汚染防止と資源循環
方針・基本的な考え方
汚染防止
伊藤忠商事は、事業活動の推進にあたり、化学物質・油・海洋プラスチックごみ等による環境汚染の未然防⽌・影響の軽減、大気汚染物質の排出削減、有害廃棄物及び排水の排出削減・適正処理に努めます。環境保全に関する国際的な宣言、規約、条約、並びに事業展開している国と地域の法規制及びその他当社の合意した事項を遵守することで、汚染防止の責任を果たしていきます。
資源循環
伊藤忠商事の取扱品目は、プラスチックから金属、ゴム、セメント、食品等多岐にわたります。当社はサステナビリティ上の重要課題の一つに「安定的な調達・供給」と「気候変動への取組み」を掲げ、事業投資先や取扱商品のバリューチェーン上のステークホルダーと協力して、環境・自然資本に負の影響がある原料調達の軽減や資源循環に取組み、循環型社会の形成に貢献していきます。製品・サービスの設計段階から、3R(リデュース、リユース、リサイクル)と持続可能な原料・素材へ代替することや、使用済製品の分別・回収・リサイクル事業等を推進していきます。自然資本の適切な利活用、トレーサビリティや地域社会への配慮等を重視し、持続可能性に関する第三者認証付き原料・製品の調達に積極的に取組んでいきます。
目標・アクションプラン
伊藤忠商事は、汚染防止と資源循環における主にマネジメントに関わる定性目標と、パフォーマンスに関する定量目標を定め、取組みを推進しています。それぞれの環境目標と2023年度の取組み実績は以下の通りです。
定性的な目標
項目 | バウンダリー | 目標 | 2023年度の実績と評価 | |
環境汚染の 未然防止、 法規制の遵守 |
投融資案件リスク評価 | 伊藤忠商事 |
全ての投資案件で『投資等に関わるESGチェックリスト』による事前環境リスク評価を実施する。 |
適切に実施 |
監査を通じた管理レベル向上 | 伊藤忠グループ |
社内監査を通じた環境マネジメントシステム、環境パフォーマンス状況の確認による管理レベル向上のための取組みを推進する。 |
適切に実施 |
|
グループ会社訪問調査 | 伊藤忠グループ |
グループ会社を選定し、環境管理状況等を訪問調査する。 |
適切に実施 |
|
啓発活動の 推進 |
法規制内容啓発 | 伊藤忠グループ |
伊藤忠商事及びグループ会社従業員に向けた『廃棄物処理法』、『土壌汚染対策法』等の講習会の実施及び学習、講習実績のレビューを実施する。 |
適切に実施 |
資源の節減、 資源循環推進と実績把握 |
オフィス廃棄物軽減 | 伊藤忠商事 |
当社環境マネジメントシステムに基づき、オフィス廃棄物の排出量削減とリサイクルを促進する。 |
適切に実施 |
紙使用量削減目標 | 伊藤忠商事 |
紙の使用量削減に関し、目標数値を意識する。 |
適切に実施 |
定量的な目標
項目 | バウンダリー | 目標時期 | 内容 | 目標に対する 2023年度の実績 |
評価 | |
汚染防止 | 重大環境事故 | 伊藤忠商事※ |
毎年度 |
重大事故0件 |
0件 |
達成 |
窒素酸化物・硫黄酸化物(NOx SOx)排出濃度 | タキロンテック(株) |
毎年度 |
法令基準を20%下回る水準に抑制 |
達成 |
達成 |
|
伊藤忠セラテック(株) |
毎年度 |
法令基準を20%下回る水準に抑制 |
達成 |
達成 |
||
資源循環・廃棄物 | 廃棄物等排出量 | 東京本社 |
2025年3月 |
2018年度比 |
2018年度比 |
達成 |
リサイクル率 | 2025年3月 |
90% |
92% |
達成 |
||
資源節約 | 紙の使用量 | 伊藤忠商事 |
2025年3月 |
2018年度比 |
2018年度比 |
達成 |
- 伊藤忠商事単体・海外現地法人・コンプライアンス報告対象グループ企業を含む
アクションプラン
リスク | 機会 |
資源循環を含む環境問題の発生及び地域社会と関係悪化に伴う反対運動の発生による影響 |
新興国の人口増及び生活水準向上による資源需要の増加、環境に配慮した資源や素材の安定供給による顧客の信頼獲得や新規事業創出等 |
体制・システム
ガバナンス
汚染防止・資源循環等の環境・社会リスクを管理するための当社のガバナンス体制とシステムは以下の通りです。
ご参考:ガバナンス
新規事業投資案件における汚染防止と資源循環の評価
伊藤忠商事が取組む事業投資案件については、その案件が社会、環境に与える影響を「投資等に関わるESGチェックリスト」により事前に評価しており、例えば汚染防止と資源循環の対応状況の把握も含まれています。専門的な知見を必要とする案件については外部専門機関に事前の調査を依頼し、調査の結果問題がないことを確認した上で、投資実行することにしています。
伊藤忠商事は、「安定的な調達・供給」をサステナビリティ上の重要課題の一つと掲げ、生物多様性等、環境に配慮し、各国の需要に合わせた資源の有効利用と安定的な調達・供給に取組むことで、循環型社会を目指します。事業投資案件における汚染防止と資源循環の事前評価はこのような取組みを支えるものです。
グループ会社実態調査
グループ会社における環境リスク対策を目的として、地球環境に与える影響・負荷が相対的に高い会社を対象とした現地訪問調査を2001年より継続的に行っています。グループ会社実態調査では、経営層との質疑応答から、工場や倉庫等の施設での排気・排水や化学品の取扱い、廃棄物処理の状況や、環境法規制の遵守状況等を評価しています。
バリューチェーンにおける汚染防止・資源循環の取組み評価
取扱商品におけるサステナビリティリスク評価
伊藤忠商事は、新たな商品を取扱う際、商品の原材料の調達からその製造、使用並びに廃棄段階に至るまで、LCA的分析手法で環境・社会への影響や環境関連法規制の遵守状況、ステークホルダーとの関わり等を評価する商品別サステナビリティリスク評価を実施しています。バリューチェーン上で著しい環境汚染や資源の枯渇等のリスクがある場合、当該商品を重点管理対象とし、各種規程・手順書・特定業務要因教育等を策定・実施しています。
サプライヤー向けサステナビリティ調査
サプライヤーの実態を把握するため、高リスク国・取扱商品・取扱金額等一定のガイドラインのもとに各カンパニー及び該当するグループ会社が重要サプライヤーを選定し、各カンパニーの営業担当者や海外現地法人及びグループ会社の担当者がサプライヤーを訪問しヒアリングを実施しています。また重要サプライヤーに対しては、アンケート形式のサステナビリティ調査も実施しており、排気・排水・廃棄物の処理状況や、エネルギーや原材料の省資源を含む資源循環への取組み状況を確認しています。必要に応じてサプライヤーに対して是正依頼を行う継続的改善を行っています。
化学物質管理
化学品部門で取扱う化学品は、人の健康や環境にもたらす悪影響を最小化するため、製造、販売、輸送、保管等の様々な場面において、数多くの関連法規の規制を受けています。更に、商品の取扱いに許認可を要するものも多数あり、法令違反を起こすと許認可が取り消され、化学品部門のビジネスに重大な影響を与えることにもなりかねません。
また、化学品のサプライチェーン全体でのリスク最小化を指向する国際的な流れの中で、先進国、途上国問わず、新たな規制の導入、既存規制の大型改正が始まっており、化学品を扱う上での法規制環境は今後ますます厳しくなるものと予想されます。
伊藤忠商事では、化学品を扱う企業として商品や業界の知識だけでなく、担当者一人ひとりが、自らの取扱っている商品についての法規制を正確に理解した上で、法令の要求事項に沿ってビジネスを行うことを基本方針としています。
化学物質を扱う部門での法令遵守
化学品部門が主管となり、化学物質を主に扱う化学品部門各営業部、及び化学品部門が主管するグループ会社が適切に法令を遵守できるよう管理しています。また、化学品部門以外で化学品を一部扱う営業部門やグループ会社へも化学品部門より適宜指導、助言を行っています。
管理方法としては、外部コンサルティング会社への問い合わせの徹底、及び専用システムによる一元的法令管理を基本としており、具体的には、2016年に独自開発した法令管理システムによる商品ごとの化学物質レベルでの適用法令や対応事項の確認・記録化、重要法令に関するeラーニングの実施や主要法令の要点をまとめた関連法規ハンドブックの配布を通じた営業担当者への継続的教育を行うことで法令遵守に努めています。
外部コンサルティング会社には、化学物質管理に関する高いノウハウを持つテクノヒル株式会社(本社 東京都中央区、代表取締役 鈴木一行)を起用し、管理体制に関する総合的助言や商品ごとの適用法令といった個別相談等、あらゆる面でサポートを受けています。
担当者一人ひとりの力量を高いレベルで維持・向上させるために、当社独自に編集した化学品関連法規ハンドブックを担当者全員に配布し、力量の向上に努めています。本ハンドブックでの掲載法令は32法令で、各法令の概要、遵守事項の要点を明記しています。化学品業界法の知見が十分でない新入社員や化学品部門以外で化学品を取扱う営業担当者が必要に応じて参照し、業界法への自発的気づきを促すことを目的としています。
これらの取組みにより、2023年度の免許停止等の重大違反は0件でした。
緊急対応、事故対応への管理体制
伊藤忠商事の事故・緊急事態対応規程に沿って社内外への報告を行うと共に、事故の状況によって個別手順書に従い対応します。例えば毒物及び劇物に関わる事故等が発生した際は、伊藤忠商事で定めた「医薬用外毒物劇物危害防止手順書」に沿って対応することとしており、具体的には「同規定添付の緊急連絡網に沿って必要な報告を行うと共に、速やかな対応を行い毒物劇物による危害を最小限にとどめる。」「飛散、漏れ、流出、しみだし、または地下にしみ込んだ場合において、不特定または多数の者について保健衛生上の危害が生ずるおそれがあるときは直ちにその旨を保健所、警察署、または消防機関に届け出ると共に、保健衛生上の危害を防止すべく必要な措置を講じる。」等の対応を行うこととしています。
取組み
個別取組みのご紹介
1. リデュース
コンビニエンスストアでの環境配慮型容器包装の取組み
伊藤忠商事の子会社、株式会社ファミリーマートでは「ファミマecoビジョン2050」プラスチック対策に向けた目標として環境配慮型容器包装※比率を2030年に60%、2050年に100%とすることを掲げています。
ファミリーマートでは、容器包装の仕様変更により、容器包装の原材料に使用する石油系プラスチックの削減、及び環境配慮型素材の使用促進に取組んでいます。今後も2030年、2050年目標達成に向け、取引先や消費者の理解と協力を得ながら取組みを進めていきます。
- 植物等を原料としたバイオマスプラスチックや再生PETを配合した素材による容器包装
環境配慮型容器包装の主な取組み実績
取組み内容 | プラスチック使用量削減量 |
サラダの容器は全品バイオマスプラスチック等を使用した環境配慮型容器を使用 | 約900t/年 削減 |
「ファミマル」ブランドの天然水の容器を順次再生PET樹脂100%のリサイクルペットボトルに切り替え | 約260t/年 削減見込み |
|
約19t/年 削減 |
パスタ商品の一部容器に、ISCC認証を取得しているバイオPPを配合した容器を採用 | |
チルド弁当・チルド寿司容器を軽量化・素材変更 | 約421t/年 削減見込み |
バイオPP容器を使用していないパスタ容器を薄肉化、素材の一部にバイオマスプラスチックを配合 | 約93t/年 削減見込み |
コンビニエンスストアでのプラスチック削減の取組み
日本で2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法に基づき、ファミリーマートは「2019年度対比2030年度までに石油由来のプラスチック使用量を50%削減」することを目標に掲げ、お弁当、デザート、飲料等を購入されたお客様へ配布するプラスチック製スプーン、ストロー等の使用量削減に取組んでいます。
特定のプラスチック使用製品の削減に関する主な取組み実績
開始年 | 取組み内容 | プラスチック使用量削減量 |
2021年~ |
|
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2022年~ |
|
ー |
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2024年~ |
|
環境配慮型ゴミ袋「nocoo(ノクー)」を開発
伊藤忠商事の子会社、日本サニパック株式会社は、CO2の削減に繋がる環境配慮型ゴミ袋「nocoo」を開発しました。nocooは、天然ライムストーンを原料に使用することにより、プラスチック使用量が約20%削減され、ゴミ袋製造時、燃焼時におけるCO2排出量がポリエチレン100%のゴミ袋と比べ約20%削減できます。2023年度の全国47都道府県におけるnocoo販売実績は5,622tで、1,293tのプラスチック使用量の削減、及び3,531tのCO2排出量の削減(焼却時)に貢献しました。
今後もnocooを通じて、いつものゴミ捨てでCO2削減、という誰にも身近な環境問題への取組みを進めていきます。
ご参考:環境配慮型ゴミ袋nocoo
2. リユース・リサイクル
循環型経済の実現を目指すRENU®プロジェクト
ファッション産業における大量廃棄問題を解決し、循環型経済の実現を目指すRENU®(以下、RENU)プロジェクトを2019年春より始動しました。第一弾商品として、これまで廃棄されてきた残反や使用済み衣料を原材料としてつくられた繊維由来の再生ポリエステルを展開しています。このプロジェクトを、消費者の手に届くまでのファッション産業の商流全体で展開することで、循環型経済に貢献します。
RENUプロジェクトにおける再生ポリエステルの取扱いによる環境インパクトは次の通りです。
2020年度 | 2021年度 | 2022年度※ | 2023年度※ | |
原材料として投入した廃棄物 Tシャツ換算 | 3.5百万枚 |
6.0百万枚 |
6.3百万枚 |
6.5百万枚 |
CO2削減量 | 521t |
893t |
1,931t |
2,010t |
水の削減量 | 875kL |
1,500kL |
6,500kL |
6,760kL |
- 2021年度版LCAを採用
繊維製品回収サービスの展開
伊藤忠商事は、リユースやリサイクルを通じて資源循環型ビジネスを展開する株式会社ECOMMITと業務提携契約を締結し、日本市場における繊維製品の回収サービス「Wear to Fashion(ウェア・トゥ・ファッション)」を展開します。2022年春より、全国の事業者・自治体を対象に順次サービスの提供を開始し、2024年3月現在、3,000拠点にて回収を行っています。2024年度では約6,000tの衣料回収を計画しています。
繊維業界が抱える廃棄問題の解決を目指す「RENUプロジェクト」の新たな取組みとなる本サービスでは、不要となった繊維製品を回収・選別し、リユース可能な製品はECOMMITのノウハウを活用してリユースし、リサイクル可能なポリエステル製品は「RENU」の原材料とすることで、廃棄される繊維製品を可能な限り削減し、サーキュラーエコノミーの実現を目指します。
使用済みプラスチック・繊維の循環事業 ARChemia(アルケミア)プロジェクト
2023年3月、伊藤忠商事は株式会社レゾナックと使用済みプラスチック・繊維の循環事業推進を目的とした共同検討に関する覚書を締結しました。この覚書に基づき「ARChemiaプロジェクト」を立ち上げ、使用済みプラスチック・繊維を混合したリサイクル固形原料(RPAF※1)をレゾナックに供給し、環境付加価値の高い低炭素アンモニア等の化学製品に生まれ変わらせる協業を開始しました。2027年度にはリサイクル固形原料の供給量を1万トンまで増やすことを目指します。化学品と繊維の共同案件である「ARChemiaプロジェクト」を通じて、廃棄物の社会課題を解決すると共に、循環型社会の実現に貢献していきます。
- RPAF: Refuse derived Plastics paper and Apparel densified Feedstock
使用済みプラスチック、古紙及び使用済み繊維を主原料とし、発生カロリーを調整したガス化ケミカルリサイクル向けの固形原料。 - KPRプラント: レゾナック川崎事業所 プラスチックケミカルリサイクルプラント
リサイクルナイロンブランド「ECONYL®」の展開
伊藤忠商事は、世界最大のリサイクルナイロンブランド「ECONYL®(以下、エコニール)」を展開するAquafil S.p.A.(以下、Aquafil社)とナイロン循環リサイクルに関するビジネスの推進、拡大に向けて資本業務提携を締結しました。
ナイロンは石油由来の化学繊維及びプラスチック原料として、ファッション、カーペット、漁網、食品包材、自動車用部材等幅広い分野で使用される一方で、他原料との複合素材として使用されている製品も多く、リサイクルが難しい素材の一つでした。
Aquafil社は、独自の技術でナイロン廃棄物をケミカルリサイクルによって粗原料であるカプロラクタム(CPL)まで戻し、不純物等を完全に除去しバージン材と同等品質で再利用できる循環リサイクルシステムを構築し、2011年よりスロベニアにて漁網やカーペット等の廃棄物を原料としてリサイクルナイロン「エコニール」の生産を開始しました。エコニールは100%廃棄物からのリサイクルのため、石油由来の通常のナイロンに比べてCO2排出量を最大90%削減が可能です。
当社は、当社グループの持つ多様なネットワークを活かして、グローバルにファッションやカーペット、自動車用部材、包材等の用途向けに拡販していきます。2022年2月には、ファスナー製造・販売最大手のYKK株式会社、Aquafil社と共同で、Aquafil社のリサイクルナイロンを原料にした環境配慮型のリサイクルファスナー、リサイクルボタンを開発しました。
更に既存の販売チェーンからの廃棄用ナイロンの回収スキームを構築する予定で、Aquafil社への原料安定供給の観点からも協業をすすめていきます。廃棄物の回収から最終製品の販売までをAquafil社と共同で取組むことにより、付加価値の高いナイロン循環リサイクルの拡大を目指します。
日本における環境配慮型床材の展開及び床材循環リサイクル事業
伊藤忠商事は、インテリア・内装卸売事業を手掛けるリリカラ株式会社と協業し、欧州建築資材メーカーであるTarkett S.A.が製造する環境配慮型床材DESSO(以下、デッソ)の日本市場への展開、及び床材循環リサイクル事業を開始しました。
デッソは、床材の基材部分と表面の繊維部分を分離し、それぞれ再生することが可能な、リサイクルを前提とした環境配慮型製品です。
本プロジェクトでは、デッソを販売するだけでなく、回収・リサイクルスキームの構築を通じて、床材循環リサイクルの社会実装を目指します。
ポリエステルのケミカルリサイクル技術ライセンス展開
2023年1月、伊藤忠商事、帝人株式会社、日揮ホールディングス株式会社は、ポリエステル製品からポリエステルをケミカルリサイクルする技術のライセンスを目的とした合弁事業会社「株式会社RePEaT」を設立しました。
近年気候変動が地球規模の課題となる中、繊維産業においては、製造工程におけるCO2の排出や、衣料品の大量廃棄が問題視されています。「ケミカルリサイクル」は、使用済み繊維製品を熱利用する「サーマルリカバリー」や別の製品原料とする「マテリアルリサイクル」といった一般的な方法と異なり、繊維製品を再び繊維原料へ化学分解することにより、繊維から繊維へのリサイクルができる画期的な方法です。
RePEaTは、帝人の持つポリエステルのケミカルリサイクル技術、グローバルにエンジニアリング事業を展開する日揮の知見、伊藤忠商事の持つ繊維業界の幅広いネットワークを活用し、廃棄されるポリエステル繊維製品を原料としたポリエステルのケミカルリサイクル技術を国内外へライセンス展開します。これによりコスト効率に優れたケミカルリサイクル事業へ参入する事業者をサポートします。
また、RePEaTは、リサイクル原料となる使用済みポリエステル繊維製品の回収を含めたエコシステム構築のコンサルティング事業を通じ、ポリエステル製品のリサイクルを推進することにより、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
ワンストップ・ウェイストマネジメントサービスの提供
全国展開を図っているフランチャイズ企業では、従来は、廃棄物の処分は店舗またはエリア単位で小規模・分散的に行われており、各事業者の労力及びコストの非効率性や法令違反リスクといった課題を抱えていました。
伊藤忠メタルズ株式会社(以下、IMC社)では、全国の優良リサイクル業者100社超で組成する伊藤忠鉄原会を中心としたリサイクルネットワークを構築し、廃棄物が処分・再資源化されるまで、IMC社独自の電子マニフェストシステムの提供を含め、一元集中的に管理を代行することにより、排出事業者の法令違反リスク、及び処理コストの大幅低減、並びにリサイクル率向上にも貢献しています。
IMC社は、現在ではコンビニ、店舗什器メーカー、飲料メーカー等様々な業界に対し、産業横断的なリサイクルプラットフォームを提供する等各企業の取組みを支える各種サービスを提供しています。更には、IMC社が管理受託した廃棄物の中でリユース可能なものはIMC社の整備拠点で再整備・リユースを行うことで3Rを実現し、循環型社会形成に大きく貢献しています。
英国最大の廃タイヤ回収・加工・リサイクル事業
伊藤忠商事の英国タイヤ販売事業会社European Tyre Enterprise Limited傘下のMurfitts Group Ltdでは、英国で排出される廃タイヤを回収・加工し、リサイクル製品の販売を行っており、競技場や舗道・遊戯場の表面等の様々な産業用途に使用され、世界中に輸出されています。
また、粒状にした廃タイヤを真空状態下で熱することで、タイヤの主原料の一つであるカーボンブラック(CB)や再生燃料を生成する独自の熱分解技術の開発・商業化に取組んでいます。この取組みは、廃タイヤから生成した再生CBを使用することでタイヤ製造におけるサステナビリティを促進するものです。
複層フィルム包材におけるマテリアルリサイクル技術の協業展開
伊藤忠商事とartience株式会社(前 東洋インキSCホールディングス株式会社)は、複層フィルム包材のマテリアルリサイクル技術の協業展開について合意しました。
2019年、artienceは総合環境サービス企業の世界最大手と提携し、複層フィルム及び包材を構成するインキや粘接着剤等を脱離する技術を開発しました。2022年末に実証パイロットプラントの稼働を開始し、今後LCA(Life Cycle Assessment)評価・コストシミュレーション等の検証を行うことで、2024年中の実用化を進め、その後速やかに商業プラントベースでの事業化検討を進めていきます。当社は本技術に関連する主要な製品材料における国内での独占マーケティング権及びアジア・欧州での優先交渉権を取得しており、本技術を用いたマテリアルリサイクルの仕組みの構築、リサイクル可能な環境配慮パッケージ設計の訴求を通じて、食品・日用品メーカー、小売り、ブランドオーナー等に向けた幅広い環境ソリューションの提供を行っていきます。
両社はこうした取組みにより現状再利用が困難な複層フィルム包材をリサイクル可能なものに転換し、国内外のマテリアルリサイクル率40%以上を目指します。
PETボトルのリサイクルにおけるトレーサビリティの価値検証
伊藤忠商事、(株)ファミリーマート、旭化成(株)、伊藤忠プラスチックス(株)で2022年9月からスタートした資源循環社会の実現に向けたデジタルプラットフォーム構築プロジェクト「BLUE Plastics(Blockchain Loop to Unlock the value of the circular Economy、ブルー・プラスチックス)」において、2023年6月、新たにコカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社が参画し、ファミリーマート実店舗におけるトレーサビリティシステムのプロトタイプを用いたPETボトルリサイクルの実証実験を拡大実施しました。
2022年9月の実験結果にて、スマートフォンアプリ等の利用により、当該店舗でのペットボトル回収量が通常の2倍以上に増加し、品質(ボトルの洗浄・ラベルの除去等の質)も大きく向上することが確認できました。その際はリサイクル企業までの追跡でしたが、2回目となる2023年6月の実験では、コカ・コーラ ボトラーズジャパンの参加により、ペットボトルが再び製品に生まれ変わるまでトレースすることが可能になりました。加えて、今回はアプリのアップデートも行い、リサイクルの成果を消費者がより実感しながら参加できる仕組みを構築することで、回収品の量と質を更に向上させることを目指した結果、一定の効果を確認できました。
今後、本実証を含む一連の取組みを通じて、デジタルプラットフォームによるトレーサビリティの価値を確認し、更なるプラスチック資源循環を推進していきます。
3. リニューアブル
セメント代替品「高炉スラグ」の世界No.1トレーダー
「高炉スラグ」とは、鉄鋼の製造工程の副産物です。セメント代替品としてセメントと混合して利用することで、セメントの原料である石灰石等の天然資源の節約が可能となり、更にセメント製造時に発生するCO2を削減することが可能となります。高炉スラグが供給されることで、セメント1トンを製造する際に発生する840kgのCO2が抑制されます。
当社は20年程前から国内外の「高炉スラグ」を世界中に販売、世界No.1高炉スラグトレーダーとしての取扱量を誇り、CO2発生の抑制に貢献しています。世界規模での脱炭素の流れを受け、高炉スラグの価値は今後益々高くなることが期待されていることからも、継続的・安定的な商流を構築し、スラグ事業への出資・参画を含め、注力していきます。
再生可能資源由来バイオマスポリプロピレンの日本市場における事業展開
日本では、海洋プラスチックごみ問題や気候変動への対応として2030年までに約200万tのバイオマスプラスチック製品を導入する基本計画が策定されています。
伊藤忠商事は、Borealis AG(以下、Borealis社)と再生可能資源由来のバイオマスポリプロピレン(バイオPP)に関する日本市場でのマーケティングについて合意しました。世界トップクラスのプラスチック樹脂メーカーであるBorealis社は2020年3月にはバイオPPの商業生産を開始し、欧州を始め世界へ拡販を進めています。当社はバイオPPを原料とする食品容器や包材の展開を進めており、2021年6月からファミリーマートのパスタ容器の一部を、日本初となるバイオPP使用の容器に変更しました。またその他衛生用品、日用雑貨、化粧品容器、オフィス用品、家電、自動車部品等、多様な分野での製品展開に取組んでいます。
マスバランス方式で製造されたBorealis社製のバイオPPの国内販売にあたっては、当社はISCC PLUS認証を取得しています。これは、持続可能な原料調達であることをサプライチェーン上でトレースできる形で証明する認証であり、バイオマス由来の原料割り当て分はGHG排出量削減に貢献します。
外部との協働
容器包装リサイクル法への対応
伊藤忠商事は、容器包装リサイクル法が定める特定事業者に、循環型社会形成の推進に寄与することを目的として、容器包装の再商品化のため、毎年容器包装の自社製造・輸入量等を把握し、再商品化委託料を公益財団法人日本容器包装リサイクル協会に収めています。
過年度の委託料
(単位:円)
年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | ||||||||||||
実施委託料/拠出委託料 | 実施 | 拠出 | 総額 | 実施 | 拠出 | 総額 | 実施 | 拠出 | 総額 | 実施 | 拠出 | 総額 | 実施 | 拠出 | 総額 | 重量(t) | |
ガラスびん | 無色 | 704,782 |
9,344 |
714,126 |
750,030 |
0 |
750,030 |
813,659 |
0 |
813,659 |
925,650 |
0 |
925,650 |
1,145,967 |
0 |
1,145,967 |
236.752 |
茶色 | - |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
0 |
|
その他の色 | - |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
0 |
|
PETボトル | - |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
630 |
0 |
630 |
0.084 |
|
紙製容器包装 | 29,327 |
102 |
29,429 |
9,045 |
27 |
9,072 |
15,288 |
4 |
15,292 |
10,168 |
0 |
10,168 |
15,453 |
0 |
15,453 |
1.385 |
|
プラスチック製容器包装 | 1,057,941 |
0 |
1,057,941 |
1,197,091 |
0 |
1,197,091 |
1,463,900 |
4,537 |
1,468,437 |
2,432,519 |
0 |
2,432,519 |
2,739,244 |
0 |
2,739,244 |
52.383 |
|
合計 | 1,792,050 |
9,446 |
1,801,496 |
1,956,166 |
27 |
1,956,193 |
2,292,847 |
4,541 |
2,297,388 |
3,368,337 |
0 |
3,368,337 |
3,901,294 |
0 |
3,901,294 |
290.604 |
食品リサイクル法への対応
伊藤忠商事は、食品廃棄物排出量、再生利用量等の定期報告を行い、基準実施率(再生利用等の実施率目標)に沿って廃棄物の発生抑制、飼料化等のリサイクル促進に努めています。
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | ||
リサイクルしている数量 | 廃棄物等の発生量(単位:t) |
992.8 |
1,125.8 |
955.9 |
939.4 |
1,944.3 |
再生利用実施量(単位:t) |
744.4 |
775.5 |
762.0 |
854.6 |
1,747.6 |
|
廃棄処分実施量(単位:t) |
248.4 |
350.3 |
193.9 |
84.8 |
196.7 |
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目標(個々の食品関連事業者ごとの再生利用等の実施率の目標) | 基準実施率 |
78.8% |
79.8% |
80.8% |
80.8% |
80.8% |
リサイクルしているパーセンテージ | 再生利用等実施率※1 |
75.1% |
68.9% |
81.9% |
91.0% |
89.9% |
- 再生利用等実施率は、農林水産省の定める「(発生抑制量+再生利用量+熱回収量×0.95+減量量)/(発生抑制量+発生量)」の計算式にて算出。
- 2024年度目標80.8%
イニシアティブへの参画(財界・業界団体を通じた活動)
伊藤忠商事は、一般社団法人日本経済団体連合会の環境・エネルギー関係の委員会である「環境委員会地球環境部会」に参加し、自主行動計画の推進、温暖化、廃棄物・リサイクル、水を含む環境リスク対策等、経済と両立する環境政策の実現に取組んでいます。また、日本貿易会の「環境ワーキンググループ」に参加し、脱炭素社会の構築、循環型社会の構築、環境関連法規への対応等に取組んでいます。「環境ワーキンググループ」で掲げている目標は以下の通りです。(商社は、業態として産業廃棄物の排出・最終処分量の目標策定になじまないため、参加企業単体の主なオフィスビルから排出される事業系一般廃棄物を対象として目標を策定しています。)
国内の事業活動における2025年度の削減目標(商社業界)
- 【処分量】2000年度比82%削減
- 【発生量】2000年度比62%削減
- 【再資源化率】83%以上