定量・定性面で顕著な貢献を果たした従業員や企業行動指針に基づき成果を上げたチーム等を表彰する社員表彰制度も設けています。
これらの人事評価制度が機能するためには、上司による公平・公正な評価と部下との面談によるフィードバックが非常に重要と考え、多面観察や評定者研修、1on1面談等を通じて、従業員の育成や成長を促すよう上司に啓発しています。

  • 多面観察: 組織長が普段気付きにくい日常の人事管理・マネジメント行動を、組織長自身及び部下による観察結果のフィードバックを通じて振り返り、必要に応じて行動改善・能力向上を図ることを目的とした制度。国内本社・支社で毎年実施。

人事評価制度の全体図

当社は、個人業績を計測するMBOと会社業績により変動給を算出している。また、求められる役割・職責・能力評価に基づき固定給が決定し、年間の総報酬が決定する仕組みとなっている。また、人材アセスメントでは、能力評価以外にも上司を評価する多面観察や、主体的にキャリアを考えるキャリアビジョンシートに記載した上で上司と面談する仕組みがあり、人材育成に繋げている。

目標管理制度(MBO)の流れ

目標管理制度(MBO)の流れは、毎年4~5月に目標を設定し、10~11月で中間レビュー、翌年3~4月に期末レビューを行う流れとなっている。

人材アセスメント制度の流れ

人材アセスメント制度の流れは、毎年9月頃能力評価を実施し、11月頃にキャリア・ビジョンシートを作成、12月~翌年1月頃に上司と面談し、結果のフィードバックを受ける流れとなっている。

キャリア形成支援

原籍制度

当社では従業員の入社から退職まで、各営業部門・総本社職能部が責任を持って育成・配置することを目的として、「原籍人員管理制度」を導入しています。原籍組織は入社時に決定し、その後ローテーションにより所属部署が変わったとしても、原籍組織は原則変わりません。グローバルベースで多種多様な事業を展開する当社において、その時々の所属組織に依らず、原籍組織が一貫して従業員の育成責任を担うことで育成・配置を実現しています。

個人別キャリア形成支援

将来の経営を支える次世代の活躍支援を目的として、「基礎教育は2年まで」「原則8年以内での海外派遣」を前提とする若手総合職のローテーションガイドラインを定め、組織ごとに育成・異動の方針を決定しています。

また、各組織の育成方針を組織長から若手従業員に説明し、意見交換を行うことで所属組織でのキャリアパスや目指すべき姿について認識をすり合わせる「キャリアミーティング」を毎年開催しています。加えて、若手総合職を対象に、入社後8年間の育成方針・配置計画(個人別キャリアプランイメージ)を策定し、その内容について組織長と面談を行うことで、将来を見据えながら目の前の業務に取組むことができる環境を整備しています。

更に、教育期間が終わる入社8年目の節目に自身のキャリアを振り返り、今後のキャリアに関する希望等を原籍組織の責任者へ直接伝えることができる「キャリア棚卸し面談」を実施しています。これらの施策を通じて若手従業員の主体的キャリア形成を支援しています。

チャレンジキャリア制度

国内に勤務する総合職・ビジネスエキスパート(BX)職を対象とした主体的なキャリア形成を支援する施策として、「チャレンジキャリア制度」を導入しています。従業員は予め社内イントラネットで告知される人材募集案件リストを見て異動希望を上司に申告し、上司の了解を得て異動先部署との面接等を通じ、成立すればカンパニー/総本社職能部の垣根を越えた異動が実現できます。本制度は、キャリア選択の機会を提供することよる従業員の「モチベーション喚起」と「主体的なキャリア形成支援」を通じた「組織力強化」を目指すものであり、毎年20名程度の異動が実現しています。引続き、多様なキャリアを実現できる仕組みを通じた人材育成を進めていきます。

チャレンジキャリア制度スケジュール

チャレンジキャリアは6ステップで進む。ステップ1は募集案件の告知、ステップ2は異動希望者と上司との面談、ステップ3は異動希望者による応募、ステップ4は書類選考・面接、ステップ5は合否判定の後、ステップ6で異動となる。

バーチャルオフィス

組織を越えたアイデアやリソースの共有を通じた事業推進、及び従業員の成長・キャリア形成支援を目的として「バーチャルオフィス」を2023年度より導入しました。全社から組織横断的な案件を募集、従業員は自らが高い関心・熱意を持つ案件に、本業以外の細切れ時間を利用して携わることが出来る仕組みです。

2024年度は計14案件に対し、全社から勤務地・年代・職掌等が異なる約70名の従業員が集まり案件を推進しました。また、案件推進を加速させるべく、参加者を対象とした新規事業開発研修や外部専門家による伴走支援、活動費用の一部補助、顕著な功績を挙げた案件を対象としたオンライン表彰式等を開催しました。今後も熱意ある従業員がやりたい仕事に関与でき、組織を越えて協働することで、新規事業創出を支援していきます。

バーチャルオフィスは、案件に対する高い関心を持つ従業員が組織を跨いで新規事業を加速させ、若手・中堅のエンゲージメント向上、全社単位のアイデア・リソースの共有を促進を目的とした取組。

キャリアカウンセリング

キャリアカウンセリング室では、全従業員の多様なキャリアに関する相談・支援を幅広く行っています。入社後の節目ごとに行われる研修に合わせてキャリアカウンセリングの機会を設けるセルフ・キャリアドッグ型の仕組みを整えています。同室のカウンセラーは、全員がキャリアコンサルタントの国家資格を有しており、従業員一人ひとりの状況に合わせて、将来のキャリアに限らず、育児や介護との両立、職場でのコミュニケーション等についても、相談者の主体的な取組みを支援しています。また、キャリア入社者の円滑な適応の支援や中高年従業員の活躍支援も行っています。年間来室相談数は800件を超え、守秘義務を徹底したカウンセリング室で安心して話し合うことで、主体的なキャリア形成に関する気付きが得られることを目指しています。

ITOCHU Internship

伊藤忠商事は、学生の皆様に「総合商社」で働くというキャリアを考えていただくため、トレード・事業投資両面におけるケーススタディ型のインターンシップを実施しています。当社の若手社員をメンターとして配属し、きめ細やかな助言・相談を行う等、相互理解に努めています。過去のビジネス事例に基づく様々なチャレンジングな課題に取組んでいただけるインターンシップを実施しています。

詳細は、ITOCHU RECRUITING HP別ウインドウで開きますをご覧ください。