ダイバーシティ
方針・基本的な考え方
伊藤忠商事は、多様化する消費者ニーズをマーケットインの発想で捉え、新たな価値提供のためには「多様性を受容し、活かすこと」(DE&I:Diversity, Equity & Inclusion)が不可欠と考えており、人種、性、宗教、国籍、年齢等、あらゆる差別を禁止し、人権を尊重します。職場において従業員がパワーハラスメント、セクシャルハラスメント、SOGI(Sexual Orientation and/or Gender Identity)ハラスメントを受けることなく、また、多様な価値観を受容し、柔軟な働き方の実現や個別支援等を実施しています。従業員一人ひとりの主体的なキャリア形成を支援し、多様な価値観が尊重され、全ての従業員が能力を最大限に発揮できる「厳しくとも働きがいのある」企業風土づくりを推進します。
目標・アクションプラン
女性活躍推進の取組み
伊藤忠商事では、「人材多様化推進計画」により女性従業員を含む多様な人材の数の拡大、定着、活躍支援に向けた制度の拡充を進めてきました。2010年度以降、全従業員が健康でモチベーション高く働くことで労働生産性を高めるという「働き方改革」のもとに、朝型勤務や健康経営、がんと仕事の両立支援策等の取組みを行ってきました。その結果、時間的制約のある従業員のみならず、性別を問わず全ての従業員にとって能力を発揮することができる職場環境の醸成に繋がっています。
「女性活躍推進」を加速させるため、2021年10月、「女性活躍推進委員会」を取締役会の任意諮問委員会として設置しました。委員長を社外取締役とし、委員総数の半数以上を社外役員が占め、取締役会が重要施策を監督する体制を構築しました。経営と一丸となって女性従業員の活躍を後押ししていきます。今後も現場や個々の事情を把握した上で、「①現場との協議、②女性活躍推進委員会での議論、③取締役会への報告」というPDCAサイクルを継続し、実効性のある施策に落とし込んでいます。
2023年12月、女性の執行役員登用を推進するため、女性活躍推進委員会の答申を受け、取締役会において2024年度より女性社員を対象とした「執行役員選考ルール」を新設しました。2024年4月1日付で5名、2025年4月1日付で5名を内部登用し、執行役員を含めた全役員に占める女性比率の割合は、28%となりました。2030年度までに女性役員比率の割合を30%とする目標に向け、多様性に富み、強くレジリエントな企業風土を醸成します。

また、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進や内部管理の高度化等により、事務業務を取り巻く社内外の環境は大きく変化しています。2024年度の女性活躍推進委員会や経営会議を経て、高い専門性を活かして「組織運営の要」を担う期待役割を再確認の上、事務職の専門性を高める制度改訂を実施しました。本制度改訂の趣旨に合わせ、2025年4月より職掌名称を「ビジネスエキスパート(BX)職」に変更しました。性別を問わない新卒・即戦力人材の採用を強化し、キャリア志向に応じた育成・登用を推し進めるとともに、専門知識・スキル向上に向けた従業員の「学び続ける」支援を拡充しています。
現在、女性の採用数が拡大した世代が役職候補となり得る重要なステージに入っています。共働き世帯の増加も見据え、法定を上回る水準の両立支援制度を設置し、個々人のライフステージやキャリアに応じた木目細かい個別支援を行っています。2025年には、首都圏二か所に分散している当社女子寮を統合の上で新たな女子寮を新設しました。社内人脈形成や人材育成の場として活用しています。他にも、多様な人材が活躍できる社内風土の醸成、及び政府機関・経済団体の女性活躍推進策への賛同表明等を通じ、当社のみならず日本としてのSDGs目標5(ジェンダー平等)への貢献を図ります。
今後の具体的な目標及び取組み内容を定めた行動計画は以下の通りです。
女性活躍推進法/次世代法に基づく行動計画(PDF:149KB)
女性活躍推進の体制図(2025年4月時点)

女性活躍にむけて(当社代表取締役会長CEO 岡藤メッセージ)
今般、伊藤忠商事では、女性従業員のみを対象とした執行役員選考ルールを新設し、2024年4月から新たに5人の女性執行役員を内部から登用することを決定しました。内部登用を選択した最大の理由は、女性の登用だけが目的とならないよう、会社全体で女性管理職、役員を「育成」する文化の醸成、更なる意識改革が必要であったからです。多様性に富み、強くレジリエントな取締役会や企業風土は一朝一夕にできるものではなく、何年もかけ、つくりあげていくものです。
また、伊藤忠商事では「働き方改革」の次の打ち手を「フェムテック」としています。女性が働き続ける時に遭遇する様々な障壁を一つでも取り除くことで、一層女性が活躍できる会社を目指したいと思います。
そのような会社では、性別にかかわらず誰もが力を発揮してくれるはずです。
代表取締役会長CEO


職場の理解促進・風土醸成
2018年度より、多様性受容の理解促進施策の一つとして「ダイバーシティウィーク」を開催し、全従業員を対象とした周知の頻度を増やしています。組織長研修等を通じ、多様性の重要性や支援制度の理解促進を行っています。
また、性的指向・性自認に関わる差別的な発言・無意識の性別役割分担を前提とした発言を許さない職場環境の整備を行い、従業員からの相談窓口も設置しています。
2023年度には、女性活躍推進委員会(取締役会の任意諮問委員会)主催で、当社の重要パートナーで世界最大の総合資源会社であるBHP Group Limitedのエグゼクティブ、BHPジャパン株式会社代表取締役をお招きし、「企業における男女比率の平等・ダイバーシティの重要性」に関する対談イベントを開催しました。
約120名の従業員が参加し、DE&Iがどのように事業創造に繋がるのか、女性従業員比率が高まることで組織にどのような好影響があるのか、理解を深めました。


2024年度には、フェムテックの活用(卵子凍結、更年期支援等)をテーマにしたセミナーを複数回実施し、100名以上の従業員が参加しました。また、フェムテックへの理解を促進するため、2024年8月より東京本社及びITOCHU SDGs STUDIOにフェムテック関連商品(生理用品、健康・フェムケア、妊活、更年期等)の自動販売機「ふぇむてっくん®」を設置しています。
詳細は、ダイバーシティ対応をご覧ください。
LGBTQ等性的マイノリティ対応
2018年に社内会議室フロアに多目的トイレを設置し、従業員のみならず当社ビルを利用される全ての方にご利用いただいています。2020年度には従来の従業員相談窓口に加え、LGBTQ等性的マイノリティに関する専用の外部相談窓口を設置しました。当事者からの相談に限らず、同僚や取引先との関わり方等に関しても匿名で専門家に相談できる体制を整えています。
2024年度「ITOCHU Diversity Week」では、多様な価値観が尊重され、全ての従業員が能力を最大限発揮できる職場環境を目指し、LGBTQや育児と仕事の両立を当事者目線で理解を深めるワークショップを実施しました。ワークショップでは、ALLYステッカーを配布し、社内の支援体制強化にも取組みました。また、組織長研修では、約700名の組織長に対し、LGBTQ・フェムテックを題材とした検定を実施。アンコンシャスバイアスと人権をテーマに周知しました。
両立のための外部支援プログラム
従業員とその家族の多様な価値観を尊重し、全ての従業員が安心して能力を発揮できる環境づくりを行っています。
外部支援 | 分類 | 概要 |
健康・育児コンシェルジュ | 健康、育児 | 国内外の従業員及びその家族が、心身の健康や育児等の悩みを、当社制度を理解した担当相談員(看護師及び保健師の資格も有する助産師)にオンラインで匿名相談可能。 |
病児保育・ベビーシッター | 育児 | 病児保育・ベビーシッターサービスと契約。24時間365日予約可、当日の急な依頼も対応。出張時にも利用可。費用補助も別途実施。 |
保活コンシェルジュ | 育児 | 保活に関する基礎的な知識や認可保育園の選考方法を説明。認可保育園の選考指数を試算、近隣の保育園のリストアップ等、ワンストップで情報を提供。 |
介護コンシェルジュ | 介護 | 当社専門相談員による一時対応から課題解決までの一気通貫・相談窓口。当社制度の紹介、ケアマネージャーの紹介・手配、介護施設紹介・見学手配、介護保険申請調整・手配等、具体的に課題解決。 |
卵子凍結バンク | フェムテック | キャリアとライフプランの選択肢を増やすべく、卵子凍結の費用補助を2024年より開始。当社特別価格で利用可能な提携先・相談窓口を設置。 |
LGBTQに関する相談窓口 | LGBTQ | 性指向・性自認に関する悩みを匿名で外部の専門家に相談可能。当事者に限らず利用可能。 |
国境なき医療コンシェルジュ | 生活習慣病 | 国内外問わず各従業員にそれぞれの生活習慣病の専門医との緊密な連携のもとで保健師・看護師が個別指導。 |
労働生産性向上及び周囲の理解促進を図るべく、多様化する女性の健康課題に対応することが重要だと考えています。2022年度より「バーチャルオフィス」※の案件として、フェムテックの取組みを推進しています。2023年8月に開催した「ITOCHU Femtech Fes!?」へは約700名の従業員が来場し、最新のフェムテック製品(約40点)の紹介、有識者の講演会を通じ、フェムテックを身近なものとして従業員に周知しました。
2025年2月には「ITOCHU Femtech Junction!」を開催しました。イベントの開催期間中、ITOCHU SDGs STUDIO内の展示エリアでは、「生理」をテーマにした企画展『Period museum-生理と社会の交差展-』を通じ、女性の生活課題に関して「自分ごと化」して捉える重要性を社内外へ発信しました。
- 「バーチャルオフィス」については、人材育成(バーチャルオフィス)もご覧ください。
障がいのある人々と共に働く
障がいのある人々にやる気とやりがいのある職場を提供することを目的として、特例子会社「伊藤忠ユニダス株式会社」を横浜市に設立しました(神奈川県で初の特例子会社として厚生労働省から認定)。伊藤忠商事の障がい者雇用率は、2025年3月現在2.42%となっており、更なる法定雇用率アップを見据え、障がいのある人々の雇用と職域拡大を推進しています。
「伊藤忠ユニダス株式会社」での取組み
伊藤忠ユニダス株式会社は、障がい者と健常者が共に支え合いながら一体となってクリーニング、印刷、書類電子化、写真サービス、メール集配、ランドリー・清掃等の事業を展開しています。2015年11月には、事業の拡大に加え、障がいのある従業員にとってより働きやすい職場環境を実現するため、ユニバーサルデザインで、豊富な機器を有する横浜市都筑区の新社屋へ移転しました。現在、横浜市都筑区の本社に加え、青山事業所、日吉事業所、及びクリーニングサービスの店舗「よつ葉クリーニング」(横浜市旭区)で事業を展開しています。更に、2024年9月より横浜市港北区によつ葉クリーニング2号店を出店し、2025年1月からは就労移行支援事業も東京都墨田区にて開始しました。今後も引続き、障がいのある人々の社会参画を積極的に促し、仕事を通して社会に価値を提供することで、働く喜びを実感できる職場環境を目指しています。



シニアの活躍支援

伊藤忠商事は日本の少子高齢化の進展や、多様な人材の活躍支援という観点を踏まえ、60歳定年後「雇用延長制度」にて希望者全員を雇用し、中高年従業員が持つ、豊富な知識や経験を定年後も活かし、引続き活躍できる環境を整備しています。また、58歳時には進路選択説明会等の研修を開催し、従業員の雇用延長後の働き方やマネープランについてサポートしています。更には48歳~55歳を対象としてキャリアデザイン研修を開催し、自身のキャリア・スキルの棚卸しを行い、経験・強み等の見える化を行った上で、今後必要とされるキャリア・スキルについて学び直し(リスキル)を検討する機会を提供しています。65歳以降活躍している事例もあり、中高年従業員がやる気とやりがいを持って働き続ける環境の実現を更に推進していきます。また、「OB・OG支援プラットフォーム」を構築し、プロボノ・社会貢献活動やボランティア活動の紹介、当社運営のKIDS PARKの運営スタッフ、当社への海外現地従業員への日本語指導等、当社退職後のOB・OGに対しても活躍支援を実施しています。
パフォーマンスデータ
男女別採用人数とキャリア採用比率
従業員の状況(各年3月31日現在)
女性総合職・管理職・役員比率(各年3月31日現在)
男女間賃金格差(2025年3月31日現在)
育児・介護関連制度取得状況
障がい者雇用率(各年3月1日現在)
社外からの評価
伊藤忠商事の「従業員が活躍できる環境づくり」の取組みは、外部より評価されています。
2020年度には「女性が輝く先進企業表彰」において「内閣府特命担当大臣(男女共同参画)賞」を受賞しました。2021年度、2023年度には経済産業省と東京証券取引所が共同で実施する、「なでしこ銘柄」に選定されました。
2024年度には「共働き・共育てを可能にする男女問わない両立支援」が特に優れた上場企業を選定する「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」に認定されました。2025年1月、「東京都女性活躍推進大賞」事業者部門において、地域を巻き込んだ職域学童保育の取組みと朝型フレックスタイム制度が評価され、当社は「優秀賞」を受賞しました。


詳細は、社会からの評価(ダイバーシティ関連)をご覧ください。