ボルネオ島での熱帯林再生及び生態系の保全プログラム

「ボルネオ島での熱帯林再生及び生態系の保全プログラム」開発により劣化したボルネオ島の熱帯雨林を植林により再生させ、生態系の保全を目指すものです。
ITOCHU Group: Forest for Orang-utan

1. 概略

世界的に問題となっている熱帯林の著しい減少・劣化、及びそれに伴う生態系の破壊は、現在も止まっていません。また、森林の破壊が地球温暖化の原因である二酸化炭素増大の原因のひとつともいわれています。

ボルネオ島(カリマンタン島)はマレーシア、インドネシア、ブルネイの三カ国にまたがる熱帯林地域で、日本の約2倍もの面積がある、世界で3番目の大きさの島です。アマゾン等と並び、生物多様性の宝庫といわれるボルネオ島も開発が進み、自然再生力だけでは生態系保全ができない程、傷ついた熱帯林も出てきました。本プログラムは、これらの傷ついた熱帯林再生の手助けをするものです。ボルネオ島北東部のマレーシア国サバ州北ウルセガマでは、世界的な自然保護団体であるWWFが現地サバ州政府森林局と連携し、約2,400ヘクタールの森林再生活動を行っており、伊藤忠グループはそのうちの967ヘクタールの再生を支援してきました。これは一般企業の植林活動支援としては最大規模の面積です。当地は、絶滅危惧種であるボルネオオランウータンの生息地でもあり、森林再生によりこのボルネオオランウータンを保護するのみならず、ここに生息する多くの生物を守ることにも繋がります。

2016年1月14日、2009年より開始した全967ヘクタールの植林及び維持管理作業が完了しました。
2016年2月19日には、WWFジャパン、WWFマレーシアの方々による完了報告会を実施しました。

伊藤忠グループの約7年間にわたる本プログラムを通じての支援により、ボルネオ島の熱帯林という世界的に貴重な森林生態系の保全に大きく寄与したことに関し、WWFジャパン 筒井隆司事務局長より感謝状が贈呈されました。

左:WWFジャパン 筒井隆司事務局長
右:伊藤忠商事(株) 広報部 小野博也CSR・地球環境室長

WWFジャパン ホームページにも本プログラムについて掲載されています。是非ご覧ください。

2. プログラムの内容

(1) 趣旨

寄付先

WWFジャパン

期間

2009年度より2015年度まで

場所

ボルネオ島(マレーシア国サバ州北ウルセガマ地区)

面積

967ヘクタール(契約面積、正方形に例えるとおよそ3km × 3kmの面積)
最終的には972.25ヘクタールで実施。

寄付金額

総額2億5000万円(グループ会社よりの寄付含む)

植樹

植樹は、現地の在来樹種のフタバガキ科が中心となり、現場状況にあった樹種が植えつけられました。7年をかけて植樹及びメンテナンスを実施しました。 2(5)参照

社員ボランティア活動

グループ会社含めた社員ボランティアによる現地植林活動(植樹、草刈等)や野生動物の観察等を実施しました。

(2) 活動内容

森林再生活動は、WWFジャパンがWWFマレーシアとともに行い、ボルネオ島在来の植物種の苗木を一定の間隔で植林し、その後の約2年間にわたり苗木の周辺の除草等の維持管理作業を継続することで、森林の再生を目指してきました。これらの作業は、サバ州政府森林局とWWFマレーシアが合意した手法に則って行われ、植林する樹種については、約60種に及ぶ多種多様な樹種を環境に合わせて植林していく等きめ細かい作業が行われました。また、WWFとサバ州政府森林局により、基準に沿って作業が行われているかを作業ごとに実地で検証、基準に沿わない場合は、修正作業が行われました。

対象区画の全域に8mごとに植林用のラインを作ります。
植林に向かう様子。すべてを手作業で行っていきます。
植林した樹の周辺の草本や樹に巻きついたツルを除去します。
(植林後約2年間最大10回)
WWFとサバ州政府森林局による作業確認を行います。

(3) 伊藤忠グループ社員による植林ボランティア

本プログラムの遂行にあたり、資金的な支援のほか、社員の環境教育の一環で世界各国の伊藤忠グループ社員が植林活動等に参加できる社員ボランティアツアーを企画しました。
伊藤忠グループ社員のツアー体験レポートは以下「ボルネオ便り」にまとめました。

(4) プログラムの成果

WWFが「北ウルセガマ森林再生プロジェクト」(伊藤忠グループが支援した967ヘクタールを含む、WWFの担当区画約2,400ヘクタールにおける森林再生活動)の成果を測るために行った科学的な調査の結果から、森林再生活動を行った地区で森林被覆が回復しつつあるというポジティブな変化が明らかになってきています。加えて、ボルネオオランウータンの調査を通して、プロジェクト開始以前には、わずかに残された比較的状態の良い森でしか見られなかったボルネオオランウータンが、より広い範囲で行動するようになりつつあることも明らかになってきています。これは、森林火災や伐採の影響で、ボルネオオランウータンが利用できないほどに劣化してしまった森の一部が、森林再生活動を通して徐々に回復してきていることを示しています。実際に2012年には、森林再生活動で植樹し、成長した木々をボルネオオランウータンが利用する様子が直接観察されはじめました。

伊藤忠グループサインボード周辺の様子

2012年10月時点
2016年1月時点

2012年の時点では植えたばかりだった小さな木が、2016年には大きく成長しているのがわかります。

2008年~2013年の森林被覆の変化

緑色の部分が、2008年当時樹木のない草地・ヤブだった場所から森林へと回復した場所を示しており、WWFの担当区画2,400haに対して約20%にあたります。2008年時草地だった約860haの内 約460haが森林へと変化しました。

左・中央:植林した樹木を、ボルネオオランウータンが移動や採食に利用しています。
右:植林した樹木を、ボルネオオランウータンがネスト(寝床)として利用しています。

その他にも、2011年に北ウルセガマを含むウル・セガマ・マルア地域の全域がFSC®認証を取得し、持続可能な管理が行われている森林として認められました。また、2012年にサバ州政府森林局が北ウルセガマの重要性を認め、北ウルセガマは、商業伐採を行わない保護林とすることを決定されました。
同時に、それまではウルセガマ森林保護区の一部であった北ウルセガマは、ブキ・ピトン(Bukit Piton)森林保護区という新たな名称を与えられ、独立した新たな森林保護区となりました。

森林再生活動の内容や成果については、WWFジャパンホームページでも詳しく紹介されています。是非ご覧ください。

(5)資料:植林された樹種の例

成長が速い樹種(パイオニア種)、成長の遅い種(フタバガキ科の植物が中心)、ボルネオオランウータンの食物となる果実がなる樹種を一定の割合で植えていきました。