自然資本・生物多様性(TNFD提言に基づく情報開示)

自然資本・生物多様性に関する方針・基本的な考え方

伊藤忠商事は原料等の川上から川下まで事業投資やトレードをグローバルに展開しており、人々に便益をもたらす植物、動物、空気、水、土壌、鉱物等の再生可能及び非再生可能な自然資本の恵みに大きく依存し、またこれらに負の影響を与える可能性があります。

当社は、自然資本・生物多様性を含む地球環境問題を経営の最重要課題の一つとして捉え、企業理念「三方よし」を実現すべく、伊藤忠グループ環境方針に示す生物多様性の保全を推進するため、以下の生物多様性方針を定め、持続可能な社会の実現に貢献していきます。また、地域の社会貢献活動の一環としての事業関連地域における取組みも行っていきます。

生物多様性方針

  1. 生物多様性に配慮した環境経営

    事業活動が生物多様性の恩恵に依存していることや、生態系に影響を及ぼす可能性のあることを認識して、自然共生社会構築のために、相互に関連する気候変動対策・資源循環対策・生物多様性保全などの幅広い環境活動が事業活動の中に取り込まれた環境経営を推進する。
  2. 事業と生物多様性との関わりの把握、影響の低減

    グローバルな視点で、グループ企業はもとよりグループ全体における事業活動と生物多様性との関わりを把握し、生物多様性への影響のネットポジティブ化を目指して、事業活動が生物多様性に与える影響の回避と最小化に努めるとともに生態系の回復を推進する。
    木材・天然ゴム・パーム油等の森林に関連するコモディティに関して、自然林と森林資源保護に関する調達方針を定め、法律等で指定された保護地域からの産出による森林破壊ゼロを確認するための情報収集を推進する。
  3. 国際的な条約と各国の国内法の遵守

    生物多様性条約等の生物多様性に関する国際的な条約、及び関連する各国の国内法を遵守し、生物多様性の保全を推進する。
    ワシントン条約(CITES)等で指定されている絶滅危惧種に関し、事業活動でこれらの取引に加担しないだけでなく、事業活動地域における絶滅危惧種保護の社会貢献活動を推進する。
  4. パートナーシップの強化と地域の生態系保全

    業界団体、サプライチェーン、NGO、国際機関などと連携し、生物多様性に関する認識の共有を図り、生物多様性保全の取組みを、より実効あるものにする。
    事業活動地域の生物多様性保全に配慮するとともに、地域の豊かで安全な暮らしの実現に貢献するため、行政機関のみならず、地域住民、NGOなどステークホルダーとともに自然資本を活かした地域の創生の視点から生物多様性保全を推進する。
  5. 情報共有と発信の強化

    啓発活動などにより、社員はもとより事業活動地域の地域住民における生物多様性についての理解を促進する。
    取組内容、目標と達成状況を継続的に開示することにより、社会全体の生物多様性への意識向上に貢献する。
  • 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)

代表取締役 上席執行役員 CAO
西口 知邦

2022年4月制定

TNFD一般要件

本情報開示における一般要件は以下の通りです。

  1. マテリアリティの適用

    伊藤忠商事は、自然資本が当社に与える財務的な影響(財務マテリアリティ)と、当社が自然資本に与える影響(環境・社会マテリアリティ)も重視するダブルマテリアリティの観点で自然関連の情報開示を行っています。
  2. 開示のスコープ

    伊藤忠グループ国内外の事業を対象に、直接操業を行っている事業領域だけでなく、上流・下流の双方のバリューチェーン全体の網羅的な評価を行っています。また、自然資本への影響度・依存度が高い事業については、個別にLEAPアプローチに基づくリスクと機会の詳細分析を行っています。
  3. 自然関連課題がある地域

    当社が事業を行う地域は多岐にわたるため、まずは優先度の高い事業を特定し、当該事業について優先地域の特定と個別分析を行っています。
  4. 他のサステナビリティ関連の開示との統合

    自然関連課題は、気候変動や水等、様々な要因と関係しています。当社では、より包括的に自然関連課題を把握するため、複合的な環境課題について特定可能なツールを用いて分析を行っています。併せて、ステークホルダーへの伝わりやすさを考慮し、TCFDとの統合開示についても検討しています。
  5. 検討される対象期間

    TNFDガイダンスで示される2030年あるいは2040年時点の将来シナリオを想定し、短期及び中長期的な視点で、当社事業のリスクと機会の評価を行っています。
  6. 先住民族・地域社会・影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント

    当社は、先住民族や地域社会を始めとする様々なステークホルダーとの対話を重視しています。詳細については「自然関連の人権とステークホルダーエンゲージメント」をご覧ください。

ガバナンス

自然関連課題におけるガバナンス

伊藤忠商事は、自然資本・生物多様性を含むサステナビリティ課題への対応を重要な経営課題の一つと認識し、自然関連リスクと機会への対応方針やリスク・機会を考慮した年度予算・事業計画等の重要事項につき取締役会で審議・決定しています。

自然資本・生物多様性を含むサステナビリティ関連事項に対応するための各種施策の立案・実施に関する総括管理責任はサステナビリティ委員会に付与されています。当社CAO(Chief Administrative Officer)は、自然関連課題に責任を持つ取締役であると同時に、執行レベルではHMC(Headquarters Management Committee)のメンバーであり、サステナビリティ委員会の委員長を兼務しています。サステナビリティ委員会での審議・決定事項は、サステナビリティ推進の主たる活動状況と共に、CAOから年2回程度取締役会に報告されます。これにより、取締役会がサステナビリティ委員会での審議・決定事項も考慮した上で、環境・社会リスク及び機会に対応する事業戦略・投資戦略の推進の監督(戦略の見直し・資産入替え判断を含む)を適切に行える体制としています。また執行レベルでは、サステナビリティ委員会にESG責任者を兼任する各カンパニー及び職能部署のマネジメントもコアメンバーとして参加し、サステナビリティ推進部と各カンパニー及び職能部署のESG推進担当から自然資本・生物多様性関連事項について報告を受け、各種施策・取組みの進捗管理・モニタリングを行っています。

また、サステナビリティ委員長及び各カンパニー・職能部署のマネジメント(ESG責任者)は、年1回外部専門家との対話「サステナビリティアドバイザリーボード」を行い、当社に対する社会の期待や要請も把握した上で環境施策を推進しています。

ご参考:ガバナンス

自然関連の人権とステークホルダーエンゲージメント

伊藤忠グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「伊藤忠グループ人権方針」を定めています。本方針では当社グループの人権尊重の考え方を具体的に表明しており、人権デューデリジェンスの実施や潜在的に影響を受けるグループやステークホルダーとの対話・協議等について宣言しています。

また、当社グループが事業活動を行う国・地域の法律や「先住民の権利に関する国際連合宣言」、「国際労働機関(ILO) 第169号条約」等の国際的な取決めに定められた先住民の権利を尊重、配慮することを明確にした「先住民の権利の尊重」を個別方針として策定しています。新規の事業投資案件の検討にあたっては、当該事業が先住民の権利に及ぼす影響について事前のチェックを励行しており、事業開始後も定期的に人権デューデリジェンスを実施しています。自然資本への依存度の高い食品関連事業(食料カンパニー)、繊維関連事業(繊維カンパニー)、物資・資材関連事業(住生活カンパニー)及び影響度が高い金属関連事業(金属カンパニー)、コンシューマービジネス(第8カンパニー)、機械関連事業(機械カンパニー)においては、2019~2025年度までに人権デューデリジェンスを実施し、「地域社会・住民への影響」についても調査対象の人権リスク指標としました。

ご参考:人権

戦略

TNFDフレームワークによる事業評価

伊藤忠商事では、TNFD提言に基づいて、当社の事業を以下の通り分析しています。

スコーピング

伊藤忠商事は、自然関連財務情報開示の重要性を認識し、TNFDフォーラムに参画しています。TNFDが推奨する手法が当社でも活用可能か確認するため、TNFDフレームワークを参考に、伊藤忠グループの事業について全事業の潜在的な自然資本への依存と影響について机上分析を行い、取組みの優先順位が高い事業を選定しました。

  • TNFD:自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)
Phase 1

事業単位とプロセスの
対応付け

  • データソースENCOREを活用し、分析に必要な情報を準備
Phase 2

依存度・影響度の
評価方法検討

  • 評価アプローチの詳細を検討
Phase 3

依存度・影響度マッピング&
定性的解釈

  • 事業ごとに依存度・影響度をマッピング
  • 上述のマッピングの裏付けとなる定性的情報の整理

スコーピングのステップ

具体的には、国連環境計画等が開発した自然資本影響評価ツール(ENCORE)を用いて、当社事業の上流下流も含めたバリューチェーン上で行われている活動工程をENCOREが定めたプロセス別に仕分けしました。その上で、類似したプロセスを持つ事業を集約した結果、28のグループになりました。グループごとに、当社のバリューチェーンにおける事業の関与度合い等も考慮しながら依存度・影響度それぞれのスコアを算出し、依存度については、各事業における自然資本への依存度を6段階で評価し、依存度スコアを総計しました。影響度についても同様に5段階で評価し、影響度スコアを総計しました。

その結果を、縦軸:影響度スコア、横軸:依存度スコアとして「依存度と影響度マッピング」及び「バリューチェーンごとの依存度・影響度の内訳」に整理しました。下図のように全事業の中で自然資本への影響度が大きいとされた金属資源事業をトライアル分析で取上げています。

LEAPアプローチ

トライアル分析

ENCOREを活用したスコーピング(全事業評価)の妥当性を検証し、自然資本への依存・影響やそこから発露するリスク・機会の理解を深めるため、TNFDが提唱する自然資本に関する課題を統合的に評価するLEAPアプローチを活用して、自然資本への影響度が高い事業を対象にLEAP分析を行いました。

  • TNFDにより開発された、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)という4つのステップで構成された対象事業の自然関連課題を明確にする手法
Locate
  • 分析を行うスコープを決定の上、自社事業とバリューチェーンの活動地域を特定し、生物多様性や水リスクの観点から影響を受けやすい優先地域を特定する
Evaluate
  • 影響を受けやすい優先地域における自然資本への依存と影響を特定する
  • 重要な依存・影響について大きさと規模を評価するために、生態系サービス、インパクトドライバー、及び関連する自然資本を評価する
Assess
  • 依存と影響の状況を踏まえて短・中・長期的なリスク・機会を評価する
  • 現在のリスク管理状況を確認し、追加的に必要なリスク対応策を検討する
Prepare
  • 重要な自然関連リスクと機会に関する評価を経営層に対してインプットし、戦略と資源配分、目標設定を検討
  • TNFD提言に沿って開示

LEAPアプローチの概要
自然関連問題の特定・評価のためのガイダンス:LEAPアプローチPDFファイルをもとに伊藤忠商事が整理

分析は、ENCOREを活用したスコーピングにおいて全事業の中で最も自然資本への影響度が大きいとされた金属資源事業のうち、特に影響度スコアの高い採掘プロセスを対象に行いました。

まず、Locate(発見する)分析では、TNFD LEAPアプローチガイダンスで示されている要注意地域に関する5つの定義とそれらの基準を整理したデータベースの指標に従い、生態学的に要注意と考えられる拠点を特定しました。また、事業の重要性を勘案の上、いくつかの拠点について、IUCN Global Ecosystem Typology及びGlobal Map of Ecoregionsを用いて、関連するバイオームや生態系の情報も特定し、自然資本への依存と影響についてEvaluate(診断する)分析を実施しました。なお、分析においては、TNFDの鉱業セクターガイダンスや現地の環境アセスメントの報告書を調査することで依存・影響の測定結果の精緻化に努めました。その結果、同事業の採掘プロセスについて、上述のスコーピングで示唆された通り、自然資本への影響の程度が大きいことが確認されました。

その後、金属資源事業の営業担当者と共に、各案件に関わる過去の環境アセスメント関連資料、各種許認可の状況について、サンプリング調査の形式で具体的な対応策の状況を確認しました。当社は金属資源事業の運営にあたり、事業活動が与える自然資本への影響の程度を認識し、従来から厳格な環境アセスメントを行った上で開発を行っており、閉山方針も設けて将来的な環境影響の低減に努めていることが確認できました。

ご参考:鉱山事業の閉山方針

  • 使用したデータベース:WWF Biodiversity Risk Filter、WWF Water Risk Filter、Species Threat Abatement and Restoration、Biodiversity Intactness Index、Ecoregion Intactness Index、Critical Natural Asset layers、Integrated Biodiversity Assessment Tool

金属資源事業でのトライアル分析を通じて当社の事業分析におけるLEAPアプローチの可用性が確認されたため、自然への依存・影響の度合いを考慮しながら当社の各事業について分析を順次実施、開示していきます。

LEAPアプローチによる分析を実施した事業は以下の通りです。

天然ゴムはScience Based Targets Network(SBTN)が、自然資本への影響が大きいとされる商材をまとめたHigh Impact Commodity Listに含まれています。また、一般的に天然ゴムの栽培においては、小規模農家の人権問題や貧困問題といった社会課題も深刻であると言われています。これらの点を踏まえ、天然ゴム事業についてのLEAP分析を行い、同事業の自然資本への依存や影響への理解を深め、リスク低減や機会創出につなげる意義が高いと判断しました。
天然ゴム事業の依存度と影響度を事業プロセスごとに評価した結果、調達(天然ゴムの栽培)と製造(ゴム加工)プロセスで特に依存度が高いことがわかりました。そのため、本分析においては、これら2つのプロセスに焦点を当てることとしました。

  • 科学に基づいた自然関連の目標設定方法の開発を行う国際的なイニシアティブ
Locate

当社が取扱う天然ゴムは、インドネシア産が中心です。同国の調達先全農村と当社子会社の天然ゴム加工会社PT. Aneka Bumi Pratama(ABP社)の工場について、以下の表にあるデータベースを用いて、生態学的に要注意と考えられる地域と関わりのある拠点を特定しました。

要注意地域の判断基準 使用したデータベース
1. 生物多様性にとって重要
  • WWF Biodiversity Risk Filter
  • STAR(Species Threat Abatement and Restoration) metric
2. 生態系の完全性が高い
  • BII(Biodiversity Intactness Index)
3. 生態系の完全性が急速に低下
  • Ecoregion Intactness Index
4. 物理的な水リスクが高い
  • WWF Water Risk Filter
5. 先住民、地域コミュニティ、ステークホルダーへの便益を含む生態系サービスの提供にとって重要
  • Critical Natural Asset layers

それぞれのデータベースから得られる指標を参考に全農村と加工工場を5段階評価したところ、「2. 生態系の完全性が高い」について要注意地域に該当する農村数が約89%となり、調達重量ベースでも約85%の農村が含まれる結果となりました。また、農村に近接する工場拠点も保護地域に近く「1. 生物多様性にとって重要」として多くが要注意地域に該当することがわかりました。生態系の完全性が高い地域とは、環境資産を保護し、生態系サービスを維持するための大きな機会も含んでいる可能性がある保全価値の高い地域です。当社は、保護林エリア周辺の農地開拓と違法伐採を止めるための取組みであるPROJECT TREEを通じて、生産拠点の生態系及び生物多様性の保護に取組んでいます。

Evaluate

天然ゴムの栽培、ゴム加工プロセスにおける自然資本への依存と影響を文献調査により洗い出しました。
文献調査では、持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム(GPSNR)が発行している「ゴム栽培と加工における環境リスク評価レポート(Environmental Risk Assessment of Natural Rubber Production and Processing)」を使用しました。
天然ゴムの栽培プロセスは、バイオマスや遺伝資源の供給、気候条件や土壌の質、自然の持つ浄化や減災機能にとても強く依存しており、土地利用の転換や廃棄物の排出等が自然に大きな影響を与えることがわかりました。
また、天然ゴムの加工プロセスは、水源(河川)に強く依存し、水使用量や土壌汚染が自然に大きな影響を与えることがわかりました。更に、これらの文献調査を踏まえて、当社事業において実際に依存及び影響が大きいか、現地での数年間の駐在経験がある従業員が現場目線で精査しました。

Assess

Evaluateで洗い出した天然ゴムの栽培及び加工プロセスにおける一般的な依存・影響の調査結果をもとに、当社の事業にとってどのような自然関連のリスクや機会があるのかを検討しました。TNFDのLEAPアプローチガイダンス及びセクターガイダンス(食品と農業)をもとに、天然ゴム事業におけるリスクと機会に関するロングリストを作成し、Evaluateと同様に現場目線で内容を精査しました。
更に、2030年時点の将来シナリオを想定し、リスク・機会の重要性を3段階(低・中・高)で評価しました。
TNFDガイドラインでは「生態系サービスの劣化度(物理的リスク)」と「市場原理と非市場原理の一貫性(移行リスク)」の2軸で4つのシナリオを想定しています。当社として現時点は「シナリオ#2(自然破壊による損害が甚大で、自然資本への企業の関心が高いシナリオ)」の状況にあると判断し、リスク・機会の強度と発生可能性の観点から重要性評価を実施しました。
これらのAssessの結果、Evaluateで実施した机上分析では、例えば土壌汚染について自然への影響が大きいとされましたが、当社が経営する工場では適切な排水処理等の対策を行っており、リスクは大きくないことがわかりました。

シナリオ#1

  • 脱炭素・気候変動対応が進み、ネイチャーポジティブに向けた政策や地域の環境配慮に関する取組みが増加。企業が積極的に自然資本を意識した事業を実施している状況。

シナリオ#2

  • 自然の毀損が進んだことで、速やかな回復に向けた活動が求められており、気候変動を含めた自然資本の復元や再生の重要性を企業が認識している状況

シナリオ#3

  • 自然資本は損なわれているが、政策や金融の対応は進まない。
  • 企業はコストや負の影響を外部化させ、短期的に自然資本が過剰消費される状況。

シナリオ#4

  • 自然資本に関する企業の優先順位は低く、低炭素化に向けた資金調達、技術進歩、企業変革はある程度進展するが、企業はコストを理由に自然関連の長期戦略の立案は見送る状況。
TNFDガイドラインで示されている4シナリオの説明
Guidance on scenario analysisPDFファイルをもとに伊藤忠商事が概要を整理

最後に、重要性が一定以上あると評価されたリスクと機会について対応策を整理・検討しました。具体的には、本パートでは適切にリスクを認識し低減していくため、リスクについては「中」または「高」と評価されたもの、機会については「高」と評価されたものを対象にしました。
各リスク・機会への対応についての詳細は以下の表の通りです。当社の天然ゴム事業では、グループ会社も含め、自然関連のリスク・機会について網羅的に対策を講じています。また、2019年からPROJECT TREE というサステナブルな天然ゴムの生産プロジェクトを立ち上げて、機会の実現も進めています。

<リスク>
区分 事業
プロセス
内容 対応状況 重要性
物理的リスク 急性 調達 クローン個体で形成されるゴム農園の病気への脆弱性により、病原菌やウイルスが蔓延することによる天然ゴムの収量低下 PROJECT TREEにおいて、適切な農園管理により病原菌やウイルスが蔓延しづらい状態に保つことの重要性に関する教育活動を実施
パラゴムノキの単一栽培が続くことで土壌中の微生物の多様性が減少し、根白腐病が蔓延することによる収量低下、品質低下 PROJECT TREEにおいて、根白腐病対策としてアグロフォレストリーを含む他品種作物の栽培を農家に推奨
集中豪雨・洪水・台風等の自然災害の増加による天然ゴム栽培の継続性喪失 購買地域を工場所在地近郊のみならず、スマトラ島南部全体に分散
気候変動に起因する栽培適温からの逸脱、日照不足、降雨パターンの変化等に伴うゴムの木の生育不良、収量低下 PROJECT TREEにおいて、適切な農園管理に関する教育活動を実施
加工 気候変動に起因する異常気象や自然災害による工場インフラの損傷や工場停止 過去の発災時に、洪水等の自然災害にすみやかに対応可能であることを確認済
洪水時における適切な取水不能
水質基準を超過した排水の河川への流出による、河川と流域土壌の汚染 排水処理設備を備え、排水の水質調査を毎時実施
慢性 調達 ゴム農園による化学肥料の多量使用や、産業活動に伴う周辺の水質・土壌劣化による天然ゴムの収量低下、品質低下 PROJECT TREEにおいて、汚染原因となる化学薬品や排水処理に関する教育活動を実施
病原菌、害虫、害獣の増加による天然ゴムの収量低下 PROJECT TREEにおいて、適切な農園管理に関する教育活動を実施
移行リスク 政策・
法規制
調達 持続可能性やトレーサビリティに関する規制導入・厳格化 トレーサビリティを確保し、天然ゴムの持続可能性を高める活動であるPROJECT TREEを更に拡大、TREE+の導入推進
ゴム農園周辺の環境保護を目的とした法規制の導入・変更、報告義務の強化 PROJECT TREEを通じ、小規模農家への法規制に関する周知・教育によって法規制対応を推進
加工 ゴム加工工場による負の環境影響からの保護を目的とした法規制の導入・変更、報告義務の強化 環境関連データの整備を進め、必要に応じて改善
市場 調達 自然への負の影響が小さい、持続可能な方法で生産・製造された商品に対する需要増等の顧客の嗜好変化 PROJECT TREEを通じ、持続可能な天然ゴム生産を小規模農家に広め、市場に供給
収益性の変化によりゴム農家が転作することによる調達先の減少 PROJECT TREEにより農家が適切な対価を得られる仕組みを整え、ゴム農家の転作を抑制(売上の一部還元等)
加工 環境負荷の少ない製造工程の構築や、資源効率向上のための設備導入等ネイチャーポジティブな生産方法への移行 天然ゴム乾燥の熱源としてバイオマスを導入済みであり、ネイチャーポジティブな生産方法への移行を常に検討
技術 調達 ゴム農家へのスマートフォンの普及停滞によるトレーサビリティ確保推進の遅延 農家に対するスマートフォン無償提供を計画中
評判 調達 自然管理が不十分な農園からの天然ゴム調達による、消費者や投資家からの批判増加、ブランド価値の低下 PROJECT TREEにおける農家のリスクアセスメントにより、自然管理が不十分な農園を特定・改善
サステナビリティ等を謳ったプロジェクトが実態を伴っていないことによる、グリーンウォッシュ批判の発生 PROJECT TREEは国際NGOのProforest、SNVの協力、指導を得て推進
加工 環境マネジメントの管理不足やそれに伴う環境事故による、認証の取消しや企業価値の毀損 外部機関によるISO監査に加え、天然ゴム加工会社であるABP社の社内でも年に1度の内部監査を実施し、認証取消しリスクを低減
責任 調達 上流サプライヤーから排出される廃棄物、汚染物質起因の悪臭や水質汚染による、地域コミュニティからの訴訟や罰金 PROJECT TREEにおいて、農家に対する汚水処理、廃棄物処理に関する教育活動を実施
加工 工場から生じた有害汚染物質や内分泌攪乱物質由来の健康被害等による周辺コミュニティからの訴訟や罰金 汚水処理、排気処理、廃棄物処理に関してはルールに従い適切に処理をして排出
  • トレーサビリティを確保し、欧州森林破壊防止規則(EUDR)に対応している天然ゴム
<機会>
区分 事業
プロセス
内容 対応状況 重要性
企業に関するパフォマンス 資源効率 調達 PROJECT TREEによる天然ゴム供給の高効率化 PROJECT TREEにおいて、天然ゴムの収量増に寄与する農業技術支援・教育活動を展開
品種改良(自然災害や病害、高温への耐性、不稔化等) PROJECT TREEにおいて、ABP社の主要取引先が自社農園において改良した品種を小規模農家へ配布計画中
ブロックチェーン等技術を活用したトレーサビリティの促進 自社で開発したブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティシステムを用いてデータ収集中。データを活用した物流の効率化やCO2排出量の削減を検討中
加工 廃タイヤの回収工程、再生加工の効率化 当社が資本参加している(株)ナルネットコミュニケーションズ向けのタイヤ配送網を活用した、廃タイヤの回収及び回収タイヤの中古タイヤショップへの販売を検討中
製品・
サービス
調達 サステナビリティ認証された天然ゴムの販売量増加 PROJECT TREEを通じたEUDR対応品の供給に注力。タイヤメーカーのEUDR対応品に対する高い需要に対応中
加工 廃タイヤ回収によるリサイクル製品の販売量増加 回収した廃タイヤのうち、まだ使用可能なものは、中古タイヤショップ経由で消費者に再販予定
市場 調達 持続可能な天然ゴムの供給によるブランド価値の維持、市場での優位性の確保 PROJECT TREEのブランド価値向上により当該天然ゴムの流通量が増加し小規模農家のインセンティブ収入が増加
昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF) 2030及び2050の目標に合致した事業戦略の策定 PROJECT TREEでは「保護エリア周辺の農地開拓と違法伐採を止めること」を目的としており、GBF「ターゲット1空間計画の策定と効果的管理」を推進可能
資本
フロー&
資金調達
調達 自然関連や環境に配慮したファンド、債券、またはローンへのアクセス 金融機関がPROJECT TREE参加企業に対してサステナビリティリンクローンの提供を提案する等、PROJECT TREE参加企業全体への資金調達力増強を期待
持続可能性に関するパフォマンス 自然資源の持続可能な利用 調達 自然への正の影響を増加/負の影響を減少させるプロセスへの移行 PROJECT TREEでは保護林での違法伐採を回避させることでネイチャーポジティブに貢献。また、常にネイチャーポジティブな生産方法への移行を検討
加工 リサイクルシステムの確立による自然への正の影響を増加/負の影響を減少させるプロセスへの移行 これまで廃棄されていたタイヤを再利用することによる環境負荷の低減を目指す
Prepare

重要なリスクを低減し、機会を創出していく上では農家と協働しながらトレーサビリティの確保及び環境への影響を低減することが重要です。TNFDが開示を推奨しているコアグローバル指標及び、分析結果を踏まえて検討した当社固有の収集指標は次の通りです。

<指標>
測定指標番号 区分/指標 収集指標 (参考)関連するリスク・機会
C3.1 陸地・海洋・淡水由来の高リスクの自然商品の量
  • ABP社における天然ゴム調達数量(約197千t)
  • 集中豪雨・洪水・台風等の自然災害の増加による天然ゴム栽培の継続性喪失
  • 自社のインフラ劣化を抑制することによる設備投資サイクル期間の延長
C1.1
FA.C1.0
土地・淡水・海洋利用の変化(再生可能または持続可能な土地管理)
森林破壊のない製品
  • 集中豪雨・洪水・台風等の自然災害の増加による天然ゴム栽培の継続性喪失
  • PROJECT TREEによる天然ゴム供給の高効率化
  • 自社のインフラ劣化を抑制することによる設備投資サイクル期間の延長
  • 降水や河川水を貯める貯水池の整備等で、安定した量の水を確保できることによる工場の操業の安定化
  • バイオマス由来の再生可能エネルギーであるPKS(パーム椰子殻)由来電力の利用の拡大
  • 廃タイヤの回収工程、再生加工の効率化
A22.0、A22.1、A22.2、A22.3、A22.4 バリューチェーン
  • 集中豪雨・洪水・台風等の自然災害の増加による天然ゴム栽培の継続性喪失
  • PROJECT TREEによる天然ゴム供給の高効率化
  • 貯水池、水田、散水装置等のインフラ整備による自然災害に対する事業継続性の向上
  • 自社のインフラ劣化を抑制することによる設備投資サイクル期間の延長
  • 降水や河川水を貯める貯水池の整備等で、安定した量の水を確保できることによる工場の操業の安定化
当社固有 物理的リスク
  • クローン個体で形成されるゴム農園の病気への脆弱性により、病原菌やウイルスが蔓延することによる天然ゴムの収量低下
  • 気候変動による栽培適温からの逸脱、日照不足、降雨パターンの変化等に伴うゴムの木の生育不良、収量低下
  • 大気汚染・土壌汚染・水質汚染によるパラゴムノキの生育不良、収量低下、品質低下
  • 水質基準を超過した排水の河川への流出による、河川と流域土壌の汚染
  • 農園による化学肥料の多量使用や、周辺の産業活動に伴う周辺の水質・土壌劣化による天然ゴムの収量低下、品質低下
  • 病原菌、害虫、害獣の増加による天然ゴムの収量低下
  • 不十分な自然管理を行っている農園からの天然ゴムの調達による、消費者や投資家からの批判増加、ブランド価値の低下
当社固有 移行リスク
  • 持続可能性やトレーサビリティに関する規制導入・厳格化への対応
  • ゴム農園周辺の環境保護を目的とした法規制の導入・変更、報告義務の強化
  • 自然への負の影響の小さい、持続可能な方法で生産・製造された商品への顧客の嗜好変化
  • 環境負荷の少ない製造工程の構築や、資源効率向上のための設備導入等ネイチャーポジティブな生産方法への移行に向けた対応
  • スマートフォンの普及がゴム農家の中で伸び悩むことによるトレーサビリティ確保推進の停滞
  • 不十分な自然管理を行っている農園からの天然ゴムの調達による、消費者や投資家からの批判増加、ブランド価値の低下
  • 環境マネジメントの管理不足やそれに伴う環境事故による、認証の取消しや企業価値の毀損
  • 工場から生じた有害汚染物質や撹乱由来の健康被害等による周辺コミュニティからの訴訟や罰金

この他にも、水の使用量やCO2排出量等の指標について情報収集を行っています。数値目標の設定についても検討していきます。

PROJECT TREE

天然ゴムを持続的に調達するためには、自然資本への依存と影響を適切に評価・管理し、環境と人権双方への負の影響を低減することが重要です。そのためには、天然ゴムが保護区域で生産されていないか、子どもたちがその生産のために労働を強いられていないか等を確かめることが大切ですが、天然ゴム栽培のほとんどは小規模農家が担っており、トレーサビリティの確保が難しい状況にあります。当社では、天然ゴムの調達方針PDFファイルを定める他、GPSNRに日本の商社で唯一設立メンバーとして参画しています。

この他、注力している取組みが、当社の天然ゴム事業で独自に開発したサプライチェーン管理システムを活用したPROJECT TREEです。当社は、サステナビリティサービス会社であるPT PROJECT TREE INDONESIA(PTI)を設立し、2025年6月より営業を開始しました。今後はPTIを中心に、天然ゴムの持続可能性向上を目指すPROJECT TREEの取組みを更に推進し、業界全体のサステナビリティ向上に貢献していきます。

同取組みでは、ブロックチェーン技術を活用し、当社が開発した独自のシステムにより、スマートフォンアプリを通じて各農家の農園位置、天然ゴムの取引内容・日時等がブロックチェーン上に記録、地図上で確認することができる等、高度なトレーサビリティを実現しています。小規模農家から集荷業者、輸送業者を経て納入された原料は、当社子会社ABP社での加工を経て、原産地情報付きの天然ゴム素材としてタイヤメーカーへ販売されます。そこで生産されるPROJECT TREE協賛タイヤの売上の一部から原料サプライヤーである小規模農家へプレミアムを支払うことで小規模農家の収入増と生活水準向上を後押ししていきます。また、取組みの一環として最適な農園管理や排水処理に関して教育活動を行っており、自然と共生する持続可能な社会の実現に農家と共に推進していきます。

ご参考:PROJECT TREEウェブサイト別ウインドウで開きます

不動産事業は土地開発・利用や建物運営を通じて、土地や水を含めた様々な自然資本を活用して事業を行っており、自然資本へ依存するとともに影響を与えていることから、自然関連のリスクを招く可能性があると認識しています。特に、土地改変による生態系の損失・劣化や、建設工事による環境汚染等の自然への影響に起因するリスクが高いとされており、依存度と影響度マッピングにおいても不動産事業は影響度スコアが高い事業に分類されています。

これらの点を踏まえ、不動産事業についてLEAP分析を行い、同事業の自然資本への依存や影響への理解を深め、リスク低減や機会創出につなげる意義が高いと判断しました。伊藤忠商事の不動産事業では事業施設や住宅等の不動産開発を事業の主軸に置いています。そのため、本分析ではこれらの不動産開発と、その上流に位置する建材調達に焦点を当てて分析・評価を行いました。

Locate

不動産事業のLocateについては、木材の調達活動に絞って分析することとし、その評価結果は以下の「コモディティ分析」で説明しています。
不動産事業のバリューチェーン上流にあたる建材の生産活動(「建材製造」、「森林・木材製品の生産」)には、伐採及び土砂災害等の重大な自然関連課題が潜在的に存在すると考えられます。その中でも、伊藤忠商事及び子会社で「森林・木材製品の生産」に該当する事業活動を担っており、当社にとっての重要性が高いため、不動産事業の一部としてではなく、個別に分析しました。また、木材は、Science Based Targets Network(SBTN)が、自然資本への依存と影響が大きいとされる商材をまとめたHigh Impact Commodity Listにも含まれています。
なお、当社グループが不動産開発に関わった各住宅に関するリスク評価については、伊藤忠リート・マネジメント株式会社のESGレポート(気候変動および自然資本への対応PDFファイル)をご覧ください。

  • 科学に基づいた自然関連の目標設定方法の開発を行う国際的なイニシアティブ
Evaluate

不動産事業の担当者とともに、各バリューチェーンで行っている事業内容をISIC(International Standard Industrial Classification)に合わせる形で細分化し、それぞれの産業活動ごとにENCOREで整理されている依存・影響の内容と5段階の重要度(とても低い、低い、どちらでもない、高い、とても高い)を当てはめました。
不動産事業のバリューチェーン上流における建材の調達では、降雨のパターンや水の浄化作用といった生態系サービスに強く依存しており、建築資材の原材料である木材・砂・鉱物の採取等そのものの自然資本の活用や汚染物質の排出等が生息地に負の影響を与える可能性があります。また、直接操業における不動産開発でも、水の浄化作用に依存しており、騒音や粉じん等が自然環境に対して負の影響を及ぼし得ることがわかりました。

Assess

Evaluateの結果とTNFD提言の内容をもとに、伊藤忠商事の不動産事業のバリューチェーン全体で想定される自然関連のリスクや機会を洗い出し、2030年時点の将来シナリオを想定して、それらのリスク・機会の重要性を3段階(低・中・高)で評価しました。
TNFDガイドラインでは「生態系サービスの劣化度(物理的リスク)」と「移行に向けた社会の一貫性(移行リスク)」の2軸で4つのシナリオを想定しています。当社として現時点は「シナリオ#2(自然破壊による損害が甚大で、自然資本への企業の関心が高いシナリオ)」の状況にあると判断し、リスク・機会の強度と発生可能性の観点から重要性評価を実施しました。なお、この評価は、不動産事業の担当者が事業の実態を踏まえて行いました。
不動産開発に関するシナリオ分析ではリスクの一例として、降雨パターンへの強い依存に起因する将来的な洪水や土砂災害の被災が挙がりました。しかし、当社では事業サイトの選定に際して綿密な災害リスク評価を実施しており、過去の事例を踏まえた結果、当該リスクの蓋然性及び重要性は高くないことが確認されました。

シナリオ#1

  • 脱炭素・気候変動対応が進み、ネイチャーポジティブに向けた政策や地域の環境配慮に関する取組みが増加。企業が積極的に自然資本を意識した事業を実施している状況。

シナリオ#2

  • 自然の毀損が進んだことで、速やかな回復に向けた活動が求められており、気候変動を含めた自然資本の復元や再生の重要性を企業が認識している状況

シナリオ#3

  • 自然資本は損なわれているが、政策や金融の対応は進まない。
  • 企業はコストや負の影響を外部化させ、短期的に自然資本が過剰消費される状況。

シナリオ#4

  • 自然資本に関する企業の優先順位は低く、低炭素化に向けた資金調達、技術進歩、企業変革はある程度進展するが、企業はコストを理由に自然関連の長期戦略の立案は見送る状況。
TNFDガイドラインで示されている4シナリオの説明
Guidance on scenario analysisPDFファイルをもとに伊藤忠商事が概要を整理

最後に、重要性が一定以上あると評価されたリスクと機会について対応策を整理・検討しました。具体的には、本パートでは適切にリスクを認識し低減していくため、リスク・機会について「中」または「高」と評価されたものを対象にしました。
各リスク・機会への対応についての詳細は以下の表の通りです。当社の不動産事業では、グループ会社も含め、自然関連のリスク・機会について網羅的に対策を講じています。

<リスク>
区分 事業
プロセス
内容 対応状況 重要性
物理 急性 上流 異常気象・自然災害による施工遅延
物理 急性 上流 自然災害に伴うサプライチェーン寸断によるプロジェクト遅延
物理 慢性 上流 保険(建設・賠償)市場の引受厳格化・保険料率上昇
  • ハザードマップを考慮したサイト選定
  • 被災リスク低減策(防災設計等)の積極的な導入
  • 長期間の保険への加入
移行 政策・
法規制
上流 天然記念物や希少種の生息地の発見による工期制約・工事予定地の変更
  • 文化財保護法の遵守も含め、天然記念物等や希少種の生息地での開発を行わないよう事前に徹底したアセスメントを実施
  • プロジェクトサイトの選定には十分な検討を行い、生態系への負の影響が比較的小さいと考えられる地域を選定
移行 評判 上流 建設地の貴重な生態系の破壊や悪影響による地域住民・社会からの批判が施工業者だけでなく、発注者まで波及
  • 文化財保護法の遵守も含め、天然記念物等の生息地や希少種の生息地での開発を行わないよう事前に徹底したアセスメントを実施
  • 着工前から、ステークホルダー(地域住民・自治体)との対話・説明機会を確保
  • プロジェクトサイトの選定には十分な検討を行い、生態系への負の影響が比較的小さいと考えられる地域を選定
移行 市場 上流 EUDR等法規制の強化に伴う、資材・エネルギー価格の上昇
  • 調達先の分散
  • 価格変動のモニタリング
  • 長期契約や先物取引等による調達価格の安定化
  • リサイクル資材や代替材の活用
  • 法規制動向のモニタリング
移行 市場 上流 脱炭素素材やサステナブル資材の需要増加による資材調達の不安定化
移行 政策・
法規制
上流 自然関連の規制・基準(生物多様性配慮、オフセット、TNFD等)による上流コスト増・要件変更
  • 法令・基準の改訂に関する積極的な情報収集
  • プロジェクト計画段階でのコスト見積もり精緻化
移行 政策・
法規制
上流 持続可能な調達に対する社会的圧力の高まり
  • 木材については調達方針を策定・運用
  • サプライヤーへESG要件の遵守状況の確認(サステナビリティ調査)
  • 認証制度(FSC、PEFC等)の活用(定量的な導入目標も設定)
    <具体例>
    伊藤忠建材(株):「地球樹」商品別ウインドウで開きます
移行 法規制・賠償責任 上流 環境デューデリジェンスの不備による土壌・地下水汚染の発覚
  • 実績のあるコンサルタントを起用し、土壌・地下水の事前環境デューデリジェンスや環境アセスメントの実施
移行 政策・
法規制
上流 公共用地・都市公園・保全樹木・保護区域に関する規制・許可の厳格化
  • 該当法令・条例の事前調査
  • 行政との事前協議
  • 許認可取得プロセスの事前確認・厳守
    <具体例>
    DAIKEN(株)による緑化関連の公共事業への参加
移行 技術 上流 省エネ建材・設備やグリーン技術(自然への悪影響を抑える技術・工法)の導入
  • 省エネ・環境性能製品は平時から標準採用
移行 技術 上流 省エネ建材・設備やグリーン技術(自然への悪影響を抑える技術・工法)の導入遅延
  • 省エネ・環境性能製品は平時から標準採用
  • 新技術・工法について平時から積極的に情報収集を行い、導入を推進
移行 法規制 上流 生物多様性保護や外来種規制の強化(検疫・通関の厳格化)
  • 外来種混入防止策を平時から実施(資材管理、植栽選定等)
  • 厳格な植物検疫・通関手続きの徹底
物理 急性 直接操業 洪水・土砂災害・台風等の自然災害による自社保有物件の被災
  • ハザードマップを考慮したサイト選定
    <具体例>
    ハザードマップでリスクが高いと評価されているサイトでは、開発期間中は浸水しない場所に機材を設置する等、施工中の災害対応は綿密に実施
  • BCPの策定
  • 防災・減災設備(止水板、排水強化等)の導入
  • 自然災害をカバーする保険への加入
移行 政策・
法規制
直接操業 自然保護の観点における土地利用規制強化によるサイト選定・企画の難化
  • サイト選定段階での徹底した土地用途・規制の調査
移行 評判 直接操業 自然環境の改変に伴う自然環境の破壊、世間からの評判低下
移行 政策・
法規制
直接操業 自然関連の基準・開示要請(TNFD準拠、CSRD準拠等)の対応
  • 開示関連法令・基準に関する積極的な情報収集と早期対応
  • 情報開示対応の内製化の推進
移行 政策・
法規制
直接操業 緑化や自然・生物多様性関連規制の強化
  • 法令・基準改訂に関する積極的な情報収集
  • プロジェクト計画段階でのコスト見積もり精緻化
移行 政策・
評判・
賠償責任
直接操業 自然関連リスクに関する契約上のリスク分担の不備
  • 契約書における責任分界点の明確化
移行 評判・
賠償責任
直接操業 自然に関する偽情報や改ざんされたデータの恣意的な利用の発覚
移行 政策・
法規制
直接操業 地域計画やグリーン要件との不整合
  • 地域計画やグリーン要件の事前確認(必要に応じて第三者によるチェック)
移行 市場・
評判
直接操業 社会的な環境意識の高まりによる投資家・金融機関の投融資条件厳格化(グリーンボンド市場の拡大)
移行 市場 直接操業 環境性能の低い物件の市場価値低下
物理 急性 下流 集中降雨・浸水・高潮等の自然災害による運用障害
物理 慢性 下流 ヒートアイランド現象の悪化等、周辺環境の悪化
物理 慢性 下流 保険市場における物件の引受制限(浸水多発エリア等)
  • ハザードマップを考慮したサイト選定
  • BCP/BCMの策定
  • 防災・減災設備(止水板、排水強化等)の導入
  • 重要設備のバックアップ・冗長化
移行 市場 下流 自然資本への配慮不足によるテナント離反及び賃料下落
移行 政策・
法規制
下流 自治体の生物多様性地域戦略の変更・強化(政権交代・計画改定等)
  • 地域政策の動向のモニタリング(自治体とのコミュニケーションを踏まえた、自治体との関係構築及び強化)
<機会>
区分 事業
プロセス
内容 対応状況 重要性
機会 資源効率 上流 持続可能な資材調達の推進(例:認証木材等) 事業活動の中で適切に実施
機会 製品・サービス 上流 建設業者とのグリーン技術導入に向けた協働
機会 評判 上流 地域住民・NGOとのエンゲージメントに基づく環境対策の実施
機会 自然資源の持続可能な利用 上流 建設資材のリサイクル技術導入
機会 製品・サービスと評判 直接操業 国産認証木材を利用した木造建築のニーズ増加
機会 製品・サービスと評判 直接操業 自然・生物多様性に配慮した施工計画
機会 製品・サービスと評判 直接操業 生物多様性認証制度の取得(例:JHEP認証、ABINC認証)
機会 資金フロー&
資金調達
直接操業 自然関連情報の開示・取組強化によるサステナビリティファイナンスの拡大
機会 評判 直接操業 「ネイチャーポジティブ経営」推進による顧客からの信頼獲得・人材確保、従業員の就労満足度/モチベーション/ロイヤリティアップによる人材定着
機会 評判 下流 自然・生物多様性配慮型施設の賃料・稼働率アップ
機会 製品・サービス 下流 施設・周辺環境の災害レジリエンス強化による施設稼働の安定化
Prepare

不動産事業に関連して、TNFDが開示を推奨する指標のうち伊藤忠商事が情報収集を行っているものは次の通りです。

<指標>
測定指標
番号
区分/指標 収集指標 (参考)関連するリスク・機会
EH.A1.0
RE.A1.1
緑地の創出 地球樹の森づくり活動実績別ウインドウで開きます
  • 緑化や自然・生物多様性に関連する規制の強化
  • ヒートアイランド現象の悪化等、周辺環境の悪化
  • 地域住民・NGOとのエンゲージメントに基づく環境対策の実施
  • 生物多様性の認証制度の取得(例:JHEP認証、ABINC認証)
A22.0 N/A 不動産関連事業におけるサステナビリティ調査への協力サプライヤー比率
  • 脱炭素素材やサステナブル資材の需要増加による資材調達の不安定化
  • 持続可能な調達に対する社会的圧力の高まり
  • 持続可能な資材調達の推進(認証木材等)
  • 建設資材のリサイクル技術導入
EH.A22.0 バリューチェーン認証
  • 脱炭素素材やサステナブル資材の需要増加による資材調達の不安定化
  • 持続可能な調達に対する社会的圧力の高まり
  • 持続可能な資材調達の推進(認証木材等)
  • 建設資材のリサイクル技術導入
A22.1 N/A 不動産関連事業におけるサステナビリティ調査への協力サプライヤー比率
  • 脱炭素素材やサステナブル資材の需要増加による資材調達の不安定化
  • 持続可能な調達に対する社会的圧力の高まり
  • 持続可能な資材調達の推進(認証木材等)
FP.A22.1 デューデリジェンス及びトレーサビリティシステムによってカバーされる非認証木材/繊維
  • 脱炭素素材やサステナブル資材の需要増加による資材調達の不安定化
  • 持続可能な調達に対する社会的圧力の高まり
  • 持続可能な資材調達の推進(認証木材等)
A22.2 N/A
A22.3 N/A
A22.4 N/A 不動産関連事業におけるサステナビリティ調査への協力サプライヤー比率
  • 脱炭素素材やサステナブル資材の需要増加による資材調達の不安定化
  • 持続可能な調達に対する社会的圧力の高まり
  • 持続可能な資材調達の推進(認証木材等)
MM.A23.4 自然関連リスクについてスクリーニングされたサプライヤー
  • 自然災害に伴うサプライチェーン寸断によるプロジェクト遅延
  • 持続可能な調達に対する社会的圧力の高まり
  • 省エネ建材・設備やグリーン技術(自然への悪影響を抑える技術・工法)の導入
  • 持続可能な資材調達の推進(認証木材等)
不動産開発事例
宮城県柴田町の総合体育館
DAIKENが製造する冷暖房効率が良い床材を導入
PPP事業

伊藤忠商事は建設・不動産分野におけるバリューチェーンの強化を図っており、公共施設整備事業もその一環と位置付けています。伊藤忠グループの総合力、事業開発能力、多様なステークホルダーとの連携を通して、自治体のニーズに即したPPP(Public Private Partnership、官民連携)事業を推進しています。建物設計では防災性能や環境性能にも配慮しており、宮城県柴田町の総合体育館等では、グループ企業のDAIKEN株式会社が製造する冷暖房効率が良い床材を導入しています。この床材は床から空調した空気を吹き出すことにより人の活動エリアを効率的に空調し、対流空調と比較して10%程度の省エネルギーを実現するものです。

木造建築の伊藤忠商事女子寮
社員寮

伊藤忠商事社員寮についても、脱炭素の観点から環境にやさしい建物となっています。2025年3月に竣工した女子寮は、グループ会社の西松建設株式会社が設計施工を担当しました。木築の新構法を採用し、柱・梁・耐震壁等の構造フレーム(接合部を除く)の大部分を木造化することで、CO2排出量が鉄骨造と比べ458トン削減しました。一般的な木造に比べ高耐力・高剛性・高靭性という特徴を有し、災害レジリエンスや長寿命化により、修繕に係る資材量やコストの削減にも繋がります。

コモディティ分析

伊藤忠商事で取扱う商品(コモディティ)は幅広く、その中にはバリューチェーン上流における自然への依存度と影響度が高い農作物や林産物が含まれています。それらの商品について、詳細な自然関連リスクの評価を「コモディティ分析」として個別に行いました。LEAPアプローチでは、直接操業に焦点を当てて事業単位で分析・評価を行いましたが、コモディティ分析においては、自然環境との接点を持つバリューチェーン上流の調達段階を対象としています。各コモディティの重要度の高い調達拠点の地理的な特徴や関連する法規制等も踏まえて、自然への依存と影響及びこれらが発現した場合のリスクを特定し、シナリオ分析の上で当社が被る可能性のあるリスクや対応策を整理しました。対象コモディティは、自然環境やステークホルダーへの影響が大きく、SBTNのHigh Impact Commodity Listに該当し、調達に関する規制や認証がある商品をスコアリングの上で、木材、パーム油、カカオ豆、コーヒー豆を選定しました。

コモディティに特有な
依存・影響の整理
  • ENCOREによる分析とデスクトップ調査を通じて、各コモディティの自然資本への依存・影響の特徴を評価する
  • 依存・影響の各項目について、地域の特徴を踏まえてどのようなリスクに波及するかを検討する
調達地域の
自然状態評価
  • 依存・影響が高い項目を抽出し、類似した性質をもつ項目を集約する
  • 集約結果は、TNFDの要注意地域の基準と紐づけ、適切なデータベースにより優先地域を特定する
事業影響の
シナリオ分析
  • 想定シナリオごとに重要な外部環境要因を選定し、その変化を検討する
  • 調達地域における潜在的な事業影響とその発生可能性を検討し、当社への財務影響を評価する
対応方針・施策の確認
  • 特定されたリスク・事業影響に対し、当社の既存の取組みを紐づけする
  • 自然関連のリスク低減、負の影響の低減に努め、リスクが適切に管理されていることを確認する

なお、自然への依存度と影響度が高い森林保護関連商品や食品、繊維原料等のコモディティについては、商品ごとに調達方針を定め、トレーサビリティにより調達地域を特定できる国際的な第三者認証品の調達等に努めています。

ご参考:商品ごとの調達方針

コモディティ分析の実施内容は以下の通りです。

コモディティに特有な依存・影響の整理

まず、一般的な木材の調達や加工における自然資本への依存・影響の項目と重要度を、ENCOREを用いて5段階(とても低い、低い、どちらでもない、高い、とても高い)で評価しました。
その結果、調達段階において樹木からのバイオマス供給や土壌の質の保持機能に非常に強く依存しており、伐採活動等による土地の改変、農薬や重機による大気汚染物質の放出等により自然に大きな影響を与え得ることがわかりました。

調達地域の自然状態評価

当社は、主に北米や東南アジアから木材の調達を行っています。これらの木材の調達拠点と加工工場の位置情報を公開情報やサプライヤーの情報、衛星画像等で特定し、重要度が「高い」及び「とても高い」と評価された依存・影響の項目と調達地域がどの程度接点を持っており、どのようなリスクが生じ得るのかを確認しました。
この確認では、上述の木材の調達と加工に関する依存・影響の項目とTNFDの要注意地域の判断基準を照らし合わせ、以下のデータベースを使用しました。

  • BII(Biodiversity Intactness Index)
  • Ecoregion Intactness Index
  • Global forest watch
  • Landmark
  • WWF Biodiversity Risk Filter
  • WWF Water Risk Filter

これらのデータベースを用いた机上分析を通じ、調達地域の自然状態の評価と潜在的なリスクを検証した結果、当社の調達地域では自然災害の緩和機能への依存度が特に強いことが確認されました。また、約7割の地域で洪水や土砂災害により生産・調達量が不安定化するリスクや生物資源の採取や汚染物質の排出等により地域住民へ悪影響を与えるリスクが高いと判断されました。

事業影響のシナリオ分析

自然関連のリスクは、外部環境の変化により顕在化すると考えられます。事業環境に影響する政治、経済、社会、技術、法律、環境の6つの外部要因ごとに、上述の調達地域のリスク評価結果や文献を用いて2040年時点の将来シナリオを想定し、調達地域においてどのような事業影響が発生し得るのか、またその発生可能性を3段階(低・中・高)で評価し、木材関連事業の担当者が現場の実態を踏まえて精査しました。
なお、本分析で使用したシナリオは、LEAPアプローチと同様にTNFDガイドラインで想定されている「シナリオ#2(自然破壊による損害が甚大で、自然資本への企業の関心が高いシナリオ)」となります。

シナリオ#1

  • 脱炭素・気候変動対応が進み、ネイチャーポジティブに向けた政策や地域の環境配慮に関する取組みが増加。企業が積極的に自然資本を意識した事業を実施している状況。

シナリオ#2

  • 自然の毀損が進んだことで、速やかな回復に向けた活動が求められており、気候変動を含めた自然資本の復元や再生の重要性を企業が認識している状況

シナリオ#3

  • 自然資本は損なわれているが、政策や金融の対応は進まない。
  • 企業はコストや負の影響を外部化させ、短期的に自然資本が過剰消費される状況。

シナリオ#4

  • 自然資本に関する企業の優先順位は低く、低炭素化に向けた資金調達、技術進歩、企業変革はある程度進展するが、企業はコストを理由に自然関連の長期戦略の立案は見送る状況。
TNFDガイドラインで示されている4シナリオの説明
Guidance on scenario analysisPDFファイルをもとに伊藤忠商事が概要を整理

更に、発生可能性が「高」とされた影響が調達地域で生じることで、当社が負う可能性がある財務リスクについても木材関連事業の担当者が精査しました。上述でリスクが高い地域が多いとされた、自然災害による生産・調達量の不安定化について、当社に対しては売上の減少等の財務リスクが懸念されますが、当社のサプライヤーは調達・製造拠点を分散させており、自然災害に伴う生産・調達量の不安定化に対するレジリエンスを有していることから、当該財務リスクが発現する可能性は非常に低いと判断されました。この他にも、木材事業については一般的に過剰伐採や病害等で利用可能な森林資源面積が縮小し、取引量が減少することが財務リスクとして懸念されます。しかし、当社が取引をおこなうサプライヤーは、法規制への対応や持続可能な森林経営(例:認証取得、再造林、長期的森林資源計画)への主体的な取組みが可能な一定以上の規模を有する企業が中心です。更に、行政からも林業に対する支援が得られていること、スケールメリットにより新規参入企業が限られることで自然資本に寄り添った長期的な経営が安定的になされること等の特性を有し、サステナビリティに関する成熟度が非常に高いことが確認されました。

対応方針・施策の確認

木材事業の自然への影響については、上述の通りサプライヤーの特性により、当社の財務リスクは総じて顕在化しにくくなっています。あわせて、当社による予防的措置として、「自然と森林資源保護に関する調達方針」を策定し、サプライヤーに対しても「サプライチェーン・サステナビリティ行動指針」の通知を行う等、認証材の調達等のトレーサビリティの向上含め、持続可能な森林経営のコミットメントを行う等の十分な対策を講じています。
これらの分析により調達プロセスにおける発現可能性が高いと判断された影響と、サプライヤー側のリスク発現抑制に関する要因、当社のリスク低減に向けた取組みの詳細は以下の通りです。

外部
要因
調達プロセスにおける発現可能性が高いと判断された影響 リスクの発現抑制の主な要因 当社のリスクの低減の取組み
政治・法律
  • 気候関連規制の強化や炭素コストの上昇によるサプライヤー選定の厳格化
  • 生産地域における低炭素・環境配慮型の生産への要求の高まり
  • 林業が基幹産業の調達地域であり、行政連携による対応が可能
  • 取引先は規制の強化等、社会環境の変化への対応能力が十分備わっている主要大手林産企業が中心
  • 木材調達はスケールメリットが大きく、参入障壁が高いため新規参入は限定的
  • 自然林と森林資源保護に関する調達方針を策定
  • サプライチェーン・サステナビリティ行動指針の通知
  • 重要サプライヤー向けのサステナビリティ調査(年次)の実施、違反サプライヤーに対する是正要請
  • 保護区拡大や土地利用規制強化による新規開墾を含む土地利用の制限拡大
  • 既存拠点の生態系管理・再生の促進による短期的な生産量の減少
  • 検疫・バイオセキュリティの常態化による物流における点検の増加
  • 物資管理が厳格化による輸送期間の長期化
  • 熱処理や燻蒸処理による対策を実施済み
  • 木材調達はスケールメリットが大きく、参入障壁が高いため新規参入は限定的
  • 再生材・副産物の活用拡大による木材のローカル調達比率の上昇
  • 廃棄物処理の厳格化や、土壌侵食や土壌流出リスク対策の義務化の促進
  • 取引先は規制の強化等、社会環境の変化への対応能力が十分備わっている主要大手林産企業が中心
  • 木材調達はスケールメリットが大きく、参入障壁が高いため新規参入は限定的
  • 自然林と森林資源保護に関する調達方針を策定
  • サプライチェーン・サステナビリティ行動指針の通知
  • 重要サプライヤー向けのサステナビリティ調査(年次)の実施、違反サプライヤーに対する是正要請
  • 副産物の利用及びローカル調達の拡大
    <具体例>
    DAIKEN(株)における端材や残渣を利用したMDF製造別ウインドウで開きます
  • 一次生産までのトレーサビリティが確保された認証地域への調達集中
  • 厳格なトレーサビリティ要件への未対応地域における生産者の離脱・集約の加速
  • 自然林と森林資源保護に関する調達方針を策定
  • サプライチェーン・サステナビリティ行動指針の通知
  • 重要サプライヤー向けのサステナビリティ調査(年次)の実施、違反サプライヤーに対する是正要請
  • 自然関連データの公開の標準化による、外部ステークホルダーからの監視強化
  • 開示用データ収集のための現場運営の負荷増加
  • CAOの監督のもと適切な情報収集・開示を実施
経済・社会
  • EUDR対応等のための認証・低影響素材への需要集中
  • 非認証産地は高リスク商品として市場から締め出され、ブランド価値の格差拡大
  • 自然林と森林資源保護に関する調達方針を策定
  • NGOと企業・自治体の共同モニタリングの定着
  • 苦情処理メカニズムの整備と苦情対応(手順・迅速性)への監視強化による透明性の高い報告の要求の高まり
  • 自然林と森林資源保護に関する調達方針を策定
  • サプライチェーン・サステナビリティ行動指針の通知
  • 重要サプライヤー向けのサステナビリティ調査(年次)の実施、違反サプライヤーに対する是正要請
  • 地域の金融機関による自然配慮案件の優遇と、保全・再生プロジェクトへの資金供給の拡大
  • 持続可能なサプライチェーン基盤の整備の加速と対応の標準化
  • 取引先は規制の強化等、社会環境の変化への対応能力が十分備わっている主要大手林産企業が中心
  • 調達地域における環境対応要件の高度化
  • 長期契約の締結や、購入事業者を巻き込んだプロジェクトの実施の活発化
  • 自然林と森林資源保護に関する調達方針を策定
  • サプライチェーン・サステナビリティ行動指針の通知
  • 重要サプライヤー向けのサステナビリティ調査(年次)の実施、違反サプライヤーに対する是正要請
技術
  • 技術革新による木材の生産の安定化と木材価格の抑制
  • 木材に代わる代替素材の普及による木材の需要の鈍化
  • 代替素材の市場への普及に関わらず、木材の需要は維持される
  • 木材調達はスケールメリットが大きく、参入障壁が高いため新規参入は限定的
環境
  • 過剰伐採や病害の拡大による利用可能資源の減少
  • 禁伐期間の長期化による供給の不安定化の進行
  • 遺伝的多様性の低下による外部環境への脆弱性の高まりと品質のばらつきの拡大
  • 調達地域では伐採量が成長量を上回らないよう適切に管理を実施
  • 取引先は、適切な森林経営を実施する体制・能力を備えた主要大手林産企業が中心
  • 河川・灌漑水の濁度・病原体・化学物質負荷の上昇
  • 生育障害、化学物質/薬剤の残留基準超過による木材の出荷停止の増加
  • 土壌有機物の減少と塩類の集積による地力の低下
  • 木材の過剰伐採と違法・無報告・無規制伐採の拡大
  • 成熟材の枯渇による禁伐措置が断続的な発動と供給停止
  • 取引先では、伐採量の適正管理並びに適切な森林経営を実施する体制・能力を備えた主要大手林産企業が中心
  • 自然林と森林資源保護に関する調達方針を策定
  • サプライチェーン・サステナビリティ行動指針の通知
  • 重要サプライヤー向けのサステナビリティ調査(年次)の実施、違反サプライヤーに対する是正要請
  • 取引先に対する人権DDを実施
  • 調達地域における地域コミュニティへの影響に対する取組み
  • 夜間照明・騒音による野生生物の生息環境の悪化と生産地域周辺の生態系バランスの崩壊
  • 生態系サービスの低下による地域コミュニティからの訴訟の発生
  • 保護地域等、生物多様性上重要な地域における事業活動は極めて限定的
  • 外来種や病害虫の侵入・定着による品質・収量が不安定化、防除コストの増加
  • 検疫強化による輸送期間の長期化
  • 林業が基幹産業の調達地域であり、問題発生時には行政連携による対応が可能
  • 効率優先の土地利用の拡大による生態系の分断化
  • 在来種が減少による生態系バランスの崩壊、水資源の偏在や土壌劣化の深刻化
  • 地域コミュニティの環境悪化による健康被害や水資源をめぐる対立の発生
  • 取引先は、適切な森林経営を実施する体制・能力を備えた主要大手林産企業が中心
  • 洪水・土砂災害・サイクロンによる土壌流出や林業インフラの損壊増加、山火事による収量減少に起因した生産量の不安定化
  • 事業拠点を分散させ、同時に被災するリスクを低減

今後も自然環境の維持保全、地域社会との共生、認証品調達率向上及びサプライヤーとの協働の深化、調達先地域の環境規制動向のモニタリングを通じて、安定的な調達を継続してまいります。

コモディティに特有な依存・影響の整理

まず、一般的なパーム油の調達における自然資本への依存・影響の項目と重要度を、ENCORE及びTNFDの食料・農業セクターガイダンス、パーム油のもととなるパーム椰子の栽培における環境リスクに関する論文を用いて5段階(とても低い、低い、どちらでもない、高い、とても高い)で評価しました。その結果、熱帯の湿潤・多雨地域で栽培されることが多いパーム椰子は、冠水等による生育ストレスや病害を防ぐ観点から排水管理が重要な作物であり、水流調整機能に強く依存していることがわかりました。

調達地域の自然状態評価

当社は、主にマレーシア等からパーム油の調達を行っており、これらの主要調達地域を分析対象として特定しました。重要度が「高い」及び「とても高い」と評価された依存・影響の項目と調達地域がどの程度接点を持っており、どのようなリスクが生じ得るのかを確認しました。
この確認では、上述のパーム油の生産に関する依存・影響の項目とTNFDの要注意地域の判断基準を照らし合わせ、以下のデータベースを選定しました。

  • BII(Biodiversity Intactness Index)
  • Ecoregion Intactness Index
  • Landmark
  • WWF Biodiversity Risk Filter
  • WWF Water Risk Filter

これらのデータベースを用いた机上分析を通じ、調達地域の自然状態の評価と潜在的なリスクを検証した結果、パーム油の主要な調達地域で、洪水や土砂災害、病害虫の発生のリスクがあると判断されました。

事業影響のシナリオ分析

自然関連のリスクは、外部環境の変化により顕在化すると考えられます。事業環境に影響する政治、経済、社会、技術、法律、環境の6つの外部要因ごとに、調達地域のリスク評価結果や文献を用いて2040年時点の将来シナリオを想定し、調達地域においてどのような事業影響が発生し得るのか、またその発生可能性を3段階(低・中・高)で評価し、食料関連のサステナビリティ担当者が精査しました。
なお、本分析で使用したシナリオは、LEAPアプローチと同様にTNFDガイドラインで想定されている「シナリオ#2(自然破壊による損害が甚大で、自然資本への企業の関心が高いシナリオ)」です。

シナリオ#1

  • 脱炭素・気候変動対応が進み、ネイチャーポジティブに向けた政策や地域の環境配慮に関する取組みが増加。企業が積極的に自然資本を意識した事業を実施している状況。

シナリオ#2

  • 自然の毀損が進んだことで、速やかな回復に向けた活動が求められており、気候変動を含めた自然資本の復元や再生の重要性を企業が認識している状況

シナリオ#3

  • 自然資本は損なわれているが、政策や金融の対応は進まない。
  • 企業はコストや負の影響を外部化させ、短期的に自然資本が過剰消費される状況。

シナリオ#4

  • 自然資本に関する企業の優先順位は低く、低炭素化に向けた資金調達、技術進歩、企業変革はある程度進展するが、企業はコストを理由に自然関連の長期戦略の立案は見送る状況。
TNFDガイドラインで示されている4シナリオの説明
Guidance on scenario analysisPDFファイルをもとに伊藤忠商事が概要を整理

更に、発生可能性が「高」とされた影響が調達地域で生じることで、当社が負う可能性がある財務リスクについても、食料関連のサステナビリティ担当者が精査しました。上述の分析では、調達地域における土砂災害の発生や病害虫の移入によりパーム油の収量や品質の低下が懸念される結果となりました。これらが顕在化した場合、当社においては売上への影響が財務リスクとなります。しかし、パーム椰子の栽培は小規模農家が担うケースが多く、サプライヤー側で講じられるリスク予防策には一定の限界があります。

対応方針・施策の確認

上述の通り、パーム油の調達におけるリスクについては、サプライヤーによる予防策に頼るだけでなく、当社側で積極的な対応策を講じることが重要となります。当社では、持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)での活動や、サプライヤーの調査を通じて、当社事業に重大な財務影響を及ぼす財務リスクが顕在化しないよう努めています。
調達プロセスにおける発現可能性が高いと判断された影響、当社へのリスク、その対応策の詳細は以下の評価の通りです。

外部
要因
調達プロセスにおける発現可能性が高いと判断された影響 当社のリスク リスクへの適応・対応策
政治・法律
  • 自然関連データの公開の標準化による、外部ステークホルダーからの監視強化
  • 開示用データ収集のための現場運営の負荷増加
  • 情報開示が不十分である場合の、ステークホルダーからの信頼の棄損、企業評判の低下と株価の下落
  • 開示関連法令・基準に関する積極的な情報収集と早期対応
  • 情報開示対応の充実化・効率化
経済・社会
  • NGOと企業・自治体の共同モニタリングの定着
  • 苦情処理メカニズムの整備と苦情対応(手順・迅速性)への監視強化による透明性の高い報告の要求の高まり
  • 対応遅れ・透明性不足による取引先の仕入れ先変更に起因する売上機会の喪失
  • パーム油調達方針・サプライチェーンサステナビリティ行動指針の策定と通知
  • 重要サプライヤー向けのサステナビリティ調査(年次)の実施
  • 認証原料の調達
  • トレーサビリティの強化(ミルレベルでのトレーサビリティ100%達成済み)
  • 持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)加盟
  • パーム油の持続可能な調達に関するファクトシートの開示
  • 1-3次サプライヤーを対象に人権・環境DDの実施(2024年度)
技術
  • 技術革新により農作物の生産が安定し、作物価格が抑制
  • 小規模サプライヤーにおける新技術導入の遅延
  • 最先端技術導入による作物栽培管理コストの増加と直接調達価格への反映による、一時的な粗利率の低下
  • 市況変動の迅速な情報収集と早期対応
環境
  • 高温・熱波、局所的な豪雨・暴風等の頻度上昇による不作の発生
  • 生育適地のシフトによる既存産地における結実不良や倒伏被害の増加
  • 顧客ニーズに対する必要量が確保できないことによる販売機会の喪失
  • 収量減少により契約数量を履行できない場合の違約金の発生や契約条件の悪化
  • 品質低下で検査不適合・返品が続くことによる粗利率低下と廃棄損の発生
  • 市況変動の迅速な情報収集と早期対応
  • 調達地域の分散
  • 洪水・土砂災害・サイクロンによる土壌流出や農業インフラの損壊増加に起因した生産量の不安定化
  • 泥炭火災、土地改変、施肥によるGHG排出の増加
  • 気候変動に起因する局所的な災害の頻発による生産の不安定化
  • 新規の農地転換サプライヤーの開墾履歴を懸念する顧客の調達先変更、契約更新条件の厳格化・契約更新の停止による売上減少
  • 生産地域での農地転換が訴訟に発展することによる賠償金・輸入停止などの臨時損失の発生及び売上停止
  • パーム油調達方針・サプライチェーンサステナビリティ行動指針の策定と通知
  • 重要サプライヤー向けのサステナビリティ調査(年次)の実施
  • 認証原料の調達
  • トレーサビリティの強化(ミルレベルでのトレーサビリティ100%達成済み)
  • 持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)加盟
  • パーム油の持続可能な調達に関するファクトシートの開示
  • 1-3次サプライヤーを対象に人権・環境DDの実施(2024年度)
  • 外来種や病害虫の侵入・定着による品質・収量が不安定化、防除コストの増加
  • 検疫強化による輸送期間の長期化
  • 生産地域での環境破壊が訴訟に発展することによる賠償金・輸入停止などの臨時損失の発生及び売上停止
  • 効率優先の土地利用の拡大による生態系の分断化
  • 在来種の減少による生態系バランスの崩壊、水資源の偏在や土壌劣化の深刻化
  • 地域コミュニティの環境悪化による健康被害や水資源をめぐる対立の発生
  • 調達地域の住民の生活環境劣化の疑いがあるサプライヤーを忌避する顧客の調達先変更、契約更新条件の厳格化・契約更新の停止による売上減少
  • 生産地域での人権侵害が訴訟に発展することによる賠償金・輸入停止などの臨時損失の発生及び売上停止

引続き、認証品の調達やサプライヤーの調査を通じ、安定的なパーム油の調達を行っていきます。

コモディティに特有な依存・影響の整理

まず、一般的なカカオ豆の調達における自然資本への依存・影響の項目と重要度を、ENCORE及びTNFDの食料・農業セクターガイダンス、カカオ豆の栽培における環境リスクに関する論文用いて5段階(とても低い、低い、どちらでもない、高い、とても高い)で評価しました。その結果、カカオ豆は冠水状態に極めて弱く、洪水が発生すると根腐れ等を起こすため、自然の水流調整機能にも強く依存していることが明らかになりました。

調達地域の自然状態評価

当社は、ガーナをはじめとする西アフリカ諸国からカカオ豆の調達を行っており、これらの主要調達地域を分析対象として特定しました。重要度が「高い」及び「とても高い」と評価された依存・影響の項目と調達地域がどの程度接点を持っており、どのようなリスクが生じ得るのかを確認しました。
この確認では、上述のカカオ豆の生産に関する依存・影響の項目とTNFDの要注意地域の判断基準を照らし合わせ、以下のデータベースを選定しました。

  • BII(Biodiversity Intactness Index)
  • Ecoregion Intactness Index
  • Landmark
  • WWF Biodiversity Risk Filter
  • WWF Water Risk Filter

これらのデータベースを用いた机上分析を通じ、調達地域の自然状態の評価と潜在的なリスクを検証した結果、カカオ豆の主要な調達地域で、洪水、土砂災害や干ばつ等の自然災害、農薬や廃棄物による土壌や水の質の低下による収量や品質低下のリスクが高いと判断されました。

事業影響のシナリオ分析

自然関連のリスクは、外部環境の変化により顕在化すると考えられます。事業環境に影響する政治、経済、社会、技術、法律、環境の6つの外部要因ごとに、調達地域のリスク評価結果や文献を用いて2040年時点の将来シナリオを想定し、調達地域においてどのような事業影響が発生し得るのか、またその発生可能性を3段階(低・中・高)で評価し、食料関連のサステナビリティ担当者が精査しました。
なお、本分析で使用したシナリオは、LEAPアプローチと同様にTNFDガイドラインで想定されている「シナリオ#2(自然破壊による損害が甚大で、自然資本への企業の関心が高いシナリオ)」です。

シナリオ#1

  • 脱炭素・気候変動対応が進み、ネイチャーポジティブに向けた政策や地域の環境配慮に関する取組みが増加。企業が積極的に自然資本を意識した事業を実施している状況。

シナリオ#2

  • 自然の毀損が進んだことで、速やかな回復に向けた活動が求められており、気候変動を含めた自然資本の復元や再生の重要性を企業が認識している状況

シナリオ#3

  • 自然資本は損なわれているが、政策や金融の対応は進まない。
  • 企業はコストや負の影響を外部化させ、短期的に自然資本が過剰消費される状況。

シナリオ#4

  • 自然資本に関する企業の優先順位は低く、低炭素化に向けた資金調達、技術進歩、企業変革はある程度進展するが、企業はコストを理由に自然関連の長期戦略の立案は見送る状況。
TNFDガイドラインで示されている4シナリオの説明
Guidance on scenario analysisPDFファイルをもとに伊藤忠商事が概要を整理

更に、発生可能性が「高」とされた影響が調達地域で生じることで、当社が負う可能性がある財務リスクについても、食料関連のサステナビリティ担当者が精査しました。上述の分析では、調達地域の多くで、水や土壌の品質低下及び自然災害によりカカオ豆の収量や品質の低下が懸念される結果となりました。これらが顕在化した場合、当社においては売上の減少が財務リスクとなります。しかし、カカオ豆の栽培は小規模農家が担うケースが多く、サプライヤー側で講じられるリスク予防策には一定の限界があります。

対応方針・施策の確認

上述の通り、カカオ豆の調達におけるリスクについては、サプライヤーによる予防策に頼るだけでなく、当社側で積極的な対応策を講じることが重要となります。当社ではサプライヤー調査を通じた自然関連のリスクが高いサプライヤーに対する指導や、サステナブル・カカオ豆の調達を推進するとともに調達地域の分散も行い、当社事業に重大な財務影響を及ぼす財務リスクが顕在化しないよう努めています。
調達プロセスにおける発現可能性が高いと判断された影響、当社へのリスク、その対応策の詳細は以下の通りです。

外部
要因
調達プロセスにおける発現可能性が高いと判断された影響 当社のリスク リスクへの適応・対応策
政治・法律
  • 一次生産までのトレーサビリティが確保された認証地域への調達集中
  • 厳格なトレーサビリティ要件への未対応地域における生産者の離脱・集約の加速
  • 現地規制に不適合な原料を扱った場合における、輸出停止・没収・罰金・契約不履行によるイレギュラーな臨時損失の発生
  • 関連法令・規則に関する積極的な情報収集と早期対応
  • カカオ豆調達方針・サプライチェーンサステナビリティ行動指針の策定と通知
  • 重要サプライヤー向けのサステナビリティ調査(年次)の実施、違反サプライヤーに対する是正要請
  • トレーサビリティの強化
  • 自然関連データの公開の標準化による、外部ステークホルダーからの監視強化
  • 開示用データ収集のための現場運営の負荷増加
  • 情報開示が不十分である場合の、ステークホルダーからの信頼の棄損、企業評判の低下と株価の下落
  • 開示関連法令・基準に関する積極的な情報収集と早期対応
  • 情報開示対応の業務効率化及び内製化の推進
経済・社会
  • 地域の金融機関による自然配慮案件の優遇と、保全・再生プロジェクトへの資金供給の拡大
  • 持続可能なサプライチェーン基盤の整備の加速と対応の標準化
  • サステナビリティへの未対応やグリーンウォッシュでレピュテーション低下による株価下落
  • 市場動向の注視
  • 業界標準レベルの環境対応の実施
技術
  • 技術革新により農作物の生産が安定し、作物価格が抑制
  • 小規模サプライヤーにおける新技術導入の遅延
  • 最先端技術導入による作物栽培管理コストの増加と直接調達価格への反映による、一時的な粗利率の低下
  • 市況変動の迅速な情報収集と早期対応
環境
  • 病害の拡大による利用可能な資源の縮小
  • 栽培休止の頻度増加と産地間の供給変動の拡大
  • 遺伝的多様性の低下と環境・病気への耐性の偏りによる品質のばらつき拡大
  • 顧客ニーズに対する必要量が確保できないことによる販売機会の喪失
  • 収量減少により契約数量を履行できない場合の違約金の発生や契約条件の悪化
  • 品質低下で検査不適合・返品が続くことによる粗利率低下と廃棄損の発生
  • 市況変動の迅速な情報収集と早期対応
  • 調達地の分散
  • 降雨の不確実性と地下水の過剰汲み上げによる慢性的な灌漑水の不足
  • 取水競合が激化による取水停止・配水制限の増加
  • 高温・熱波、局所的な豪雨・暴風等の頻度上昇による不作の発生
  • 生育適地のシフトによる既存産地における結実不良や倒伏被害の増加
  • 河川・灌漑水の濁度・病原体・化学物質負荷の上昇
  • 生育障害、農薬の残留基準超過による作物の出荷停止の増加
  • 土壌有機物の減少と塩類の集積による地力低下
  • 洪水・土砂災害・サイクロンによる土壌流出や農業インフラの損壊増加に起因した生産量の不安定化
  • 富栄養化・農薬流出・重金属の蓄積の進行
  • 灌漑水質の悪化による病害発生や農薬の残留基準超過による品質の悪化
  • 水質・土壌の回復費・モニタリング費の負担増加
  • 環境汚染事故の発生歴、あるいは環境汚染が疑われるサプライヤーを忌避する顧客の調達先変更、契約更新条件の厳格化・契約更新の停止による売上減少
  • カカオ豆調達方針・サプライチェーンサステナビリティ行動指針の策定と通知
  • 重要サプライヤー向けのサステナビリティ調査(年次)の実施、違反サプライヤーに対する是正要請
  • トレーサビリティの強化
  • 農業残渣・廃棄物の野焼き・不法投棄の増加
  • 土壌・水質悪化に起因する周辺農地の生産性低下による地域コミュニティからの訴訟の発生
  • 不適切な農業残渣・廃棄物管理を忌避する顧客の調達先変更、契約更新条件の厳格化・契約更新の停止による売上減少
  • 生産地域での不適切な廃棄物管理が訴訟に発展することによる賠償金・輸入停止などの臨時損失の発生及び売上停止
  • 効率優先の土地利用の拡大による生態系の分断化
  • 在来種の減少による生態系バランスの崩壊、水資源の偏在や土壌劣化の深刻化
  • 地域コミュニティの環境悪化による健康被害や水資源をめぐる対立の発生
  • 調達地域の住民の生活環境劣化の疑いがあるサプライヤーを忌避する顧客の調達先変更、契約更新条件の厳格化・契約更新の停止による売上減少
  • 調達側の責任とするNGO・メディアの批判を起因としたレピュテーションの低下による株価下落

引続き、認証品の調達やサステナビリティ調査を通じ、安定的なカカオ豆の調達を行っていきます。

コモディティに特有な依存・影響の整理

まず、一般的なコーヒー豆の調達における自然資本への依存・影響の項目と重要度を、ENCORE及びTNFDの食料・農業セクターガイダンス、コーヒー豆の栽培における環境リスクに関する論文用いて5段階(とても低い、低い、どちらでもない、高い、とても高い)で評価しました。その結果、コーヒー豆の栽培では大量の水が必要になるため、水資源への依存度が高く、乾季や標高の高い地域においては灌漑も必要になることがわかりました。

調達地域の自然状態評価

当社は、ブラジルやグアテマラ等からコーヒー豆の調達を行っており、これらの主要調達地域を分析対象として特定しました。重要度が「高い」及び「とても高い」と評価された依存・影響の項目と調達地域がどの程度接点を持っており、どのようなリスクが生じ得るのかを確認しました。
この確認では、上述のコーヒー豆の生産に関する依存・影響の項目とTNFDの要注意地域の判断基準を照らし合わせ、以下のデータベースを選定しました。

  • BII(Biodiversity Intactness Index)
  • Ecoregion Intactness Index
  • Landmark
  • WWF Biodiversity Risk Filter
  • WWF Water Risk Filter

これらのデータベースを用いた机上分析を通じ、調達地域の自然状態の評価と潜在的なリスクを検証した結果、コーヒー豆の主要な調達地域で農薬の過剰施肥による水や土壌の質の低下、土砂災害、森林火災や洪水等の自然災害による収量や品質低下のリスクが高いと判断されました。

事業影響のシナリオ分析

自然関連のリスクは、外部環境の変化により顕在化すると考えられます。事業環境に影響する政治、経済、社会、技術、法律、環境の6つの外部要因ごとに、調達地域のリスク評価結果や文献を用いて2040年時点の将来シナリオを想定し、調達地域においてどのような事業影響が発生し得るのか、またその発生可能性を3段階(低・中・高)で評価し、食料関連のサステナビリティ担当者が精査しました。
なお、本分析で使用したシナリオは、LEAPアプローチと同様にTNFDガイドラインで想定されている「シナリオ#2(自然破壊による損害が甚大で、自然資本への企業の関心が高いシナリオ)」です。

シナリオ#1

  • 脱炭素・気候変動対応が進み、ネイチャーポジティブに向けた政策や地域の環境配慮に関する取組みが増加。企業が積極的に自然資本を意識した事業を実施している状況。

シナリオ#2

  • 自然の毀損が進んだことで、速やかな回復に向けた活動が求められており、気候変動を含めた自然資本の復元や再生の重要性を企業が認識している状況

シナリオ#3

  • 自然資本は損なわれているが、政策や金融の対応は進まない。
  • 企業はコストや負の影響を外部化させ、短期的に自然資本が過剰消費される状況。

シナリオ#4

  • 自然資本に関する企業の優先順位は低く、低炭素化に向けた資金調達、技術進歩、企業変革はある程度進展するが、企業はコストを理由に自然関連の長期戦略の立案は見送る状況。
TNFDガイドラインで示されている4シナリオの説明
Guidance on scenario analysisPDFファイルをもとに伊藤忠商事が概要を整理

更に、発生可能性が「高」とされた影響が調達地域で生じることで、当社が負う可能性がある財務リスクについても、食料関連のサステナビリティ担当者が精査しました。上述の分析では、調達地域の多くで、水や土壌の品質低下及び水不足によるコーヒー豆の収量や品質の低下が懸念される結果となりました。これらが顕在化した場合、当社においては売上の減少が財務リスクとなります。しかし、コーヒー豆の栽培は小規模農家が担うケースが多く、サプライヤー側で講じられるリスク予防策には一定の限界があります。

対応方針・施策の確認

上述の通り、コーヒー豆の調達におけるリスクについては、サプライヤーによる予防策に頼るだけでなく、当社側で積極的な対応策を講じることが重要となります。当社では、サプライヤー調査を通じた自然関連のリスクが高いサプライヤーへの指導を実施しています。また、UNEX社を通じて小規模農家への技術支援を行い、シェードツリーやコンポストを活用した自然環境と共生する農業(環境再生型農業)を推進しています。これにより、持続可能なコーヒー生産の普及や農家の生活基盤の安定(離農防止)を図り、当社事業に重大な財務影響を及ぼすリスクの顕在化を未然に防ぐ体制を構築しています。
調達プロセスにおける発現可能性が高いと判断された影響、当社へのリスク、その対応策の詳細は以下の通りです。

外部
要因
調達プロセスにおける発現可能性が高いと判断された影響 当社のリスク リスクへの適応・対応策
政治・法律
  • 一次生産までのトレーサビリティが確保された認証地域への調達集中
  • 厳格なトレーサビリティ要件への未対応地域における生産者の離脱・集約の加速
  • 現地規制に不適合な原料を扱った場合における、輸出停止・没収・罰金・契約不履行によるイレギュラーな臨時損失の発生
  • 関連法令・規則に関する積極的な情報収集と早期対応
  • コーヒー豆調達方針・サプライチェーンサステナビリティ行動指針の策定と通知
  • 重要サプライヤー向けのサステナビリティ調査(年次)の実施、違反サプライヤーに対する是正要請
  • 認証原料の調達(KPI:2030年までにサステナブルコーヒー豆への切り替え 50%)
  • トレーサビリティの強化
  • 自然関連データの公開の標準化による、外部ステークホルダーからの監視強化
  • 開示用データ収集のための現場運営の負荷増加
  • 情報開示が不十分である場合の、ステークホルダーからの信頼の棄損、企業評判の低下と株価の下落
  • 開示関連法令・基準に関する積極的な情報収集と早期対応
  • 情報開示対応の業務効率化及び内製化の推進
経済・社会
  • NGOと企業・自治体の共同モニタリングの定着
  • 苦情処理メカニズムの整備と苦情対応(手順・迅速性)への監視強化による透明性の高い報告の要求の高まり
  • 対応遅れ・透明性不足による取引先の仕入れ先変更に起因する売上機会の喪失
  • コーヒー豆調達方針・サプライチェーンサステナビリティ行動指針の策定と通知
  • 重要サプライヤー向けのサステナビリティ調査(年次)の実施、違反サプライヤーに対する是正要請
  • 認証原料の調達(KPI:2030年までにサステナブルコーヒー豆への切り替え 50%)
  • トレーサビリティの強化
技術
  • 技術革新により農作物の生産が安定し、作物価格が抑制
  • 小規模サプライヤーにおける新技術導入の遅延
  • 最先端技術導入による作物栽培管理コストの増加と直接調達価格への反映による、一時的な粗利率の低下
  • 市況変動の迅速な情報収集と早期対応
環境
  • 病害の拡大による利用可能な資源の縮小
  • 栽培休止の頻度増加と産地間の供給変動の拡大
  • 遺伝的多様性の低下と環境・病気への耐性の偏りによる品質のばらつき拡大
  • 顧客ニーズに対する必要量が確保できないことによる販売機会の喪失
  • 収量減少により契約数量を履行できない場合の違約金の発生や契約条件の悪化
  • 品質低下で検査不適合・返品が続くことによる粗利率低下と廃棄損の発生
  • 市況変動の迅速な情報収集と早期対応
  • 調達地の分散
  • 小規模農家の技術支援(グアテマラ・UNEX社による取り組み)
  • 降雨の不確実性と地下水の過剰汲み上げによる慢性的な灌漑水の不足
  • 取水競合が激化による取水停止・配水制限の増加
  • 高温・熱波、局所的な豪雨・暴風等の頻度上昇による不作の発生
  • 生育適地のシフトによる既存産地における結実不良や倒伏被害の増加
  • 河川・灌漑水の濁度・病原体・化学物質負荷の上昇
  • 生育障害、農薬の残留基準超過による作物の出荷停止の増加
  • 土壌有機物の減少と塩類の集積による地力低下
  • 洪水・土砂災害・サイクロンによる土壌流出や農業インフラの損壊増加に起因した生産量の不安定化
  • 生態系の完全性や繋がりの低下に起因した有用微生物の減少、生息地の分断の発生と害虫・病害の発生増加や苗木定着率の低下
  • 市況変動の迅速な情報収集と早期対応
  • 調達地の分散
  • 農地転換・泥炭地の開発による生物多様性の喪失や炭素放出の発生
  • 国際的批判の増加や、認証喪失・輸入規制の対象となる生産地域の拡大
  • 新規の農地転換サプライヤーの開墾履歴を懸念する顧客の調達先変更、契約更新条件の厳格化
  • 契約更新の停止による売上減少
  • 生産地域での農地転換が訴訟に発展することによる賠償金・輸入停止など臨時損失及び売上停止
  • コーヒー豆調達方針・サプライチェーンサステナビリティ行動指針の策定と通知
  • 重要サプライヤー向けのサステナビリティ調査(年次)の実施、違反サプライヤーに対する是正要請
  • 認証原料の調達(KPI:2030年までにサステナブルコーヒー豆への切り替え 50%)
  • トレーサビリティの強化
  • 取引先に対する人権DDの実施(2020年)
  • 調達地域における地域コミュニティへの影響に対する取組み
  • 効率優先の土地利用の拡大による生態系の分断化
  • 在来種減少による生態系バランスの崩壊、水資源の偏在や土壌劣化の深刻化
  • 地域コミュニティの環境悪化による健康被害や水資源をめぐる対立の発生
  • 調達地域の住民の生活環境劣化の疑いがあるサプライヤーを忌避する顧客の調達先変更、契約更新条件の厳格化・契約更新の停止による売上減少
  • 生産地域での人権侵害が訴訟に発展することによる賠償金・輸入停止など臨時損失及び売上停止
  • 調達側の責任とするNGO・メディアの批判を起因としたレピュテーションの低下による株価下落

引続き、認証品の調達やサステナビリティ調査を通じ、安定的なコーヒー豆の調達を行っていきます。

依存度の高い事業における取組み

伊藤忠商事における自然資本への依存度が高い事業は、森林コモディティ(食料、木材、天然ゴム、パーム油等)の調達、製造、加工、流通です。これらの事業の持続可能性を高めるため、商品ごとに調達方針を定め、トレーサビリティにより調達地域を特定できる国際的な第三者認証品の調達等に努めています。

ご参考:商品ごとの調達方針

SBTNがSBTs for Nature(自然に関する科学に基づく目標設定)ガイダンスにて発表したAR3Tアクション・フレームワークのミティゲーション・ヒエラルキーの枠組みを使用し、当社の自然資本への依存度の高い事業における取組みを回避、軽減、復元・再生、変革的行動の4つに分類して整理しました。

回避
Avoid
マイナスの影響を未然に防ぐ、完全に排除する
例:サステナブルな代替原料、包装資材の採用
軽減
Reduce
完全に除去できない負の影響を最小化する
例:廃棄物や汚染物質排出の低減
復元・再生
Restore & Regenerate
  • 生態系の健全性、完全性、持続可能性に関して、生態系の回復を開始または促進する
    例:事業活動上、改変した土地の土壌の改善や植林
  • 土地/海洋/淡水の利用の範囲内で計画した行動をとり、そこの生態系や構成要素の機能や生産性を高める
    例:絶滅危惧種の保護
変革的行動
Transform
バリューチェーンの内外において必要とされる体系的な変化に組織が対応し貢献するために行動を変革する
例:販売や製造モデルの開発、イニシアティブへの参加

ミティゲーション・ヒエラルキーの概要
Science Based Targets Networkウェブサイト別ウインドウで開きます及びTNFDによる提言PDFファイルをもとに伊藤忠商事が整理

  • 事業による自然資本への負の影響を抑えるためのツール。生物多様性へのリスク(野生生物の生息地の消失等)や、地域社会への影響(健康に影響を与えうる汚染物質の放出)を予測、回避あるいは最小限に留め、万が一生じてしまった負の影響は極力回復させるというアプローチを示したもの

上述の結果、当社では自然関連リスク低減のために、SBT for Natureが最優先で取組むべきとする「回避」や「軽減」に関わるアクションを積極的に実施できていることがわかりました。今後も当社では、ネイチャーポジティブの実現に向け、AR3Tのアクションを更に推進していきます。

AR3Tアクション・フレームワークに沿った取組みの整理結果
大分類 コモディティ 具体的取組み
森林資源 木材 回避 認証材、または高度な管理が確認できる材の取扱い比率は100%
変革 NGOとのエンゲージメントの実施
天然ゴム 変革 GPSNRに設立メンバーとして参画、プラットフォームの基準の策定と、その運用に協力
パーム油 回避 ミルレベルまでのトレーサビリティ100%を達成
変革 RSPOに加盟し、取組みを推進
バイオマス燃料 回避 PEFC認証、FSC認証等の第三者認証制度に則り合法性証明を取得した木質バイオマス燃料を調達
食品 カカオ豆・
コーヒー豆
回避 カカオ豆のトレーサビリティ強化
回避 サステナブル認証のコーヒー豆の取扱強化
変革 生産性向上のための農業技術の供与といった小規模農家の技術支援を実施
乳製品 軽減 ニュージーランドでは定期的に放牧地を変えながら乳牛を飼育することで生態系の劣化を軽減
食肉 回避 全ての食肉のサプライヤーで100%、生産段階までトレースバックができる仕組みを構築
水産物 回避 MSCにおける流通業者の認証、CoC認証を取得
変革 MSC認証が限定的である鰹鮪類について、漁業者に対する働きかけを実施
青果物 軽減 Dole事業におけるクリーンエネルギーの使用
繊維原料 コットン 回避 インドのオーガニックコットン調達ではGOTS認証を取得しており、100%トレーサブル
環境配慮型素材 軽減 循環型経済の実現を目指す「RENU®」プロジェクトを始動させ、再生ポリエステルの展開を開始
アパレル アウトドア
アパレル
復元・
再生
チャリティーグッズを企画・販売し、その売上の一部を熱帯雨林回復のための土地購入資金やボルネオ象の保護に活用

事業関連地域における取組み

伊藤忠商事は、ステークホルダーと共同して、絶滅のおそれのある野生生物の保全活動を実施しています。

リスクと影響の管理

伊藤忠商事では、各国・各事業拠点の自然資本・生物多様性の変化が事業に与えるリスクを監視しています。グループ全体でのリスク分析において、特定された自然関連リスクは、主要なリスクの1つ(環境・社会リスク)として管理対象となります。また、特定された自然関連リスクは投資判断プロセス時に検討・評価し、それぞれのリスク管理責任部署において連結ベースでリスクの特定・評価・情報管理・モニタリング体制を構築しています。

自然関連リスクの特定・評価

伊藤忠商事は、リスク管理を経営の重要課題と認識し、COSO-ERMフレームワークの考え方を参考に、伊藤忠グループにおけるリスクマネジメントの基本方針を定め、必要なリスク管理体制及び手法を整備しています。当社グループの環境方針で示されている通り、当社は環境保全に関わる法規制の情報収集を行い、その遵守に努めています。また、ISO14001に基づく環境マネジメントシステム(EMS)を導入し、事業活動が環境・社会に与え得る影響を認識しています。グループ会社についても、実態の把握に努めています。

例えば、水については製造拠点における水リスクの把握・評価を世界資源研究所(WRI)が開発したWRI Aqueductツールを用いて実施しています。その他の自然関連リスクについても、後述の国際機関が定めた枠組みに則った特定・評価を定期的に実施しています。

ご参考:伊藤忠グループのリスクマネジメント

自然関連リスクの管理・全社リスクマネジメントシステムへの統合

伊藤忠商事は、その広範にわたる事業の性質上、市場リスク・信用リスク・投資リスクを始め、様々なリスクにさらされています。これらのリスクに対処するため、各種の社内委員会や責任部署を設置すると共に、各種管理規則、投資基準、リスク限度額・取引限度額の設定や報告・監視体制の整備等、必要なリスク管理体制及び管理手法を整備し、リスクを全社的に統合管理しています。

自然関連リスクは、主要なリスクの1つ(環境・社会リスク)としてグループリスク管理の対象としており、下表の各事業段階で、当社の広い事業活動(事業投資・商品トレード・物流・グループ会社/サプライチェーン経営戦略とポートフォリオ構築等)の評価手法に組み込まれています。

事業段階ごとの自然関連リスクマネジメント・評価手法

事業段階 評価手法
事業開始
  • 新規投資案件の自然関連リスクを含む環境・社会リスク評価
事業運営
  • 取扱商品の環境リスク評価(サプライチェーン全体でLCA評価)
  • グループ会社の環境実態調査(年に2、3社)
  • サプライチェーン・サステナビリティ調査(取引先)
  • ISO14001に基づく内部環境監査
事業戦略の見直し
  • 事業戦略・資産入替えの検討

自然関連リスク管理体制

事業開始段階(新規事業投資案件における生物多様性の影響評価)

伊藤忠商事が取組む事業投資案件については、その案件が環境・社会に与える影響を「投資等に関わるESGチェックリスト」により事前に評価しており、例えばこれには生態系への影響や、資源の枯渇等の自然環境・生物多様性への影響有無の把握も含まれています。影響が認められる場合はリスクを分析し、必要に応じて外部の専門機関に追加のデューデリジェンスを依頼する等、問題がないことを確認した上で、投資を実行しています。

事業運営段階(バリューチェーンにおける生物多様性の影響評価)

取扱商品におけるサステナビリティリスク評価

伊藤忠商事は、新たな商品を取扱う際、商品の原材料の調達からその製造、使用並びに廃棄段階に至るまで、LCA的分析手法で環境・社会への影響や環境関連法規制の遵守状況、ステークホルダーとの関わり等を評価する商品別サステナビリティリスク評価を実施しています。バリューチェーン上で著しい自然関連リスクがある場合、当該商品を重点管理対象とし、各種規程・手順書・特定業務要因教育等を策定・実施しています。

  • LCA(Life Cycle Assessment):一つの製品が、原材料から製造、輸送、使用、廃棄あるいは再使用されるまでのライフサイクルの全段階において、環境への影響を評価する手法
サプライヤー向けサステナビリティ調査

サプライヤーの実態を把握するため、高リスク国・取扱商品・取扱金額等一定のガイドラインのもとに各カンパニー及び該当するグループ会社が重要サプライヤーを選定し、各カンパニーの営業担当者や海外現地法人及びグループ会社の担当者がサプライヤーを訪問しヒアリングを実施しています。また重要サプライヤーに対しては、アンケート形式のサステナビリティ調査も実施しており、生物多様性を含む自然資本への取組み状況を確認しています。必要に応じてサプライヤーに対して是正依頼を行う継続的改善を行っています。

指標と目標

伊藤忠商事は、生物多様性を保全するため、サプライチェーンを含む取扱商品の製品認証やトレーサビリティの確保に取組むとともに、事業と関わりの深い地域での社会貢献活動を実施しています。当社は森林資源(木材、木材製品、製紙用原料及び紙製品、天然ゴム、パーム油)・乳製品・食肉・水産物・繊維原料を生物多様性に関わる重要な取扱商品と捉えており、それらに関する情報開示と目標設定に努めています。

事業活動における目標

区分・方向性 目標 2025年度の実績 SDGs
生物多様性の保全
伊藤忠商事の取扱商品と実施するプロジェクトのサプライチェーンでの生物多様性保全へのインパクトを減らす
2025年までに、自然関連リスクが高いと考えられる投資案件(水力・鉱山・船舶等)全てにおいて、自然資本・生物多様性に重点を置いたESGリスク評価を再度実施し、必要な場合は改善計画を実施する
  • ESGチェックリストを改訂し、新規事業投資における自然関連リスクの状況を把握するスキームを構築
  • TNFD フォーラムへ参画し、自然関連リスク・機会の分析を行うためのツールの使用を開始
生物の多様性の構成要素の持続可能な利用
森林・水産・農産物等の資源を、将来にわたって安定して生産・供給していくために、資源の持続的な利用を強化する取組みを実施していく
  • 木材、木材製品、製紙用原料及び紙製品:認証材、または高度な管理が確認できる材の取扱比率を2025年までに100%とする
  • パーム油:2030年までに当社が調達する全パーム油を持続可能なパーム油※1に切り替える。特にNDPE原則※2に基づく調達の実現を目指す
  • コーヒー豆:2030年までに当社が調達するコーヒー豆の50%をサステナブル認証を取得したコーヒー豆とする
  • 当社取扱水産原料:MSC※3/CoC※4原料取扱量を、2026年までに10,000t/年を目指す
  • 認証材、または高度な管理が確認できる林産物の取扱比率は、パルプ・チップ・木材とも100%
  • パーム油は2025年度のミルレベルまでのトレーサビリティは100%
  • コーヒー豆の調達に占めるサステナブル・コーヒー豆の比率は2025年度実績34%
  • 水産原料に占めるMSC/CoC数量は2025年度10,600t
  1. 持続可能なパーム油:RSPO及びこれに準ずる基準に応じたサプライチェーンから供給されるパーム油
  2. NDPE(No Deforestation, No Peat, No Exploitation):森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ
  3. MSC(Marine Stewardship Council、海洋管理協議会):1997年設立の持続可能な漁業の普及に取組む国際NPO
  4. CoC(Chain of Custody Certificate):MSCにおける「加工・流通過程の管理」において、MSC認証を受けた水産物・製品のトレーサビリティを確保するための加工・流通業者に対する認証

ご参考:商品ごとの調達方針

事業関連地域における目標

実績

事業活動における実績

事業関連地域における実績

アクションプラン

マテリアリティ SDGs
目標
インパクト
分類
取組む
べき課題
事業分野 コミットメント 具体的対応アプローチ 成果指標 進捗度合(レビュー)
繊維カンパニー
安定的な調達・供給
汚染防止と資源循環 資源循環による環境負荷の低減 繊維製品全般 サステナブルな繊維製品の取扱い、及びリサイクルを通じて循環型社会の実現に貢献します。 環境配慮型商品の取扱い、並びに資源リサイクルに繋がる取組みの推進。 繊維由来の再生ポリエステル「RENU」等、サステナブル素材の普及促進、及び繊維製品を再資源化する仕組みの構築。
  • RENUプロジェクトによる再生ポリエステル取扱いの環境インパクトは以下の通り(2025年度見込み)。

    • 原材料として投入した廃棄物:Tシャツ換算 4.8百万枚
    • CO2削減量:1,491t
    • 水の削減量:5,018kL
  • 不要となった衣料品の回収サービス「Wear to Fashion」における回収拠点は約6,000か所と前年より1,700か所増加(2026年3月現在)。
  • 繊維と化学品の共同案件である「ARChemiaプロジェクト」により、使用済み衣料品を環境付加価値の高い化学製品に生まれ変わらせるプロジェクトを運用中。2025年に開催された大阪・関西万博では、万博スタッフの使用済みユニフォームの一部を当プロジェクトでリサイクルし、循環型社会の実現に寄与。
金属カンパニー
  • 人権の尊重・配慮
  • 安定的な調達・供給
  • 鉱山
  • 電力・鉱山・油ガス田
労働安全・衛生・環境リスクに配慮した、また地域社会へ貢献する持続可能な鉱山開発 鉱山事業
  • 環境・衛生・労働安全(EHS)や地域住民との共生に十分配慮し、持続可能な鉱山事業を推進します。
  • 地域社会への医療、教育等に貢献します。
  • EHSガイドラインの運用並びに社員教育を徹底。
  • 地域社会への医療・教育寄付、地域インフラ整備等の貢献。
  • 毎年EHS社内講習会を開催しEHSガイドラインを周知徹底。
    • EHS講習会受講率100%。
    • 操業中・継続保有方針の既存鉱山事業及び新規鉱山事業に対するEHSチェック実行率100%。
  • 地域社会への医療・教育寄付、地域インフラ整備の実施。
    • 操業中・継続保有方針の全プロジェクトでのCSR活動の実施(100%)。
  • 主管者や事業投資に従事する課に属する従業員を中心に、EHSガイドラインに関する社内講習会を実施。対象者の受講率は100%。
  • 鉱山事業では、既存9案件、その他資源関連事業1案件に対して、チェックシートを用いた確認作業を実施。
  • 出資する各プロジェクトにおいて、地域社会への貢献活動を実施。
食料カンパニー
気候変動への取組み(脱炭素社会への寄与)
GHG排出量 気候変動への取組み 生鮮食品分野 気候変動対策に資する施策を検討・推進します。 Dole事業におけるクリーンエネルギーの活用。
  • Dole Philippines.のバイオガスプラントへの残渣投入量。
  • クリーンエネルギー利用によるGHG排出削減量。

2025年度実績

  • 残渣投入量:117,666t
    パイナップルの歩留まり改善により、残渣投入量が減少。
  • GHG排出削減量:68,526 t-CO2e
    残渣投入量減少に伴い、削減量が減少。
  • 人権の尊重・配慮
  • 安定的な調達・供給
サプライチェーン 人権・環境に配慮したサプライチェーンの確立 食糧分野 第三者機関の認証や取引先独自の行動規範に準拠した調達体制の整備を行います。
  • コーヒー豆、カカオ豆産地国において、取引先独自の行動規範に準拠した調達の推進。
  • パーム油の第三者認証団体であるRSPOの認証油の取扱い強化。
  • 生産国の認証油システムの利用を促すため、国内業界団体と協力し、MSPO/ISPOの国内におけるプロモーションや流通制度の確立を支援。
  • コーヒー豆:当社調達方針に基づき、取引先独自の行動規範に準拠した商品もしくは認証品の調達を推進。
  • カカオ豆:当社調達方針に基づき、取引先独自の行動規範に準拠した商品(サステナブル品)の調達を推進。
  • パーム油:当社調達方針に基づく調達を行い、設定したKPI項目・サプライヤー情報等の開示を推進。

2030年目標

  • コーヒー豆:サステナブルコーヒー豆への切替50%を目指す。
  • カカオ豆:サステナブルカカオ豆への切替100%を目指す。
  • 持続可能なパーム油への切替100%を目指す。

2025年度実績

  • コーヒー豆(認証品等):取扱比率 34%
  • カカオ豆(トレーサブル品):取扱比率 55%
  • パーム油(RSPO認証品):取扱比率 パーム油 38%
    オレオケミカル製品 63%

各産地国への支援実績

  • コーヒー豆:エチオピアのコーヒー業界へ貢献していくため、グループ会社と協働でコーヒーの苗木の寄付を実施。
  • 人権の尊重・配慮
  • 安定的な調達・供給
サプライチェーン 責任ある水産資源調達 生鮮食品分野 第三者機関の認証や取引先または当社の独自の行動規範に準拠した調達体制の整備を行います。 水産物(鰹鮪類)産地国において、取引先独自の行動規範に準拠した調達の推進。 MSC認証原料の取扱数量。 2025年度のMSC認証原料の取扱実績:10,600t(全体の約9%に増加)
住生活カンパニー
  • 気候変動への取組み(脱炭素社会への寄与)
  • 安定的な調達・供給
森林 持続可能な森林資源の利用
  • パルプ
  • チップ
  • 木材
環境への影響を軽減し温室効果ガスの増加を防ぐため、持続可能な森林資源を取扱います。 認証材または高度な管理が確認できる林産物を取扱う。 取扱う林産物における、認証材または高度な管理が確認できる林産物の比率を100%とする。 2025年度に取扱う林産物における、認証材または高度な管理が確認できる林産物の取扱比率は、パルプ・チップ・木材とも100%。
  • 人権の尊重・配慮
  • 安定的な調達・供給
  • 森林
  • サプライチェーン
天然ゴムの持続可能な供給の実現 天然ゴム
  • 保護地域、泥炭地域の開発、及び先住民からの土地強奪等に関わるサプライヤーの特定に取組み、当該サプライヤーからの調達を防止します。
  • 特に小規模生産者を中心とする天然ゴム生産者に対し、現代奴隷問題を含めたリスクアセスメント、生産量と品質を改善するための研修の実施、または支援します。
  • 原料収穫地が不透明な原料調達サプライチェーンを透明化すべく、トレーサビリティシステムを構築する。
  • 独自取組み「PROJECT TREE別ウインドウで開きます」のサステナビリティ活動を通じて、生産性向上のための研修を実施する。
  • 天然ゴム加工事業でトレーサビリティ、サステナビリティが確保された原料調達を目指す(2028年天然ゴム原料のトレーサビリティ100%)。
  • サステナビリティ教育活動実施農家数を増やし、業界のサステナビリティ実現に貢献する。
  • サプライヤーの自己申告によってトレーサビリティが確保された原料調達比率は100%。
  • 伊藤忠の開発したシステムによって小規模農家までのトレーサビリティが確保された原料比率は月間購買数量の24%に到達。
  • サステナビリティ教育活動実施農家数は8,223人/年(※2025年1月~2025年12月実績ベース)、累計28,135人(※2021年1月~2025年12月実績ベース)。

外部との協働

イニシアティブへの参画(財界・業界団体を通じた活動)

経団連生物多様性イニシアチブのロゴマーク

当社は、一般社団法人日本経済団体連合会に参加しており、ブラジルのリオデジャネイロで国連環境開発会議(地球サミット)が開催された1992年設立の経団連自然保護協議会を通じて、アジア太平洋地域を主とする開発途上地域や国内の自然保護プロジェクトを支援すると共に、NGO等との交流、セミナーやシンポジウムの開催、「経団連自然保護宣言」や「経団連生物多様性宣言」とその行動指針の公表(2018年10月改定)等、経済界が自然保護に取組む環境づくりに努めています。また、2020年6月11日に発表された「経団連生物多様性宣言イニシアチブ」にも賛同を表明しています。更に、TNFDの議論を加速させるために2021年9月に設立されたTNFDフォーラムにも参画しています。2024年10月にはTNFD提言に基づく情報開示への意思を宣言するTNFD Adoptersにも登録しました。

外部機関との協働

森林コモディティ(食料、木材、天然ゴム、パーム油等)等、自然資本への依存度が高い事業については、持続可能な事業活動の実現に向けて、業態全体での取組みが特に重要です。

伊藤忠商事は、2006年に持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)に参加し、2030年までにRSPO認証ないしはそれに準ずるパーム油100%取扱いを目標に掲げ、他メンバー企業との連携・協業等を通じて、持続可能なパーム油の調達・供給に取組んでいます。また、Zoological Society of London(ZSL)によるプロジェクトで、大手パーム油関連企業について50以上の指標を公開データに基づき評価を行っている持続可能なパーム油の透明性ツールキット(SPOTT)にも参加し、双方向のコミュニケーションを通じてパーム油産業に関連するステークホルダーに情報開示を行っています。

この他にも、天然ゴムについては、GPSNRに設立メンバーとして参画し、同プラットフォームが規定する12原則に合意の上で、当該Policy Componentに準拠しています。

森林コモディティに関する取組みについては、グローバルな企業・組織の情報開示システムであるCDPの質問書に回答する形でも公開しています。

また、鰹鮪類事業においては、2012年に鮪資源の持続的利用を目的として設立された責任あるまぐろ漁業推進機構(OPRT)に加盟し、自主管理規定に則った取組みを推進しています。

当社は、上述のような外部機関との協働を通じ、「指標と目標」で掲げている目標達成を目指しています。