水資源の保全

方針・基本的な考え方

伊藤忠商事では、水ストレスの高い地域を含む世界各地で展開している様々な事業において、水資源は事業継続に不可欠な資源であることを強く認識しており、環境方針の5. 水資源の保全・有効活用において「水の効率的な使用やリサイクルを通じた水の使用量削減、水の適切な処理に努める。」と定めています。水を持続可能なかたちで利用していくため、企業文化の中で水の持続可能性に関する意識を高め、ビジネス上の意思決定の判断に水の持続可能性を含めます。既存事業においては、水利用の包括的な評価を行い、水資源の利用効率の改善、使用量の削減に取組みます。

当社は、水関連ビジネスを重点分野と位置付け、海水淡水化事業や水処理事業、2014年から取組んでいるコンセッション事業等、グローバルに展開し、世界各地の水問題の解決への貢献を目指しています。

目標・アクションプラン

伊藤忠商事では、水の使用量削減に関し、目標数値を設定しています。

水資源関連では、水インフラや衛生環境の整備、水・廃棄物の適切な処理及び有効利用を通じて、衛生環境の向上、経済活動の発展、及び地球環境保全に寄与します。水・環境事業の拡大を通じ、水の適切な利用・処理及び資源の有効活用を促進し、環境負荷の低減等に取組みます。

東京本社ビルでは、省資源の取組みとして、業務で用いる水資源の効率的な利用を、水のリサイクル(中水の製造)を通じて行っており、以下のように目標値を定め、管理しています。

定性的な目標

項目 バウンダリー 目標 2022年度の実績・評価
投融資案件リスク評価

伊藤忠商事

『投資等に関わるESGチェックリスト』内の水関連項目チェックリストで事前リスク評価を実施。

適切に実施。

グループ会社訪問調査

伊藤忠グループ

水資源が特に重要な事業に関わるグループ会社を選定し、水資源環境管理状況等を訪問調査。

水資源が特に重要な事業に関わるグループ会社との面談を実施。

法規制の順守

伊藤忠グループ

国内外の水資源(取水・排水)に関わる法規制への的確な対応。

取水・排水に関わる重大な法規制違反はなし。

水管理計画の着実な実行

伊藤忠グループ

水の管理計画を策定し、取水・排水量、リサイクル量、排水時の水質や温度を管理すると共に、水資源の有効活用や環境負荷の低減化に取組む。

伊藤忠グループの事業会社558社の内、15%にあたる86社が水の管理計画を策定。

水ストレス地域における目標

項目 バウンダリー 目標 2022年度の実績・評価
水ストレス
地域に対する
取組み
投融資案件リスク評価

伊藤忠商事

『投資等に関わるESGチェックリスト』内の水関連項目チェックリストで事前リスク評価を実施。
水ストレス地域での飲料・農業・鉱山等の水資源が特に重要な事業・投資案件では水資源に関する事前リスク評価を実施。

適切に実施。

グループ会社調査

伊藤忠グループ

水ストレス地域で事業を行うグループ会社を選定し、水資源管理状況等を調査。

水ストレス地域に拠点を保有するグループ会社との面談を実施。

定量的な目標

区分 バウンダリー 単年目標 2022年度
実績
目標
期限 内容
伊藤忠商事

取水量(上水)

東京本社

総量削減目標
1%/年

2018年度比
21.3%減

2025年3月

2018年度比
6%減

水ストレス地域

取水量

水ストレス
地域

削減目標
1.5%/年

2019年度比
7.2%減

2025年3月

2019年度比
9%減

  • 水ストレス地域での定量目標は、WRI AqueductにおけるBaseline Water Stress項目が「Extremely high risk」に該当する地域に関する目標です。

アクションプラン

マテリアリティ SDGs
目標
インパクト分類 取組む
べき課題
事業分野 コミットメント 具体的対応アプローチ 成果指標 進捗度合(レビュー)
機械カンパニー
気候変動への取組み(脱炭素社会への寄与)
  • 水資源
  • 汚染防止と資源循環
水・衛生インフラの整備 水/環境プロジェクト 水・廃棄物の適切な処理、有効利用を通じて、衛生環境の向上、経済活動の発展、及び地球環境保全に寄与します。 水・環境事業の拡大を通じ、水の適切な利用・処理及び資源の有効活用を促進、環境負荷を低減。 環境に対する社会要請およびサーキュラーエコノミー促進に繋がるより高付加価値な水・環境関連事業の地域展開、優良資産・機能の拡大及び進化を目指す。(JCM等を活用した脱炭素案件開発に取り組んでいく予定)。

■水分野

豪州及びオマーン/海水淡水化事業(造水能力日量281,000m3のオマーン最大規模)を展開。引続き、海水淡水化事業等を通じた地域安定給水に寄与すると共に、各産業セクターにおける水課題に対するソリューション型事業への関与を目指す。

体制・システム

新規事業投資案件における水資源保全の評価

伊藤忠商事が取組む事業投資案件については、その案件が社会、環境に与える影響を「投資等に関わるESGチェックリスト」により事前に評価しており、例えば水資源の使用量・排水量の把握や事業拠点の水ストレスレベルの確認も含まれています。専門的な知見を必要とする案件については外部専門機関に事前の調査を依頼し問題がないことを確認したうえで、投資実行することにしています。

また当社は、取扱う全ての商品に対して、サプライチェーンの水関連リスクを含む当社独自の環境影響評価を実施しています。グループ会社における環境リスク対策を目的として、地球環境に与える影響・負荷が相対的に高い会社を対象とした現地訪問調査を2001年より継続的に行っています。グループ会社実態調査では、経営層との質疑応答から、工場や倉庫等の施設での河川等への取水・排水状況、環境法規制の遵守状況等を評価しています。

当社は、「安定的な調達・供給」をサステナビリティ上の重要課題の一つと掲げており、各国の需要に合わせた水資源の有効利用に取組むことで、国際的な水資源問題への対応を進めています。

グループ傘下の製造拠点に関しては、WRI(世界資源研究所)のAqueductを用いて、該当地域の水ストレスについて判定を行い、水資源のリスク管理をしています。

水資源有効活用の取組み

事業活動

東京本社ビルにおける水管理計画と水資源有効利用

東京本社ビルでは、水資源を有効利用するためにビルの設計段階から水管理計画を取り入れ、1980年の竣工時より厨房排水、雨水、湧水、及び洗面並びに給湯室等からの雑排水を原水とする中水製造設備を設置し、トイレの洗浄水に利用しています。
当社は上水使用量抑制の節水対策を施す等、水資源の有効活用に努めています。例えば、雨量によって中水の確保量に毎年変化が生じるため、雨量が少ない場合には水道水の使用量は増える傾向にあります。このため、トイレ内の洗面台手洗い水シャワー節水器や、トイレ洗浄水の自動節水器を新たに設置して水道水の節約に努める等、継続的改善を進めています。

[図]

伊藤忠グループの水資源有効利用

伊藤忠商事は、水資源保全が気候変動等と並ぶ地球規模の課題と認識し、グループ環境方針の重要課題の1つとして国内外の事業において水の効率的な使用やリサイクルを通じた水の使用量削減、水の適切な処理に努めています。例えば、当社グループ会社であるプリマハム(株)及びそのグループ会社では、ISO14001認証事業所における重点取組み事項の1つとして「工場の水使用量(井戸水、上水道)の削減」を掲げ、水の使用量原単位(水使用量/生産数量)の削減活動・進捗管理を行っており、実績値については2019年度15.9m3/トン、2020年度15.3m3/トン、2021年度14.8m3/トン、となりました。

ご参考:ESGデータブック 2020[PDF]ESGデータブック 2021[PDF]おもな環境目標と実績[PDF]

水ストレス地域での事業活動

製造拠点における水リスクの把握

伊藤忠商事では傘下の製造拠点における水ストレスレベルの高い地域を特定するために、WRI(世界資源研究所)が開発したWRI Aqueductツールを用いて、国内外全ての製造拠点の水ストレスレベルを定量化し、水ストレスの高い地域を特定しました。

ご参考:Baseline Water Stress項目において高リスクとして特定された拠点の取水量

全般的な水のリスク 拠点数
低リスク(<10%)

249

低から中リスク(10-20%)

108

中から高リスク(20-40%)

65

高リスク(40-80%)

5

著しく高リスク(>80%)

5

拠点数合計

432

  • 2023年3月時点

水関連事業

伊藤忠商事は水関連ビジネスを重点分野と位置付け、世界各地で水問題の解決に貢献するべく、海水淡水化事業や水処理事業、水道コンセッション事業等をグローバルに展開しています。

水関連事業一覧
事業 取組み内容
海水淡水化事業

豪州ヴィクトリア州における海水淡水化事業に出資参画。本設備はヴィクトリア州メルボルン市の水需要の約30%を満たすことが可能で、2012年からメルボルン市への水の安定供給を支える事業です。

オマーン政府傘下のオマーン電力・水公社が同国北部のバルカにて推進する日量281,000m3の海水淡水化事業に、筆頭株主として出資参画。

海水淡水化プラント及び浸透膜の製造・販売

サウジアラビアにて、1970年代より多数の海水淡水化プラントを納入。
2010年8月には、同国のACWA Holding、東洋紡と海水淡水化用逆浸透膜エレメントを製造・販売する合弁会社Arabian Japanese Membrane Company, LLCを設立。

取組み例

命をつなぐ飲用水を安定供給
[写真]
海水淡水化プラント
-オマーン最大の海水淡水化事業-

今後、年間約6%成長すると予測される中東オマーンの水需要。人口増加や都市化と共に、飲料水不足が課題となっています。2016年3月、当社が参画するBarka Desalination Companyは同国における水の安定供給に向けて、北部バルカでの日量281,000m3の海水淡水化事業契約を締結しました。同プロジェクトは、深刻な水ストレス地域であるバルカ地域への生活用水を提供するためのオマーン政府との官民連携型事業であり、逆浸透膜(RO膜)方式の海水淡水化設備と周辺設備の建設及び20年間にわたる運営を行います。設備は2018年6月に商業運転を開始、総事業費約300百万ドルのオマーン最大の海水淡水化事業です。2022年2月にはマスカット証券取引所に上場を実現しました。
世界的な人口の増加や経済成長、地球温暖化等に起因する水需要の増加を受けて、当社は水ビジネスを重点分野として位置付け、海水淡水化や上下水事業等の拡大に取組んでいます。今後も世界各地域において水資源の有効活用に寄与する事業を推進していきます。

水に関連する環境保全コスト

環境会計にて開示している環境保全コストのうち、水に関連するコスト(2022年度)は以下の通りです。

水質汚濁防止のためのコスト: 排水処理費、中水製造費、監視測定費及び管理人件費

10,175千円

水リスク回避のための研究開発費: 東京大学大気海洋研究所気候システム研究系への寄付

500千円

外部との協働

日本経済団体連合会 環境安全委員会地球環境部会

伊藤忠商事は、日本経済団体連合会の環境・エネルギー関係の委員会である「環境安全委員会地球環境部会」に参加し、自主行動計画の推進、温暖化、廃棄物・リサイクル、水を含む環境リスク対策等、経済と両立する環境政策の実現に取組んでいます。

日本貿易会 地球環境委員会

伊藤忠商事は、日本貿易会の「地球環境委員会」に参加し、他の商社・貿易企業と共に、脱炭素社会の構築、循環型社会の構築、環境関連法規への対応等に取組んでいます。

CDP(水セキュリティ)への参加

ご参考: イニシアティブへの参加