環境マネジメント
方針・基本的な考え方
伊藤忠商事が国内外において行っているさまざまな製品・サービスの提供や資源開発・事業投資等の事業活動は、地球環境問題と密接に関係しているという認識のもと、地球環境保全に向けた取組みを経営の最重要課題のひとつとして位置付けています。
持続可能な企業成長は、地球環境問題への配慮なしには達成できないと考え、商社の中でいち早く1990年に地球環境室を創設、1993年に「伊藤忠地球環境行動指針」(1997年に伊藤忠商事「環境方針」に改訂)を策定しました。この方針に基づき、環境保全型ビジネスを推進する「攻め」と、環境リスクの未然防止を行う「守り」の攻守を両立させることで、企業理念である「三方よし」を果たすことを目指しています。その際、次世代に何を残すことができるかという観点からも、常に地球環境問題を意識したグローバルな企業経営・活動に取組んでいます。
また、2018年4月、方針の改定に合わせ従来の「環境管理体制」を「サステナビリティ推進体制」に整理・統合し、ISO14001の規格に則り、効率的な環境マネジメントシステムを構築、維持・運用しています。
「環境方針」につきましては、こちらよりご覧いただけます。
目標
2020年度項目別取組み目標と実績
環境マネジメントに関して、中期的に取組む環境目標を定めた上で、毎年度、具体的目標の設定とそれに基づく実績のレビューを行っています。
項目 | 2020年度環境目標 | レビュー | 2020年度実施内容 |
---|---|---|---|
環境汚染の未然防止 法規制の遵守 |
投資実行に際し、事前環境リスク評価と『投資等に係るESGチェックリスト』の全社的な活用徹底。 |
○ |
全ての投資案件で『投資等に係るESGチェックリスト』による事前環境リスク評価を実施(評価項目にはエネルギー使用量やCO2排出量の把握状況も含まれている)。33のチェック項目はISO26000(社会的責任に関するガイドライン)の中核主題に準拠。全ての投資案件に関し、申請部署にESG面のフィードバックを行った(2020年度 75件に対しコメント)。 |
社内監査を通じた環境マネジメントシステム、遵法、環境パフォーマンス状況の確認による管理レベル向上のための取組み推進。 |
○ |
51部署に対し社内監査を実施し(セルフチェック形式28部署を含む)、環境マネジメントシステムの運用、遵法、環境パフォーマンスの管理状況等の確認、助言を実施。 |
|
グループ会社を選定し、環境管理状況等を訪問調査。 |
○ |
グループ会社1社に対し訪問調査各種助言を行い、現場での改善を実施。 |
|
環境保全活動の推進 | 海外現地法人・国内/海外主要子会社のエネルギー排出量等の把握対象範囲の拡大。 |
○ |
海外店(現地法人含む)29ヵ所、国内事業会社238社、海外事業会社286社より情報収集・開示。 |
「サステナビリティアクションプラン」による目標設定及びレビュー。 |
○ |
全カンパニーの部門・各職能部・支社でそれぞれの環境保全活動について計画・実行・レビューを実施。 |
|
社会との共生 | 地元企業及び自治体と環境保全活動等に関する提携を実施 |
○ |
各支社で地元企業や自治体と連携したイベントやボランティア等を実施。 |
啓発活動の推進 | 伊藤忠商事及びグループ会社社員に向けたセミナー、ツアー、『サステナビリティ一般教育』、『特定業務要員教育』の実施及び学習。 |
○ |
『サステナビリティ一般教育』(2020年10月~2021年2月、4,264名)、『特定業務要員教育』(6月~12月、400名)の実施。 |
伊藤忠商事及びグループ会社社員に向けた『廃棄物処理法』、『土壌汚染対策法』等の講習会の実施及び学習。 |
○ |
海外駐在員と一部ナショナルスタッフ向けにeラーニング『Promoting Global Sustainability in ITOCHU Group 2020』(2020年10月~2021年2月、1,000名受講)を実施。 |
- ○:実施 △:一部実施 ×:未実施
体制・システム
伊藤忠商事は1997年に商社で初めてISO14001に基づく環境マネジメントシステム(EMS)を導入し、継続的改善に努めています。このシステムを通じ、環境関連法規制の遵守並びに気候変動関連を含む環境リスクの未然防止及び環境保全型ビジネスの推進を目指しています。具体的には、事業活動が地球環境に与え得る影響を認識し環境リスクの未然防止を図るため、取扱う商品とともに、特に新規投資について事前に影響を評価する仕組みを構築しています。また、毎年「攻め」と「守り」の両輪で環境リスクの未然防止や環境保全型ビジネス、省エネルギー・省資源・CO2排出量の削減等気候変動リスクに関する項目等に関する目標を策定し、進捗状況の評価・分析を行い、確実に目標達成していくPDCAサイクルを回すことにより、目標を運用・管理する制度です。
![[図]](/ja/csr/img/cs_env_mt_19_img01.gif)
環境管理体制
2018年4月より「環境管理体制」を「サステナビリティ推進体制」に整理・統合し、新たな「サステナビリティ推進体制」を定めました。こちらよりご覧いただけます。
- 伊藤忠商事の環境マネジメントシステムの対象となる事業会社:伊藤忠オートモービル(株)、伊藤忠メタルズ(株)、台灣伊藤忠股份有限公司
- 伊藤忠グループの中でISO14001を取得している会社数:524社中74社(グループ全体に占める割合 14%)
- 伊藤忠グループの中でISO14001を取得している事業所数:把握している3,810の事業所中695事業所(グループ全体に占める割合 18%)
外部審査
BSIグループジャパン(株)より毎年、ISO14001の認証審査を受けています。2020年度は『維持』審査に該当し(1年目、2年目続けて『維持』審査、3年目に『更新』審査を毎年繰り返し受審)、『認証維持』となりました。
内部監査
ISO14001を基にした社内サステナビリティ監査を毎年実施しており、2020年度は全51部署に対して実施しました(セルフチェック形式28部署含む)。サステナビリティ推進部員が監査チームを構成し、遵法監査に力点を置いて実施しています。約半年かけて社内サステナビリティ監査を実施することが、環境リスクの未然防止等に繋がっています。
環境会計
環境保全コスト
伊藤忠商事の2020年度国内全店の環境保全コストは以下の通りです。
(単位:千円)
分類 | 金額 |
---|---|
事業エリア内コスト | 1,060,507 |
上・下流コスト | 11,360 |
管理活動コスト | 126,295 |
研究開発コスト | 500 |
社会活動コスト | 4,210 |
環境損傷対応コスト | 10,483 |
合計 | 1,213,355 |
環境省「環境会計ガイドライン2005年版」に基づいて集計。
集計範囲:国内全店
対象期間:2020年4月1日~2021年3月31日
環境保全・経済効果
伊藤忠商事の2020年度の紙・電力使用量及び廃棄物排出量の環境保全効果と経済効果は以下の通りです。
環境保全効果 | 経済効果 | |
---|---|---|
紙の使用量 | 7,746千枚 |
6,193千円 |
電力使用量 | 499千kWh |
-33,752千円 |
廃棄物排出量 | 302t |
1,510千円 |
水の使用量 | 32,210m3 |
12,075千円 |
環境保全・経済効果は、「前年度実績値-当年度実績値」により算出。
集計範囲:紙、水の使用量:東京本社ビル、電力使用量、廃棄物排出量:国内全拠点
環境債務の状況把握
伊藤忠商事単体及びグループ会社の土地、建物等有形固定資産の環境リスク、特にアスベスト、PCB、土壌汚染については、法的要求事項への対応にとどまらず、自主的に調査を通じて把握をし、迅速な経営方針の決定・判断に役立てるよう対応を図っています。2021年度も、環境・社会リスク対応セミナー等、各種研修を通じて、関連情報の共有を推進していきます。
取組み
サプライチェーンでの環境リスク低減
伊藤忠商事の取扱商品における環境リスク評価のみならず、グループ全体の事業活動が地球環境等に与え得る影響を認識するため、グループ会社も対象に環境リスクの未然防止に向けた活動に努めています。
取扱商品における環境リスク評価
伊藤忠商事は多種多様な商品を世界規模で取引しているため、各商品の地球環境への影響・環境関連法規制の遵守状況・ステークホルダーとの関わりを評価することが肝要と考え、当社独自の環境影響評価を全商品に対して、実施しています。当該商品に関わる原材料の調達から製造過程、使用並びに廃棄に至るまで、LCA※的分析手法を用いています。気候変動に関連するリスクを評価するため、この分析の評価項目には、熱帯雨林の減少・砂漠化、地球温暖化等気候変動に関する項目も含まれています。評価の結果、地球環境への影響が特定の点数以上となった場合、当該商品を重点管理対象とし各種規程・手順書を策定しています。
- LCA(Life Cycle Assessment): ひとつの製品が、原材料から製造、輸送、使用、廃棄あるいは再使用されるまでのライフサイクルの全段階において、環境への影響を評価する手法
![[図]](/ja/img/cs70_im01.gif)
グループ会社実態調査
グループ会社における環境汚染等の未然防止を目的として、現地訪問調査を2001年より継続的に行っています。グループ会社のうち、地球環境に与える影響・負荷が相対的に高い200社程度を分析、年間約10社へ実態調査を実施しています。2020年度末までの過去20年間での調査合計数は285事業所となります。経営層との質疑応答から、工場や倉庫等の施設並びに河川への排水状況調査、環境法規制の遵守状況等を評価しています。
新規投資案件の環境リスク評価
伊藤忠商事及び国内子会社が取組む日本国内・海外の事業投資案件については、その案件が社会、環境等に与える影響や、投資対象のガバナンスの状況を33項目からなる「投資等に関わるESGチェックリスト」(評価項目には気候変動リスクに関連し、エネルギー使用量やCO2排出量の把握状況も含まれている)により事前に評価しています。2020年度は75件の申請がありました。専門的な見地を必要とする案件については外部専門機関に事前の調査を依頼し、調査の結果、問題がないことを確認したうえで、着手することにしています。
社内外からの照会案件とその対応状況
2020年度の外部からの照会案件は、行政6件、企業16件(取引先4件、メディア3件、金融関係8件、その他1件)、業界団体6件、NGO13件、取引先等からのISO14001登録証請求30件、合計71件でした。当社における環境関連の事故、トラブル、訴訟案件はありませんでした。一方、社内及びグループ会社からの相談案件の内容は、廃棄物処理法、土壌汚染対策法関連で、適切に対応しています。
伊藤忠SDGs債発行
伊藤忠商事は、2021年3月に日本の総合商社として初めて、「SDGs債フレームワーク※1」を発表し、SDGsに貢献する事業に資金使途を限定する2026年満期米ドル建て無担保普通社債(SDGs債)を総額5億米ドル発行しました。当フレームワークは、国際資本市場協会(ICMA)が定める「グリーンボンド原則2018」、「ソーシャルボンド原則2020」及び「サステナビリティボンド・ガイドライン2018」に基づいたものであり、第三者評価機関であるVigeo Eiris社よりセカンド・パーティ・オピニオン※2を取得しています。
伊藤忠欧州グリーンファイナンスフレームワーク
伊藤忠の欧州地域の統括拠点であるITOCHU Europe Plc(以下、伊藤忠欧州会社)は、2019年3月に「伊藤忠欧州グリーンファイナンスフレームワーク(以下、フレームワーク)」を発表し、欧州・中東地域における伊藤忠グループのグループ金融拠点であるITOCHU Treasury Centre Europe Plcを通じて、みずほ銀行とING銀行から、グリーンローン150百万ユーロを調達しました。これは日本の総合商社が調達した初めてのグリーンファイナンスとなります。同フレームワークの作成にあたり、ING銀行をグリーンストラクチャリングアドバイザーとして起用したほか、Sustainalytics社よりセカンドパーティ・オピニオンを取得しています。
同フレームワークは、2つのSDGs、「目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」及び「目標12:つくる責任つかう責任」に貢献するものであり、これらは伊藤忠グループとして特定しているサステナビリティ上の重要課題と合致します。
伊藤忠欧州会社は、地域のグループ会社とともに、環境に優しい素材のための新技術の開発・導入、高度な省エネルギー技術の導入、エネルギー効率の良いプロジェクト/再生可能エネルギープロジェクトへの投資等によって、持続可能なビジネスを拡大し成長を目指しています。
環境教育・啓発活動
社員が環境保全活動を行うにあたり、さまざまな教育プログラムを展開するとともに、グループ社員も対象にした環境法令セミナー、地球環境問題の啓発セミナー等を開催し、伊藤忠グループ全体の環境意識の向上に努めています。
講習会の開催
伊藤忠グループ社員への環境関連法令の要求事項の周知徹底及びその遵守並びに環境意識啓発のため、講習会を積極的に開催しています。
タイトル | 開催日時 | 主な対象 | 参加人数(人) |
---|---|---|---|
ESG推進担当説明会 | 2020年4月 |
ESG推進担当 |
49 |
サステナビリティ一般教育 | 2020年10月~2021年2月 |
社員及びグループ会社社員 |
4,264 |
特定業務要員教育 | 2020年6月~12月 |
社員及びグループ会社社員 |
400 |
eラーニング | 2020年10月~2021年2月 |
海外駐在員と一部ナショナルスタッフ |
1,000 |
サステナビリティセミナー
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