生物多様性保全への取組み

生物多様性保全に対する考え方

2010年に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会合(COP10)において、2020年に向けた愛知目標が決定されたことが一つの契機となり、その後もSDGs(持続可能な開発目標)やパリ協定の採択といった、生物多様性に関わりの深い重要な国際合意がなされました。
グローバルに事業を行う伊藤忠グループは、地球環境問題を経営方針の最重要事項の一つとして捉え、企業理念である「豊かさを担う責任」を果たすべく伊藤忠グループ「サステナビリティ推進基本方針」に示す生物多様性及び生態系の保護など地球環境の保全を推進し、持続可能な社会の実現に貢献します。

生物多様性宣言

目標:自然共生社会の構築を通じた持続可能な社会の実現

生物多様性保全のための行動を一層進め、国際的貢献を図るために、「生物多様性宣言」にて更なる深化を目指します。

  • グローバルな視点を持って事業活動の推進にあたり、自然生態系並びに生物多様性の保全に配慮し、環境汚染の未然防止に努めます。
  • 低炭素化、資源循環、生物多様性保全などの幅広い環境活動を事業活動の中に取り込んだ「環境統合型経営」を推進し、自然の営みと事業活動の調和を重視します。
  • 生物多様性に資する行動に自発的かつ着実に取組み、情報開示と対話を行います。
  • 各地域の自然資本を活かしながら、地域の生態系に配慮した事業活動に努め、国内外の関係組織と連携・協働しつつ、自然保護や生物多様性に関する取組みが更に進むよう、努めます。
  • 私たちは、生物多様性を育む社会づくりに向けた風土の醸成及び社内外の意識向上を行います。

イニシアチブへの参画(財界・業界団体を通じた活動)

当社は、一般社団法人 日本経済団体連合会に参加しており、ブラジルのリオデジャネイロで国連環境開発会議(地球サミット)が開催された1992年に設立した経団連自然保護協議会を通じて、アジア太平洋地域を主とする開発途上地域や国内の自然保護プロジェクトを支援するとともに、NGO等との交流、セミナーやシンポジウムの開催、「経団連自然保護宣言」や「経団連生物多様性宣言」とその行動指針の公表(2018年10月改定)など、経済界が自然保護に取組む環境づくりに努めて参りました。加えて、近年では自然再生を通じた東北復興支援として津波で被災した「震災メモリアルパーク中の浜」(岩手県宮古市)の植樹活動などにも取組んでいます。

目標

課題 2017年度
行動計画




2017年度の実績 2018年度
行動計画
SDGs
(持続可能な開発目標)
環境保全を目的とした社会貢献事業の実施及びフォロー
【基本方針2 環境保全】
  1. アマゾンの生態系保全プログラム「フィールドミュージアム構想」のマナティーの野生復帰事業の支援を継続。
    • 17頭のマナティーの健康診断を実施。
    • 8頭のマナティーを半野生湖へ放流。
    • 5頭のマナティーをアマゾン川へ放流。
    • 地域の住民100人に学びの機会を提供する。
    地元の漁師にマナティー保全の重要性を理解してもらい、漁師2名の本事業への参画を目指す。
  2. フィールドステーション施設内の食堂や展示会場など、来場者が集う施設(ビジターセンター)を2017年度に着工予定。
実施
    • 24頭のマナティーの健康診断を実施。
    • 12頭のマナティーを半野生湖へ放流。
    • 10頭のマナティーをアマゾン川へ放流。

    環境教育には301名、マナティー放流時のお披露目会には370名の地域住民が参加し、マナティー保護を通じ、生物多様性保全の重要さの啓蒙を行った。
    昨年に引き続き地元の漁師2名が本事業へ参画した。
    アマゾン川へ放流したマナティー1頭を再捕獲し健康診断を実施した結果、体長、体重共に増加しており、川へ放流した後も順調に自然環境に適応していることを確認。

  1. 着工したフィールドステーションが完成、2018年5月8日には開所式も実施。生物多様性保全研究の拠点として長期的な現地調査が以前より容易となった。
国内外において環境保全を目的とした新規プロジェクトの発掘とその推進。 13.
14.
15.
  • 実施:実施
  • 一部実施:一部実施
  • 未実施:未実施

体制・システム

新規の事業投資案件に際して提出を義務付けている「投資等に関わるESGチェックリスト」の中で、投資対象事業の「自然環境への影響」を評価する項目を設け、該当の事業を原因とする生態系への影響や資源の枯渇等の自然環境への影響の有無を把握しているか確認し、影響が認められる場合はリスク分析の上、必要があれば外部の専門機関に追加のデューデリジェンスを依頼する等して、投資実行前のリスク管理に努めています。

取組み

パルプ製造事業における生物多様性への配慮

詳細は、木材、木材製品、製紙用原料及び紙製品 事例1:セニブラ社をご覧ください。

閉山に関するガイドライン

当社は鉱物資源の開発事業において、国際的な基準に基づき閉山に関するガイドラインを定めています。閉山計画は物理的な回復だけでなく、地域の社会や経済に対して、影響をできるだけ小さく利益をできるだけ大きくなるように設計されるべきです。その為には資金を準備したり、操業に際して建設した水路等の安全を確保する、使用した化学品等の残留防止策を講じる、といった対策が必要です。将来の閉山に向けてパートナーと協業し、資源国で定められている環境影響評価や閉山計画の策定を適切に行い、実施状況を確認する体制を整備しています。

  • 国際金融公社(IFC)のEHSガイドライン(鉱山)

ステークホルダーとの協働

  • 持続可能なパーム油に向けて外部機関との協働
    伊藤忠商事は、2006年に持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)に参加し、2025年までにRSPO認証ないしはそれに準ずるパーム油100%取扱いを目標に掲げ、他メンバー企業との連携・協業等を通じて、持続可能なパーム油の調達・供給に取組んでいます。
    また、Zoological Society of London (ZSL)による プロジェクトで、大手パーム油関連企業について50以上の指標を公開データに基づき評価を行っているSPOTT(Sustainable Palm Oil Transparency Toolkit,「持続可能なパーム油の透明性ツールキット」)にも参加し、双方向のコミュニケーションを通じてパーム油産業に関連するステークホルダーに情報開示を行っています。
  • CDPへの参加
    当社は世界中の様々なステークホルダーに対する、ESGに関する取組みについて積極的な情報発信の一環として、企業の気候変動対策等の環境情報に関して世界で一番大きいデータベースを有するNGOであるCDPに参加し、2014年3月期から、企業のサプライチェーン上の森林マネジメントを評価するCDP Forestsの質問書に回答しています。
  • 政府機関や大学との協働事例
    伊藤忠商事は、アマゾンの生態系保全のため、京都大学がブラジル国立アマゾン研究所と進める「フィールドミュージアム構想」を支援し、アマゾンマナティーの野生復帰事業と、「フィールドステーション」の建設を支援しています。このプロジェクトは、日本の国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と独立行政法人国際協力機構(JICA)が共同で実施している、地球規模課題解決と将来的な社会実装に向けて日本と開発途上国の研究者が共同で研究を行う3~5年間の研究プログラム、SATREPS(サトレップス)プロジェクトの一つです。

事業活動以外の面においても、伊藤忠グループは、社会貢献活動を通じて、生物多様性の保全活動を行っています。

アマゾンの生物多様性保全プログラムを支援

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アマゾンの熱帯雨林は世界最大で、地球上の酸素の1/3を供給するといわれている

伊藤忠商事は、環境保全、生物多様性を目的とし、京都大学野生動物研究センターがブラジルの国立アマゾン研究所と進めるアマゾンの熱帯林における生物多様性保全プログラム「フィールドミュージアム構想」を2016年度から支援しています。
アマゾンは地球上の熱帯雨林の半分以上に相当し、生態系の宝庫とも呼ばれているエリアです。しかし、急速な経済発展や、現地住民の環境教育不足による森林伐採等から、近年その貴重な生態系が失われつつあります。京都大学野生動物研究センターは国立アマゾン研究所と共同でアマゾンの貴重な生態系を維持する研究及び普及活動を行っており、日本が得意とする先端技術を利用して、保全のための研究や施設整備をブラジルが共同で行ってきました。
当社は、アマゾン川の支流にあるクイエイラス地域に、アマゾンの多様な生物や生態系の自然観察・研究の拠点とする「フィールドステーション」の建設を支援しました。2018年5月に、産官学協働で整備された本施設の開所式典が現地で行われましたが、セミナーや研究発表など来訪者が集う施設(ビジターセンター)のある多目的棟のほかに宿泊棟もあり、浸水林とテラフィルメ(水没しない地域)の双方が存在する絶好な地域にて、動植物の長期モニタリングが可能となり国内外で注目されました。
これまで研究が困難だったアマゾンの水生生物(カワイルカやマナティー)や熱帯雨林上層部の研究以外にも多数の計画が検討されています。今後は、中長期的にアマゾンの熱帯林に係る先進的な研究が実施されるとともに、環境教育活動が一層活性化し、アマゾンの生物多様性保全につながることが期待されています。
絶滅危急種であるアマゾンマナティーを救うためのプログラムもその一つで、伊藤忠商事はアマゾンマナティーの野生復帰プログラムを支援しています。密漁に伴う負傷などにより保護されるマナティーの数が増える一方で、自律的な野生復帰は難しいことから、マナティーの野生復帰事業の確立が急務となっています。2016年度からの3年間のプロジェクト期間で、9頭以上のマナティーの野生復帰と、20頭以上の半野生復帰を目指し、2018年5月までに15頭の野生復帰と21頭の半野生復帰を果たしました。

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完成したフィールドステーション
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絶滅危惧種のアマゾンマナティー

キッザニア東京「エコショップ」パビリオンへの参加でアマゾンマナティーのミルク代支援

伊藤忠商事は、こども向け職業体験施設「キッザニア東京」に、子どもがエコ活動を体験できる環境パビリオン「エコショップ」を2012年4月にオープンしました。2017年度から、「アマゾンマナティー野生復帰事業」(マナティー里帰りプロジェクト)の推進として、当パビリオンを「アマゾンの生態系保全」をテーマにリニューアルしました。子ども一人の参加ごとに10円がアマゾンマナティーのミルク代としてブラジルに寄付される仕組みとなっており、2017年度の体験者数に応じて、アマゾンマナティー1頭の968日分のミルク代に相当する金額を寄付しました。

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「エコショップ」パビリオンの様子
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ミルクを飲むアマゾンマナティー

ボルネオ島の熱帯林再生及び生態系保全活動

ボルネオ島はマレーシア、インドネシア、ブルネイの三カ国にまたがる熱帯林地域で、面積は日本の約2倍、世界でも3番目に大きな島です。生物多様性の宝庫といわれるボルネオ島も開発が進み、自然再生力だけでは生態系保全ができない程、傷ついた熱帯林も出てきました。伊藤忠グループが2009年から支援を続けている森林再生地のボルネオ島北東部のマレーシア国サバ州北ウルセガマでは、世界的な自然保護団体であるWWFが現地サバ州森林局と連携し、約2,400ヘクタールの森林再生活動を行っています。伊藤忠グループはそのうちの967ヘクタールの再生を支援し、2014年に植林作業が完了し、維持・管理作業を含むすべての現地作業は2016年1月に完了しました。これは一般企業の植林活動支援としては最大規模の面積となります。当地は、絶滅危惧種であるオランウータンの生息地でもあり、森林再生はこのオランウータンを保護するのみならず、ここに生息する多くの生物を守ることにもつながります。

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ツアー参加者による植林
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絶滅危惧種のオランウータン

ハンティング・ワールドのボルネオ支援活動

伊藤忠商事が展開するラグジュアリーブランド「ハンティング・ワールド」は、1965年のブランド創設以来、「牙のない仔象」をモチーフとしたロゴマークを使用しています。これは自由と蘇生のシンボルであると同時に、絶滅危惧種の保護という未来を見据えた課題をも意味しており、創設者の自然への愛と敬意が込められています。そして、「ハンティング・ワールド」を日本で販売するハンティング ワールド ジャパンは、創設者が掲げた「自然との共生」実現のために、2008年よりNPO法人「ボルネオ保全トラスト」(BCT)が進める生物多様性保全活動を支援しています。同社では、チャリティーグッズを企画・販売し、その売上の1%をBCTに提供することで、緑の回廊のための土地購入資金やプランテーションに迷い込んだボルネオ象の救出のための費用に役立てています。また、2011年秋には、これまでの支援金によって「緑の回廊計画」区域内に4エーカーの土地を単独で取得し、「ハンティング・ワールド共生の森」が誕生しました。さらに、BCTをサポートしているBCTジャパンが2013年9月から推進する「野生生物レスキューセンター」の第一弾となる施設「ボルネオ エレファント サンクチュアリ」の設立資金にも役立てられました。

  • 緑の回廊: 森林保護区や保護林の間の土地を買い戻すなどして、分断された森林をつなぎ、野生動物の移動経路を作ることで、生物多様性を保全する活動
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絶滅危惧種のボルネオ象
ボルネオ象を森に戻すまでの一時的な
保護、治療、馴致を行う施設の建設等もサポート
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ボルネオ島北東部のキナバタンガン川周辺が
「緑の回廊」対象地。全体で2万haの
土地の確保が計画されている

パフォーマンスデータ

生物多様性に関するパフォーマンスデータ

アマゾンマナティーの支援活動

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「マナティー里帰りプロジェクト」のロゴ

絶滅の危機にある大型水生ほ乳類アマゾンマナティーは、鯨類と異なり完全な草食性でアマゾン川の固有種です。過去の大規模な乱獲により生息数が激減してしまい、法律によって保護されている現在でもなお、食肉目的の密漁に伴う負傷等により、保護されるマナティーが後を絶ちません。
1972年より、国立アマゾン研究所は、アマゾンマナティーの保護・飼育を行っており、京都大学野生動物研究センターは、国立アマゾン研究所と共に、保護されたマナティーを再び自然へと戻す放流事業の確立を目指しています。

国立アマゾン研究所で保護されているアマゾンマナティーは約60頭(2016年1月時点)で、水槽内も飽和状態になっており、マナティー個体数回復の一環として、2008年に保護・飼育個体を再び野生へ戻す放流事業を立ち上げました。アマゾンマナティーはその生態の全容が明らかになっていないうえ、2016年までに国立アマゾン研究所では4頭しかマナティーの放流を実施できていません。そして放流した飼育個体は、自然環境下で自力で餌を見つけて食べるのが難しいことが確認されており、衰弱して再び保護された個体もいます。さらに、アマゾン地域には雨期と乾期があり、雨が多く降る雨期には餌植物が豊富で、川での移動も容易ですが、雨が減少する乾期になると、川の水位が下がり、多くの支流が陸地となってしまうため、マナティーの移動は制限されます。この干上がった場所に野生のマナティーが取り残されることで死亡することも報告されています。乾期には餌植物の種類や量も激減することが知られており、このような環境変化を学んでいない飼育マナティーにとっては、放流後に野生へ適応するのは簡単ではありません。放流を成功させるためには、マナティーにとって最適な方法を開発、確立することが必要です。また、放流後の行動を調べて、自然への適応を評価するための新たな手法の開発も行なっています。当社は、このアマゾンマナティーの野生復帰事業を支援しており、「マナティー里帰りプロジェクト」と称し、当プロジェクトにおける3年間の成果指標を以下の通り定めています。この取組みは、「持続可能な開発目標」(SDGs)の目標15で定められている生物多様性の損失の阻止につながります。

アマゾンマナティー野生復帰事業 成果指標
テーマ 活動内容 3年(2016-2018年度)の成果指標 2016年度成果指標 2016年度実績 2017年度成果指標 2017年度実績
半野生復帰 マナティーを半野生環境の湖(マナカプル)や川に設置した生簀(クイエラス)に放流。
  • 20頭以上のマナティーを半野生湖へ放流。
  • 半野生復帰用の湖と生簀を設置。
  • マナカプルにマナティー半野生復帰用の湖を設置開始。
  • 半野生湖に生息する13頭のマナティーの健康診断を実施。
  • 6頭のマナティーを半野生湖へ放流。
  • マナカプルに湖を設置する打ち合わせを開始。
  • 12頭のマナティーの健康診断を実施。
  • 9頭のマナティーを半野生湖へ放流。
  • 17頭のマナティーの健康診断を実施。
  • 8頭のマナティーを半野生湖へ放流。
  • 24頭のマナティーの健康診断を実施。
  • 12頭のマナティーを半野生湖へ放流。
野生復帰
  • マナティーをアマゾン川に放流。
  • 10頭以上のマナティーをアマゾン川へ放流。
  • 3頭のマナティーをアマゾン川へ放流。
  • アマゾン川へ放流後再捕獲されたマナティー1頭の健康診断を実施した結果、体長、体重共に増加しており、川へ放流した後も順調に自然環境に適応していることを確認。
  • 5頭のマナティーをアマゾン川へ放流。
  • 5頭のマナティーをアマゾン川へ放流。
  • 10頭のマナティーをアマゾン川へ放流。
  • アマゾン川へ放流したマナティー1頭を再捕獲し健康診断を実施した結果、体長、体重共に増加しており、川へ放流した後も順調に自然環境に適応していることを確認。
地域住民への環境教育・啓蒙活動の実施 マナティー野生復帰事業を通じ、地域住民への生物多様性保全について啓蒙活動を行う。
  • 毎年地域の住民100名以上に学びの機会を提供する。
  • 地元の漁師にマナティー保全の重要性を理解してもらい、漁師2名の本事業への参画を目指す。
  • マナティー放流時に、地域の住民200名以上に参加してもらい、マナティー保護を通じ、生物多様性保全の重要さの啓蒙を行った。
  • 地元の漁師にマナティー保全の重要性を理解してもらい、漁師2名が本事業へ参画した。
  • 地域の住民100人に学びの機会を提供する。
  • 地元の漁師にマナティー保全の重要性を理解してもらい、漁師2名の本事業への参画を目指す。
  • 環境教育には301名、マナティー放流時のお披露目会には370名の地域住民が参加し、マナティー保護を通じ、生物多様性保全の重要さの啓蒙を行った。
  • 昨年に引き続き地元の漁師2名が本事業へ参画した。